有価証券報告書-第141期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

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2018/06/28 16:31
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研究開発活動


当年度における研究開発費は3,254億円であります。
当社は、2016年7月29日、「オンコロジー(がん)」、「消化器系疾患」、「ニューロサイエンス(神経精神疾患)*」の3つの疾患領域と「ワクチン」にフォーカスし、今日の標準治療を上回る画期的な治療を提供するパイプラインを構築するために、研究開発体制の変革を加速するプランを策定したことを公表しました。その変革に不可欠な要素として、社内の人材の育成と専門性の強化を、提携等を通じた外部イノベーション取り込みを可能とするオペレーションモデルの構築と共に進めています。専門性の強化においては、低分子化合物のみならず多様化した治療モダリティに関する専門性、生命情報学および遺伝子研究並びにトランスレーショナルメディスンに注力しています。
*2018年1月に「中枢神経系疾患」から名称を変更
本研究開発体制の変革は大きく進展してまいりました。疾患領域の絞り込みにより、重点領域外となった開発品の売却・導出を進めるとともに、革新性に対する社内基準を大きく引き上げ、その基準に満たない開発品の優先順位を引き下げました。現在、当社の開発プログラムの約55%は提携もしくは買収によって得られたものであり、2017年度だけでも56の企業や学術研究機関とパートナーシップ契約を締結しました。また、研究開発の効率性についても、価値を創造する一連のパートナーシップの締結により改善してきました。最も意義深いものは、米国PRAヘルス・サイエンシズ社(PRA社)とのパートナーシップであり、同社は当社の開発品や既発売品の臨床開発、さらには市販後に必要な対応へのサポートを行う主要な戦略的パートナーです。研究機関やバイオテク企業との様々な提携を通じ、当社はパートナーシップをコア・バリューとし、且つ、外部提携に対する能力も構築しています。
当社は、日本におけるイノベーションの推進および専門性の強化にも取り組んでいます。当社の最先端の研究施設である湘南研究所においては、当社の研究活動拠点に加えて、基礎から応用までの橋渡し研究や探索研究から化合物の最適化をサポートするAxcelead Drug Discovery Partners(アクセリード ドラッグディスカバリーパートナーズ)株式会社を設立しました。同社は、当社の研究のみならず、他の製薬企業やバイオテク企業、アカデミアの研究機関等に対しても研究支援を行います。また、当社は、アクセリード ドラッグディスカバリーパートナーズや創設するバイオテク基金により強力にサポートされるイノベーションエコシステムの実現に向けて、湘南のヘルスイノベーションパークの設置にも注力しています。
研究開発組織は主に、世界レベルの拠点であり外部提携を推進する日本の湘南および米国ボストンに集約し、さらに、両拠点を支えて各地域の開発・メディカルを担う、スリムで最先端の拠点が世界中にあり、また、優れたバイオテク企業のようなサンディエゴの研究拠点があります。
本研究開発体制の変革、パイプラインのイベント、ならびに事業開発契約について、当年度における重要な進捗は以下のとおりです。
研究開発体制の変革
・2017年6月、当社は、米国PRAヘルス・サイエンシズ社(PRA社)との臨床開発に関するグローバルでのパートナーシップの一環として、日本において、合弁会社である武田PRA開発センター株式会社を設立しました。本合弁会社は、当社の日本における臨床開発およびファーマコビジランス等にかかる、開発パイプラインおよび販売製品のサポート事業を承継しました。
•2017年7月、当社は、日本の武州製薬株式会社(武州製薬)とのファーマシューティカルサイエンスに関する日本におけるパートナーシップとして、治験薬の開発および製造等にかかる事業を承継させたスペラファーマ株式会社の全ての株式を武州製薬に譲渡しました。
•2017年7月、当社は、創薬研究部門の一部事業を、湘南研究所に設立した当社100%子会社のAxcelead Drug Discovery Partners(アクセリード ドラッグディスカバリーパートナーズ)株式会社に承継し、同社は事業を開始しました。同社は、当社のみならず国内外のライフサイエンスに関わる様々な組織・企業に対し、スクリーニング、合成、薬効薬理、薬物動態、安全性評価などの分野で総合的かつ包括的な創薬支援サービスを提供します。
・2017年8月、当社は、当社研究者によるベンチャー企業設立を支援するアントレプレナーシップ ベンチャー プログラムにより、新しいバイオテク企業である株式会社SEEDSUPPLY(シードサプライ)が設立されたことを公表しました。同社は、湘南研究所に拠点を置き、最先端かつ特殊なBinder selection技術による創薬スクリーニングサービスを国内外製薬企業に提供し、顧客の将来的なポートフォリオの構築に貢献します。
・2017年8月、当社は、米国カーデュリオン・ファーマシューティカルズ社(カーデュリオン社)と循環器系疾患治療薬の研究開発に関する提携を締結したことを公表しました。当社は、湘南研究所の12名の循環器系疾患領域の研究チームを同社に移すこと、また湘南研究所の整備された研究スペース、研究開発リソース等を同社に提供するとともに循環器系疾患の複数の前臨床パイプラインを同社にライセンス供与することで、新会社の勢いあるスタートに貢献します。
・2017年10月、当社は、当社研究者によるベンチャー企業設立を支援するアントレプレナーシップ ベンチャー プログラムにより、株式会社SEEDSUPPLY(シードサプライ)に続いて2社目のバイオテク企業、株式会社ChromaJean(クロマジーン社)が設立されたことを公表しました。同社は、湘南研究所に拠点を置き、独自のアルゴリズムに基づくクロマトグラフィー技術を国内外の製薬企業に提供します。
・2018年4月、当社は、湘南ヘルスイノベーションパーク「湘南アイパーク」がグランドオープンしたことを公表しました。湘南アイパークは、オープンでイノベーティブなエコシステムの醸成を目指して構想され、製薬産業、政府、アカデミアが結集しライフサイエンスにおける最先端技術・知見を活用し国内外の患者さんに大きな変革をもたらすことができるソリューションの提供を目指します。また、湘南アイパークは、医薬品の専門知識と最先端の設備を活用しながら起業家文化を育成し、官民パートナーシップを促進します。世界トップレベルのエコシステムを目指し、政府・自治体の理解とご支援を頂き、また日本政府の骨太方針や日本再興戦略に沿ったものです。
販売製品の価値最大化
[エンティビオ]
・2017年5月、当社は、潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤「エンティビオ(一般名:ベドリズマブ)」について、2017年米国消化器病週間(Digestive Disease Week:DDW)において、成人の中等症から重症の潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)患者を対象とした8つの実臨床における本剤の有効性および安全性のデータを発表しました。
・2017年8月、当社は、「ベドリズマブ」(一般名)について、中等症から重症の活動期の潰瘍性大腸炎(UC)に対する治療薬として、厚生労働省に製造販売承認申請を行いました。今回の申請は、中等症から重症の潰瘍性大腸炎患者292名を対象に、導入療法および維持療法における「ベドリズマブ」の有効性、安全性および薬物動態を検討した国内臨床第3相試験であるCCT-101試験の結果に基づくものです。
・2017年11月、当社は、「エンティビオ」について、第25回欧州消化器病週間(United European Gastroenterology:UEG)において、潰瘍性大腸炎(UC)またはクローン病(CD)における「エンティビオ」の実臨床下での安全性に関するシステマティック・レビューおよびメタアナリシス、米国で「エンティビオ」が投与された炎症性腸疾患(IBD)患者の免疫抑制治療の実臨床データなど複数の研究データを発表しました。
・2018年2月、当社は、第13回欧州クローン病・大腸炎会議(European Crohn's and Colitis Organization: ECCO)において、「エンティビオ」の投与を受けた潰瘍性大腸炎(UC)患者群もしくはクローン病(CD)患者群は、各々抗TNFα抗体治療を受けた患者群と比較して、統計学的に有意に高い粘膜治癒率を示したという実臨床データを発表しました。
[アドセトリス]
・2017年6月、当社は、米国シアトルジェネティクス社から導入した「アドセトリス(一般名:ブレンツキシマブ ベドチン)」について、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)に対する効果を検証した臨床第3相試験であるALCANZA試験の結果がLancetに掲載されたことを公表しました。本試験結果は、2016年12月に開催された第58回米国血液学会(The American Society of Hematology: ASH)年次総会において口頭発表されたものです。本剤は、CTCL患者の約50%において皮膚病変の腫瘍に発現するCD30を標的とした抗体薬物複合体(ADC)です。
・2017年6月、当社は、未治療の進行期古典的ホジキンリンパ腫患者を対象とし、化学療法と併用した場合の「アドセトリス」の一次(フロントライン)治療としての有用性を検討した無作為化、多施設共同の臨床第3相試験であるECHELON-1試験において、主要評価項目を達成し、対照群と比較して統計学的に有意な修正無増悪生存期間の改善が示されたことを公表しました。
・2017年10月、当社は、再発・難治性の全身性未分化大細胞型リンパ腫(sALCL)に対する「アドセトリス」の効果を検証した臨床第2相試験の結果がBlood誌に掲載されたことを公表しました。5年間の試験結果を要約した本論文は、sALCL患者に対する本剤単独投与による効果の持続性および長期間の寛解に関するデータをまとめています。
・2017年11月、当社は、「アドセトリス」について、欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品評価委員会(CHMP)より、全身療法の前治療歴のある成人のCD30陽性皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)の効能追加に関し、承認を推奨する見解が示されたことを公表しました。
・2017年12月、当社は、第59回米国血液学会(ASH)年次総会において、「アドセトリス」の臨床第3相試験であり、未治療の進行期古典的ホジキンリンパ腫を対象に化学療法と併用した場合の本剤の一次(フロントライン)治療としての有用性を検討したECHELON-1試験のデータを発表しました。本試験結果はNew England Journal of Medicineにも掲載されました。
・2018年1月、当社は、「アドセトリス」について、欧州委員会(EC)より少なくとも1回の全身療法を施行後の前治療歴のあるCD30陽性皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)の成人患者に対する効能追加に関し、条件付きの承認を取得したことを公表しました。欧州委員会の決定は、2017年11月のCHMPの肯定的見解に基づくものです。
[トリンテリックス]
・2017年6月、当社は、デンマークのルンドベック社より導入した大うつ病治療剤「トリンテリックス(一般名:ボルチオキセチン)」について、本剤の米国添付文書の臨床試験の項へ、成人大うつ病性障害における認知機能障害に対する本剤の効果についてのデータを追記するための医薬品承認事項変更申請について、米国食品医薬品局(FDA)より追加解析提供後の審査完了報告書を受領しました。
・2018年5月、当社は、「トリンテリックス」について、FDAより医薬品承認事項変更申請の承認を取得したことを公表しました。本剤は認知機能の重要な一症状である処理速度の改善が米国添付文書に追記することをFDAに承認された初めての大うつ病治療剤となります。FOCUSおよびCONNECT試験では、本剤が急性うつ病に罹患する成人患者における認知機能の一症状である処理速度に改善効果があることを示しました。
[アイクルシグ]
・2018年3月、当社は、「アイクルシグ」について、再発性の慢性骨髄性白血病(CML)もしくはフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に対する臨床第2相試験であるPACE試験の最終結果が、Blood誌に掲載されたことを公表しました。5年間の試験結果において、本剤が、前治療が奏効しなかった慢性期のCMLに対し有効な治療オプションであることが示されました。
開発パイプラインの進捗
[ALUNBRIG]
・2017年4月、当社は、未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子(ALK)阻害剤「ALUNBRIG(一般名:brigatinib)」について、ALK陽性の転移性非小細胞肺がんに対する治療剤として、FDAより、迅速承認制度に則り販売許可を取得しました。
[デング熱ワクチン]
・2017年4月、4価弱毒生デング熱ワクチン「TAK-003」について、二重盲検、無作為化、プラセボ対照の臨床第3相試験であるTIDES試験において、4歳から16歳の小児・若年被験者20,100名の組み入れが完了したことを公表しました。
・2017年11月、当社は、デング熱ワクチンの臨床第2相試験であるDEN-204試験における18ヵ月時点の中間解析結果がLancet Infectious Diseasesに掲載されたことを公表しました。予め計画された本中間解析の結果から、「TAK-003」が小児および若年者に対するデング熱発症率を減少させる可能性が示唆されました。
[アジレクト]
・2017年6月、当社は、イスラエルのテバ・ファーマシューティカル・インダストリーズ社より導入したパーキンソン病治療薬「ラサギリンメシル酸塩(一般名)」について、製造販売承認申請を日本の厚生労働省に提出しました。
・2018年3月、当社は、パーキンソン病治療剤「アジレクト錠」(一般名:ラサギリンメシル酸塩)について、厚生労働省より製造販売承認を取得したことを公表しました。
[Relugolix]
・2017年10月、当社は、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)受容体拮抗薬「relugolix(一般名、開発コード:TAK-385)」の子宮筋腫を対象とした臨床第3相検証試験(TAK-385/CCT-002試験)において、主要評価項目である「relugolix」投与群の対照群に対する非劣性が示されましたことを公表しました。TAK-385/CCT-002試験は、症状を示す子宮筋腫を有する日本人女性を対象に、「relugolix」投与群と対照群であるリュープロレリン酢酸塩(一般名)投与群を比較する、無作為化、二重盲検、並行群間、多施設共同試験であり、本薬を24週間経口投与した際の有効性および安全性を検討しました。
・2017年11月、当社は、「relugolix」の子宮筋腫を対象とした臨床第3相試験(TAK-385‐3008試験)において、「relugolix」投与群の対照群に対する統計学的に有意な疼痛症状の改善が示されたことを公表しました。TAK-385‐3008試験は、子宮筋腫に伴う疼痛症状を有する日本人女性を対象にした無作為化、二重盲検、並行群間、多施設共同試験であり、本薬を12週間経口投与した際の有効性および安全性を、プラセボを対照薬として比較検討しました。
・2018年2月、当社は、「relugolix」について、子宮筋腫に対する治療薬として厚生労働省に製造販売承認申請を行いました。今回の申請は、子宮筋腫患者を対象とした国内臨床第3相試験(TAK-385/CCT-002試験および3008試験)の結果に基づくものです。
・2018年5月、当社は、「relugolix」について、製品価値の最大化を目的に、日本における子宮筋腫の独占的販売権および子宮内膜症の独占的開発・販売権を、日本のあすか製薬に導出するライセンス契約を締結したことを公表しました。なお、今回のライセンス契約の対象は婦人科疾患領域であり、前立腺がんは含まれておりません。
[ジカウイルスワクチン]
・2017年11月、当社は、アラムアジュバント含有全粒子不活化精製ジカウイルスワクチン「TAK-426」の臨床第1相試験を開始したことを公表しました。2016年9月、当社は、米国保健福祉省の事前準備対応次官補局の一部門である生物医学先端研究開発局(Biomedical Advanced Research and Development Authority:BARDA)より、米国および世界中の流行地域におけるジカウイルス感染症に対する取り組みを支援すべく、ワクチン開発の助成先として選定されました。
・2018年1月、当社は、「TAK-426」が、FDAよりファスト・トラック指定を受けたことを公表しました。FDAによるファスト・トラック指定制度は、アンメットメディカルニーズを満たす治療困難な疾患に対する治療薬およびワクチンの開発を促進し、迅速に審査するために考案された制度です。ファスト・トラック指定制度のもと、FDAとのより綿密な連携、承認申請における逐次審査が可能となり、関連する基準を満たす場合には、優先審査の対象となります。
[ALOFISEL]
・2017年12月、当社は、ベルギーのタイジェニクス社より導入した「Alofisel(一般名:darvadstrocel、開発コード:Cx601)」について、EMAのCHMPより、承認を推奨する見解が示されたことを公表しました。本承認推奨は、遺伝子治療や細胞治療等の先進治療医薬品に特化したEMAの科学委員会であるCommittee for Advanced Therapy (CAT)による審査結果を踏まえたものです。
・2018年3月、当社は、「Alofisel」について、ECより非活動期/軽度活動期の成人のクローン病患者において、既存治療または生物学的製剤による治療を少なくとも1回以上実施したにもかかわらず効果不十分な肛囲複雑瘻孔への治療剤として承認を取得したことを公表しました。Alofiselは、欧州で初めて承認された同種異系脂肪由来幹細胞治療剤です。本承認は、2017年12月にEMAのCHMPとCATにより示された肯定的な見解に基づいています。
[ピオグリタゾン]
・2018年1月、当社は、グローバル臨床第3相試験であるTOMMORROW試験の中止を決定したことを公表しました。本決定は、事前に計画されていた中間解析で「ピオグリタゾン」0.8mg徐放製剤投与群におけるアルツハイマー病に起因する軽度認知機能障害の発症遅延に関する有効性が確認できなかったことによるものであり、本剤の安全性や試験実施上の問題によるものではありません。
将来に向けた研究プラットフォームの構築/研究開発における提携の強化
・2017年4月、当社は、米国フィンチ・セラピューティクス社と、同社の有する「FIN-524」について、全世界を対象とした共同開発契約を締結したことを公表しました。「FIN-524」は、炎症性腸疾患を対象とした腸内細菌移植試験における良好な臨床結果との関連が示唆される複数の細菌株を培養した前臨床段階の生菌カクテル製剤です。
・2017年5月、当社は、英国ガンマデルタ・セラピューティクス社と、ヒト組織常在型のガンマ・デルタT細胞が有する独自の特性に基づく同社の新規T細胞基盤技術の開発に関する戦略的提携契約を締結したことを公表しました。当社とガンマデルタ・セラピューティクス社は、固形がんを含む幅広い種類のがんや自己免疫疾患の治療に向け、本新規技術を活用して新たな免疫治療薬の研究開発を行う予定です。
・2017年7月、当社は、米国シュレーディンガー社と、当社の重点疾患領域を対象とした複数の創薬標的に関する共同研究契約を締結したことを公表しました。同社は複数の創薬標的に関し、簡潔性、スピード、機動性重視のもと、創薬をリードします。当社は、タンパク結晶構造をシュレーディンガー社に提供することで、新規化学物質のデザインにつながるコンピューター技術を同社が活用するサポートを行います。
・2017年7月、当社は、米国バイオサーフェシズ社と、同社のナノマテリアル技術を利用し、消化器系疾患の患者を治療するための革新的な医療デバイスに関する共同研究契約を締結したことを公表しました。当社は、消化器系分野に関する科学的および技術的な専門性を提供し、同社は医療デバイス設計およびナノマテリアルに関する専門性および製造技術を提供します。
・2017年7月、当社は、米国テサロ社と、同社の有する新規ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害薬「niraparib(一般名)」について、独占的開発・販売に関するライセンス契約を締結したことを公表しました。本契約により、当社は、日本における「niraparib」に関する全てのがんについて、また、韓国、台湾、ロシア、オーストラリアにおける前立腺がんを除く全てのがんについて独占的開発・販売権を獲得します。
・2017年8月、当社は、米国モレキュラー・テンプレーツ社(モレキュラー社)と、がん治療薬創出プログラムの提携に関する契約を締結したことを公表しました。本提携では、両社で構成されるJoint Scientific Committeeを通じて当社が提供する治療標的候補に同社のEngineered Toxin Bodies(ETB)基盤技術を応用します。
・2017年8月、当社は英国アストラゼネカ社と、同社の有する「MEDI1341」について共同開発・販売契約を締結したことを発表しました。「MEDI1341」は、α-シヌクレイン(α-Synuclein)抗体で、現在パーキンソン病を対象に開発中です。α-シヌクレインはパーキンソン病の原因となる病理学的タンパク質凝集体であるレビー小体の主要構成成分であり、パーキンソン病患者の神経細胞に蓄積し、病気の進行とともに神経系全体に広がると見られています。
・2017年9月、当社は、日本のノイルイミューン・バイオテック株式会社(ノイルイミューン)と次世代型キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T)療法に関する提携契約を締結したことを公表しました。この次世代型CAR-T細胞療法技術は、山口大学玉田耕治教授により開発され、同社が独占的に権利を有する基盤技術で、サイトカイン、ケモカイン等を産生する機構を有しており、がん治療の効果を高めるため固形がん組織の微小環境に影響をあたえるまたは変化させることが期待されます。本契約により、当社と同社は、幅広い種類のがんの治療に向け、この技術を活用した新たなCAR-T細胞免疫療法の研究開発を行います。
・2017年9月、当社は、スウェーデンのカロリンスカ研究所およびカナダのストラクチャル・ゲノミクス・コンソーシアム(SGC)と、炎症性腸疾患における新規治療法の開発および検証に向け、前競争的研究および独占的研究に関する共同研究契約を締結したことを公表しました。本提携により、当社、カロリンスカ医科大学病院およびSGCの研究者と臨床医で構成されるトランスレーショナル医療研究チームが発足し、大規模かつ十分特徴づけられた炎症性腸疾患患者群から得られた組織検体をもとに、先進的なトランスレーショナル疾患モデルを開発します。
・2017年10月、当社は、米国ヘモシャー・セラピューティクス社と非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を含む肝疾患の新規治療法を創出・開発するための共同研究契約を締結したことを公表しました。同社独自の創薬基盤技術であるREVEAL-TxTMは、患者由来の組織に生理的な血流状態を適用するものであり、ヒトへ投与する薬剤濃度で候補化合物を研究することを可能にし、高い精度で疾患を再現することにより、複合的な病態生理学的経路に対する重要な知見をもたらします。
・2017年11月、当社は、米国ポータル・インスツルメンツ社と同社の針を使わない医療用デバイスの開発および商品化について提携契約を締結したことを公表しました。本提携に基づき、同社の技術を当社の開発中または承認済みの生物学的製剤へ応用することを目指します。マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology)のIan Hunter教授の研究室が開発したこの医療用デバイスと技術は、現在注射による皮下投与が必要とされる様々な生物学的製剤へ応用できる可能性があり、当社における最初の開発プログラムとして、「エンティビオ(一般名:ベドリズマブ)」への試験的応用を検討します。
・2018年1月、当社は米国デナリ・セラピューティクス社と、3つの神経変性疾患治療薬候補の開発および販売に関して戦略的オプションを含む提携契約を締結したことを公表しました。各治療薬候補の開発プログラムは、アルツハイマー病やその他の神経変性疾患に対する遺伝学的に検証されたターゲットを対象にしており、同社が有する脳へのバイオ治療薬移行性を高めるAntibody Transport Vehicle(ATV)プラットフォーム技術を用います。
・2018年2月、当社は、富士フイルム社と、同社の米国子会社であるセルラー・ダイナミクス・インターナショナル社が開発を進めているiPS細胞由来心筋細胞を用いた再生医療製品の全世界での共同事業化に関する優先交渉権を当社に付与する契約を締結したことを公表しました。両社は、複数のiPS細胞由来心筋細胞の薬効・安全性評価、実用化に向けたプロセス開発などについて共同研究を実施します。
・2018年2月、当社は、シンガポールのウェーブ・ライフ・サイエンシズ社と遺伝的神経系疾患に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド医薬品の開発を目指し、同社と研究開発および販売に関する契約、ならびに複数のプログラムに関するオプション契約を締結したことを公表しました。
・2018年4月、当社とDrugs for Neglected Diseases initiativeは、内臓リーシュマニア症の革新的な治療薬開発に向け、アミノピラゾール系化合物群の中から見出された医薬品候補化合物の前臨床試験および臨床第1相試験に協働して取り組む旨の契約を締結したことを公表しました。両試験は、開発途上国で必要とされる医薬品やワクチン等の研究開発を促進する国際的な官民パートナーシップである公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(Global Health Innovative Technology Fund)の助成案件に選定されています。