有価証券報告書-第157期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

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2022/06/24 11:11
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事業等のリスク

当社グループ(当社及び連結子会社)は、サステイナビリティの観点から事業機会の創出とリスクの回避並びに低減など、ビジネスリスクの適切な対応(マネジメント)を行うとともに、グループ全体のリスクを統括する全社リスクマネジメント(Enterprise Risk Management 以下「ERM」という)体制を経営戦略・経営基盤の重要な仕組みとし、その推進を図っております。当社グループが意思決定と業務執行に係るリスクを認識し、主体的に管理し対応策を講じることを基本とし、特に経営に影響を及ぼすような重要なリスクやその対応方針については経営会議及び取締役会にて審議・決定し、対応方針に基づき、主管組織が関連組織と協働し対策を実施しております。
さらに、当社グループは、事業活動を通じて健康・医療のニーズに応えるとともに、経済、社会、環境等の様々な課題を解決することで、当社グループの持続的な成長と社会の持続可能性への貢献を目指すサステイナビリティ活動を推進しております。
「リスクマネジメント体制」
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役割
①取締役会ERM推進活動の計画と進捗、成果の監督及び助言等を行う
[開催:年2回定期、必要に応じて臨時開催]
②代表取締役社長 及び
経営会議
代表取締役社長をチェアとする経営会議にて、以下に示す当社グループのERMに関する重要事項について協議し、代表取締役社長が承認する
・経営に影響を及ぼす重要なリスクの特定とその対応方針
・ERMに必要な経営資源の配分
・ERM推進活動の年次計画と進捗、成果のレビューなど
[経営会議におけるERMの議論:年2回定期、必要に応じて適宜期中にも実施]
③全社リスク管理責任者・経営支援本部長を全社リスク管理責任者として、当社グループのリスク管理を統括し、ERM体制の推進・運用の責任を担う
④全社リスク管理機能・サステイナビリティ推進部、総務部、経営企画部で構成される全社リスク管理機能にて、当社グループのリスク情報を一元管理し、ERM推進活動計画を立案、経営会議で特定された重要なリスクへの対応状況等のモニタリングを行い、その活動とモニタリング結果を取締役会及び経営会議に報告する。また、取締役会及び経営会議からのフィードバックに基づき、活動課題の改善を行う
⑤執行役員
グループ会社 社長
・執行役員及びグループ会社社長は、各事業部門及びグループ各社において、意思決定と業務執行におけるリスクのマネジメントを実施する
・リスクの抽出、特定、分析、評価、対策立案、対策推進、実施評価、改善実施と全社リスク管理機能へ報告する

以下では、当社グループの業績及び経営に重要な影響を及ぼす可能性のある重要なリスクを記載しており、それぞれのリスクに対し、記載の取り組みによりその低減に努めております。
なお、文中の将来に関する事項及びリスクは、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)制度・行政に関するリスク
医薬品事業は、各国の政策により様々な規制を受けております。医療保険財政のひっ迫に伴い、先進諸国で薬剤費抑制の圧力が強まる中、新型コロナウイルス感染症(以下「COVID-19」という)に対する多額の財政出動はこの圧力をさらに強める可能性があります。我が国においては、高齢化の更なる進展に伴う医療費の増加を見越した医療保険制度の改革が進められており、医療用医薬品については2021年度より毎年薬価改定が実施されるなど、これら行政施策の動向が業績に影響を与える可能性があります。また、医薬品の開発、製造などに関連する国内外の規制の厳格化により、追加的な費用の発生や製品が規制に適合しなくなる等の事態が、業績に影響を与える可能性があります。 さらに、COVID-19に対処するために様々な規制や制度が追加等されておりますが、今後COVID-19パンデミックの状況等によりそれらが変更され、業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、革新的な医薬品等を社会が許容できる価格で提供し、社会保障の維持に貢献することを重視する一方で、創出したイノベーションの価値を示す科学的根拠となるエビデンスの構築に努めるとともに、国内外の業界団体活動を通じてイノベーションの価値を訴求する取り組みを推進しております。また、薬価制度を含む医療保険制度改革や医薬品及びワクチン等の研究開発、製造、販売等に関する政策動向について常に最新の情報を入手し、その変化に迅速かつ適切に対処するよう努めております。
(2)副作用等に関するリスク
医薬品は、世界各国の所管官庁の厳しい審査を受けて承認・販売されておりますが、市販後に予期せぬ副作用等の発生により販売中止、製品回収などの事態に発展し、業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、副作用情報を入手した場合、医薬品情報担当者に限らず全社員が適切に報告するシステムを構築し、毎年全社員への教育を実施しております。収集した情報を迅速に評価・分析し必要な安全対策を実施することで、予期せぬ副作用等の拡大や被害を最小限に抑えるよう努力しております。なお、副作用等に基づく医療被害補償に関しては、保険に加入しておりますが、それに伴うレピュテーションの低下などに起因する売上減少に関しては予想できておりません。
(3)研究開発に関するリスク
医薬品の研究開発には、多大な経営資源の投入と時間を必要とします。また、医薬品が実際に上市され、売上を計上するまでには様々な不確実性が存在します。さらに、世界的なCOVID-19パンデミックを解決するべく、ワクチン、治療薬の研究開発が異次元のスピードで進められ、業界内において医薬品の研究開発のスピードが劇的に速まっており、その対応如何では企業価値を毀損することもリスクとして想定しなければなりません。
当社グループでは、長年にわたり蓄積した疾患領域の強み、低分子創薬の基盤を活かし、効率的な創薬研究を展開することで、グローバルでもトップレベルの研究開発生産性を維持・向上させてまいりました。COVID-19パンデミック下において、過去に類を見ないスピードでワクチン・治療薬の研究開発が進められ、海外他社に先行を許しましたが、当社グループにおいても研究基盤と創薬のノウハウを活かし、アカデミア・外部機関と連携し、当社グループの強みを融合させるとともに、優先度を考慮した大幅なリソースシフトとスピーディな意思決定を行うことで研究開発の加速を実現させております。また、得られた知見をCOVID-19以外の研究開発全体に拡大することによって、更なる研究開発生産性の改善に結びつけてまいります。一方で、創薬成功確率の更なる向上に向けては、経営資源の適正な配分、低分子以外の創薬モダリティ、すなわち中分子医薬や抗体医薬のような新しい創薬技術の強化が必要となります。そのため、COVID-19関連(治療薬、ワクチン等)はもとより、当社グループが注力する創薬プログラムや開発化合物を明確にし、経営資源を集中的に投下するとともに、多様なベンチャーやアカデミア等とのアライアンスを活用しつつ、ペプチド医薬、ワクチン、細胞医療(再生医療)といった技術の獲得に注力しております。また、多額の費用を要する臨床開発におけるリスク低減に向けて、データと経験に基づく試験計画のデザイン、試験結果に基づく厳格な見極めを適宜行い、適切な開発可否判断により開発の生産性を高めております。さらに、化合物の導入や導出により研究開発の加速や価値最大化を図り、各国政府等の公的機関からの補助金を活用するなど、不確実性に対する様々なリスク低減に取り組んでおります。
(4)特定製品への依存に関するリスク
インチュニブの製品売上収益及び、テビケイ、トリーメク等のHIV製品のロイヤリティー収入が、売上収益合計の約57%(2022年3月期現在)を占めております。これらの品目において、知的財産権(特許権)の満了及びそれに伴う後発品の発売、薬価改定や競合品の出現、その他予期せぬ事情により売上減少や販売中止となった場合には、業績に影響を与える可能性があります。
これら医薬品事業において必然又は予期せぬ形で起こり得るリスクに対して、薬価制度や競合状況等の最新情報をもとに、次なる製品群の市場投入や契約の見直し等の打ち手を検討し、その影響の低減に努めております。また、薬価制度の大幅な見直し等、事業の継続性に大きな影響を与える議論がなされる際は、(1)に記載のとおり、イノベーション創出の重要性とその価値を訴求すべく、業界団体で連携して意見の表明等を行っております。さらに、上記の事業リスクを孕む従来の医薬品中心の事業から、ワクチン事業やデジタルなどの最新技術を駆使した新たな概念の医薬品などを含む、ヘルスケアサービス全般を提供できる企業へと事業の変革を進め、リスクの低減に努めてまいります。
(5)他社とのパートナーシップに関するリスク
医薬品の研究、開発、製造、販売等において、共同研究、共同開発、化合物や技術の導出入、共同販売等、様々な形で他社との提携を行っております。何らかの事情により提携先との契約が変更・解消され、これら企業との提携に遅延又は停滞等が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、提携に際し多方面からの分析・評価を行ったうえで、提携可否を判断しております。また、契約締結においては、発生しうるリスクを想定し、これを低減するための協議と合意形成に努め、その内容を契約書に定めております。さらに、提携中も提携先との間で様々な機能・階層を通じた強固なガバナンス体制を構築し、提携におけるリスクの把握と解決策の協議を密に行い、必要な打ち手を講じることで、業績への影響を最小化するよう努めております。
(6)サプライチェーンに関するリスク
当社グループは、医薬品を安定的に供給することを使命としておりますが、紛争、自然災害、パンデミック及びESGに関わる課題など様々な要因によりサプライチェーンに混乱が生じた場合に、医薬品の安定供給に支障をきたし患者様の健康に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、優先して供給すべきBCP(事業継続計画)品目を設定して定期的に見直すとともに、製品の保有在庫量について独自の基準を設定し、余剰在庫確保等の対応により原材料や製品の供給混乱リスクに備えております。また、地政学リスクの高い原材料は複数国のサプライヤーを選定して購入することにより安定供給を果たしております。さらに、セフェム系抗生剤等、原材料の購入先が限られる品目については、原薬の国内製造の体制構築を進めており、将来のサプライチェーンリスクの低減に努めております。
加えて、「シオノギグループ調達ポリシー」及び「シオノギグループビジネスパートナーに求める行動規範」に則り、サプライヤーを含むビジネスパートナーにも、当社グループの行動憲章に基づく活動を依頼しており、当社グループを含めたサプライチェーン全体でリスクの低減に努めております。
(7)品質に関するリスク
当社グループは、厳格な製造・品質管理のもと製品の製造及び委託製造を行っておりますが、製造プロセスにおける不備等の要因により重大な品質問題が発生した場合には、製品回収、行政処分、社会的信用性の低下等により、業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、シオノギグループ品質ポリシーを2015年に制定し、海外グループ会社を含め、法規制を遵守しグローバルな基準と要件を満たす品質保証体制を維持し、製品の品質を担保することに取り組んでおります。その一環として「Shionogi Global Quality Week」を開催し、グループ会社を含めた全社員に対して「品質」の重要性の浸透を図っております。また、製造所でのQuality Cultureの醸成を進めるためのアンケート実施と、その結果を受けたキャラバン活動も行っております。
当社グループ製品のグローバルな製造においては、医薬品等の製造管理及び品質管理の基準(GMP)や医薬品規制調和国際会議(ICH)ガイドライン等の薬事関連法規に準拠しており、厚生労働省、米国食品医薬品局(FDA)や欧州医薬品庁(EMA)等の所管当局の査察を受け、許可をいただいております。予期せぬ重大な品質問題が発生した場合は、速やかに評価し、製品品質向上及び顧客満足提供のための最善の意思決定を行うように努めております。
(8)ITセキュリティ・情報管理に関するリスク
当社グループでは、社内外の各種ITシステムを利用し、かつ個人情報を含む多くの機密情報を保有しております。従業員及びアウトソーシング企業等の不注意又は故意による行為、あるいは悪意をもった第三者によるサイバー攻撃やウイルスの感染等によるシステムの停止及び個人情報漏洩等のセキュリティ上の問題が発生した場合、事業活動、経営成績及び財政状態、信用に重大な影響を及ぼし、更には損害賠償請求等の法的な損害や、事後対応に係る費用等が発生する可能性があります。
本リスクを低減するために、情報管理を統括する責任者として情報の保全及び情報セキュリティの確保に関する方針を定めるCIO(Chief Information Officer)、データ及び文書類の利用並びに管理を統制する責任者としてCDO(Chief Data Officer)、IT運営の責任者としてグローバルITヘッドをそれぞれ任命し、法規制やガイドラインを踏まえた情報管理に関する規程等を整備し、従業員へ情報管理の重要性を周知徹底しております。また、個人情報に関しては、「シオノギグループプライバシーポリシー」を策定し、個人情報の重要性に対する認識及び個人情報の保護に関する法令を遵守する必要性を従業員に周知しております。
加えて、サイバー攻撃や大規模災害等の危機事象が発生した際の事業継続をより確実に遂行するためのIT-BCP(事業継続計画)体制構築のプロジェクトを推進し、ITインフラの整備、情報セキュリティ基盤の強化・運用の改善を図るとともに、台湾拠点におけるサイバー攻撃の実例から、再発防止及び未然防止に向けた対策として、海外拠点を含め全社で実施したセキュリティアセスメントの結果に基づく当社グループ全体でのネットワーク体制の抜本的見直し等の対策を行っております。
(9)人材確保・育成に関するリスク
当社グループでは、経営ビジョンの実現に必要な多様な人材の確保・育成に努めております。雇用情勢の変化やESG経営への要請の高まり等の環境変化に加え、ポストコロナ時代を見据えた働き方の変化により、労働に対する価値観や必要となる専門性も変わりつつあります。そのような中では、環境変化を好機と捉え社会課題の解決を加速させる人材、HaaS(Healthcare as a Service)企業として持続的な成長を目指している当社グループのトランスフォーメーションを具現化できる人材、全社視点で論理的に考えグループの高効率経営を支える人材などが求められますが、それら人材を十分に確保・育成できない場合は、組織運営が実現できず、中長期的には当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
社会に新たな価値を生み出し企業価値を高めるために、何よりも大切な資本は従業員であると当社グループは考えております。STS2030の達成に向けて、新たに定めた人材像「Shionogi Way:一人ひとりが他者を惹きつける尖った強みを持ち、新しいことにチャレンジを続ける人」を実現するために、自ら成長していく機会をつかむための環境整備や自己投資支援の充実、育成を支えるマネジャーへの重点トレーニングに加え、STS2030で目指すHaaS企業の実現に資する人材育成プログラムの一つであるIT/デジタル技術活用による業務変革/価値創造トレーニングなど、種々の施策を実行することで人材育成の強化を図っております。さらに、経営トップ自らが開催する社長塾や、経営幹部候補者のグループ会社役員への登用による会社経営の実践を通じて、将来の経営幹部育成にも取り組んでおります。また、従業員個々のスキルアップと柔軟な働き方を推進していくため、所定労働時間を155時間から140時間に変更し、15時間裁量給と選択週休制度(週休3日)の導入に加え、一部の副業を認めました。これらの取り組みにより、多様な経験を持った従業員の確保につなげたいと考えております。
(10)環境・安全に関するリスク
医薬品の研究、開発、製造の過程等で使用・生成する物質には、人体や生態系に影響を及ぼすものがあります。事業活動を行う過程において環境汚染やそれに伴う被害等が顕在化した場合、施設の一時閉鎖や対策・復旧費用の発生、法的責任を負うこと等により、当社の信用又は業績に影響を与える可能性があります。2021年1月に発生しましたシオノギファーマ(株)金ケ崎工場における溶剤ジクロロメタンの漏出に関しては、土壌からの回収とともに敷地内での分布状況の把握、移動阻止による拡散防止に努めており、現時点においても工場敷地外への漏洩は確認されておりません。敷地外への漏洩のリスクに対し、今後も継続して監視活動を行い、適切な対応を実施いたします。環境・安全衛生に関するリスクを低減するために、当社グループ統括管理体制及び管理規程を設定し、法令遵守はもとより、より厳しい管理基準・目標を策定し、対応策の策定・実行とそれらの適切性の確認を行っております。加えて、サプライヤーにも同様の対応を依頼しており、当社グループを含めたサプライチェーン全体でリスクの低減に努めております。
さらに、製薬企業として革新的な医薬品を創出し社会課題の解決に努めるだけでなく、国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)に代表されるグローバルなフレームワークに沿った取り組みを進めることは、地球の持続的可能性のためにも重要であると考えております。具体的には、環境マテリアリティ(重要課題)として特定した「薬剤耐性(Antimicrobial Resistance:AMR)」や気候変動、プラスチック廃棄物対策などに長期目標を設定し、サステイナビリティ課題に取り組んでおります。特に気候変動においては、温室効果ガスの削減目標を設定し、「パリ協定の水準に科学的に整合する温室効果ガス排出削減目標(Science Based Targets:以下「SBT」という)」の認証を取得いたしました。2030年のSBT達成を目標に、電力の再生可能エネルギーへの完全転換を進めております。さらに、今年度は「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:TCFD)」提言に賛同し、気候変動がもたらすリスク・機会が経営にどのような影響を与えるかについて、シナリオ分析、財務影響試算や対応策検討を通じて、当社グループのレジリエンスを高める活動を進めており、結果は適宜開示して参ります。
(11)自然災害やパンデミックに関するリスク
突発的に発生する大地震や気候変動に伴う暴風雨、洪水等の自然災害、不慮の事故、パンデミックの発生等による事業所の閉鎖、又は工場の操業停止に伴って、市場への製品供給に支障をきたした場合、業績に重大な影響を与える可能性があります。また、研究所や臨床試験実施施設等が被害を被った際には、創薬研究又は臨床開発の進展に影響が生じる可能性があります。 さらに、安全性情報の提供や収集にも影響する可能性があります。
そのため、経営層が重要な業務を明確にしたうえで、自然災害及びパンデミックに対応するBCP(事業継続計画)を組織単位で策定しており、継続的な訓練の実施や定期的な計画の見直しを行うことにより、有事への備えを強化しております。また、当社グループ工場のみならず、重要なサプライヤーについても、自然災害の影響や、その他環境・安全に対する状況等について、EHS(環境・安全衛生)監査等を通じて確認しており、必要に応じて改善要求をしております。
(12)知的財産に関するリスク
当社グループの製品は、知的財産権(特許権等)により保護されて利益を生み出しますが、種々の知的財産が充分に保護できない恐れや第三者の知的財産権を侵害する可能性があります。
そのため、保有する知的財産の価値を毀損することのないよう、知的財産権を適切に管理する体制を整え、第三者からの権利侵害にも継続的に注意を払っております。また、事業活動にあたっては、侵害予防調査の実施や、導出入活動における知財デューデリジェンスの実施など、侵害予防のための体制を整え、第三者の知的財産権を侵害することのないように注意を払っております。これらを通じて、知的財産に関するリスク低減に努めております。
(13)訴訟に関するリスク
事業活動に関連して、医薬品の副作用、製造物責任、労務問題、公正取引等に関して訴訟を提起される可能性があり、その動向によって、当社グループの信用又は業績に影響を与える可能性があります。
本リスクを低減するために必要な社内体制を構築するとともに、適宜、弁護士や弁理士などの専門家と協議のうえ、適切な対応をとっております。現在、係争中の主な訴訟に関しては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (2)その他 ②重要な訴訟」に記載しております。
(14)金融市場及び為替動向に関するリスク
予測の範囲を超える金融市場や為替市場の変動があった場合には、年金資産の運用への影響、退職給付債務の増加や海外提携先からのロイヤリティー収入への影響等、業績、財産に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、年金資産を複数の運用商品に分散投資することで、年金資産の収益悪化により退職給付債務が増加するリスクの低減に努めております。また、外貨建取引及び外貨建金銭債権債務の為替変動リスクや金利変動リスクに対して、デリバティブ取引を活用して対応しております。
(15)コンプライアンスに関するリスク
当社グループの事業活動を遂行するにあたって、薬事規制や製造物責任等の様々な法規制の適用を受けるだけでなく、人々の健康や生命に直結する医薬品産業として、社会から極めて高い倫理観に基づく行動が求められます。そのため、法令違反だけでなく、社会の要請に反するような行動は、当社グループに対するステークホルダーからの信頼の失墜や低下を招き、結果として業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、コンプライアンスの遵守を常に最優先事項として認識し、シオノギグループ行動憲章において倫理的で責任ある行動を約束するとともに、当社グループが実現したいVisionの達成に不可欠な価値観であるValuesの一つにコンプライアンスの徹底を定めております。
シオノギグループコンプライアンスポリシーを制定し、コンプライアンス委員会、内部通報窓口(社内、社外)を設置するとともに、四半期ごとの社長メッセージの中で必ずコンプライアンスについて言及し、従業員のコンプライアンス意識の強化を図っております。コンプライアンス委員会は、代表取締役社長をコンプライアンス委員長として年4回開催し、コンプライアンス上の課題を協議し、必要な教育(ハラスメント・情報漏洩・贈収賄防止など)や取り組みを実施しております。
(16)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大
COVID-19の感染拡大に伴い事業活動が制限された場合、原材料の調達などのサプライチェーンの停止・停滞により、医薬品の安定供給に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、研究・臨床試験の遅延やMRによる情報提供等事業活動の制限を受けることにより、新薬承認申請や発売、市場浸透、医薬品の安全性情報や適正使用情報の収集・提供に重大な影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクを低減するために、感染拡大防止に向けた出社率抑制や生産・研究部門における社内検査体制の構築による濃厚接触者の早期発見など、政府・行政の要請に応えつつ、生産性を維持・向上するために必要な新しい働き方の整備に取り組んでおります。また、コロナ禍における情報提供活動は、政府・行政の発出するガイドラインに基づき、情報提供の仕組みや内容を変更して対応しております。加えて、感染拡大による緊急時においても事業を継続し製薬企業として社会的責任を果たすため、BCP(事業継続計画)を活用し、自社医薬品の安定供給を最優先とした対応を進めております。
COVID-19の拡大による影響と当社の取り組みの詳細については、第2 事業の状況「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、及び「5 研究開発活動」をご参照ください。
上記以外にも、事業活動に関連した様々なリスクがあり、ここに記載されたものが当社グループのすべてのリスクではありません。