有価証券報告書-第40期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/30 9:02
【資料】
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【項目】
138項目

研究開発活動

当社グループは、製品開発型のバイオベンチャー企業として経営資源を医薬品研究開発へ積極的に投資しております。当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は188,585千円であり、各事業の研究開発費については、抗体関連事業は93,330千円、遺伝子組換えカイコ開発事業は95,255千円となりました。各事業における研究開発活動の内容等は次のとおりであります。
事業別の研究開発活動
① 抗体関連事業
〇医薬品シーズとしての可能性がある研究開発
イ Abcontek社と、ダニ媒介性感染症であるSFTS(重症熱性血小板減少症候群)を治療するための抗体医薬品候補「ACT101」を共同開発し、早期に承認を目指し、2023年度の販売開始を目標としております。なお、このSFTSの治療には、現在、対症療法しかなく、死亡例も出ておりますが、有効な治療薬やワクチンは開発されていません。
ABCONTEK社と合弁会社「株式会社AI Bio」を設立し、現在、外部リソースを活用し製造に適する生産細胞株の構築を実施しております。今後については、導出を視野に入れた研究開発ならびに導出活動を進めてまいります。
現在の状況につきましては、CDMO(医薬品受託開発製造)企業にてマスターセルバンク(MCB)及びワーキングセルバンク(WCB)を製造し、製造条件の最適化をおこない、非臨床試験薬の製造、及びカニクイザルによる非臨床安全性試験を進めております。
ロ 国立大学法人徳島大学と胃や腸の消化管壁の粘膜下にある未熟な間葉系細胞に由来する「肉腫」の一種とされるGIST(消化管間質腫瘍)を診断、治療するための抗体医薬品を研究開発し、製薬企業等への導出等を目指して参ります。現在の状況につきましては、動物実験を踏まえ特許出願を完了し、さらに前臨床試験に向けた準備を進めております。(製薬企業等へのシーズ導出等を目指して参ります。)
〇下記の体外診断用医薬品の上市を目指します。(開発中の主なテーマと進捗状況)
イ 学校法人埼玉医科大学が所有する、難聴・めまいの原因を生化学的に診断できる世界初のバイオマーカー「CTP(cochlintomo-protein)」に関する発明に関して、株式会社コスミックコーポレーションに日本国内での薬事申請・販売の権利を譲渡し、2019年6月26日に体外診断用医薬品製造販売承認申請をおこない、PMDAと協議を行っております。なお、同製品の製造は、当社が行います。なお、株式会社コスミックコーポレーションは、体外診断用医薬品製造販売承認を取得し、現在、保険適用の申請を行ったところです。今後につきましては、保険収載を経て、販売を開始する予定です。
さらに、当社は、学校法人埼玉医科大学と簡便性・迅速性に優れたイムノクロマト法によるCTP測定試薬の開発を共同で行っております。
ロ グルカゴンは、膵臓のランゲルハンス島のα細胞から分泌されるホルモンで、血糖調節因子として知られていますが、ELISA法による測定は類似ペプチドの交叉による影響を受けやすく、正確な測定が難しいとされてきました。両断端に特異的な2抗体を用いた膵グルカゴン特異的測定系の開発により、血中グルカゴン濃度の正確な評価が可能となり、今後、糖尿病の病態や病気を診断するための独立した新しい指標となる可能性が示唆されています。当社は、群馬大学と共同で、血清中グルカゴン値を測定する体外診断用医薬品の開発を行っております。2024年3月期の販売承認申請に向けた研究開発を行っております。
ハ 神経筋疾患患者の尿中に存在するタイチンというタンパク質に対する、神経筋疾患の病気診断・病態のモニタリングマーカーとして、2025年3月期の販売承認申請を目指し、研究開発を行ってまいります。また、販売承認の申請までの間、研究用試薬として販売をするために、認定試薬としての確認申請を行い、承認されましたので、認定試薬として販売を開始しております。
二 赤痢アメーバ症は赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)という寄生性の原虫が原因となって引き起こされる病気で、日本国内において、2012年以降、感染症法に基づく報告数は900例を超えてきており、増加傾向にあります。そこで当社は、簡便な血液検査で赤痢アメーバ感染の有無をチェックできる体外診断用医薬品の開発を行っております。なお、2023年3月期第2四半期に体外診断用医薬品製造販売承認申請に向けて準備中です。
ホ その他
当社グループが所有するアルツハイマー関連及びSFTS関連の抗体を用いた体外診断用医薬品の開発を行っております。
② 遺伝子組み換えカイコ開発事業
当事業は、遺伝子組換えカイコの繭から抗体等のタンパク質を発現させる技術を用いて、種々のタンパク質の産業利用に向けた研究を進めており、研究用試薬から診断薬原料、化粧品原料としての開発を推進してまいります。また、利益の拡大を目指すために、現在製造されている抗体・タンパク質や新規開発しているタンパク質の生産コストの低減が、利益拡大の課題となっており、当該課題の基礎研究に集中してまいります。
(注) 用語解説については、「第4提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に記載しております。