有価証券報告書-第65期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

【提出】
2015/06/26 13:54
【資料】
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【項目】
141項目

研究開発活動

当連結会計年度は、技術基盤の強化を技術開発方針として、ブランド技術の開発や技術提案力の向上に資する技術開発を推進した。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、1,633百万円であった。
また、当連結会計年度における主要な研究開発内容および成果は次の通りである。
(国内土木事業、国内建築事業及び海外建設事業)
1.土木分野
(1)新しい固化処理土圧送工法の開発
大量に発生する浚渫土砂、また建設発生土等の土砂を処分するのでなく、良質化して有効利用することは、重要な技術的課題である。細粒分の少ない砂質土を母材として用いる場合、従来技術では、施工時における流動性や、材料の均一混合性を確保するため、ベントナイトを加えていた。ただし、添加剤としてベントナイトを用いる場合、施工に係るコストや、製造した固化処理土の品質のバラツキの面で課題があった。
そこで新たな添加材を開発するとともに配合を最適化し、砂質土を有効利用して水中に圧送施工可能な、材料分離防止性能と流動性を合わせ持つ固化処理土の製造・施工技術「FL-SAND工法」を開発した。この工法は現在、福島第一原子力発電所前面の海底の底質を封じ込める目的の覆土工事に採用されており、施工を進めているところである。
(2)覆工コンクリート天端部のハイブリッド打ち込み方法の開発
トンネルの覆工コンクリート天端部は、セントル(型枠)に取り付けた吹上げ口からコンクリートを流動させながら打ち込む。天端部は狭隘な密閉空間であり、特に多重鉄筋や断面変化部などがある場合はコンクリートの流動が阻害され、空隙が残る可能性が高まる。
そこで、吹上げ口からの打ち込みと、配管ホースを移動させながらの打ち込みを併用する「覆工コンクリート天端部のハイブリッド打ち込み方法」を開発した。天端部に充填検知センサーを設置して充填状況を確認した上で、配管ホースの筒先を適切な打設位置に移動させることを繰り返すことで、密実にコンクリートを打ち込むことができる。
本工法は千葉県発注の既設トンネルの補強工事に適用し、巻厚内に鋼製支保工が存置された非常に狭い状況で効果を確認した。今後は、同様の厳しい施工条件下でのコンクリートの打ち込みに対応するため、設備と材料(コンクリート)の両面から工法の強化を図る予定である。
(3)コンクリート表層品質判定システムの開発
コンクリートの品質向上として、表面の見映え、すなわち表層品質の向上が求められている。従来の表層品質の判定は、主に技術者の目視調査により行われているため、判定に時間を要する、判定者の経験や熟練度により結果にばらつきが生じる、不具合範囲や個数の定量的な評価に限界があるといった課題がある。
これらを背景として、コンクリート表層の品質を判定するシステムを開発した。本システムは、撮影したコンクリート表面のデジタル画像をカラーでパソコンに取込み、表面気泡、ひび割れ、砂すじ、表面剥離等の有無と程度を判定及び処理するものである。
当連結会計年度は表面気泡のシステム自動評価の構築を完了したので、今後、現場での実証確認を継続しながら、ひび割れ、砂すじ、表面剥離等の判定ツールを追加することでシステムの充実を図り、トンネル覆工コンクリートや一般コンクリート構造物の施工中の表層品質判定に採用することで、コンクリートの品質向上に取り組んでいく予定である。
(4)底質表層の汚染除去技術の開発
有害化学物質や放射性物質による底質汚染は、汚染された細粒土砂が水底表層に薄く堆積する傾向がある。これらの除去では、除去中の濁りの発生防止・余剰水の取り込み削減・大水深への適応・水底の異物への対応等が求められる。
そこで、従来のグラブ式薄層浚渫工法(END工法)に浚渫土の吸引回収機構を加えた、表層汚染の除去に特化した環境浚渫工法を開発した。
本工法では、浚渫した汚染土を密閉されたグラブバケット内で流動化し、管路を通じて水上に移送して回収する。グラブ式のため異物に強く、深い場所でも施工できる。また、浚渫・土砂回収・移動の繰り返しにおいて、バケットは水底に留まったままであり、高精度で浚渫できるとともに浚渫場所をかく乱しない。実証実験により、全水深で汚濁が発生しない一連の工程、密閉バケットによる余水の削減、異物に対するトラブルフリーを確認した。今後は現地試験を通じ、様々な底質汚染への適用性を確認する予定である。
(5)遠隔操作無人探査機を利用した大水深水中調査ロボットの開発
高度経済成長期を中心に整備された社会インフラは、老朽化が進行しており、効率的・効果的な維持管理を行う必要が生じている。構造物の維持管理を行う上で点検・調査が基本となるが、水深40m以上の大水深となるダム堤体や海洋・港湾構造物の点検・調査では、安全面と効率面から潜水士による目視調査が難しいという課題がある。このような背景を踏まえ、遠隔操作無人探査機(Remotely operated vehicle:ROV)を利用した大水深域に適用できる水中調査ロボットを開発した。
国土交通省が公募した「次世代社会インフラ用ロボット技術・ロボットシステム 水中維持管理技術」の実証試験に参加し、事業化については可能なレベルであり、現場適応性および経済性については現行より優れる技術であると評価を受けた。
今後は、ROVに登載する検査装置の高度化や自律航行技術の開発などを進め、様々な大水深域の構造物へ適用できるように、本技術の汎用性の向上に取り組んでいく予定である。
(6)自航式ポンプ浚渫船「CASSIOPEIA Ⅴ」
「CASSIOPEIA Ⅴ」は、当社が36年ぶりに建造した大型ポンプ浚渫船である。自航式でありアンカーブームを装備しているため、アンカー打替作業に揚錨船を必要とせず、機動性に優れたポンプ浚渫船である。全浚渫ポンプ出力は10,800kWを誇り、大容量、長距離の土砂排送が可能である。また、大型サクションラダーと高性能カッター駆動装置の搭載によって岩盤浚渫にも対応し、スパッド起伏装置、スパッドキャリッジ装置、自動浚渫装置等も有した最新鋭のポンプ浚渫船である。
航行区域は遠洋区域であり、国際航海に必要な構造・設備・配乗基準に準拠しており、全世界での稼働が可能である。
なお、船級協会は浚渫船で多くの実績があるB.V.(Bureau Veritas)を取得している。
本船は、約3年をかけてシンガポールの造船所で建造され、現在は同国の浚渫埋立工事に従事している。
2.建築分野
(1) RC構造物の合理化
躯体コストの相当分を占める型枠大工の省人化のためには、型枠量の多いRC造建物の梁部材の合理化工法が必要である。当社では、プレキャスト床版を製作する要領で梁の側版部分と底版部分(せん断補強筋内蔵)を作製し、これらを組み合わせて梁部材の外殻部分(プレキャスト部分)を形成する工法を開発中である。本工法は、床版製造を主とするプレキャスト工場においても製造可能であるため、価格競争力向上によるコスト低減が期待できる。当連結会計年度は、開発対象断面の構成を検討し、構造性能を確認する構造実験のための試験体を作製した。翌連結会計年度早々に構造実験を実施し、在来工法による梁部材と構造性能が遜色ないことを検証する。
(2)柱RC梁S構法の実用化
柱梁接合部を鋼板で覆うふさぎ板タイプの柱RC梁S構法を開発し、日本建築総合試験所にて性能証明を取得した(平成26年3月)。柱と柱梁接合部のコンクリート強度の打ち分けが可能で、柱梁接合部には100N/mm2までの高強度コンクリートを使用できることが特徴である。当連結会計年度は、物流倉庫への適用拡大を目指して実大施工実験を行い、柱梁接合部鉄骨の加工性の確認と設置方法およびコンクリートの充填性の検証を行い、加工性、施工性共に良好であることを確認した。
(3)ZEB(Zero Energy Building)化実現へ向けた省エネ技術の整備
各種省エネ技術を盛り込んだ本社別館において、平成24年竣工当初から行っている省エネ効果検証を継続し、省エネ技術の省エネ寄与度を分析し、ZEB化実現に必要なデータ蓄積を図った。また、室内の快適性を考慮しつつ省エネ化を図る空調方式について、実大の模擬実験室による有効性検証を開始した。
(4)アースピット空調
土壌と熱交換を行うことにより、外気に比べて安定した温度の空気を得る空調技術であるアースピットについて、地下ピット空間における適用による省エネ効果を建物計画時に予測するツールを開発した。今後、適用拡大に向け本ツール活用を図るとともに、適用実績を重ね、ZEB化実現技術の一つとして確立していく。
(5)動的破砕による杭頭処理工法の実用化
騒音・振動が著しく、過重なはつり作業による従来の杭頭処理の合理化を目的とし、改良を図ってきた動的破砕による杭頭処理工法を仙台市内のマンション新築工事の杭頭(φ2,400mm)に適用した。当該工事において、装薬ホルダーの竪管はひし形断面とし、その底部に水平方向への破砕力を誘導する水平フィン付とする鉛直・水平同時破砕方式を採用した。また、杭頭部への装薬ホルダーの設置は、基本的には4箇所とし、遠隔操作にて有線破砕した。その結果、計画通りに26本の杭頭のすべてに鉛直・水平両方向の破断面が生成でき、採用した破砕方式の妥当性が確認できた。
3.環境・リサイクル分野
(1)サンゴ礁州島の維持・保全に貢献できる形成モデルの開発
サンゴ礁州島とは、サンゴ礁上にサンゴ礫などが打ち上げられて作られる地形で、インド洋や太平洋島嶼国に多く、我が国島嶼部にも見られる。サンゴ礁州島は台風などの暴風時に短時間(数時間~数ヶ月)で形成された事例もあり、その形状は波浪や流れの影響で大きく変化する。そのため、サンゴ礁州島の形成メカニズムを理解することは、我が国島嶼部のみならず、地球温暖化による海面上昇に伴って水没が危惧されている太平洋の島嶼国の国土保全にも役立つことが期待できる。
当社は、国立大学法人東京大学および公立大学法人高知工科大学とともに国土交通省建設技術研究開発助成制度による研究「サンゴ礁州島形成モデルの開発」を通して、サンゴ礁州島の形成メカニズムを解明した。
今後は、本モデルを活用することで、サンゴ礁州島形成を予測するとともに、維持・保全のための対策工立案を推進していく予定である。
(2)サンゴ礁環境保全技術の開発
亜熱帯地区や遠隔離島の沿岸開発にはサンゴ礁環境の保全が強く求められている。当社は平成16年度より沖縄や小笠原でサンゴ礁環境の調査研究を継続している。また環境変化がサンゴ礁生物に与える影響を港湾・海岸計画で実績のあるシミュレーション技術で評価したり、サンゴ礁生物に適切な生息基盤を提供するなど、サンゴ礁環境の保全と沿岸開発を両立するための技術開発を継続している。
(3)干潟浅場環境保全技術の開発
干潟浅場は、沿岸域の重要な環境の一つである。東京湾奥部に当社が施工した干潟浅場の経年的な変遷を把握するために、平成14年度から長期的に干潟浅場の生物、水質および底質の調査を継続している。調査で得られた豊富なデータを蓄積し、それらを活用することで、今後の干潟浅場造成の評価手法技術の確立を目指している。
4.技術評価証等の取得
・Color Gate System-動作管理システム-:NETIS登録(登録番号:HR-140017-A) 平成26年12月
・ひび割れ誘発目地付き耐力壁工法:(一財)日本建築総合試験所の建築技術性能証明書を取得 平成26年12月
・Fc130~Fc150N/mm2の高強度コンクリート:㈱都市居住評価センターにて建築技術性能評価書を取得 平成27年3月
なお、連結子会社においては、研究開発活動は特段行っていない。
(国内開発事業及びその他事業)
研究開発活動は特段行っていない。