有価証券報告書-第71期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

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2019/06/21 9:44
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91項目

研究開発活動

当社グループは、「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」という企業理念のもと、これまで克服されていない病気や、いまだ患者さんの治療満足度が低く、医療ニーズの高い疾患領域に挑戦し、独創的かつ画期的な医薬品の創製に向けて努力を積み重ねています。
現在、開発パイプラインには、オプジーボに加えて、抗体医薬品を含む抗がん剤の新薬候補化合物をはじめ、変形性関節症の治療薬候補などがあり、早期の上市に向けて開発を進めています。なかでも、がん治療の領域はアンメット・メディカル・ニーズが高いことから、重要な戦略分野と位置づけています。
創薬研究においては、特長のある生理活性脂質や独自の標的分子に着目して画期的な新薬候補化合物の創製を目指す創薬アプローチ「化合物オリエント」をベースに、新たに重点領域毎に設置した「オンコロジー研究センター」、「イムノロジー研究センター」、「ニューロロジー研究センター」、「スペシャリティ研究センター」で、それぞれの疾患ノウハウを蓄積し、医療ニーズを適切に捉えることで、医療インパクトのある画期的新薬の創製につなげることに取り組んでいます。さらに、オープン・イノベーションをグローバルで積極的に展開し、世界最先端の技術や情報を取り入れ、世界トップクラスの研究者とのネットワークを構築するとともに、従来の低分子創薬に加え、抗体や細胞、ウイルスなどの生物製剤も利用することで、医療現場に革新をもたらす新薬の創製を目指します。また、ライセンス活動による有望な新薬候補化合物の導入にも努め、研究開発活動の一層の強化に取り組んでいます。
当連結会計年度における研究開発活動の主な成果(前連結会計年度末以後、本年4月下旬までのものを含む)は、以下のとおりです。
[開発品の主な進捗状況]
<がん領域>「オプジーボ」(他剤との併用療法を含む)
悪性黒色腫
・昨年5月、抗悪性腫瘍剤「ヤーボイ」との併用療法について、国内で「根治切除不能な悪性黒色腫」を効能・効果とした承認を取得しました。
・昨年8月、国内で「悪性黒色腫の術後補助療法」を効能・効果とした承認を取得しました。
非小細胞肺がん
・本年1月、台湾で「プラチナ製剤による化学療法の治療歴を有する非小細胞肺がん」の効能・効果を追加する承認を取得しました。
腎細胞がん
・昨年8月、抗悪性腫瘍剤「ヤーボイ」との併用療法について、国内で「根治切除不能又は転移性腎細胞がん」を効能・効果とした承認を取得しました。
・抗悪性腫瘍剤「ヤーボイ」との併用療法について、昨年10月に韓国で、昨年11月に台湾でそれぞれ「未治療の中及び高リスク進行期腎細胞がん」を効能・効果とした承認を取得しました。
・昨年8月、マルチキナーゼ阻害薬「Cabozantinib」との併用療法について、国内で「未治療の進行性又は転移性腎細胞がん」を対象としたフェーズⅢ試験を開始しました。
悪性胸膜中皮腫
・昨年8月、国内で「がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫」を効能・効果とした承認を取得しました。
結腸・直腸がん
・本年3月、国内で「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がん」を効能・効果とした承認申請を行いました。
膀胱がん
・本年1月、IDO1阻害薬「ONO-7701」との併用療法について、国内で「膀胱がん」を対象としたフェーズⅢ試験を開始しました。
膵がん
・昨年7月、抗CSF-1R抗体「ONO-4687/Cabiralizumab」との併用療法について、国内で「膵がん」を対象としたフェーズⅡ試験を開始しました。
多発性骨髄腫
・本年1月、国内で「多発性骨髄腫」を対象としたフェーズⅡ試験を実施していましたが、戦略上の理由により開発を中止しました。
固形がん
・昨年8月、Axl/Mer阻害薬「ONO-7475」との併用療法について、国内で「進行性又は転移性固形がん」を対象としたフェーズⅠ試験を開始しました。
・昨年10月、PEG化インターロイキン-2「ONO-7911」との併用療法について、国内で「固形がん」を対象としたフェーズⅠ試験を開始しました。
・昨年8月、抗CCR4抗体「モガムリズマブ」との併用療法について、国内で「固形がん」を対象としたフェーズⅠ試験を実施していましたが、期待していた有効性が確認できなかったため開発を中止しました。
その他
・昨年8月、国内における用法・用量を体重換算用量から固定用量に変更する承認を取得しました。
なお、「オプジーボ」の日本・韓国・台湾以外の地域における開発・販売は、パートナー企業であるブリストル・マイヤーズ スクイブ社が行っています。
「ビラフトビ」および「メクトビ」
・昨年4月、BRAF阻害薬「ONO-7702/エンコラフェニブ」およびMEK阻害薬「ONO-7703/ビニメチニブ」の併用療法について、国内で「BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫」を効能・効果とした承認申請を行い、本年1月に承認を取得し、本年2月にBRAF阻害剤「ビラフトビ」およびMEK阻害剤「メクトビ」として新発売しました。
「デムサー」
・昨年4月、チロシン水酸化酵素阻害薬「ONO-5371/メチロシン」について、国内で「褐色細胞腫のカテコールアミン分泌過剰状態の改善並びにそれに伴う諸症状の改善」を効能・効果とした承認申請を行い、本年1月に承認を取得し、本年2月にチロシン水酸化酵素阻害剤「デムサー」として新発売しました。
「カイプロリス」
・本年3月、「カイプロリス」について、国内で「再発又は難治性の多発性骨髄腫」での新たな用法・用量を追加する承認申請を行いました。
「ONO-7643/アナモレリン」
・昨年11月、グレリン様作用薬「ONO-7643/アナモレリン」について、国内で「がん悪液質における体重減少及び食欲不振の改善」を効能・効果とした承認申請を行いました。
「ONO-4059/チラブルチニブ」
・昨年7月、Btk阻害薬「ONO-4059/チラブルチニブ」について、国内で「原発性マクログロブリン血症及びリンパ形質細胞リンパ腫」を対象としたフェーズⅡ試験を開始しました。
「ONO-7705」
・昨年6月、XPO1阻害薬「ONO-7705/Selinexor」について、国内で「多発性骨髄腫及び非ホジキンリンパ腫」を対象としたフェーズⅠ試験を開始しました。
「ONO-7579」
・昨年8月、Trk阻害薬「ONO-7579」について、欧米で「固形がん」を対象としたフェーズⅠ/Ⅱ試験を実施していましたが、戦略上の理由により開発を中止しました。
<がん領域以外>「オパルモン」
・昨年6月、末梢循環改善剤「オパルモン」について、導出先のMeiji Seika ファルマ株式会社が、タイにおいて「腰部脊柱管狭窄症」および「閉塞性血栓血管炎」を効能・効果とする承認を取得しました。
「オノアクト」
・昨年7月、β1遮断剤(短時間作用型)「オノアクト」について、国内で「生命に危険のある不整脈(心室細動、血行動態不安定な心室頻拍)で難治性かつ緊急を要する場合」を効能・効果とした承認申請を行い、本年3月に承認を取得しました。
「リバスタッチ」
・昨年9月、アルツハイマー型認知症治療剤「リバスタッチパッチ」について、国内で新基剤製剤の承認申請を行い、本年3月に承認を取得しました。
「フォシーガ」
・本年3月、「フォシーガ」について、国内で「1型糖尿病」に対する効能・効果および用法・用量の追加の承認を取得しました。
「オレンシア」
・本年3月、「オレンシア点滴静注用」「オレンシア皮下注」について、国内で関節リウマチにおける効能・効果に「関節の構造的損傷の防止」を追加する承認申請を行いました。
・本年1月、「オレンシア点滴静注用」について、国内で「ループス腎炎」を対象としたフェーズⅢ試験を実施していましたが、戦略上の理由により開発を中止しました。
「オプジーボ」
・本年1月、「オプジーボ」について、米国および国内で「敗血症」を対象としたフェーズⅠ試験およびフェーズⅠ/Ⅱ試験を実施していましたが、それぞれ戦略上の理由により開発を中止しました。
・本年1月、「オプジーボ」について、欧州および米国で「C型肝炎」を対象としたフェーズⅠ試験を実施していましたが、戦略上の理由により開発を中止しました。
「ONO-1162/イバブラジン」
・昨年12月、HCNチャネル阻害薬「ONO-1162/イバブラジン」について、国内で「洞調律下での安静時心拍数が75回/分以上の慢性心不全」を効能・効果とした承認申請を行いました。
「ONO-2370/オピカポン」
・本年2月、COMT阻害薬「ONO-2370/オピカポン」について、国内で「レポドパ含有製剤との併用によるパーキンソン病における症状の日内変動(wearing-off現象)の改善」を効能・効果とした承認申請を行いました。
「ONO-4059/チラブルチニブ」
・昨年11月、Btk阻害薬「ONO-4059/チラブルチニブ」について、国内で「天疱瘡」を対象としたフェーズⅡ試験を開始しました。
「ONO-5788」
・昨年5月、成長ホルモン分泌抑制薬「ONO-5788」について、米国で「先端巨大症」を対象としたフェーズⅠ試験を開始しました。
「ONO-7269」
・昨年9月、FXIa阻害薬「ONO-7269」について、国内で「脳梗塞」を対象としたフェーズⅠ試験を開始しました。
「ONO-7684」
・本年1月、FXIa阻害薬「ONO-7684」について、欧州で「血栓症」を対象としたフェーズⅠ試験を開始しました。
「ONO-8055」
・昨年8月、プロスタグランディン受容体(EP2/EP3)作動薬「ONO-8055」について、国内で「低活動膀胱」を対象としたフェーズⅠ試験を実施していましたが、戦略上の理由により開発を中止しました。
[創薬/研究提携活動の状況]
・昨年5月、慶應義塾大学、高知大学、医薬基盤・健康・栄養研究所、田辺三菱製薬株式会社、第一三共株式会社とともに、免疫炎症性難病を対象とした創薬研究を行うことを目的に、「免疫炎症性難病創薬コンソーシアム」を設立し、共同研究を開始しました。
・昨年9月、米国のフェイト社と、がんを対象とした iPS 細胞由来他家 CAR-T 細胞治療薬の創製を目的とした創薬提携契約を締結しました。
・本年3月、米国のトゥザー社と、同社独自の人工知能(AI)技術を活用した神経疾患領域におけるアンメット・ニーズを満たす革新的な治療薬の創製を目的とした研究提携契約を締結しました。
・本年3月、英国のキャンサーリサーチ UK およびライフアークとがん免疫領域での戦略的創薬提携契約を締結しました。
・本年3月、フランスのベクトルス社と神経変性疾患における新薬候補化合物の創製を目的とした創薬提携契約を締結しました。
[ライセンス活動の状況]
・本年1月、カナダのリペア社と、同社が開発中のPol-theta(Polθ)阻害剤について、日本、韓国、台湾、香港・マカオ(中国本土は除く)およびASEAN諸国で独占的に開発および商業化するライセンス契約を締結しました。
当連結会計年度の研究開発費の総額は、70,156百万円であります。
なお、当社グループの事業は医薬品事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載を省略しております。