訂正有価証券報告書-第46期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

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2016/07/14 9:18
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事業等のリスク

以下には、当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のある主な事項を記載しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、その発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める方針であります。
本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は提出日現在において当社が判断したものであります。
1 法的規制について
(1) 原油・天然ガス事業に関する法的規制
当社の事業は、鉱業法、ガス事業法をはじめ、鉱山保安法、高圧ガス保安法、消防法等の規制を受けております。現時点においてこのような法的規制が存在することが、当社事業の妨げとなり、もしくは著しい費用の増加につながっている事実はありませんが、将来的にこれらの法令が改正され、もしくは新たな規制法令が制定されて当社の事業に適用された場合、当社はその制約を受けることになります。
(2) 当社グループ事業の環境に対する負荷と法的規制
当社グループの事業は、鉱業という事業の特性上、その操業の過程で環境に対して様々な負荷を与え、また与える可能性があります。このため当社グループでは、関連法令に基づいて、監督官庁からの許認可取得、届出、販売先への製品情報の提供等、必要な手続きについて適法かつ適正な処理を行っており、従来、重大な問題が発生したことはありません。但し、世界的な環境意識の高まりに連れて現行の法規制が強化された場合には、対策費用の増加等により、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
2 経営成績の変動要因について
(1) 原油売上高の変動要因
当社が日本国内で販売する原油の販売価格は国際原油価格に連動して決定されるため、石油輸出国機構(OPEC)の生産動向や国際的な需給動向によって市況が変動し、また為替レートが変動した場合、当社の原油販売価格はその影響を受けます。当社はかかるリスクを軽減する目的で原油スワップ取引等を行うことがありますが、こうした取引によって全てのリスクが回避されるわけではありません。
(2) 天然ガス売上高の変動要因
当社が日本国内で販売する天然ガスの販売単価は、従来、販売先との契約に基づいて事業年度を通じて円建てで固定されているものが多数を占めていましたが、LNGの市場価格に基づき価格を決定する契約が増加傾向にあり、国際市況や為替の変動によって売上高が影響を受ける可能性が高まっています。また、都市ガス会社向けのガス販売数量については、夏季に需要が減少し、冬季に増加するという季節変動があるほか、暖冬時には販売量が低下する傾向が見られます。また長期的に見た場合、我が国エネルギー市場の規制緩和等が、天然ガスの販売単価や販売数量に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3) 探鉱投資水準による損益の変動
生産・販売により減少する埋蔵量を維持・拡大し長期にわたり安定的な石油・天然ガスの供給体制の整備を図ることは、探鉱・開発・販売を事業の骨格とする当社グループにおいて重要な課題であり、当社グループでは原油・天然ガス販売から得られた利益の相当部分を、国の内外における探鉱投資に充当しています。探鉱投資額については、探鉱費用としてもしくは引当金の計上を通じて費用化しております。このため各事業年度における探鉱投資額の増減が、当社グループの利益に直接的な影響を及ぼすことになります。
3 事業に関するリスクについて
(1) 事業の特徴
当社グループの事業は、初期の基礎的な調査から、掘さく作業を経て資源の発見に至るまでの探鉱段階において、多額の投資と長い期間を要する一方、資源の発見が保証されているわけではなく、元来リスクの高い事業です。また、資源の発見に至った後も、開発井の掘さく、生産設備や輸送設備の建設等に多額の投資が必要となります。従って、事業に着手してから投資額を回収し、利益に寄与するまでに長いリードタイムを要するのが通例であり、この間、事業環境の変化により、投資額の増大(開発スケジュールの遅延に起因するものを含みます。)、需要の減少、販売単価の下落、操業費の増加、為替変動などが発生し、所期の投資目的を達成できないリスクがあります。加えて、これらの投資には、埋蔵量や生産量の予期せぬ減少等の地質的な不確実性、不純物の混入など鉱業に特有の様々な技術的なリスクがあり、こうしたリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2) エネルギー市場自由化の影響
我が国の電力・ガス事業分野においては、競争原理の導入を目指した様々な規制緩和の一環として、平成29年4月1日に改正ガス事業法が施行される見通しであり、従来より第三者託送義務が課されている天然ガスパイプラインに加え、一定規模以上のLNG基地が、ガス事業法の規制下で新たに第三者開放義務を負うことになります。当社では、こうした規制緩和の流れが、我が国のガス市場全体の活性化と天然ガスの需要拡大をもたらすとともに、当社グループのマーケティングの自由度を高め、事業領域や顧客基盤の拡大につながるものと考えています。一方で、エネルギー市場の構造改革の進展は厳しい価格競争をもたらし、当社グループの天然ガス販売にも悪影響を及ぼす可能性があります。
(3) 販売に関するリスク
当社では、多くの販売先と長期にわたる取引関係を築いていますが、通常、単年度での販売契約を締結しているため、複数年以上にわたる長期販売契約の締結は一部の取引に留まっております。このため、大多数の販売先には契約上の長期的な引取義務はなく、販売先における需要減少、仕入先の変更等に伴う当社の販売数量の減少等により、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4) 仕入に関するリスク
当社は平成15年3月より輸入を開始したマレーシア産LNGに関して、テイク・オア・ペイ条項に基づく長期引取義務を負っており、当社が何らかの事情により規定された年間最低引取数量について引取不能となった場合でも、未達数量について支払義務が発生します。このため、将来的に当社の天然ガス販売数量が減少した場合でも、LNG引取数量が固定化されるというリスクがあります。また、LNGの仕入価格は原油価格や為替レートの影響を受ける変動価格であり、仕入価格が高騰した場合、当社が販売価格に転嫁できなければ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(5) 操業に関するリスク
当社グループでは、坑井の掘さく、原油や天然ガスの生産・輸送等の操業に関して、保安体制や緊急時対応策の整備に努めておりますが、操業上の事故や災害(自然災害を含みます。)の発生によって人的・物的損害が発生するリスクは常に存在しています。こうした事故や災害が発生した場合、その損害の全てが保険によりカバーされるわけではありません。また、直接的な損害だけでなく、販売の中断による収入の減少、販売先に対する損害賠償、環境汚染による損害賠償、行政処分、社会的信用の低下といった副次的な損害をもたらす可能性があります。
(6) 将来の廃鉱に関するリスク
当社グループが現在生産を行っている坑井及び鉱山等については、生産終了後に廃鉱作業を実施する必要があり、当社グループは当該有形固定資産の除去に関して資産除去債務を計上しております。新たな法令や契約、市場変動等の外的環境の変化により、当社グループの資産除去債務の妥当性に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 将来の税制等の変更に関するリスク
鉱業に特有の税制優遇措置として、探鉱準備金制度、海外投資等損失準備金制度及び新鉱床探鉱費の特別控除制度(所得控除)があり、当社グループもその制度を利用しておりますが、将来、こうした優遇措置が変更された場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(8) 海外事業に関するリスク
海外事業が探鉱、開発と段階を経ていく過程で、多額の投資(出資又は資金貸付)を行うこととなる場合、当社の財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当社が出資する海外プロジェクト会社が銀行融資等によって事業資金を調達する場合、当社は当該借入金の全部又は一部について債務保証を行うことがあります。この場合において、当該プロジェクト会社の財務状況が悪化して債務不履行となったとき、当社に当該保証額について債務を履行する義務が生じます。
さらに、石油開発の全般的な傾向として、海外事業の一部はカントリーリスクの相対的に高い地域で実施されることがあり、これらの国々の政治的もしくは経済的混乱、法制や税制もしくは政策等の変更が、当社グループの海外事業の円滑な遂行に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、相当規模の資金を要する生産段階にある主要な海外事業は、次のとおりであります。
① サハリンプロジェクトの進捗状況
当社は、サハリン石油ガス開発㈱への出資を通じて(平成28年3月期末の出資比率 15.29%)、ロシア・サハリン島沖合における原油・天然ガス開発事業(サハリン1プロジェクト)に参画しております。同プロジェクトは平成13年10月に商業化宣言を行い、ロシア政府の承認を経て開発段階に移行した後、平成18年10月、チャイウォ油ガス田からの本格的な原油生産の開始に伴って本邦への輸出を開始し、現在も順調に生産販売を続けているほか、平成22年9月にはオドプト油ガス田から、平成27年1月にはアルクトン・ダギ油ガス田からも原油生産を開始しております。
当社は、同社が開発資金を調達するに際し、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構並びに他の民間株主とともに債務保証を行っております。平成28年3月期末時点で、当社の債務保証残高の総額は4,837百万円であり、平成19年5月より同社による借入金の返済が開始されております。
また、サハリン1プロジェクトでは、上記の生産中油ガス田で追加開発作業を進めており、また、現時点では具体的な計画は策定されていないものの、天然ガス生産を目的とした開発を行う可能性があり、将来、これらの作業や計画の進展次第では、当社において追加的な債務保証が発生する可能性があります。
② インドネシアカンゲアンプロジェクトの進捗状況
当社は、平成19年5月より、Energi Mega Pratama Inc.(EMPI)への出資(平成28年3月期末の出資比率25%)を通じて、インドネシア・ジャワ島東方沖合のカンゲアン鉱区における原油・天然ガス開発事業に参入しております。同鉱区は、複数の油・ガス田及び構造を有し、参入時点で既に生産中であった一部油・ガス田において生産を続ける一方、平成24年5月、テランガス田の商業生産を開始するとともに、他の有望地域でも探鉱・開発作業を進めております。
当社は、同鉱区に直接権益を持つEMPIの100%子会社Kangean Energy Indonesia Ltd.(KEI)及びEMP Exploration (Kangean)Ltd.に対し、他のEMPIの株主と共同で開発資金の貸付を行っており、平成28年3月期末の当社の貸付残高は両社合わせて15,415百万円となっております。また、生産設備に関連する債務に対する保証を行っており、平成28年3月期末の当社の保証残高は8,961百万円となっております。
同鉱区においては、現在開発作業を進めている油・ガス田のほかにも探鉱ポテンシャルを持つ構造が複数存在することから、開発の進捗に応じて発生が見込まれる資金貸付、債務保証等に加えて、これら大規模構造の探鉱、開発が実施される場合、更なる多額の投資が必要となる可能性があります。
③ イラク共和国ガラフ油田開発生産プロジェクトの進捗状況
当社は、連結子会社㈱ジャペックスガラフへの出資を通じて(平成28年3月期末の出資比率 55.00%)、イラク共和国南部におけるガラフ油田開発生産プロジェクトに参画し(同社参加比率30%、資金負担比率40%)、オペレーターであるPETRONAS Carigali Iraq Holding B.V.(マレーシア国営石油会社ペトロナス社の子会社)と共同で開発事業を推進しております。
現時点の計画では、本油田の開発生産に係る総設備投資額(20年間)は、概算で50~60億米ドル(㈱ジャペックスガラフ負担額:概算20~24億米ドル)と想定しています。平成25年8月に生産を開始したことにより、今後は受取原油の販売収入を設備投資に充当していきます。
当社は、同国の政治状況、治安状況等には十分留意しつつ事業を進める所存ですが、これらの状況の悪化がプロジェクトに悪影響を及ぼす可能性があるほか、予期せぬコストの増加や開発スケジュールの遅延または生産量の減少が生じた場合等には、資金負担額が増加する可能性があります。
④ カナダ アルバータ州Hangingstone鉱区オイルサンド開発事業の進捗状況
当社は、連結子会社カナダオイルサンド㈱への出資(平成28年3月期末の出資総額 49,480百万円、出資比率 93.24%。間接出資を含む場合の出資総額 50,492百万円、出資比率 94.58%)を通じて、カナダ アルバータ州におけるオイルサンド開発事業を推進しております。
同社完全子会社である現地操業会社 Japan Canada Oil Sands Limited(JACOS)が、同州Hangingstone鉱区の一部地域において日量約5,000バレルにてビチューメンの生産を行っておりますが(注 昨今の油価の著しい下落に対応するため、平成28年5月より一時的に休止しております)、平成24年12月、当社は、更なる生産量・埋蔵量の拡大を図るべく、同鉱区の拡張開発事業についての最終投資決定を行い、現在開発作業を鋭意進めているところです。
なお、本拡張開発事業は、75%の権益を保有するJACOSと25%の権益を保有するNexen Energy ULCとの共同事業であります。
現時点の計画では段階的開発を行うこととし、初期開発に係る総投資額として約16.7億カナダドル(JACOS権益分として約12.5億カナダドル)を見込んでおりますが、所要資金については自己資金と借入金にて賄う予定であります。
当社は、オペレーターであるJACOSを通じ、プロジェクト管理に万全を期す所存ですが、予期せぬコストの増加や開発スケジュールの遅延が生じた場合等には、資金負担額が増加する可能性があります。
⑤ カナダ ブリティッシュ・コロンビア州におけるシェールガス開発・生産プロジェクト及びLNGプロジェクトの進捗状況
当社は、連結子会社JAPEX Montney Ltd.(JML)への出資(平成28年3月期末の出資総額918百万カナダドル、出資比率45%)を通じて、マレーシア国営石油会社 ペトロナス社の推進するシェールガス開発・生産プロジェクト及び同州西海岸で検討中のLNGプロジェクトに参画しております(参加比率10%)。これにより、当社は同参加比率相当のLNG(約120万t/年)を引き取る権利を取得しております。
シェールガス開発・生産プロジェクトに関しては、上記LNGプロジェクトに20年間供給するに充分な埋蔵量を既に確認しております。LNGの生産に合わせて、今後とも生産量の拡大を図っていく計画です。
また、LNGプロジェクト(Pacific Northwest LNGプロジェクト、生産量約1,200万t/年)に関しては、カナダ連邦政府による環境影響評価の承認が得られた時点で、プロジェクトパートナー間において最終投資決定につき審議される予定です。
なお、本事業に係る投資予定額は、最終投資決定時に算定されることとなります。
4 国際石油開発帝石株式会社の株価変動に伴うリスクについて
当社は、平成28年3月期末現在、国際石油開発帝石㈱株式を7.31%保有しており、当社グループの平成28年3月期連結会計年度末の投資有価証券の残高は135,261百万円であり、このうち国際石油開発帝石㈱株式は91,233百万円となっております。同社の連結業績や株価は、当社グループと同様に、原油価格の動向等により変動する傾向があるほか、同社株価が変動した場合、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
5 国の保有する当社株式について
当社は、平成15年12月、石油公団(当時)が保有していた当社株式の一部の売出しにより、東京証券取引所市場第一部に株式を上場しましたが、この結果、同公団の所有株式数の割合は、65.74%から49.94%に低下しました。
さらに、同公団が保有していた当社株式は、同公団の廃止に伴い、平成17年4月1日付で国(経済産業大臣)に承継されるとともに、平成19年6月15日を受渡期日とする株式売出しにより、当該保有株式のうち15.94%相当分が売却された結果、同大臣の所有株式数の割合は34.00%まで低下し、現在に至っています。残る株式についても引き続き売却される可能性があり、その時期、方法、数量等によっては、当社の株価に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当該株式の保有に関して、国と当社との間には、「定款の変更」「資本金の増減、または社債の発行」「決算および利益金の処分」「営業の一部もしくは全部の譲り渡し、または譲り受け」「役員候補者の決定」「資産または事業経営に重要な影響のある事項」に関して、国との間で協議を行う旨を定めた覚書が存在しております。当該覚書の運用は当社の経営の独立性を尊重する形で行われており、当該覚書の存在が、当社の事業の妨げとなったり、事業内容の制約となったことはありません。