有価証券報告書-第78期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

【提出】
2015/06/29 10:04
【資料】
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【項目】
124項目

研究開発活動

当社は、社会基盤整備の要請や顧客の要望に応えるべく、実践的な技術を中心に幅広く研究開発活動を行っている。
(建設事業(土木・建築))
当社においては、建築物・社会資本の防災・減災に資する技術、リニューアル技術をはじめ、施工の効率化・高品質化に寄与する技術や省エネ・低炭素社会に寄与する各種の環境関連技術に関する研究開発を行っている。また、戸田建設株式会社との共同研究をはじめ、大学などの研究機関、異業種・同業種企業や公共機関との共同研究も積極的に進めている。
当連結会計年度における研究開発活動に要した費用総額は1,226百万円であり、主な成果は以下のとおりである。
(1) リニューアル技術
① 既存建物の制振補強工法「BiDフレーム制振補強工法」
本工法は、既存建物の外側に地震のエネルギーを吸収して揺れを低減する装置を内蔵した鉄骨フレームと既存建物とを接続させて耐震補強する工法である。本工法はブレースなどを必要としないため、補強前と同等の採光を確保できる。アウトフレーム型と直付け型とがあり、アウトフレーム型は当社社宅の耐震改修に採用されている。直付け型を新たに開発し、平成26年6月に一般財団法人日本建築総合試験所の建築技術性能証明を取得した。
② 斜張橋の点検ロボット「コロコロチェッカー」
斜張橋の斜材保護管表面全周をカメラで撮影するロボットで、撮影画像を用いて損傷等の形状・寸法・位置を確認するものであり、従来よりも効率よく精度の高い調査・点検ができる。東名高速道路の斜長橋補修工事に適用し実用化している。今回、撮影画像から損傷箇所を自動判別するシステムを新たに開発し、調査の効率化を図った。
③ コンクリート耐久性調査手法
鉄筋コンクリート構造物の耐久性の評価では、コンクリート中の塩化物イオン量の測定が重要な項目となっており、画像解析を利用したコンクリート中の塩化物イオン量の測定方法を開発した。小径の削孔をしてサンプル採取するとともに、孔壁面を棒状スキャナーで撮影し、その画像データからサンプル中の骨材量を推定することにより、塩化物イオン量を簡易に精度よく測定できる。
(2) 省エネ・低炭素技術
① 再生可能エネルギーの有効利用技術「マイクログリッドシステム」
太陽光発電等の分散型電源と系統電源を組み合わせ、供給と消費をネットワーク化した独自開発のマイクログリッドシステムについて、技術研究所内に設置した実証用システムで平成25年4月から検証を行い、系統電源の供給を最小限に抑え電力供給の安定化などを実現する制御システムを構築した。エネルギー需給の効率化、エネルギーコストの削減、緊急時の電源確保、環境負荷の低減など複数の効果が期待できる。
② ZEB設計技術開発プロジェクトの推進
当社は、「ZEB(ゼロエネルギービル)の設計技術の確立」を目標に掲げ、技術開発を推進している。その一環として、平成26年竣工の高齢者施設に、クール・ヒートピット、太陽熱給湯システム、エネルギー消費量計測システムの技術導入を実施した。これから得られたデータを分析・検証し、今後の省エネ設計・提案に生かしていく予定である。
③ 耐酸性能に優れた低炭素型新材料「ジオポリー」
当社は、セメントを用いない環境に優しい低炭素型新材料(ジオポリマー)の研究開発を進めている。平成24年にジオポリマーを用いた外溝ブロック(製品名:ジオポリー)を製品化し、これまでに実証試験を実施し、現場での採用に向けてデータを蓄積してきた。このたび、歩道修繕工事にジオポリーが採用され、公共工事で初施工した。
④ 低炭素型コンクリート「スラグリート®」
低炭素型社会の実現に向けた取組みとして、製鉄所の副産物である高炉スラグ微粉末をセメント代替材として積極的に活用した低炭素型コンクリート「スラグリート®」を戸田建設株式会社と共同で開発した。実機プラントでの製造や施工性などの性能検証を終え、実用化に目途をつけた。
(3) 品質向上、施工合理化技術
① ドリルジャンボを使用した超長尺大口径鋼管先受け工法「LL-Fp®工法」
トンネル天端の防護および地山変形抑止を目的として、山岳トンネルの汎用的な施工機械であるドリルジャンボを使用した超長尺大口径鋼管先受け工法「LL-Fp®工法」をトンネル坑内で初適用した。狭隘なトンネル坑内での本工法の施工性と、近接する既設水路への影響を最小限に抑えることを確認した。本工法は、従来工法と比較して大幅な工期短縮・コストダウンが可能となる。
② 鉄筋挿入型ひび割れ誘発目地工法「CCB工法」
CCB(Crack Control Bar)工法は、鉄筋コンクリート壁の収縮ひび割れ発生位置を制御する工法であり、ひび割れを誘発目地内に誘導し、目地部以外の壁面ひび割れを発生させないことが可能となる。本工法をさらに使い易くするため、増し打ちコンクリートを不要とする「CCB-NA工法」を民間10社で共同開発し、平成26年12月に一般財団法人日本建築総合試験所の建築技術性能証明を取得した。当社での適用例は5件となり、現場適用を推進している。
③ 柱RC梁Sハイブリッド構造「RCS ハイブリッド構法研究会」
当社は、柱を鉄筋コンクリート(RC)造、梁を鉄骨(S)造とした柱RC梁Sハイブリッド構造(RCS構造)の設計施工を推進している。RCS 構造は、圧縮力に強いRC 部材を「柱」に、曲げやせん断に優れ、かつ軽量であるS部材を「梁」に用いることで、大スパン・大空間を可能とする構工法技術であり、工期短縮とコストダウンも可能となる。当社では、物流倉庫の建設に適用した。
(4) 環境関連技術
① トンネル切羽前方の重金属類調査技術
山岳トンネル工事において、地質探査と同時に重金属類の溶出リスクを評価する「ノンコアボーリングを用いた切羽前方の重金属類調査技術」を開発し、現場および室内にて検証を行った。その結果、ノンコアボーリングで得られるくり粉試料でも重金属類の調査および評価が可能な手法を構築した。本手法を用いると、調査の時間短縮、費用節減に加え、発生土の判定を迅速に行うことができる。
(不動産事業等)
・LEDを使用した完全人工光型植物栽培システム「LED農園®」
当社と玉川大学は産学連携事業により、LEDを使用した日産600株規模の完全人工光型植物栽培システム「LED農園®」を搭載した玉川大学サイテックファームを設置し、植物栽培技術の開発を推進している。約2年間にわたる野菜生産事業の実績を踏まえ、平成26年2月に相模原市に日産600株規模の廉価版植物工場を建設・運用を開始し、同年12月にも玉川大学サイテックファームの栽培システムを日産3,000株規模に拡張し稼動を開始した。また、多品種・多品目の野菜栽培や野菜の高機能化・高品質化について、研究・実証を進めている。