有価証券報告書-第141期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/28 16:31
【資料】
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【項目】
65項目

事業等のリスク


当社の業績は、現在および将来において様々なリスクにさらされており、リスクの顕在化により予期せぬ業績の変動を被る可能性があります。以下では、当社が事業を展開していくうえで直面しうる主なリスクを記載いたします。当社はこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、可能な限り発生の防止に努め、また、発生した場合の的確な対応に努めていく方針です。
なお、本項目に含まれる将来に関する事項は、当年度末現在において判断したものです。
(1)研究開発に関するリスク
当社は、日米欧アの各極市場への一日も早い新製品の上市を目指し、効率的な研究開発活動に努めておりますが、医薬品は、自社創製化合物、導入化合物にかかわらず、所轄官庁の定めた有効性と安全性に関する厳格な審査により承認されてはじめて上市可能となります。
研究開発の途上において、当該化合物の有効性・安全性が、承認に必要とされる水準を充たさないことが判明した場合またはその懸念があると審査当局が判断した場合、その時点で当該化合物の研究開発を途中で断念、または追加の臨床試験・非臨床試験を実施せざるを得ず、それまでにかかったコストを回収できないリスクや製品の上市が遅延するリスク、および研究開発戦略の軌道修正を余儀なくされる可能性があります。
(2)知的財産権に関するリスク
当社の製品は、物質・製法・製剤・用途特許等の複数の特許によって、一定期間保護されております。
当社では特許権を含む知的財産権を厳しく管理し、第三者からの侵害にも継続的に注意を払っておりますが、当社の保有する知的財産権が第三者から侵害を受けた場合には、期待される収益が失われる可能性があります。また、当社の自社製品等が第三者の知的財産権を侵害した場合には損害賠償を請求される可能性があります。
(3)特許権満了等による売上低下リスク
当社は、効能追加や剤型変更等により製品のライフサイクルを延長する努力をしておりますが、多くの製品について、特許が満了すれば、後発品の市場参入は避けられません。国内では、当局が後発品の使用促進を積極的に進め、また、長期収載品の価格引下げが、さらに売上を圧迫しています。これに加え、競合品の特許満了によるその後発品、および競合品のスイッチOTC薬の出現などによって、国内外の競争環境は格段に厳しいものになってきており、その影響如何で当社製品の大幅な売上低下を招く可能性があります。
(4)副作用に関するリスク
医薬品は、世界各国の所轄官庁の厳しい審査を伴う製造・販売承認を得て発売されますが、市販後の使用成績が蓄積された結果、発売時には予期していなかった副作用が確認されることがあります。新たな副作用が確認された場合には、「使用上の注意」への記載を行う、使用方法を制限するなどの処置が必要となるほか、販売中止・回収等を余儀なくされることもあり得ます。また、このような場合において、当社は損失および債務を負う可能性があります。
(5)薬剤費抑制策による価格引き下げのリスク
最大市場である米国では、低価格の後発品の使用促進や、連邦・州政府およびマネジドケアの強い要請に伴うブランド品への価格引き下げ圧力が一層高まっています。日本においては、医療保険制度の薬価が定期的に引き下げられており、長期収載品の価格引下げ幅も拡大しています。欧州においても、薬剤費抑制策や並行輸入の増加により、同様に価格引き下げが行われております。これら各国の薬剤費抑制策による価格引き下げは、当社の業績および財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(6)為替変動による影響
当社の当年度における海外売上収益は11,902億円であり、連結売上収益全体の67.2%を占めており、そのうち米国での売上収益は5,983億円にのぼり、連結売上収益全体の33.8%を占めております。従って、売上収益については円安は増加要因ですが、一方、研究開発費をはじめとする海外費用が円安により増加するため、利益に対する影響は双方向にあります。当社の業績および財務状況は、リスクを緩和することが出来ない為替レートの変動に大きな影響を受けます。
(7)企業買収に関するリスク
当社は、持続的な成長のため、随時、企業買収を実施する可能性があります。一方、世界各国における事業活動は、法令や規則の変更、政情不安、経済動向の不確実性、商慣習の相違その他のリスクに直面する可能性があり、その結果当初想定した買収効果や利益が実現されない可能性があります。また、取得した資産の価値が下落し、評価損発生などが生じた場合や、買収した事業の統合から得ることが期待されている利益が実現されない場合には、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社は、2018年5月8日付で、Shire plc(以下「シャイアー社」といいます。)との間で、当社がシャイアー社の発行済普通株式および発行予定の普通株式の全てを取得する取引(以下「本件買収」といいます。)に関する提案について合意した旨を公表しております。シャイアー社はジャージー管区(以下「ジャージー」といいます。)において設立されており、本件買収は、ジャージー法に基づくスキーム・オブ・アレンジメントの方法により行われる予定です。また、本件買収については、英国の企業買収・合併に関するシティ・コードが適用されます。
本件買収は、シャイアー社株主および当社株主の承認、ならびにジャージー裁判所の認可および規制当局の承認を含む一定の事項を条件とするものであり、これらの条件が満たされない場合には、本件買収が当社の想定どおりに完了しない可能性があります。また、当社取締役会が当社株主に対する推奨を撤回又は反対推奨の旨に変更する、当社株主が臨時株主総会において本件買収およびこれに伴う新株式の発行を承認しない、または2019年5月8日(必要であればテイクオーバーと合併に関するパネルおよびジャージー裁判所の同意を得て延長される場合には延長された日)までに一定の規制当局の許可が得られないことを理由として本件買収が無効となる場合または撤回された場合等の事由により、本件買収が実現しない場合には、当社はシャイアー社に対してブレークフィーの支払義務を負うことになります。
さらに、本件買収のための資金調達の状況次第では、当社に当初の想定を上回る負担が生じる可能性があります。
上記のいずれかのように本件買収が当社の想定通りに完了しない場合または本件買収に伴う追加的負担が生じた場合には、当社の事業活動、業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(8)進出国および地域におけるカントリーリスク
当社は、グローバルな事業展開に伴い、進出国や地域における政治不安、経済情勢の悪化、社会混乱等の潜在的なリスクに対応する体制を構築しており、抑止策や発生時の対処法を検討する等のリスク管理に努めております。しかしながら、不測の事態が生じた場合には、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(9)安定供給に関するリスク
当社は、販売網のグローバル化に確実に対応する供給ネットワークと品質保証体制を強化しております。しかしながら、当社の製造施設・物流施設等において、技術上もしくは法規制上の問題、または、火災その他の災害により、製商品の安定的供給に支障が発生する可能性があります。その動向によっては、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(10)訴訟等に関するリスク
当社の事業活動に関連して、現在関与している訴訟のほか、将来、医薬品の副作用、製造物責任、労務問題、公正取引等に関連し、訴訟を提起される可能性があり、その動向によっては、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(11)IT セキュリティ及び情報管理に関するリスク
IS/IT サービスの提供を受けるアウトソーシング企業も含めて、当社は大規模かつ複雑なIS/IT システムを利用しておりますが、従業員またはアウトソーシング企業の不注意または故意の行為、あるいは悪意をもった第三者による攻撃(サイバーアタック)により、システムの停止やセキュリティ上の問題が発生する可能性があります。当社は、データの保護とIT テクノロジーへの投資に努めておりますが、これらのシステムの停止などにより、当社の事業活動への悪影響、重大な機密情報や知的財産の喪失、業績および財務状況の悪化、法的な損害ならびに信用の失墜を招く可能性があります。