有価証券報告書-第199期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/20 15:21
【資料】
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【項目】
88項目

研究開発活動

当社グループは、精神神経領域、がん領域および再生・細胞医薬分野を研究重点領域として、自社研究に加え、技術導入、ベンチャー企業やアカデミアとの共同研究など、あらゆる方法で最先端の技術を取り入れて、研究開発活動に取り組んでおり、優れた医薬品の継続的な創製を目指しています。また、感染症領域にも取り組み、グローバルヘルスへの貢献を目指しています。さらに、医薬品以外のヘルスケア領域において、社会課題の解決のための新たなソリューションを提供することを目的として、フロンティア事業の立ち上げを目指しています。
(1)精神神経領域
先端技術を取り入れながら築いた自社独自の創薬技術プラットフォームを基盤に競争力のある創薬研究を推進しています。また、自社製品の臨床試験の情報から得られた知見をトランスレーショナル研究に生かし、ゲノム情報やイメージング画像などのビッグデータから適切な創薬ターゲットやバイオマーカーを選定することで、研究開発の確度の向上を図っています。
開発段階では、日米が一体となったグローバル臨床開発体制のもと、戦略的な開発計画を策定し、効率的に臨床開発を推進して、早期に承認取得することを目指しています。
また、当連結会計年度は、当社からのカーブアウトベンチャー企業であるAlphaNavi Pharma株式会社に対して、当社が創製した化合物(開発コード:DSP-2230)の開発・販売などの権利を導出しました。
当連結会計年度における主な開発の進捗状況は、次のとおりです。
① 「トレリーフ」(一般名:ゾニサミド)
日本において、レビー小体型認知症(DLB)に伴うパーキンソニズムの効能・効果を追加する一部変更承認を2018年7月に取得しました。
② 「ラツーダ」(一般名:ルラシドン塩酸塩)
中国において、統合失調症を対象とした承認を2019年1月に取得しました。
また、日本において、統合失調症を対象としたフェーズ3試験に関して、主要評価項目を達成するとともに、良好な忍容性を示す結果を得ました。
③ 「ロナセン」(一般名:ブロナンセリン)
日本において、日東電工株式会社と共同開発中のテープ製剤について、統合失調症を対象とした承認申請を2018年7月に行いました。
④ dasotraline(開発コード:SEP-225289)
米国において、成人および小児の注意欠如・多動症(ADHD)を対象とした承認申請を行っていましたが、2018年8月に米国食品医薬品局(以下「FDA」)から審査結果通知(Complete Response Letter)(以下「CRL」)を受領しました。CRLにおいて、FDAは、現時点では承認できないと判断し、本剤の有効性および忍容性をさらに評価するために追加の臨床データが必要との判断を示しました。現在、開発方針を検討中です。
また、米国において、過食性障害(BED)を対象としたフェーズ3試験に関して、主要評価項目を達成するとともに、良好な忍容性を示す結果を得ました。
⑤ アポモルヒネ塩酸塩水和物(開発コード:APL-130277)
米国において、舌下投与フィルム製剤について、パーキンソン病に伴うオフ症状を対象とした承認申請を行っていましたが、2019年1月にFDAからCRLを受領しました。CRLにおいて、FDAは、現時点では承認できないと判断し、本剤の追加の情報および解析を要求しましたが、新たな臨床試験は求めていません。2019年度に再申請を行う予定です。
⑥ SEP-363856
米国において、統合失調症を対象としたフェーズ2試験に関して、主要評価項目を達成するとともに、良好な忍容性を示す結果を得ました。
(2)がん領域
がん微小環境における細胞間ネットワークに着目した研究によりユニークなシーズやテーマに取り組み、革新的な新薬の創出を目指しています。また、当社、北米子会社および外部機関の間でのネットワーク型創薬を推進し、研究と開発が一体となって、早期の臨床試験への移行を目指しています。
開発段階では、後期開発品の開発を着実に進めるとともに、初期臨床開発も積極的に取り組んでいます。
当連結会計年度においては、ナパブカシンについて、結腸直腸がんおよび膵がんを対象とした併用での国際共同フェーズ3試験を引き続き推進しました。その他の品目について、当連結会計年度における主な開発の進捗状況は、次のとおりです。
造血幹細胞移植前治療薬「リサイオ」(一般名:チオテパ)
厚生労働省は、医療上の必要性が高い未承認薬であるとしてチオテパの開発企業を公募し、当社は、2013年に開発の意思を申し出て、小児悪性固形腫瘍における自家造血幹細胞移植の前治療を対象とした承認を2019年3月に取得しました。
また、悪性リンパ腫における自家造血幹細胞移植の前治療を対象とした承認申請を2019年3月に行いました。
(3)再生・細胞医薬分野
オープンイノベーションを基軸に、高度な工業化・生産技術と最先端サイエンスを追求する当社独自の成長モデルにより早期事業化を図っており、複数の研究開発プロジェクトを推進しています。神経領域および眼疾患領域中心のプロジェクトを着実に推進するとともに、立体臓器の再生も含めた次世代の再生医療の取組も視野に入れ、グローバルでの展開を目指しています。
当連結会計年度における主な開発の進捗状況は、次のとおりです。
① SB623
米国において、慢性期脳梗塞を対象としたフェーズ2b試験において、主要評価項目を達成できませんでした。現在、本試験の詳細解析を実施しており、その結果を踏まえてサンバイオ株式会社とともに今後の開発方針を決定する予定です。
② 他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞
日本において、京都大学医学部附属病院および京都大学iPS細胞研究所がiPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病を対象とした医師主導治験を開始しました。当社は、本試験の結果を用いて承認申請を行う予定です。
(4)感染症領域
アカデミアなどとの共同研究により、薬剤耐性菌感染症治療薬ならびに当社ワクチンアジュバントを基盤としたマラリアワクチンおよび万能インフルエンザワクチンの創薬研究を展開しています。
(5)フロンティア事業
フロンティア事業の開拓の一環として、2018年10月に株式会社メルティンMMIとの間で共同研究開発契約を、2019年2月に株式会社Aikomiとの間で共同研究契約を締結しました。両社との提携を通じ、患者さんに貢献できる新たな価値を提供することを目指します。
このような研究開発活動の結果、当連結会計年度の研究開発費の総額は1,024億円(前連結会計年度比17.8%増)となりました。なお、当該金額は当連結会計年度に計上した減損損失195億円を含んでいることから、これを除いたコアベースの研究開発費は829億円(前連結会計年度比4.6%減)となりました。また、当社グループは、研究開発費をグローバルに管理しているため、セグメントに配分していません。
当社グループにおける開発状況は以下のとおりであります。
1.精神神経領域(2019年5月10日現在)
製品/コード名
(一般名)
予定適応症地域開発段階
SM-13496
(ルラシドン塩酸塩)
統合失調症日本フェーズ3
双極Ⅰ型障害うつ日本フェーズ3
SEP-225289
(dasotraline)
注意欠如・多動症(ADHD)米国申請(2017/8)
審査結果通知(CRL)を受領(2018/8)
日本フェーズ1
過食性障害(BED)米国フェーズ3
APL-130277
(アポモルヒネ塩酸塩水和物)
パーキンソン病に伴うオフ症状米国申請(2018/3)
審査結果通知(CRL)を受領(2019/1)
ロナセン
(ブロナンセリン)
(新剤形:テープ)統合失調症日本申請(2018/7)
(新用法:小児)統合失調症日本フェーズ3
EPI-743
(バチキノン)
リー脳症日本フェーズ2/3
EPI-589パーキンソン病米国フェーズ2
筋萎縮性側索硬化症(ALS)米国フェーズ2
日本フェーズ1
SEP-363856統合失調症米国フェーズ2
日本フェーズ1
パーキンソン病に伴う精神病症状米国フェーズ2
SEP-4199双極Ⅰ型障害うつ米国・日本フェーズ2
(国際共同試験)
DSP-6745パーキンソン病に伴う精神病症状米国フェーズ1
SEP-378608双極性障害米国フェーズ1
DSP-3905神経障害性疼痛米国フェーズ1
SEP-378614治療抵抗性うつ米国フェーズ1
SEP-380135アルツハイマー病に伴う行動障害米国フェーズ1

2.がん領域(2019年5月10日現在)
製品/コード名
(一般名)
予定適応症地域開発段階
リサイオ
(チオテパ)
(新効能)悪性リンパ腫における自家造血幹細胞移植の前治療
※未承認薬・適応外薬の開発品
日本申請(2019/3)
BBI608
(ナパブカシン)
結腸直腸がん(併用)米国・日本フェーズ3
(国際共同試験)
膵がん(併用)米国・日本フェーズ3
(国際共同試験)
肝細胞がん(併用)米国フェーズ1/2
消化器がん(併用)米国フェーズ1/2
固形がん(併用)米国フェーズ1/2
BBI503
(amcasertib)
肝細胞がん(併用)米国フェーズ1/2
固形がん(単剤・併用)米国フェーズ1/2


2.がん領域(2019年5月10日現在)
製品/コード名
(一般名)
予定適応症地域開発段階
DSP-2033
(alvocidib)
急性骨髄性白血病(AML)(併用)
(再発・難治性患者対象)
米国フェーズ2
(国際共同試験)
骨髄異形成症候群(MDS)(併用)米国フェーズ1/2
急性骨髄性白血病(AML)(併用)
(初発患者対象)
米国フェーズ1
急性骨髄性白血病(AML)(併用)
(初発および再発・難治性患者対象)
日本フェーズ1
DSP-7888
(アデグラモチド酢酸塩/ネラチモチドトリフルオロ酢酸塩)
膠芽腫(併用)米国・日本フェーズ2
(国際共同試験)
骨髄異形成症候群(MDS)(単剤)日本フェーズ1/2
小児悪性神経膠腫(単剤)日本フェーズ1/2
固形がん、血液がん(単剤)米国フェーズ1
固形がん(併用)米国フェーズ1
BBI608+BBI503
(ナパブカシン+amcasertib)
固形がん(併用)米国フェーズ1
TP-0903慢性リンパ性白血病(CLL)(単剤・併用)米国フェーズ1/2
固形がん(単剤・併用)米国・日本フェーズ1
DSP-0509固形がん(単剤)米国フェーズ1
TP-0184固形がん(単剤)米国フェーズ1
DSP-0337固形がん(単剤)米国フェーズ1
TP-1287固形がん(単剤)米国フェーズ1
TP-3654固形がん(単剤)米国フェーズ1

3.再生・細胞医薬分野(2019年5月10日現在)
製品/コード名
(一般名)
予定適応症地域開発段階
SB623慢性期脳梗塞米国フェーズ2
他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞パーキンソン病日本フェーズ1/2
(医師主導治験)
HLCR011
(他家iPS細胞由来網膜色素上皮)
加齢黄斑変性日本治験開始に向けて準備中

4.その他の領域(2019年5月10日現在)
製品/コード名
(一般名)
予定適応症地域開発段階
PXL008
(imeglimin)
2型糖尿病日本フェーズ3