有価証券報告書-第91期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/29 16:08
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138項目

業績等の概要

(1) 業績
当連結会計年度の世界経済は、米国経済が個人消費を中心とした内需を牽引役に堅調に推移したこと等から、全体として緩やかに回復しているものの、中国および新興国経済の成長のペースは鈍化しました。一方、わが国経済は、上半期において企業業績や雇用情勢の改善が継続し、緩やかな回復基調で推移しましたが、下半期に入り急速な円高・株安の進行や個人消費の低迷が続く等、景気回復は足踏み状態にある中で、中国および新興国経済の減速等による世界経済の下振れリスクが懸念され、景気の先行きは不透明な状況で推移しました。
こうした経済環境の中、当社グループを取り巻く環境は、上半期において北米市場における自動車用機能部品の需要が堅調であったものの、電池材料や電解銅箔は主要顧客の生産調整等により需要が低迷しました。また、非鉄金属相場は下落基調で推移しました。下半期に入り一時、非鉄金属相場は更に下落し、後半には急速に円高が進行したため、国内の亜鉛価格やインジウム価格等は低調に推移しました。
このような状況の下、当社グループは、平成25年度を初年度とする3ヵ年の中期経営計画である「13中計」の最終年度を迎え、北米における四輪車向け排ガス浄化触媒事業の拡大、銅箔事業におけるアジアを中心とした海外での高付加価値品へのシフト、水力発電所の大規模な更新の決定、アジアにおけるリサイクル事業の拡大、自動車機器事業におけるグローバル生産体制の確立等の諸施策を実施してまいりました。
この結果、売上高は、前連結会計年度に比べ227億円(4.8%)減少の4,505億円となりました。営業利益は前連結会計年度に比べ206億円(65.0%)減少の111億円となり、経常損益は、銅価低迷の影響を受け、チリのカセロネス銅鉱山の減損損失192億円を含む持分法による投資損失223億円等を計上した結果、前連結会計年度に比べ323億円悪化の112億円の損失となりました。特別損益においては、投資有価証券売却益14億円等の特別利益や固定資産除却損14億円、環境対策費用6億円等の特別損失を計上しました。加えて、税金費用および非支配株主に帰属する当期純利益を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純損益は前連結会計年度に比べ381億円悪化の209億円の損失となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
① 機能材料
[電池材料]
水素吸蔵合金は、ハイブリッド車のモデルチェンジの影響等により販売量が増加しました。一方で、マンガン酸リチウムは、環境対応車の市場は堅調に推移しましたが、リチウムイオン電池に使用される主要原料の転換等から販売量が減少しました。これにより、売上高は前連結会計年度に比べて減少しました。
[排ガス浄化触媒]
主力の二輪車向け排ガス浄化触媒は、インドでの販売は堅調であったものの、新興国市場の成長鈍化等により総じて需要が低調であったことから販売量は減少しましたが、円安の影響により売上高は前連結会計年度に比べて増加しました。
[金属粉]
電装化の進む自動車向けの販売は堅調であったものの、中国経済の減速の影響を受け、白物家電向けの需要が低迷したこと等により、販売量、売上高ともに前連結会計年度に比べて減少しました。
[レアメタル化合物]
酸化タンタルは、単結晶向け需要が堅調であったことから販売量が増加しましたが、セリウム系研磨材は、下半期に入り液晶パネル向けの在庫調整があったこと等により販売量が減少しました。この結果、売上高は前連結会計年度に比べて減少しました。
[電解銅箔(当連結会計年度の生産量29千t)]
高機能用途の極薄銅箔は、スマートフォン等のモバイル機器市場の成長鈍化の影響等により、需要が低調に推移しました。また、アジアを中心とした海外においては、汎用品の価格競争を回避し差別化を図るため、高付加価値品へのシフト等に注力し、収益性は改善しましたが、販売量、売上高ともに前連結会計年度に比べて減少しました。
[薄膜材料(スパッタリングターゲット)]
主力のITOは、主要顧客の生産調整等により国内向けは減少したものの、海外では中国を中心に拡販に努めた結果、販売量は前期に比べて増加しました。一方、ITOの主要原料であるインジウムの価格が下落したことから販売価格が低下し、売上高は前連結会計年度に比べて減少しました。
以上の結果、当セグメントの売上高は、前連結会計年度に比べ91億円(6.0%)減少の1,440億円となり、経常利益は、電解銅箔における収益性の改善があったものの、インジウム価格の下落に伴う薄膜材料の在庫要因等の影響により、前連結会計年度に比べ84億円(69.0%)減少の37億円となりました。
② 金属
[亜鉛(当連結会計年度の生産量210千t<共同製錬については当社シェア分>)]
国内の亜鉛メッキ鋼板向け需要は、建材および自動車向けが低調に推移したことから減少しました。加えて、亜鉛のLME(ロンドン金属取引所)価格は総じて下落基調で推移したことにより、国内の亜鉛価格が低調であったことから、売上高は前連結会計年度に比べて減少しました。
[金・銀]
金・銀ともに販売量が増加したことから、売上高は前連結会計年度に比べて増加しました。
[鉛(当連結会計年度の生産量66千t)]
国内の鉛蓄電池向け需要は、取替用の需要は堅調であったものの、新車用が販売台数低調の影響を受け、減少しました。加えて、鉛のLME(ロンドン金属取引所)価格は総じて下落基調で推移したことにより、国内の鉛価格が低調であったことから、売上高は前連結会計年度に比べて減少しました。
以上の結果、当セグメントの売上高は、前連結会計年度に比べ103億円(7.4%)減少の1,297億円となり、経常利益は、円安効果による好転要因があったものの、非鉄金属価格の下落に伴う在庫要因やカセロネス銅鉱山におけるフル操業体制への遅れ等の影響があったことから、前連結会計年度に比べ131億円悪化の3億円の損失となりました。
③ 自動車機器
[自動車用機能部品(当連結会計年度の生産金額996億円)]
ドアロック等の自動車用機能部品は、国内市場では、軽自動車税の増税等による需要減がありましたが、北米市場は、ガソリン価格が低水準を維持していることや米国経済の回復基調を背景に堅調に推移しました。
以上の結果、当セグメントの売上高は、前連結会計年度に比べ99億円(9.5%)増加の1,144億円となり、経常利益は、原価低減活動の成果によるコスト改善等の影響により、前連結会計年度に比べ3億円(7.4%)増加の54億円となりました。
④ 関連
[エンジニアリング]
各種産業プラントの受注高は海外プラント工事の受注環境が低調に推移したものの、国内の水力発電設備等の受注により堅調に推移しました。売上高は、前期にグループ企業の定期修理工事等が完成したことから減少しました。
以上の結果、当セグメントの売上高は、前連結会計年度に比べ112億円(9.5%)減少の1,072億円となり、経常利益は、前連結会計年度に比べ15億円(31.4%)減少の33億円となりました。
(2) キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ131億円収入増加の503億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度並みの263億円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ91億円支出増加の219億円の支出となりました。
以上の結果、為替換算差額、新規連結に伴う増加額を含めた現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ7億円増加の166億円となりました。
なお、キャッシュ・フローの詳細については、「7.財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(4) キャッシュ・フローの状況とキャッシュ・フロー指標のトレンド①キャッシュ・フローの状況」に記載しております。