有価証券報告書-第166期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/17 12:00
【資料】
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【項目】
149項目

対処すべき課題


(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは「人と社会の役に立つ」という経営の基本理念のもと、いつの時代も時流に即した事業活動を通じて人と社会に貢献してまいりました。
現在は、世界的な環境保護意識の高まりを受けた脱炭素の潮流にしなやかに対応すべく、石炭生産以外の事業分野への積極投資による事業ポートフォリオの多様化を目標とした中期経営計画(2024年3月期までの5ヵ年)の確実な遂行を経営の基本方針としております。
①中期経営計画の主な数値目標
a. 非石炭生産事業の営業利益 47 億円(2024 年3月期)
b. ROE 8%以上(2024 年3月期)
②中期経営計画の進捗状況
a. 非石炭生産事業の営業利益
2022年3月期は、電子部品分野の受注増加及び株式会社システックキョーワ(住宅関連部材分野)の子会社化等により、約34億円となりました。2023年3月期においても、引き続き新型コロナウイルス感染症による経済活動への影響が懸念されますが、2022年5月に当社グループに加わった日本カタン株式会社による押し上げ効果や、衣料品分野の黒字化が期待されるなど、当計画は順調に進捗しております。
b. ROE
2022年3月期は、上記a.に示した要因に加え、石炭生産分野における石炭価格の上昇、決算為替レート(A$/円)の円安及び固定資産売却益の計上が寄与したこと等により、16.44%となりました。2023年3月期においても、強い石炭市況に支えられ、豪州リデル炭鉱の既存鉱区における石炭生産収益が期待される一方で、2023年の既存鉱区終掘に伴う鉱区延長に関して現時点では不確定要素が多いこと及び石炭価格変動リスク等に鑑み、石炭生産事業に依存しない収益基盤をいち早く確立すべく、中期経営計画の前倒しでの達成を目指してまいります。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、収益性の維持・拡大と共に、株主に対する十分な利益還元を行うことを目指しており、自己資本に対する経営の効率性を表す自己資本利益率(ROE)を重視しております。
(3) 対処すべき課題
当社グループは長年にわたり石炭生産・石炭販売(現在では海外、特に豪州での炭鉱事業が主体)を中心としたエネルギー事業を展開してまいりました。一方で、これらの石炭関連事業は石炭の需要や価格、為替変動により大きく収益が左右されることから、石炭相場や為替変動等の影響を受けにくい事業分野への進出を経営の重要課題と位置付け、積極的なM&A投資を実施し、収益基盤の安定化・多様化に取り組んでまいりました。
特に近年では、世界規模での環境保護意識の高まりを背景に、脱炭素社会の実現に向けた取り組みが国家・企業・投資家の枠組みを越えて加速するなど、石炭関連事業を取り巻く環境が一段と厳しさを増す一方、エネルギー確保に向けた各国の動き等世界情勢は複雑な様相を呈しエネルギー市場に大きく影響を与えております。加えて、新型コロナウイルス感染症は依然として終息の見通しが立っておらず、国内景気は引き続き低迷を余儀なくされることも懸念されます。
このような状況下、当社では中期経営計画の実行によって、石炭生産分野の収益に頼らない安定的かつ多面的な収益基盤を確立することを課題とし、新型コロナウイルス感染症による国内景気の低迷の影響を受ける事業については、事業構造を再構築することにより、コロナ禍でも収益を確保できる体制づくりに取り組んでまいります。
当企業集団における各事業の課題は、次のとおりであります。
① 生活関連事業
(飲食用資材分野)
日本ストロー株式会社は、大手乳業・飲料メーカー等の優良顧客との間で築きあげた安定的な取引基盤をもとに、国内伸縮ストロー市場において圧倒的なシェアを誇るリーディングカンパニーです。
近年、世界的に脱プラスチックの気運が高まる中、環境に配慮した素材を使ったストローの製造・販売を重要な取組課題と位置付け、同社は他社に先駆けて2010年よりバイオマスプラスチック、2019年より海洋生分解性素材を原料とする各種ストローの開発・量産化を進めてまいりました。今後も取引先の環境対応素材ストローに対する需要の増加を見込んでおり、いち早く需要に対応することで先行者利益を確保しつつ、国内市場を中心に更なる顧客基盤の強化・拡大を図ってまいります。
(衣料品分野)
株式会社花菱は、「オーダースーツ」の先駆者として国内で初めて重衣料(スーツ・コート等)の工業システム化に成功し、1935年の創業以来、国内の自社で生産する高品質なオーダースーツを数多くのお客様に提供し続けてまいりました。
近年、オフィスウェアのカジュアル化が進むなどビジネス向けスーツに対する需要に陰りが見られていたことに加え、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言等の影響により、来店者が減少しております。このような状況下、同社では当連結会計年度において、新たな市場環境の中でも一定の利益水準を確保していくため、国内の自社工場を全て閉鎖後、国内縫製において歴史と実績を誇る御幸毛織株式会社に生産を委託し、自社店舗での販売に特化した『株式会社花菱』として再スタートいたしました。今後も、国内縫製の高品質なオーダースーツを変わらず提供していくとともに、多様化する顧客ニーズに対応するためのラインナップの拡充等を通じ、顧客から選ばれる企業づくりに努めてまいります。
(電子部品分野)
クリーンサアフェイス技術株式会社は、1977年に国内初のマスクブランクス専業メーカーとして創業以来、液晶パネル・有機EL・電子部品等の製造に用いられるフォトマスクの材料であるマスクブランクスの成膜加工を手掛け、国内外の有力フォトマスクメーカーに販売しております。今後は次世代通信規格5Gや人工知能(AI)等の分野で成長が期待されており、マスクブランクスに対する需要は底堅く推移すると見込んでおります。
更なる収益性の向上に向け、品質改善による歩留まりの向上や最適な生産ラインの構築などに取り組んでまいります。
三生電子株式会社は、あらゆる電子機器に搭載され、特にスマートフォン等の無線接続機器に必要不可欠な電子部品である「水晶デバイス」の製造装置及び計測機器を製造・構築しております。同社は、水晶デバイスの製造工程のうち組立から検査まで幅広くカバーしたインラインシステムを製造できる国内唯一の装置メーカーであり、①高い技術力、②顧客との強固なリレーション、③価格競争力を強みとしております。
足下では、5Gスマートフォンの普及や昨今の巣ごもり需要の高まり等によるパソコン・Wi-Fi機器・ワイヤレスイヤホン等の増勢など、水晶デバイスの需要は高まっております。また今後も、5Gの更なる普及や、自動車のEV化・自動運転支援機能の拡大等により、水晶デバイスの需要は更に拡大することが見込まれ、同社製品及び生産システムに対する需要は底堅く推移すると見込んでおります。今後も、水晶デバイスメーカーの旺盛な設備投資意欲に確実に応えることで、更なる企業価値の向上を図ってまいります。
(事務機器分野)
株式会社明光商会は1960年に日本で初めてシュレッダーの製造販売を開始し、創業以来の実績と独自の技術・ノウハウにより国内オフィス用シュレッダー市場で揺るぎない地位を確立しております。現在では主力のシュレッダーや受付自動案内システムを中心に、リサイクル・環境ソリューションのご提案まで「紙」の枠を超えた事業を展開しております。
2020年3月に、タイの協力工場であるT Secure International Co., Ltd.の株式を14.9%取得し、2021年8月には追加株式取得により同社を子会社化しております。これによりシュレッダー販売台数の約8割をグループ内で製造することが可能となり、これまで以上に商品の安定供給力を高めるとともに、製造技術を確実にグループ内で維持・発展させることにより、オフィス用シュレッダー市場での更なるシェア拡大を目指します。
足下では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を機としたテレワークの普及により、オフィス用事務機器に対する需要の減少が一部で見受けられますが、ワクチン接種進展等によるテレワークからオフィス出社への回帰、自治体・金融機関等における「3密」回避に向けた来庁・来店受付体制の見直しの動き、及び情報セキュリティに対する企業・個人の意識の高まり等により、主力商品であるシュレッダーや受付自動案内システムの需要は拡大していく見通しです。今後も市場環境を慎重に見極めながら、需要状況に応じた商品開発や組織体制を構築することが課題と認識しております。
(ペット分野)
株式会社ケイエムテイは、予防医学に基づいた高品質プレミアムペットフードの企画・販売を行っておりま す。同社は、ヒューマングレードの原材料を使用、添加物・着色料・副産物を不使用とするなど、ペットの健康 に配慮した商品を展開していることから、全国のペットブリーダー・動物病院からも高い支持を獲得しており、 高品質プレミアムペットフードの市場において強いブランド力と高いシェアを有しております。
今後もペットの「家族化」が一段と進展する中で、高品質プレミアムペットフードの企画・販売を通じ、ペットと共に暮らす心豊かな社会への貢献を目指してまいります。
(住宅関連部材分野)
株式会社システックキョーワは、ドアストッパーや耐震ラッチ等の住宅関連部材の企画・製造・販売を行って おります。同社は、企画から金型・成形・組立まで、自社及びタイ現地法人で一貫生産を行い、大手住宅・建材 メーカーとも直販取引による強固な取引関係を構築し、業界内で高いシェアを有しております。
足下では、住宅着工に関する経済指標はコロナ禍前の水準には戻っておりませんが、将来的には底堅く推移すると見込んでおり、引き続き住宅関連部材市場におけるプレゼンスを維持・向上していけるものと考えております。また、明光商会のシュレッダーへの軽量筺体やキャスターの提供など、グループ会社との協業によるシナジー創出も図ってまいります。
(介護分野)
MMライフサポート株式会社は、福岡市において2棟のサービス付き高齢者向け住宅の運営と通所介護等の介護事業を行っております。立地利便性に優れた住宅は高い入居率を維持しております。
また所有施設においては、居住者の外部接触を必要最低限度に抑制するなどの新型コロナウイルス感染症の感染防止対策を講じております。今後も利用者の健康増進と更なる満足度向上に繋がるサービスを提供し、地域社会への貢献を果たしてまいります。
② エネルギー事業
(石炭生産分野)
当面は底堅い石炭需要が見込めることから、良質な石炭を産する豪州リデル炭鉱における安定操業を通じた収益性向上に努めてまいります。また、2023年の既存鉱区終掘に伴う鉱区延長の準備を着実に進め、権益価値の最大化を目指しますが、取り巻く環境・採算性等を考慮し、早期撤退も選択肢として慎重に検討・判断してまいります。
(石炭販売分野)
優良需要家とのネットワークを効率的に活用した営業活動を展開するとともに、顧客ニーズに対応した新規取扱銘柄の開拓、仕入ソースの拡大に努めてまいります。
(再生可能エネルギー分野)
近年、世界規模で地球温暖化などの環境問題に配慮したエネルギーの活用が進められており、太陽光をはじめとした再生可能エネルギーは国のエネルギー政策において重要な位置を占めるようになってきました。
MMエナジー株式会社は現在稼働中の「メガソーラーつやざき発電所(6MW)」の効率的かつ安定的な運営を図り、今後とも環境貢献と収益確保の両立に努めてまいります。
当社グループは、「人と社会の役に立つ」を経営の基本理念として、より豊かな活気ある社会づくりに向けての事業展開を行い、常に社会から必要とされる企業を目指して邁進していく所存であります。
株主の皆様におかれましては、今後ともなお一層のご支援、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。