有価証券報告書-第111期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

【提出】
2015/06/29 9:39
【資料】
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【項目】
153項目

研究開発活動

(建設事業)
当社グループは、社会及び顧客の多様なニーズに応えるため、環境保全、エネルギー対策等の社会に貢献する技術や、生産性向上、品質確保、コストダウン等に資する工法や技術の開発を行うなど、主に建設事業に関して多岐にわたる研究開発活動を実施している。
また、研究開発活動の幅を広げ、効率化を図るため、国内外の大学、公的研究機関、異業種企業との技術交流、共同開発も積極的に推進している。
当社グループの当連結会計年度における研究開発に要した費用の総額は約93億円であり、主な研究開発成果は次のとおりである。
なお、当社は研究開発活動を国内建築、海外建築、国内土木及び海外土木の各セグメントには区分していない。
(1) 当社
① 技術研究所にスマートエネルギーシステムを構築
技術研究所において、複数の大型電源を最適に組み合わせて活用するスマートエネルギーシステムを構築した。
スマートエネルギーシステムは、分散させた大型電源(太陽光発電、大型蓄電池、マイクロコンバインド発電)による電力をEMS(エネルギーマネジメントシステム)によって統合管理し、ビッグデータなどを用いた電力需給の予測に基づき、リアルタイムに最適な需給バランスを調整する。技術研究所では、本システム構築前の平成24年と比べ、平成27年の商用電力量を約20%、CO2排出量も約20%削減することを目指す。
② 高性能な流動化コンクリート「フローアップクリート」を開発・適用
普通コンクリートに増粘成分を有する流動化剤を添加するだけで、特別な装置・設備を用いることなく高性能な流動化コンクリート「フローアップクリート」を供給可能とした。
過密配筋の構造物やCFT造では、コンクリートを隅々まで均質に行きわたらせるために、従来は流動性の高い高強度コンクリートが使われていた。「フローアップクリート」をCFT造の圧入工法へ適用できることを実験で確認し、オフィスビルや病院施設など7件の建築工事に適用した。
③ 切羽前方の地山の微小な変位を計測する「先行天端沈下計」を開発
山岳トンネル掘削中の地山変位を計測し、地山崩落の危険防止に役立つ「先行天端沈下計」を開発した。
地山崩落の予兆となる微小変位をコンパクトな装置で高精度かつリアルタイムに計測できるシステムで、異常時には警報音や通報等で作業員や職員に注意喚起できる。
④ 明るさ感指標を利用した光環境制御システムを開発
照明などの室内の光環境を自動的に制御し、快適性を維持しながら消費電力を60%削減する光環境制御システムを東京工業大学、㈱ビジュアル・テクノロジー研究所と共同開発した。
オフィスなどで机上面の照度を保ちながら、その他の部分の照度を低く抑えるタスク・アンビエント照明方式では、室内の雰囲気が暗く感じられるといった課題があった。本システムは、「人の感じる明るさ感」を数値化する指標「明るさ尺度値」を利用し、モノに当たる光の量ではなく、目に入る光の量を基準に室内の光環境を自動的に評価・制御するシステムである。
⑤ 自動ラック倉庫の耐震性を向上させる「TMD制振技術」を開発・適用
地震時に自動ラック倉庫の荷物落下を低減できるTMD(チューンドマスダンパー)制振技術を開発・実用化した。
TMDはバネとオイルダンパーの性能を併せ持つ粘弾性体の制振装置である。付設の自動搬送設備を用いてラック最上段に配置でき、大がかりな工事を必要としないことから、既存施設にも容易に適用できる。既存の自動ラック倉庫1物件で適用した。
⑥ 山岳トンネル工事用「高速ノンコア削孔切羽前方探査システム」を開発
山岳トンネルの切羽前方150mの地質を短時間で探査できる「高速ノンコア削孔切羽前方探査システム」を開発した。
水圧ハンマー式の削孔機構を有する専用ボーリングマシンを用いて短時間で長距離ノンコア削孔を実施し、その削孔データから地質状況を高い信頼性で予測できるシステムである。
⑦ 樹脂接着系あと施工アンカーのリニューアル技術を開発
インフラ構造物の付帯設備などの固定に用いる樹脂接着系あと施工アンカーのリニューアル技術をサンコーテクノ㈱と共同で開発した。
既設のアンカーボルトの中心に穴を開け、内部を加熱することでアンカー孔を傷つけることなく撤去するため、同じ位置に新設のあと施工アンカーを設置することが可能である。孔の開け直しに伴う施工の手間や躯体損傷のリスクがなく、より効率的で信頼性の高い工法となっている。
⑧ 質の高い都市緑地を創出するための設計支援ツールを開発
鳥が好む環境を創出し、自然共生に貢献する都市緑地の設計支援ツールを開発した。
都市部における鳥の行動を細かく調査のうえ作成した生息地評価モデルを活用し、鳥が好んで訪れる緑地の創出を都市部で可能にした。複合ビル「oak omotesando」の屋上庭園の設計に適用され、生物多様性の保全等の取り組みを定量的に評価するJHEP認証を取得した。
(2) 大林道路㈱
道路を走行しながら路面や沿道構造物等の形状を1mm単位の三次元データで計測するマルチ測定車「RIM」を導入した。各種インフラの維持管理システム等の高度化に活用する。また、アスファルト舗装の層間接着力を確保するプライマー(アスファルト乳剤)の散布作業をアスファルト混合物の舗設作業と同時に行うことができる「乳剤散布装置付きアスファルトフィニッシャ」を導入した。特殊乳剤と組み合わせて耐水性に劣る下層に雨水を浸透させない遮水型工法の展開等に活用する。その他、舗装補修材「スラリーパック」の使い易さを改良した「ニュースラリーパック」、アスファルト混合物の運搬時における保温を万全とする「側面用GOマット」を開発し販売を開始している。
(不動産事業及びその他)
研究開発活動は特段行っていない。