有価証券報告書-第29期(平成30年4月1日-平成30年12月31日)

【提出】
2019/03/28 14:55
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57項目

事業内容

<当社グループの事業>当社グループは、臨床ステージへ移行した製品を有するバイオ医薬品企業であり、重要なアンメットメディカルニーズを満たす革新的な医薬品の研究開発に重点的に取り組んでいます。当社グループは、日本屈指の国際的なリーディングバイオ医薬品企業になることをビジョンに掲げています。
当社グループは特に、体内の細胞や組織に存在する内在性膜タンパク質のスーパーファミリーである、Gタンパク質共役受容体(以下「GPCR」)を標的とする新規の低分子、ペプチド並びに抗体医薬品の創薬に注力しています。GPCRは、幅広い生体内反応に影響を与えるシグナル伝達経路に関係し、さまざまな疾患や障害に関与する重要な医薬品標的となります。そのため、GPCRは現在市販されている医薬品の約34%(※)に関係しています。またGPCRは約400個の非嗅覚受容体を有する最も大きなヒト膜タンパク質ファミリーを形成し、そのうち224個は未だ探索されていないため、多くの創薬可能性を秘めています。
現代医学における最も重要な医薬品標的の一つであるにもかかわらず、GPCRを標的とする創薬は依然として困難なものとなっています。GPCRに関する入手可能な構造情報によると、低分子医薬品の開発が可能であると考えられています。しかし、抽出されると不安定になるという性質上、これまではGPCRを細胞膜から抽出・構造解析を行うことは難しく、しばしば構造特定は大変困難でした。また、このようにGPCRが不安定であるという性質は、抗体を得るために必要となる、安定した抗原を生成する妨げとなっていました。
(※) Hauser A. S., Attwood M. M., Rask-Andersen M., Schiöth H. B., Gloriam D. E. (2017). Trends in GPCR drug discovery: new agents, targets and indications. Nat. Rev. Drug Discov. 16, 829–842. 10.1038/nrd.2017.178
<当社グループのソリューション>当社グループは独自のStaR®(Stabilized Receptor)技術を用いて、GPCRの構造を高度に解析することにより、GPCRを「解き明かす」技術を開発しました。StaR®技術は、リガンド結合部の外側に少数の点変異を起こさせ、細胞膜からGPCRを抽出した後でも立体構造を保持できるようにするもので、効果的にGPCRを安定化させることができます。その結果得られる安定化されたタンパク質(StaR®タンパク質)は、同種の「天然型」タンパク質、つまり変異されていないタンパク質よりはるかに安定しています。これらのStaR®タンパク質は比較的容易に精製でき、さまざまなヒットディスカバリー及び生物物理学的アプローチに供することができます。例えば、これらのStaR®タンパク質は、詳細なX線又は他の構造解析のための結晶化が可能であり、天然型タンパク質を用いた創薬に比べて、より安全性と有効性が高く前臨床及び臨床段階での開発中止率が低い革新的医薬品の設計の手助けとなります。また、StaR®技術による安定化タンパク質は、in vitroでのファージディスプレイを用いたスクリーニングやin vivoでの免疫化にも使用可能で、生物製剤の探索にも利用可能です。
<当社グループのGPCRパイプライン>当社グループは、StaR®技術を活用した構造ベース創薬(以下「SBDD」)により、低分子化合物及びペプチドの創薬やmAb探索のための抗原作成ができるようになりました。当社グループは、独自の技術と拡張性の高いSBDDを活用し、神経変性疾患及び神経疾患領域、がん免疫から代謝疾患、希少疾患領域においてファースト・イン・クラス又はベスト・イン・クラスの医薬品になる可能性があると考えられる、GPCRを標的とした候補薬のパイプラインを創出してきました。
当社グループは、(ⅰ)大手グローバル製薬企業との提携、(ⅱ)他の革新的な製薬企業及びバイオ医薬品企業と行う研究開発活動における提携、(ⅲ)当社グループ独自で行う候補薬の開発、という均衡の取れたビジネスモデルを持っています。この均衡の取れた戦略は、複数の提携を行うことによるリスクの分散と同時に、複数のプログラムからの収益創出につながるものであり、中期的には、新規提携に伴う一時金を創出する一方、引き続き、既存の提携先からのマイルストン及びロイヤリティに関する収益を受領する機会を提供すると考えています。
当社グループの提携パイプラインには、Allergan Pharmaceuticals International Limited、AstraZeneca UK Limited等の医薬品・バイオテクノロジー業界有数の大手製薬企業に導出している候補薬及びPfizer Inc.、第一三共株式会社、MorphoSys AG等の企業と共同プロジェクトを行っている候補薬が含まれます。当社グループの提携先は、ムスカリンやアデノシンA2aプログラム等、当社グループがSBDDを活用して発見した複数の候補薬の開発を行っています。これらのような戦略的な提携により、当社グループのGPCRに関する技術とSBDDの可能性が実証され、新規提携に伴う一時金及びマイルストンに関する収益を得られると考えています。
また提携パイプラインには、現在共同開発中の候補薬、又は利益とリスクを共有する形で提携パートナーと共同開発する予定の候補薬も含まれています。当社グループは、特定の新規抗体治療薬及びペプチドの創薬、研究開発及び商品化のために、Kymab Limited及びペプチドリーム株式会社と戦略的共同開発契約を締結しています。
当社グループの自社開発パイプラインは、当社グループ独自で開発を行っており、独自での販売まで目指す可能性のある候補薬で構成されています。今後は、当社グループでは継続が難しいものの価値の高い化合物については、大手製薬企業の手に委ねることで、プログラムの臨床試験入りをいち早く実現させることを目指す可能性があります。
<その他の当社グループの事業活動>GPCR関連の創薬・開発における当社グループの中心的な活動に加えて、既存ビジネスとしてNovartis International AGの呼吸器疾患製品Seebri®Breezhaler®及びUltibro®Breezhaler®のグローバルでの販売からのロイヤリティ収入を受領しており、収益額は増加傾向にあります。ロイヤリティ収入は、当社グループの戦略的目標を支える希薄化を伴わない資本の源泉となっています。当社グループは、Novartis International AGが喘息を適応として第Ⅲ相臨床試験中の、新規トリプルコンビネーション療法であるQVM149も将来潜在的な収益源になると考えています。
2017年5月、当社グループは、遺伝子活性化メカニズムを用いた新しい治療段階である小分子活性化RNA(saRNA)を用いた新規治療法を開発している英国の民間バイオテクノロジー企業であるMiNA (Holdings) Limitedに戦略的出資をしました。当社グループは同社の重要な株主として引き続き同社を支持し、同社に対する投資について引き続きモニターを行っていきます。
当社グループは、当社(そーせいグループ株式会社)及び連結子会社6社により構成されており、事業セグメントは、「医薬事業」単一セグメントとしております。
区分会社名事業内容
全社共通業務等そーせいグループ株式会社グループ経営戦略の企画立案
子会社の管理部門業務受託
医薬事業株式会社そーせい医薬品の研究開発、販売
そーせいコーポレートベンチャー
キャピタル株式会社
再生医療ファンドの運営
Sosei RMF1投資事業有限責任組合再生医療関連のバイオベンチャー企業への投資
Sosei R&D Ltd.ライセンス等による海外開発、事業化推進
Heptares Therapeutics Ltd.GPCRの構造解析、初期のリード化合物の創出、独自開発のStaR®技術による候補品探索
Heptares Therapeutics Zurich AGGPCR関連基盤技術を利用した新規医薬品の構造ベース創薬、スクリーニング、抗体医薬品の研究開発の促進

Sosei R&D Ltd.は2018年11月29日付で、すべての事業をHeptares Therapeutics Ltd.に譲渡いたしました。提出日現在において、Sosei R&D Ltd.は清算手続き中です。
Heptares Therapeutics Zurich AGは、2019年度においてGPCR関連基盤技術をHeptares Therapeutics Ltd.に移転した後に解散することを、2018年11月に決定しております。
そーせいコーポレートベンチャーキャピタル株式会社は、2019年1月1日付で、そーせいCVC株式会社に名称を変更しております。
上記に加え、JITSUBO株式会社及びMiNA (Holdings) Limitedの2社を持分法適用関連会社としております。
当社は、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第49条第2項に規定する特定上場会社等に該当します。このため、インサイダー取引規制における重要事実の軽微基準については連結ベースの数値に基づいて判断することとなります。
当社グループの事業系統図は、次のとおりです。
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