有価証券報告書-第149期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/28 10:04
【資料】
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【項目】
149項目

研究開発活動

当社グループは、「配合設計技術」、「プロセス制御技術(混合・溶解・分散)」、「成形加工技術」を基盤技術とし、これまで長年に渡り印刷インキおよびプラスチック用着色剤とその関連製品の生産に携わってまいりました。
これらの基盤技術に新規技術の調査・探求、研究成果を融合させて改良を加え、暮らしに役立つより良い製品の創出に努力を重ねております。近年、情報通信伝達技術の目覚ましい発達により、新たなサービスの利用が可能となってきており、さらに踏み込んだ製品の評価・解析技術力の向上と知的財産権の保全強化に注力した研究開発活動を継続しております。
開発・技術部門では、コロナ禍における感染症対策を講じながら原材料から製品に至る過程での化学物質管理を一層強固にするため、設計・生産段階への化学物質に関する最新情報を一元管理するデーターベースによる審査・承認の仕組みの整備も積み重ね、安全・安心を提供する「ものづくり」に力を注いでおります。
次世代事業の製品創出にはSDGs活動が必須となる中で、日本および国際社会の一員として各企業、研究機関等との連携・共同研究による技術開発に努めております。環境・エネルギー、医療などの新規事業創出分野では、微分散・合成反応技術を応用した製品部材を開発継続している中で今後、AIと情報通信技術・サービス等を利用することにより、研究開発活動のスピードを上げ、市場ニーズ・お客様の要望に対応した環境調和製品、新規機能製品を創出し続けてまいります。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は1,153百万円であります。
セグメント別の研究開発活動概要は次のとおりです。
(インキ事業)
オフセットインキにつきましては、当社の主力製品であるヒートセットオフ輪プロセスインキ「ガイア」、枚葉プロセスインキ「ニューセルボ」に加え、新聞用高濃度インキ「ニューズメジャー」、高感度UVインキ「ジップキュアUVOL」の製品づくりに引き続き注力いたしました。印刷用紙が低級紙にシフトする業界の流れに対応し、オフ輪インキの低級紙対応を進めました。また、油性枚葉印刷がLED-UV印刷にシフトしているのに合わせて高感度紫外線硬化型インキの性能向上などを推し進め、「ジップキュアUVOL」の販売は堅調に推移いたしました。業界の流れや環境に配慮した製品の市場提供に向けて開発・改良に邁進してまいりました。印刷市場の変化縮小による販売競争の激化に対応するべく、需要家である印刷会社からのニーズを確実に製品に反映した結果、顧客内シェアを確保できました。
新聞インキにつきましては、新聞発行部数が減少する中で、積極的な開発・改良設計に取り組み、高濃度新聞輪転用プロセスインキ「ニューズメジャークロマ」、高漆黒新聞墨インキ「ニューズメジャークロマブラック」の性能向上を図りました。
その他、オフセット用印刷用補助剤につきましては、印刷機の不要な停止を極力減らす製品づくりや環境負荷低減対応を第一優先に考えた有機則・PRTR非該当製品の拡充により、使い易さだけでなく安全な製品の提供に努めてまいりました。今後も、環境に配慮した高収益メーカーとなるべく、地球と人にやさしい設計による製品の提供により、需要家の要望に応えてまいります。
グラビアインキにつきましては、食品包材向けフィルム用インキ、成型品用インキの開発・改良を進め、環境調和製品や機能性、意匠性を有する製品の開発に取り組んでまいりました。環境調和製品につきましては、バイオマス由来材料を使用したインキの品種拡大を進め、バイオマスマーク登録を行ってまいりました。さらに米ぬか由来材料を使用したインキの開発にも取り組み、ライスインキの拡販を進めました。
機能性製品につきましては、遮光性インキ、各種マットインキ、バリアインキ、ヒートシール剤等の開発を行ってまいりました。
意匠性製品につきましては、フィルム用・紙用見本帳を活用することで食品包装や衛生材用途においてパール調インキや高輝度金・銀インキ等の採用事例を増やすことが出来ました。また、さらに輝度を上げた銀インキを開発し、パスター加工代替を狙った新たな製品提案を行いました。
今後も様々な包装材料分野への展開を進めるとともに、これら機能性、意匠性を有する高付加価値製品を充実させてまいります。
インクジェットインクにつきましては、受託製品の獲得と自社製品の開発に取り組んでまいりました。受託製品では、できるだけ多くの新規獲得を目指しております。
自社製品につきましては、建材塗料代替となる外壁用・内壁用UVインクジェットインク、マーキング用や加飾用等の機能性UVインクも順調に推移しております。今後も機能性UV硬化インクを中心とした開発に取り組み、様々な分野、用途において採用を目指してまいります。
当連結会計年度におけるインキ事業の研究開発費は309百万円であります。
(化成品事業)
当連結会計年度においては、第1周辺分野としてポリオレフィン用カラー・添加剤マスターバッチ拡販、第2周辺分野としてPET用マスターバッチ拡販、更に新規開発テーマの推進を掲げ外部環境変化に対応し、事業領域の拡大により目標利益獲得を目指しました。コロナ禍の影響、脱プラスチックの動きにより縮小分野もありますが、引続き未参入、低シェア分野の開拓に向け戦略製品の立ち上げを進めてまいります。
マスターバッチにつきましては、これまでのポリオレフィン主体から非ポリオレフィン分野での比率を高めるべく、生分解樹脂およびバイオマス材料も含め、素材に合わせた調色体制の強化を進めてまいりました。今後も取り組みを継続し拡販に繋げてまいります。機能性製品につきましては、従来とは異なる難燃剤・耐候安定剤・加工助剤マスターバッチを上市しました。その他、製品銘柄の充実を目指し、CNF、CNT等のナノマテリアルの分散検討にも引き続き取り組み、分散・配合技術を駆使した生産技術を確立し新たな製品開発を目指します。昨年立ち上げました液体タイプのマスターバッチも未参入分野への拡販を継続して行います。さらに、新たな生産プロセスとなる、自動化、省人力化に寄与できる生産技術の導入も進めてまいります。
コンパウンドにつきましては、受注による増産対応すべく、各工場への技術支援を行ってまいりました。
土岐第2工場のクリーン環境下における新製品立ち上げも継続して取り組んでおります。差別化製品の確立に向けた量産試作を継続して行い、食品、医療、電子、エネルギー、光学フィルム関連材料を中心に、ユーザーとの共同開発テーマを積極的に進めてまいります。大阪工場は新建屋での生産が順調に進み、今年度も引き続き移管スケジュールに沿って生産拠点の合理化、生産性向上を進めていまいります。タイ工場につきましては、日本国内への製品輸入も行い生産拠点の多様化への対応、新規銘柄の開発、品質管理支援を行ってまいりました。東南アジア市場でのニーズに応える製品開発を目指し引き続き取り組んでまいります。
今後も生産・販売・技術が一体となり、マーケット情報を共有してニーズに沿った製品開発を進めてまいります。
当連結会計年度における化成品事業の研究開発費は557百万円であります。
(加工品事業)
当連結会計年度においては、新製品の開発に注力して取り組んでまいりました。
ネトロンにつきましては、ヘッダー付きフラット袋の製袋機及び新規格のネットを開発し、オクラ用ヘッダーネットの製造・販売を開始しました。
これまで実績のあるネットのバンチ加工、ラベル貼り加工、レイフラット加工に加えて新たな加工技術を確立出来た為、顧客要求に応じたあらゆるネット状包装資材の提供が可能となりました。
また、水処理用資材の需要増加に対応する為に、生産設備2系列増設することを決定いたしました。設置場所は、BCP対策として従来の生産工場でなく、子会社トーイン加工株式会社に決定しました。この新規設備導入を機にトーイン加工株式会社敷地内に倉庫及び新工場を建設しており、来期からの営業生産開始を目標に技術支援を行っております。この様に新規製品開発と生産設備強化により、今後もトップメーカーとしての確固たる基盤を築いてまいります。
土木資材につきましては、ジオセルを使用した工法に関わる新規製品の開発を進めてまいりました。本年は、ジオセル同士を接続する部材である「セルキー」と排水材である「セルドレーン」を上市いたしました。セルキーは、従来の接続部材の欠点であった接続強度を著しく向上させ、施工性にも優れた製品であります。セルドレーンは、中詰め材として自社製品であるネトロンを使用した透水性に優れた製品であります。この様にジオセルを基材とした周辺部材の開発を引き続き行ってまいります。
農業資材につきましては、近年の夏季における高温対策として需要が高まっている農業用ハウスの遮熱織物の開発を進めてまいりました。植物の光合成に必要な波長は透過し、熱を発生させる赤外線領域の波長を選択的に吸収することにより、太陽光によるハウス内の明るさは維持しつつ、温度の上昇を抑えることが期待できます。来期からの試験展張を実施し、効果の確認を行ってまいります。また、既存の農業用ハウスに塗布する遮熱コート剤の付着力を向上させる展着剤も開発いたしました。
今後も、夏季の遮熱対策と冬季の保温対策に役立つ製品開発を進めてまいります。
また、炭素循環社会に対応する環境に優しい製品として、バイオマスプラスチックを用いた一軸延伸フィルムとネトロン製品の開発に取り組んでまいりました。製品の原材料の一部をバイオマスプラスチックに置き換えることにより、限りある化石燃料の使用量削減,二酸化炭素排出量の抑制が期待できます。今後も環境負荷低減の実現化に貢献できる製品開発に取り組んでまいります。
当連結会計年度における加工品事業の研究開発費は105百万円であります。
(その他)
当社の研究開発は、新事業創出を目的に活動を行ってまいりました。そのため、当社のコア技術である分散技術の高度化(有機顔料の微粒子化、有機顔料分子の表面官能基付与、リビングラジカル重合により構造を制御したバインダー設計)から、今後成長が期待される「エネルギー分野」、「センサー分野」、「バイオ・ヘルスケア分野」そして「ナノテクノロジー分野」に使用される機能性材料の設計へとその活動範囲を徐々に広げてまいりました。これらの具体的な研究テーマは、「社会的価値」と「経済的価値」を考慮し選定しております。
「エネルギー分野」につきましては、電子輸送材料の分子設計を行ってまいりました。「センサー分野」につきましては、環境測定やヘルスケアのモニタリングなどのデバイスに用いる材料の設計及びシステム開発についての検討を行っております。また、「ナノテクノロジー分野」につきましては、分散技術の高度化を発展させナノ粒子分散体の技術開発にも力を入れております。その分散体については、技術確立ステージからアプリケーションの検討ステージへ進めることができました。これらの材料設計やシステム開発の検討を通じて、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できるよう今後も努めてまいります。また、これらの研究開発業務の効率化および最新技術の導入を図るために、公的研究機関および教育機関との共同研究を積極的に行ってきており、これからも継続してまいります。
一方、機能性材料の商品化を行うために、「省力化」、「効率化」、「精密制御」そして「安全性」をキーワードに新規生産プロセス構築についての検討を行ってまいりました。当社で設計した機能性材料をマーケットへ展開できるよう、今後も新規プロセス検討にも注力してまいります。
また引き続き、コンピューターシミュレーションやAIと情報通信技術の活用の検討を行うことにより、機能性材料に関わる技術開発や新規プロセス構築における研究活動の支援、当社事業に関わる合理化の検討および、生産コスト削減に寄与できるよう努めてまいります。
これらの研究活動成果として特許出願を積極的に行い、当活動を通じて人材育成に邁進してまいります。
当連結会計年度におけるその他の研究開発費は180百万円であります。