有価証券報告書-第183期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)

【提出】
2021/03/24 13:04
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166項目

研究開発活動

当企業グループは、創業200周年を見据え、10年後のありたい姿を新たな長期構想として掲げ、持続的な成長を実現する企業活動のコンセプト「Scientific Innovation Chain 2027(SIC27)」を設定し、それに向けた中期経営計画「SIC-Ⅰ」を2018年度より展開しています。すべての生活者・生命・地球環境がいきいきと共生する世界に貢献する企業グループを目指し、研究開発においては、サイエンス領域を広げて新技術を獲得し、新たな価値を創造し、お客様とともに成長、発展すべく積極的に活動を進めております。
当企業グループの目指す事業ドメインは①サスティナブルサイエンスドメイン、②コミュニケーションサイエンスドメイン、③ライフサイエンスドメインであり、「SIC-Ⅰ」の最終年度となる2020年度は、それらのドメインを細分化した11の領域からパッケージ、メディカル、モビリティ、IoT、エネルギー、天然材料の6分野に注力し、それぞれの領域で戦略的に技術開発し、イノベーションの連鎖を起こすべく、日々取り組んでまいりました。
当企業グループにおける研究開発は、当社のグループテクノロジーセンター(イノベーションラボ、マテリアルサイエンスラボ、ポリマーデザインラボ、解析技術ラボ)、生産・物流センター(プロセスイノベーションラボ)及び国内外の各連結子会社の技術部門により、5G化による人々の豊かな暮らしを支える機能性製品開発や、新たな社会ニーズである抗菌・抗ウイルス性製品といったWithコロナを意識した新製品開発など、新たな価値の創造に向けた研究開発活動を推進しております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、8,112百万円であり、各セグメント別の研究目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は、次のとおりです。
(1) 色材・機能材関連事業
当事業では、コア技術である有機合成技術と精密分散技術を融合し、市場のニーズに合った独自の新素材、機能性分散体の製品開発を続けております。
顔料及び顔料分散体事業関連では、主にデジタル印刷市場への展開を進めるために、独自の顔料表面処理及び分散技術を活用した高鮮明で分散安定性に優れた新規の色材を開発し、その製造プロセスに対応した生産設備の導入も完了しました。また、難分散素材のカーボンナノチューブを高度に分散することで、これまでにない漆黒性の発現が可能となり、「ZENBLACK®」として市場へ提案し評価が進んでおります。
メディア事業関連では、顔料粒子制御と分散技術をベースにしたTV、モバイル用カラーフィルター材料が中国、台湾市場で伸長しました。さらに、独自開発した色材による拡販を目指しております。また、センサー用途においては、可視域から赤外域にかけて各種色材をラインナップし、画像センサーだけでなく、様々な用途への提案を始めております。
着色事業関連では、合成技術と分散技術を融合し光波長制御機能を持つ新素材を開発し、フィルム包装容器分野へ機能性製品の展開を進めております。また、近年、プラスチックによる海洋汚染問題が深刻化している中、様々な規制に対応するべく環境対応製品の開発に注力し環境負荷低減に積極的に取り組んでおります。
機能材料事業関連では、カーボンナノチューブを用いたリチウムイオン電池用の分散体製品を日本、中国、米国、欧州から供給できる体制の礎を整えました。また、電子材料向け金属分散体の開発にも成功するなど、これら特殊無機材料、金属材料の精密分散技術を応用した新たな製品を川下分野に展開し、成長市場での実績拡大を図っていきます。
当事業に係わる研究開発費は、2,912百万円です。
(2) ポリマー・塗加工関連事業
当事業では、重点市場を①包装・工業材市場、②エレクトロニクス市場、③メディカル・ヘルスケア市場と位置づけ、その事業の礎となるポリマー・サイエンス・テクノロジープラットフォームの拡充に取り組み、高付加価値製品や環境調和製品の開発を続けております。
包装・工業材市場向けについては、粘着剤では、環境調和型製品(ハイソリッド粘着剤、バイオマス粘着剤、生分解粘着剤)の開発が進み、一部外部発表を行い国内外のお客様から多くの引き合いを頂きました。ラミネート接着剤も同様に、環境調和型製品(無溶剤接着剤、バイオマス接着剤、生分解接着剤、包材のリサイクル対応接着剤)の開発・拡販が進みました。粘接着剤分野では、トーヨーケム株式会社と東洋アドレ株式会社の合併を機に、グループ内の接着剤関連の技術を融合させながら開発をさらに強化してまいります。缶用塗料(フィニッシェス)では、環境調和型製品として、ビスフェノールAを意図的に含まないBPA-NI塗料製品群の開発を推進し、「LIONOVATM」ブランドを立ち上げました。さらに、歴史ある金属密着高加工塗料の技術を用いてEV用材料への展開を進めております。樹脂分野では、プラスチック削減に寄与する食品に直接接触可能な紙コート剤「FILLHARMO®」の拡販が進み、また国内外の規制に対応した新製品の開発も進みました。
エレクトロニクス市場向けについては、スマートフォン・タブレット向けは、高速通信対応の電磁波シールドフィルムの拡販と、これにあわせて低誘電率ポリマーの開発がさらに進みました。ディスプレイ向けには次期光学用粘着剤の開発が進展し、中国での採用が本格化しました。センサー関連では、介護関連で採用されたセンサーシート「Fichvita®」が順調に出荷されております。また、自動運転・無人店舗等のトライアルで蓄積された人の行動データをリアルタイムで確認するシステムを構築しており、今後のIoT社会で応用できるセンサーシステムとして開発してまいります。
メディカル・ヘルスケア市場向けについては、貼付型医薬品、検査薬用のシート製品、ヘルスケア用の粘着剤の開発を進めております。
当事業に係わる研究開発費は、2,308百万円です。
(3) パッケージ関連事業
当事業では、軟包装用のグラビア、フレキソインキを始め、建装材用グラビアインキ、機能性インキの開発とサービスの提供をグローバルに展開しております。また、マテリアルリサイクルの仕組みの構築に向けた開発にも力を入れています。
再生可能な植物由来原料を活用したバイオマスインキでは、ラミネート用、表刷り用及び紙用のグラビアインキだけでなく、処理ポリエチレン(PE)用、紙器用やシート段ボール用のフレキソインキなど製品ラインナップを拡大しております。特にフィルムラミネート用グラビアインキは大きく伸長し、二酸化炭素排出削減に貢献しております。
また、揮発性有機化合物排出削減や作業環境改善のソリューションとして、既存の印刷機でも水性化が可能なラミネート用のハイソリッド水性グラビアインキや水性フレキソインキを開発し、その実績化も国内外で進んでおります。
さらに、海洋プラスチックごみ問題の解決に向けて、伊藤忠商事株式会社とも協業して2022年までに世界初となる複層フィルム包材のマテリアルリサイクル実用化を目指してまいります。また、機能性インキ分野では、高耐久性建材用トップコート剤を開発し、高い評価を頂いております。
今後も、リサイクル技術、バイオマス製品を始め、各種の環境対応型製品の開発を通じて、お客様とともに持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献する製品とサービスを提供し、社会に貢献してまいります。
当事業に係わる研究開発費は、1,310百万円です。
(4) 印刷・情報関連事業
当事業では、枯渇性資源に依存しない持続可能な社会の実現に向けて、持続可能な開発目標(SDGs)に連動した製品群の開発・販売を積極的に行っております。
油性インキでは、再生植物油などリサイクル原料や米ぬか油などの植物由来の有機資源を独自の材料変性技術と組み合わせ、バイオマス度をさらに高めた製品群を拡充し、持続可能な社会に貢献するとともに、お客様の安心・安全、生産性向上、コスト削減に貢献する製品開発を継続して進めております。
UVインキにおいても、単に植物由来原料を使用するだけではなく、非可食原料やリサイクル原料を積極的に活用したシール・ラベル用途やカップ用途のバイオマス製品のラインナップを拡充させるとともに、更なる環境調和型インキの開発に注力しております。また、昨今の安心・安全・衛生に関する意識の高まりを背景に、印刷物へ衛生性を付与するUV硬化型抗菌ニスの開発・拡充も行っており、幅広い分野で高い評価を得ております。
インクジェットインキでは、食品包装用水性インキの実用化に加えて熱水耐性を付与した材料開発やパッケージ印刷に適した広演色インキの開発を進めております。また、UVインキでは飲料缶や鋼板など産業印刷分野への用途拡大を行っております。
当事業に係わる研究開発費は、1,572百万円です。
なお、上記の4つの事業に含まれない研究開発費は、8百万円であります。