有価証券報告書-第94期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/27 14:15
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【項目】
164項目

研究開発活動

当グループは、二酸化炭素等の温室効果ガスの放出による地球環境問題や道路交通騒音・振動等の沿道環境問題への対応、道路インフラの効率的な保全等、社会及び国民の幅広いニーズに応えるべく、「人と環境に配慮した技術」、「維持修繕の効率化に貢献する技術」及び「生産性の向上に寄与する技術」を重点テーマにあげて研究開発に取り組んでいる。
当連結会計年度における研究開発費の総額は520百万円である。なお、当グループは建設事業及び製造・販売事業が一連のものであり、セグメントごとの明確な関連付けは困難である。
当連結会計年度における主な研究開発活動は次のとおりである。
(1) 「人と環境に配慮した技術」に関する研究開発
① 当社独自のフォームドアスファルト技術を用いたアスファルト混合物の製造出荷が可能な工場を全国25箇所に増加させた。フォームドアスファルト技術は、微細気泡(マイクロバブル)をアスファルト中に発生させる装置をプラントに設置することで、アスファルトの粘度を下げ、アスファルト混合物の製造温度を通常よりも30℃程度下げることができ、二酸化炭素排出量を削減することができる。従来の中温化技術に比べて製造が容易でコストアップも少なく、さらにアスファルト混合物の品質向上も期待できる。また、施工現場では作業員の体感温度が下がることにより、熱中症対策にも役立つ。一方、通常の製造温度で出荷する場合は、従来のアスファルト混合物と比べて温度低下による施工不良の発生を防ぐことができる。フォームドアスファルト技術を活用し、出荷量の70%以上を占める再生アスファルト混合物の高品質化や持続的再生利用に関する研究に取り組んでいる。
② 沿道住民の環境に対する意識の向上により、幹線道路などでは道路交通振動の低減が一層求められている。一般的な振動低減対策として路盤や路床を強化する方法などがあるが、コストが高い、施工期間が長いなどの問題があった。そこで、当社は低コストかつ短期間で施工可能な振動低減舗装「ロードサスペイブ」を開発し、営業展開を行っている。「ロードサスペイブ」は、独自の特殊改質アスファルトを用いた振動減衰性の高いアスファルト混合物を表層の下層に設置することで、官民境界部における振動を5dB以上低減することができる。また、表層にポーラスアスファルト混合物を用いることで、道路交通騒音と道路交通振動の両方を低減することができる。
(2) 「維持修繕の効率化に貢献する技術」に関する研究開発
① 増加する舗装ストックについて、限られた予算の中で効率的に維持修繕を行うため、低コストで舗装のリフレッシュ及び延命化を図っていくことが求められている。そこで、既設舗装上に当社独自の特殊改質アスファルト混合物を厚さ2cm程度で施工する薄層オーバーレイ工法を開発し、営業展開を行っている。特殊改質アスファルト混合物は、ひび割れが発生している既設舗装上に施工した場合でも、表面に発生するひび割れを抑制し、舗装の延命化に有効である。
また、特殊アスファルト乳剤からなる主剤と硬化剤を常温で混合することにより硬化するクラック注入剤「MDシール」を開発し、営業展開を行っている。MDシールは、微細なひび割れや深部まで容易に浸透し、既設舗装との接着性に優れることから、舗装の延命化に有効である。
② 空港滑走路・誘導路における灯器・埋設管の補修工事の効率化を図るため、従来の配管溝充填材である加熱式の流動性アスファルト混合物の代替材料として、常温施工可能な流動性アスファルト混合物「ライトガード」を開発し、施工実績を伸ばしている。また、「ライトガード」は、鋼床版上のグースアスファルト舗装の小規模補修用材料としての活用も期待される。
③ 舗装の長寿命化によるライフサイクルコスト低減を図るため、大規模物流ターミナルやバスターミナルなどの大型車両の駐車場などに適用し、従来の半たわみ性舗装と同等の耐久性と耐油性を有する高耐久アスファルト舗装を開発し、耐久性の検証を行っている。高耐久アスファルト舗装は、半たわみ性舗装と比べて、低コストであるとともに、施工日数を短縮することもできる。
(3) 「生産性の向上に寄与する技術」に関する研究開発
当グループでは、i-Constructionに代表されるような情報通信技術(ICT)などを活用した建設現場の生産性向上技術の開発に取り組んでいる。測量作業の効率化として、レーザスキャナやカメラ画像を用いた測量技術の確立や、社会資本のメンテナンス時代に向けて、ICTを活用した情報化施工を舗装修繕工事で積極的に活用することができる手法の確立を図っている。また、舗装工事における省人化は、生産性向上のみならず安全性向上にも寄与する重要課題と捉え、作業の機械化などによる省人化技術について検討を行っている。