有価証券報告書-第87期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/29 13:42
【資料】
PDFをみる
【項目】
109項目

研究開発活動

当連結会計年度における研究開発は、従来からの基本理念である「地球とひとに優しい環境の創造」をめざし、ビルや工場の空調をはじめとする省エネルギー関連技術、半導体・医薬品対応のクリーン関連技術、廃棄物削減などの資源の有効利用技術を中心に取り組んでまいりました。具体的な研究成果としては。以下のものがあります。
子会社においては、研究開発活動は行われておりません。なお、研究開発費は524百万円でありました。
(研究開発の内容)
(1)再生医療分野向け エアバリアブース
再生医療では、患者本人あるいは提供者由来の細胞を体外で調製・培養・加工した後、患者に移植します。再生医療に必要な細胞を作製するために、病院の内外に設けられたCPF(Cell Processing Facility:細胞加工施設)と呼ばれるクリーンルームで細胞の培養加工を行います。
当社は、CPF建設・運用費用のコストダウン、作業性向上・開放感、さらに細胞調製機器のフレキシブルな設置などのメリットがあり、かつ,細胞の感染リスクを低減できる「エアバリアブース」を開発しました。エアバリアブースは半開放型の局所クリーンブースで、ブース内を微陽圧に維持することで細胞調製機器周りの清浄度を向上させ、細胞の感染リスクを低減します。当社は、使用する細胞や細胞加工プロセスに応じてユーザーに最適なシステムを提案します。
(2)再生可能エネルギー利用技術
建物の省エネルギー性能を高め、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を目指すことが現在求められています。これまでは使うエネルギーを少なくする「省エネルギー」のための技術開発が中心でした。今後は、建物として化石燃料の消費を抑えるために、再生可能エネルギーの有効利用技術を開発し普及する必要があります。
当社は、太陽熱・地中熱・プラント排熱を無駄なく使うための技術「再生可能エネルギーループ」の検証を実際の建物を用いて行っています。敷地内にある複数の建物(プラント含む)を1本のループ状の配管でつなぎ、各所に分散する再生可能エネルギーや排熱を集約し、水熱源パッケージで建物内の空調を行う技術です。検証の結果、当社は年間のエネルギー消費量を1,000 MJ/m2未満に抑えることができました。
(3)設備機器(照明・空調・防災)一体型ユニット シーリングフリー
オフィスにおける照明・空調のエネルギー消費量はオフィス全体の約70%を占めます。このため、照明のLED化をはじめとした様々な省エネルギー化が進められていますが、当社は単に省エネルギーを進めるだけでなく、オフィスで働く人々の快適性にも着目した技術開発に取り組んでいます。
その一つとして、総合設備業としての強みを活かし、従来個別に設置されていた照明・空調・防災設備を集約・ユニット化した「シーリングフリー」を開発しました。主な特徴は次の通りです。
・照明形状を工夫し,明るさ感が向上します。
・気流が直接執務者に当たることを抑制し、快適なオフィス環境を実現します。
・空調は自然エネルギーを活用しやすい方式,照明はLED型のタスク&アンビエント照明に対応させること
で省エネルギー化を図ります。
・ユニットを建物躯体から吊り下げるだけで設置が完了し、また、設備を配置する上で必要だった天井ボ
ードの施工が不要になるなど、工期の短縮と作業効率の向上も実現します。
(4)イオンの力で花粉・PM2.5の持込みを抑制する イオン・ドロップ
建築設備の分野では、政府の推進する省エネルギー施策に対応するため、空調エネルギーの徹底的な削減に挑戦しています。空調には、室内温熱環境を維持することと併せて良好な空気質の維持も求められます。空気質は、一般的に外気導入による換気で維持されますが、大量の外気導入は空調負荷の増大につながります。必要最低限の外気導入により空気質を維持しながら、必要最低限の空調で温熱環境を維持する技術が求められています。
当社では、より少ない外気導入量で空気質を維持する試みとして、室内に持込まれる汚染源に着目し、イオンの力でPM2.5や花粉などの建物内持込みを抑制する除塵システム「ion-DROP(イオン・ドロップ)」を開発しました。PM2.5や花粉などの粉じんは、健康障害やアレルギーの原因物質となっていますが、衣服に付着したものは静電気を帯びているため簡単には払い落とすことができません。「ion-DROP」は、イオンの力によって静電気を中和して衣服に付着した粉じんの払い落しを容易にし、建物内への粉じん持込み量を大幅に減少させることで、室内環境の向上と省エネルギーの両立を実現します。
(5)水中残留塩素濃度とステンレス管の腐食に関する研究
塩素は、殺菌剤として水道水に浄水場で注入されており、配水される水の塩素濃度を残留塩素濃度と呼びます。一方ステンレス配管は、その優れた耐食性を理由に、建物設備の配管材料として広く使用されています。
しかし近年、建物の給水および給湯用設備として使用されているステンレス配管の腐食事例が報告されるようになっています。その事例の多くで、使用水中の残留塩素濃度が高い傾向にあるという特徴がみられます。
当社では、ステンレス配管の長寿命化を目的とし、残留塩素濃度とステンレス配管の腐食との関係について研究を行っております。この成果により、ステンレス配管の残留塩素による腐食トラブルの抑制を図り、安全な設備を提供します。