有価証券報告書-第54期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2014/06/24 11:35
【資料】
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【項目】
104項目

研究開発活動

「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録され、日本食が世界的に注目されています。しかし、現在の日本では、ライフスタイルの多様化やライフステージの違いによって、特定の栄養素の過剰摂取が問題であると同時に不足の問題も混在するなど、人の食と健康にかかわる課題は複雑化しています。当社では、これまで日本の伝統食の健康効果について科学的な検討を行い、その長所を生かし、短所を補うことによってお客様の健康をサポートする「新・日本型食生活」を提案してきました。今後、さらに激変する日本人の食生活に対して、「栄養バランス」の視点に立った取り組みを行い、現代人の食生活の改善に貢献できる研究開発活動を行っています。
(1)「カスピ海ヨーグルト」の機能性研究
「カスピ海ヨーグルト」の最大の特徴は強い粘りで、この粘りは乳酸菌クレモリス菌FC株が産生する菌体外多糖(EPS:Exopolysaccharide)によるものです。これまでにEPSのアトピー性皮膚炎モデルに対する抗炎症作用について報告しましたが、今回、大阪府立大学との共同研究で作用メカニズムの一部を明らかにしました。また、EPSは同時に、生体防御に必要な免疫反応を活性化させることを確認しました。
「カスピ海ヨーグルト」の由来地であるグルジアの長寿学者ダラキシビリ博士の協力を得てグルジア高齢者の健康調査を実施しました。グルジアでは一人当たり日本の約10倍の発酵乳が食べられており、健康状態の良い高齢者が多いことが分かりました。また、現地の自家製発酵乳の多くから「カスピ海ヨーグルト」に含まれる乳酸菌と同じクレモリス亜種が検出されました。
今後も、当社では「カスピ海ヨーグルト」と長寿の関係について、動物および人による検証を進めていきます。
(2)大豆の機能性研究
黒大豆の種皮に含まれるポリフェノールの生体内抗酸化性、体内動態に関する研究を神戸大学と共同で実施しています。さらに、黒大豆ポリフェノールの冷え・むくみに対する効果など新たな作用に関する研究に取り組んでいます。大豆イソフラボンでは、大阪市立大学と変形性関節症に関する共同研究を開始しました。
神戸大学を中心とするバイオプロダクション次世代農工連携拠点・先端融合領域イノベーション創出拠点形成プログラムに引き続き参画し、大豆に含まれる有用イノシトール類の研究開発を行っています。イノシトール類は、糖尿病などの代謝疾患、アルツハイマー病などの脳神経疾患に対する予防・改善効果が期待されている成分です。
(3)高齢者食に関する研究
高齢者対応食の開発は、今後、ますます重要な課題であると考えられます。当社では、高齢者、咀嚼困難者用食品としてやわらかタイプの惣菜の開発、ならびに栄養補助・調整食品などの研究開発を行っています。食欲に影響する見栄えを重視し、食材の形を残した食品は、通常の機器による物性測定は困難です。そこで、農研機構食品総合研究所との共同研究で、人の実際の咀嚼・嚥下活動をモニタリングする方法として筋電位測定による「ソフトデリ」の漬物、煮豆、佃煮の評価を行い、研究成果を学会において発表しました。
なお、当連結会計年度中に支出した研究開発費の総額は4億71百万円であります。