有価証券報告書-第94期(平成29年1月1日-平成29年12月31日)

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2018/03/28 11:28
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62項目

業績等の概要

(1) 業績
当期における世界経済は、米国や欧州において、雇用者数の増加や個人消費の拡大など景気が堅調に推移したことや、中国を始めとしたアジア諸国の景気に持ち直しの動きがみられたことなどにより、全体としては緩やかな回復が続きました。日本経済におきましては、企業収益の改善に加え、雇用・所得環境の改善を背景にした個人消費の持ち直しなどにより、緩やかな回復基調が続きました。
こうした状況のなかアサヒグループは、2016年に策定した「中期経営方針」のもとで、「『稼ぐ力』の強化」、「資産・資本効率の向上」、「ESGへの取組み強化」の3つを重点課題として、これまで推進してきた「企業価値向上経営」の更なる深化に取り組みました。
特に「『稼ぐ力』の強化」においては、国内では、高付加価値化、差別化を基軸とした収益基盤の盤石化を図るとともに、海外では、欧州事業を中心として、有力なプレミアムブランドや広範な販売網を生かしたシナジーの創出などに取り組みました。
その結果、アサヒグループの当期の売上収益は2兆848億7千7百万円(前期比22.1%増)となりました。また、利益につきましては、事業利益は1,963億6千8百万円(前期比32.2%増)、営業利益は1,831億9千2百万円(前期比33.8%増)となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は1,410億3百万円(前期比58.0%増)となりました。
※ 事業利益とは、売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した、恒常的な事業の業績を測る 当社独自の利益指標です。
アサヒグループの実績 (単位:百万円)
実績前期比
売 上 収 益2,084,87722.1%
事 業 利 益196,36832.2%
営 業 利 益183,19233.8%
親会社の所有者に
帰属する当期利益
141,00358.0%

セグメントの業績は次の通りです。各セグメントの売上収益はセグメント間の内部売上収益を含んでおります。
事業セグメント別の実績 (単位:百万円)
売上収益前期比事業利益前期比売上収益事業利益率営業利益前期比
酒類968,858△0.8%121,5160.6%12.5%113,5602.1%
飲料374,5172.9%38,32118.5%10.2%44,40735.5%
食品113,7852.7%11,62613.4%10.2%10,893△4.3%
国際621,112148.1%65,938434.0%10.6%34,837-
その他106,1413.8%1,992△0.4%1.9%1,979△0.2%
調整額計△99,537-△23,828--△22,484-
無形資産償却費--△19,198----
合計2,084,87722.1%196,36832.2%9.4%183,19233.8%

※営業利益における無形資産償却費は各事業に配賦しています。
[酒類事業]
酒類事業につきましては、「No.1ブランドの育成と構造改革を通じて“国内酒類のリーディングカンパニー”を目指す!」をスローガンに、イノベーションによる新価値・新需要の創造とコスト競争力の向上に取り組みました。
ビール類については、『アサヒスーパードライ』において、発売30周年を記念した特別限定醸造商品『アサヒスーパードライ エクストラハード』や『アサヒスーパードライ 瞬冷辛口』の発売などにより、ブランド価値の向上を図りました。新ジャンル『クリアアサヒ』においては、糖質ゼロ※1でありながら麦由来の味わいを高めた『クリアアサヒ 贅沢ゼロ』の発売や季節に合わせた期間限定商品の展開など、市場における地位の更なる向上に取り組みました。
ビール類以外の酒類については、RTD※2において、『アサヒもぎたて』の商品ラインアップの拡充や、『ウィルキンソン・ハード』シリーズの展開など、ブランド力の育成に取り組みました。また、洋酒においては、『ブラックニッカ』ブランドの積極的な販売促進活動を行うことなどにより、主力ブランドの強化に努めました。
アルコールテイスト清涼飲料については、ビールテイスト清涼飲料『アサヒドライゼロ』において、「より食事に合うすっきりとした後味」へのリニューアルの実施や消費者キャンペーンの展開などにより、ブランド力の強化を図りました。
以上の結果、酒類事業の売上収益は、ビール類以外の酒類やアルコールテイスト清涼飲料の売上がそれぞれ前年実績を上回りましたが、夏場の天候不順の影響などによるビール類の販売数量の減少により、前期比0.8%減の9,688億5千8百万円となりました。
事業利益については、売上収益の減少はありましたが、広告販促費の効率化や原材料を中心としたコストダウンなどの取組みにより、前期比0.6%増の1,215億1千6百万円となりました(営業利益は前期比2.1%増の1,135億6千万円)。
※1 栄養表示基準に基づき、100ml当たり糖質0.5g未満を「糖質ゼロ」と表示しております。
※2 RTD:Ready To Drinkの略。購入後、そのまま飲用可能な缶チューハイなどを指します。
[飲料事業]
飲料事業につきましては、重点ブランドへの経営資源の集中や健康を軸とした商品力強化による成長に加えて、生産効率の最大化と操業度の向上などにより、強靭な収益基盤の構築に取り組みました。
主力ブランドにおいては、『三ツ矢』ブランドで透明果汁※1を使用した『三ツ矢 新搾り』を発売し、『十六茶』ブランドでは、全国7地域※2のご当地素材をブレンドした『アサヒ 十六茶 ご当地素材ブレンド』を展開したほか、発売20周年を迎えた『ワンダ』ブランドで老舗珈琲店監修の『ワンダ 極』の商品ラインアップを拡充するなど、ブランド価値の向上を図りました。また、『おいしい水』ブランドでは、天然水仕立てのスパークリングウォーターに『カルピス』の乳酸菌を加えた『アサヒ おいしい水「カルピス」の乳酸菌スパークリング』を発売するなど、ブランド資産を活用し、新たな商品価値を提案しました。
健康機能領域においては、『守る働く乳酸菌』や『届く強さの乳酸菌』をリニューアルしたほか、独自の乳酸菌を配合した機能性表示食品『カラダカルピス』を発売するなど、市場における存在感の向上に努めました。
以上の結果、飲料事業の売上収益は、炭酸飲料や乳性飲料などの販売数量が前年実績を上回ったことにより、前期比2.9%増の3,745億1千7百万円となりました。
事業利益については、増収効果のほか、品種・容器構成比の改善や最適生産体制の推進による操業度向上などの製造原価低減の取組みにより、前期比18.5%増の383億2千1百万円となりました(営業利益は前期比35.5%増の444億7百万円)。
※1 透明果汁とは、固形分が残って濁った状態の搾汁後の果汁(混濁果汁)から、液中の固形分を分解しさら
にろ過した、固形分がない果汁のことです。
※2 北海道、東北、関東・甲信越、中部・北陸、関西、中国・四国及び九州・沖縄の7地域です。
[食品事業]
食品事業につきましては、「強みへの集中」の推進と事業統合によるシナジーの創出に加えて、お客様視点でのブランド力の強化・育成などにより、持続的成長に向けた事業基盤の構築に取り組みました。
タブレット菓子『ミンティア』においては、大粒タイプの『ミンティアブリーズ』をリニューアルしたほか、のどに広がる清涼感・潤い感を付加した新価値提案商品として『ミンティアエクスケア』を発売するなど、ブランド力の強化を図りました。
サプリメントについては、『ディアナチュラ』において手軽に選べるパウチタイプ『ディアナチュラスタイル』や機能性表示食品『ディアナチュラゴールド』の商品ラインアップを拡充するなど、ブランド価値の向上に努めました。
ベビーフードについては、『グーグーキッチン』や『栄養マルシェ』において販売促進活動を強化するなど、ブランド力の強化を図りました。また、シニア向け商品については、『バランス献立』を新たに発売し、介護食市場における存在感の向上に取り組みました。
フリーズドライ食品については、主力の『いつものおみそ汁』の営業活動を強化するとともに、スープの新ブランド『Theうまみ』や『きょうのスープ』を発売し、売上の拡大に努めました。
以上の結果、食品事業の売上収益は、主力ブランドを中心に好調に推移し、前期比2.7%増の1,137億8千5百万円となりました。
事業利益については、増収効果に加えて、広告販促費の効率化や製造原価の低減などの取組みにより、前期比13.4%増の116億2千6百万円となりました(営業利益は前期比4.3%減の108億9千3百万円)。
[国際事業]
国際事業につきましては、主力ブランドの強化やシナジー創出による既存事業の収益性向上に加えて、プレミアム市場での成長を軸とするグローバルプレイヤーを目指し、欧州事業との統合をはじめとした事業基盤の構築に取り組みました。
欧州事業については、西欧において『Peroni』ブランドの情報発信強化など、主力ブランドの価値向上に重点を置いたマーケティング活動を強化したほか、『アサヒスーパードライ』の欧州における自社工場・販売網による製造・販売体制の構築など、シナジー創出に向けた取組みを推進しました。また、3月に取得した中東欧においては、チェコにおいて主力ブランドの『Pilsner Urquell』、『Kozel』の販売促進活動を積極的に展開したほか、新商品を発売するなど、各国において持続的な成長基盤の構築に取り組みました。
オセアニア事業については、飲料において、炭酸飲料『Schweppes』の新容器を使用した商品の展開や、市場が拡大する水カテゴリーにおける市場でのシェア拡大に向けた取組みなど、市場における存在感の更なる向上に努めました。酒類においては、低アルコール飲料の主力ブランドに集中したマーケティング活動のほか、『アサヒスーパードライ』のブランド力の更なる強化や『Peroni』ブランドの商品の販売開始など、グループのブランドを活用したシナジー創出に取り組みました。
東南アジア事業については、マレーシアにおける『ワンダ』や『カルピス』の商品ラインアップの拡充や販売促進活動の強化のほか、ミャンマーの『Honey Gold』のブランド力強化など、自社ブランド商品の拡充を軸に各市場における存在感の向上に努めました。
中国事業については、飲食店における樽生ビール取扱店の新規開拓や、コンビニエンスストアやインターネット通信販売業態での営業活動の強化などにより、『アサヒスーパードライ』の販売数量の拡大を図りました。
以上の結果、国際事業の売上収益は、オセアニア事業が好調に推移したほか、新たに取得した欧州事業の業績の上乗せもあり、前期比148.1%増の6,211億1千2百万円となりました。
事業利益については、中東欧ビール事業の買収に伴う取得関連費用などが発生しましたが、欧州事業の業績の上乗せにより、前期比434.0%増の659億3千8百万円となりました(営業利益は、348億4千5百万円増加の348億3千7百万円)。
[その他の事業]
その他の事業につきましては、売上収益は、貨物運送業務の受託の拡大や健康食品の売上の増加などにより、前期比3.8%増の1,061億4千1百万円となりました。
事業利益については、健康食品に関する販売促進費の増加などにより、前期比0.4%減の19億9千2百万円となりました(営業利益は前期比0.2%減の19億7千9百万円)。
(2) キャッシュ・フローの状況
当年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益が1,969億8千4百万円となりましたが、売上債権等の運転資金増減による減少や法人所得税等の支払いによる減少があった一方で、減価償却費及び償却費や減損損失等の非キャッシュ項目による増加があり、2,317億1千2百万円(前期比:772億6千万円の収入増)の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、中東欧における子会社株式の取得などにより、8,858億2千3百万円(前期比:6,173億1千5百万円の支出増)の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に社債の発行及び長期借入金の借入による金融債務の増加があり、6,618億8千2百万円(前期比:5,423億2千8百万円の収入増)の収入となりました。
以上の結果、当年度末では、前年度末と比較して現金及び現金同等物の残高は95億9千5百万円増加し、580億5千4百万円となりました。
(3) IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項
前年度
(自 2016年1月1日
至 2016年12月31日)
当年度
(自 2017年1月1日
至 2017年12月31日)
1 連結貸借対照表関係
日本基準では退職給付に係る負債(資産)の純額(数理計算上の差異)の増減による資本の増減影響は、「その他の包括利益」に表示しておりますが、IFRSでは、「その他の資本の構成要素」に認識した上で「利益剰余金」に振り替えております。この影響により、当年度末におけるIFRSの「その他の資本の構成要素」及び「利益剰余金」は、日本基準の「その他の包括利益累計額」及び「利益剰余金」に比べてそれぞれ10,706百万円増加し、減少しております。
2 連結損益計算書関係
日本基準では、のれんは、その効果が発現すると見積もられる期間で償却することとしておりました。IFRSでは、IFRS移行日以降、のれんの償却は行っておりません。この影響によりIFRSでは日本基準に比べて、販売費及び一般管理費は10,814百万円減少しております。
1 連結貸借対照表関係
日本基準では退職給付に係る負債(資産)の純額の増減による資本の増減影響は、「その他の包括利益累計額」に表示しておりますが、IFRSでは、「その他の資本の構成要素」に認識した上で「利益剰余金」に振り替えております。この影響により、当年度末におけるIFRSの「その他の資本の構成要素」及び「利益剰余金」は、日本基準の「その他の包括利益累計額」及び「利益剰余金」に比べてそれぞれ314百万円増加し、減少しております。
2 連結損益計算書関係
日本基準では、のれんは、その効果が発現すると見積もられる期間で償却することとしておりました。IFRSでは、IFRS移行日以降、のれんの償却は行っておりません。この影響によりIFRSでは日本基準に比べて、販売費及び一般管理費は16,736百万円減少しております。