有価証券報告書-第105期(平成25年1月1日-平成25年12月31日)

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2014/03/27 13:43
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研究開発活動

当社グループは、連結中期経営計画「PEGASUS(ペガサス)」に基づき、エネルギー・環境と情報・電子の2つの事業ドメインに研究開発資源を重点的に投入し、無機と有機の融合戦略とマーケティングを重視した研究開発を推進している。
特に、電池材料や高機能光学フィルム、SiC(炭化ケイ素)エピタキシャルウェハーなど当社の将来の成長を牽引する事業の早期の成果顕現に注力している。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は、204億35百万円である。
セグメントごとの研究開発活動は次のとおりである。
(石油化学)
石油化学分野では、コア技術である触媒開発、有機合成、高分子合成の技術を集積し、電子材料、自動車、印刷インク、塗料などの市場ニーズに応えるための研究開発を推進している。
まず、世界的な需要成長に対する増産余力の制約から将来的に需給のひっ迫が予想されるブタジエンに対し、当社固有の触媒技術・事業基盤を活用して、目的生産物としての製造プロセスの技術開発を精力的に進めており、今般、プロセス検証を目的とした中規模実験設備の設置を決定した。
また、アセチル及びアリルアルコール製品群では、競争力のある独自の製造プロセスをより強化するため、触媒の性能向上と新触媒の開発を進めた。酢酸エチルはインドネシアにおいて独自の新規触媒を用いたプロセスが稼働中であるが、更に大分においても平成26年中頃の稼働予定で同法によるプラントを新設し、競争力を強化する。
アリルアルコール製品群のうち、環境対応型溶剤である酢酸ノルマルプロピルは順調に販売量を増やしているが、更に新規用途の展開を積極的に進めている。また、メガネレンズ向け樹脂の技術をベースに開発した耐熱透明フィルム「ショウレイアル®」は、パイロット設備での開発が軌道に乗り、サンプル供給能力を背景として、モバイルディスプレイ材料などの分野に向けて精力的に市場開拓を進めており、ガラスに匹敵する光学特性と手触り感が評価され、商業販売を開始した。
更に、国家プロジェクトに参画して進めてきたグリーン・サステイナブルケミカルプロセス基盤技術においては、ガス分離・回収への新しい応用における初期的検討において一定の成果を上げ、化学品製造プロセスへの実用に向け、鋭意検討を進めている。
当連結会計年度における石油化学セグメントの研究開発費は、10億26百万円であった。
(化学品)
化学品分野では、広範多岐に亘る需要、個々のお客様の要望に迅速に応え、お客様の新製品開発の鍵となる材料をタイムリーに提案することを課題として、半導体プロセス材料、光機能材料、ソルダーレジスト、高機能ゲル、各種有機中間体、化粧品原料などの研究開発を推進している。
液晶ディスプレイの高機能化に貢献する光機能材料では、光重合開始剤や光硬化性樹脂添加剤としての多官能チオールの市場開拓に取り組んだ。多官能チオールは産業用樹脂組成物への添加剤として、継続して多用途への展開を進めている。
テレビなどの大型液晶ディスプレイに使用される各種レジスト製品は、市場で高い評価を受け、更に、構築したお客様との情報ネットワークを駆使して、お客様の要望に即した新規開発品を複数市場に投入している。
高速液体クロマトグラフィー用「ショウデックス®カラム」では、従来からの高度分析用のカラム開発と並行し、新興国の需要に合わせた新製品の開発と分析ノウハウ、技術サービスの一貫提供を進めている。高機能ゲルの開発においては、オーストリアの開発製造会社との連携により得られた技術シナジーを核に研究体制を強化し、近年急進するバイオ医薬品精製事業分野への販売活動を本格的に開始した。
有機中間体では、当社固有原料と精密有機合成技術の強みを活かした各種中間体の開発に注力し、化粧品原料では、高機能ビタミンC誘導体「アプレシエ®」に続き、メチルヘスペリジンなど、複数の化合物において市場投入準備が進展した。その他、リチウムイオン電池向けの部材開発では、負極材用水系バインダー樹脂の開発に成功し、「ポリゾール®LBシリーズ」の量産を開始した。当製品は、低抵抗性、優れた温度特性、負極集中板との高密着性などの特性を持ち、リチウムイオン電池の長寿命化、高容量化への寄与が期待される。
また、半導体製造プロセス材料として、各種エッチングガス、クリーニングガス、成膜材料及び洗浄剤、溶剤の開発を進め、温室効果が非常に小さいクリーニングガスである高純度フッ化カルボニルや太陽電池用成膜材料である高純度セレン化水素を市場投入した。今後も引き続き、低環境負荷、高性能化に寄与する研究開発を進める。
当連結会計年度における化学品セグメントの研究開発費は、22億76百万円であった。
(エレクトロニクス)
エレクトロニクス分野では、高性能化の市場要請に応えるべく、最先端技術の開発に邁進している。
記録材料については、ハードディスク外販のトップメーカーとして、市場をリードする新技術の開発を継続しており、世界に先駆けて実用化した垂直磁気記録方式での高性能化を進めると共に、次世代ハードディスクへの高密度記録となるシングルド記録(瓦書記録)、熱アシスト記録の開発により更なる高性能化と量産化に向けた取り組みを行っている。垂直磁気記録方式による記憶容量では、世界最大となる2.5インチで670ギガバイト/枚、3.5インチでは1テラバイト/枚のハードディスクの量産を実施している(平成25年12月現在)。
発光素子・材料では、高効率化、高出力化をターゲットとしたLED製品の開発に注力している。4元系赤色LEDでは、植物育成に最適な660ナノメートルの波長光の発光層を独自技術で開発し、植物工場及び様々な栽培モデル施設の光源として採用されている。更に赤外系LEDでは、MOCVD法による反射型及び点光源品の開発製品を上市した。
希土類磁石合金では、希少金属の1つであるジスプロシウム(Dy)を使用せずに従来品と同様の性能を持つFA(ファクトリーオートメーション、一般産業用)向けネオジム磁石用合金の開発に成功し、量産を開始した。本技術をベースに、よりジスプロシウムの添加量が多い電力パワーステアリング用や電気自動車のモーターについてもジスプロシウムフリーを達成すべく、更なる省ジスプロシウム化に取り組んでいる。
当連結会計年度におけるエレクトロニクスセグメントの研究開発費は、46億51百万円であった。
(無機)
無機分野では、素材の特性を活かした材料及びその用途の開発を進めている。
電子デバイス、パワーデバイス市場向けには、デバイスの高密度化、高性能化に対応した高い放熱性と電気絶縁性を併せ持つフィラー材料の開発を行っている。
当社が得意とするナノ粒子技術などを基盤として、室内での活性を高めた可視光型で抗菌・抗ウィルス性に優れた光触媒材料を開発し、最終製品への用途開発を進めている。
当連結会計年度における無機セグメントの研究開発費は、2億61百万円であった。
(アルミニウム)
アルミニウム分野では、市場から要望されている軽量、高強度、高機能の材料、部品及び製品の開発を進めると共に、これらの製造プロセスに係る基盤技術の研究にも注力している。
素形材関連では、当社が開発した気体加圧式ホットトップ連続鋳造法及び気体加圧式水平完全連続鋳造法を基軸とし、鍛造技術と合わせて、合金・製品の開発を進めている。今後、自動車市場のアジアでの需要増加が見込まれることにより、更に機能性を高めたアルミニウム鋳造棒及び鍛造品の開発を進めている。
材料評価で培った技術により離床センサーを開発し、フランスベッド㈱の病院施設向けセンサーシステム「見守りケアシステムM-1」に採用された。
基盤技術面では、押出、鍛造、引抜及びプレス加工用の金型技術並びに、精製、加工、接合の各プロセス技術、各種製品に適した合金の開発、構造材及び熱流体のシミュレーション技術を深化させている。
当連結会計年度におけるアルミニウムセグメントの研究開発費は、19億28百万円であった。
(その他)
先端電池材料については、各種電気自動車用に加えスマートフォン等の携帯用など多様なリチウムイオン電池に必要な、容量、出力、寿命、低抵抗性特性を満たす、黒鉛負極材「SCMG®」、高容量Si黒鉛複合負極材、カーボンナノチューブ「VGCF®」、カーボン下地アルミ箔「SDX®」などの素材・部材の開発・販売を引き続き進めている。
省エネルギー効果の高い次世代パワー半導体材料として注目されるSiCエピタキシャルウェハーについては、低欠陥化などの高品質化と共に、設備の増設と生産技術の向上による生産能力の拡大を継続している。本年度は更にSiCエピタキシャルウェハーとしては世界最大径である6インチ径製品の上市にも成功した。
当社独自技術である高輝度LED等の植物工場向け製品については、山口大学と共同で開発した高速栽培技術「Shigyo法」と併せて、市場開拓に取り組んでいる。本年度は福島県川内村「川内高原農産物栽培工場」の竣工に加え、複数の植物工場に採用された。
プリンテッドエレクトロニクスについては、大阪大学と共同で、印刷により自由にパターン形成が可能な銀ナノワイヤーインクの開発に成功し、透明導電膜などの用途を開発中である。
燃料電池触媒については、従来品と比較して低Pt量で高活性化を示す触媒の研究開発を進めている。
炭素素材分野では、フラーレンの事業化に向けた戦略的提携を三菱商事㈱と行い、フラーレン等のナノカーボン製品の製造及び販売会社であるフロンティアカーボン㈱の共同運営を開始した。フラーレンは、分子の大きさが直径1ナノメートルの微小な炭素素材で、有機薄膜太陽電池の負極材やその他エレクトロニクス分野における有望素材として期待されている。
研究開発体制を見直し、本年度より新たに特定分野の技術者を事業開発センターに集約して、既存事業の応用分野から次世代テーマまでを含め所管する研究所(応用化学品研究所、先端技術開発研究所)、共通支援センター(分析物性センター、安全性試験センター)、及び事業化プロジェクトを設置した。応用化学品研究所は、事業部や事業所と連携し、現在の事業や製品の付加価値を高める開発やその周辺の成長分野を開拓する開発、及び製品に関する高度な技術サポートによる事業強化を行う。先端技術開発研究所は、当社グループが保有する広範な材料、技術の中でも、将来に亘って強味を発揮できるコア材料/コア技術による次世代事業テーマの創出を主に行う。
当連結会計年度におけるその他セグメントの研究開発費は、全社共通を含め、102億93百万円であった。