有価証券報告書-第163期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/27 11:02
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【項目】
111項目

業績等の概要

(1) 業績
当連結会計年度の日本経済は、中国をはじめとする新興国経済の減速や国内消費の停滞などで、国内景気は低迷した。消費者の新聞離れや企業の広告出稿の減少などで、販売部数や広告収入の減少が続いている。
また、若年層を中心とした無読層の拡大は続いており、メディア構造の変化の進行、購読層の高齢化など、新聞を取り巻く環境は依然として厳しい。
このような状況にあって、当社グループの当連結会計年度の業績は、売上高が420,069百万円で、前年同期比16,067百万円(△3.7%)の減収となった。利益については、営業利益は12,088百万円で、前年同期比4,515百万円(59.6%)の増益、経常利益が18,805百万円で前年同期比5,646百万円(42.9%)の増益となった。特別損益や法人税等を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は3,945百万円で前年同期比1,507百万円(△27.6%)の減益となった。
セグメントの業績は次の通りである。
① 新聞出版の事業
当連結会計年度の「新聞出版の事業」に係る売上高は385,335百万円と前年同期と比べ17,990百万円(△4.5%)の減収、セグメント利益は6,918百万円と前年同期と比べ3,935百万円(131.9%)の増益となった。
[新聞・出版]
当社は、読者の信頼を回復するため、これまで以上に読者視点を意識した紙面づくりに取り組んだ。2015年4月に、紙面に社外の声を反映させる仕組みとして、パブリックエディター(PE)制度を導入した。また、読者とつくるフォーラム面を軌道に乗せ、「Re:お答えします」で読者の疑問に答えるなど、読者とともにつくる姿勢を強化した。15年春からは、多様な意見を載せるフォーラム面や訂正記事を集めるコーナーを新設するなど、紙面での改革を進めた。再生の柱のひとつに掲げた調査報道の分野にも力を入れている。元兵庫県議の不適切な支出が明らかになったのをきっかけに、政務活動費問題について全国規模の調査を実施、使途の実態を明かし、制度の課題を浮き彫りにした。また、米軍施設の辺野古移転を環境面からチェックする研究者たちが移設工事受注企業などから寄付、報酬を受けていた事実を特報。寄付金のあり方について検討する動きにつながった。
デジタル分野では、電子新聞「朝日新聞デジタル」の有料会員数が16年3月末時点で27万5千人に達し、無料会員も含めた総会員数は249万人を超えた。15年4月に大学向けの「朝日新聞デジタルselect for アカデミー」を、6月に就職活動中の学生を対象とした「就活割」を開始。10月には、他社が提供するプレミアムコンテンツを利用できる「提携プレミアムサービス」を設けたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据えた障がい者スポーツアスリート企画「チャレンジド wonder athletes」の連載を開始した。また、日英二カ国語で展開した「築地 時代の台所」が、世界の優れたデジタル報道デザインを表彰するベスト・オブ・デジタル・デザインで、日本のメディアで唯一、15年の報道特集部門のシルバー・メダル(銀賞)に選ばれた。広告部門では、新聞広告市場の縮小傾向が続く中、前期に比べ減収となったが、クロスメディア営業、コンテンツ保有者との連携など、朝日新聞グループの総合的な媒体力を生かした営業活動を推進した。また、広告主や広告会社とともに様々な社会課題の解決につながる広告活動をめざし、環境、健康、教育、復興などをテーマにした企画・催事にも前期以上に取り組んだ。販売部門では、一連の問題から1年余りが経過し、新規購読契約数やウェブによる購読申込、試読申込が増加傾向に転じるなど、回復の兆しが見え始めた。教育事業部門は、就職情報会社・㈱学情との提携事業である就活情報サイト「あさがくナビ」などが好調で、売上増が続いている。全社部数は朝刊670万3千部、夕刊218万6千部(前期比で朝刊39万6千部減、夕刊19万2千部減)。
企画事業は「鳥獣戯画 京都高山寺の至宝展」、「大英博物館展―100のモノが語る世界の歴史」、「岸本斉史 NARTO―ナルト―展」などの展覧会が好調であった。出版は、朝日新書「下流老人」(藤田孝典著)、「京都ぎらい」(井上章一著)、「ぼくらの民主主義なんだぜ」(高橋源一郎著)などがベストセラーとなった。子ども向け科学まんが「サバイバルシリーズ」は好調を続け累計480万部を突破した。
[折込広告]
電通統計によれば、15年の折込広告は前年比95.3%で3年連続で減少した。新聞部数減と消費低迷で売上高は前期を下回ったが、配送人件費の削減など合理化を進め、増益を確保した。
[新聞販売サービス]
販売店向けの物品販売の減少により減収となった。
② 賃貸事業
当連結会計年度の「賃貸事業」に係る売上高は17,091百万円と前年同期と比べ3百万円(0.0%)の増収、セグメント利益は4,155百万円と前年同期と比べ410百万円(11.0%)の増益となった。
賃貸事業は、オフィスビルや商業施設等の賃貸を行っている。中之島フェスティバルタワーは開業4年目を迎え、引き続き安定稼働している。14年6月、中之島フェスティバルタワー・ウエストの建設に着工し、16年3月に上棟式を行った。最上層部にはラグジュアリーホテル「コンラッド大阪」が入る計画で、17年春に竣工予定。建て替えを進めている東京銀座朝日ビルディングは、16年2月に起工した。17年秋に竣工予定で、3階以上には日本初進出となる高級ホテルブランド「ハイアット・セントリック」が入る。
③ その他の事業
その他の事業は、文化事業・電波事業・その他事業の3事業がある。
当連結会計年度の「その他の事業」に係る売上高は17,642百万円と前年同期と比べ1,919百万円(12.2%)の増収、セグメント利益は983百万円と前年同期と比べ169百万円(20.7%)の増益となった。
[文化事業]
顧客の高齢化等による受講料収入の低落傾向と事業収入の伸び悩みにより減収となった。
[その他事業]
関西空港事業の訪日外国人旅客が前年同様に増加したことなどにより、増収増益となった。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、67,868百万円と前年同期に比べ4,512百万円(△6.2%)の減少となった。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は15,046百万円で、増加幅は前年同期より3,435百万円(△18.6%)の減となった。これは、税金等調整前当期純利益が減少したことなどの要因による。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は18,058百万円で、減少幅は前年同期より14,855百万円(463.8%)の増となった。これは有形固定資産の取得による支出が増加したことなどによる。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は1,500百万円で、減少幅は前年同期比9百万円(△0.7%)の減となった。これはファイナンス・リース債務の返済による支出が減少したことなどの要因による。