有価証券報告書-第32期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2014/06/27 10:12
【資料】
PDFをみる
【項目】
107項目

事業等のリスク

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの事業活動において、リスクとなる可能性があると考えられる主な事項について記載しております。また、当社グループとして必ずしも重要なリスクとは考えていない事項についても、投資判断の上で、あるいは当社グループの事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家及び株主に対する積極的な情報開示の観点から開示いたします。
当社グループは、これらのリスクが発生する可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社グループの経営状況及び将来の事業についての判断は、以下の記載事項及び本書中の本項以外の記載を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。なお、以下の記載における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において当社グループで想定される範囲で記載したものであります。また、以下の記載は当社株式への投資に関連するリスクの全てを網羅するものではありません。
(1) 会社の事業戦略に関するリスク
① 新規事業の立ち上げについて
当社グループは、企業価値の最大化を追求するため、基盤技術である抗体作製技術からなる従来の診断・試薬事業はもとより、遺伝子組換えカイコ関業及び検査事業を積極的に展開していく方針であります。遺伝子組換えカイコ事業を軌道に乗せるためには相応の事業開発のノウハウが必要でありますが、現状当社にはこのようなノウハウが十分存在するとは言えません。当該事業及び販売先の業界に精通した営業を推進できる人材の確保や他社との提携を含め、ノウハウの蓄積が重要になります。さらに、新設事業では研究開発費が先行することが想定されますので、本事業に係る事業化の遅れは業績を悪化させるおそれがあります。また、検査事業においては、基盤技術である高速液体クロマトグラフィーを用いたリポタンパク質プロファイリング技術によって開拓したR&Dに従事する顧客群に向けて「Lipid」(=脂質)をキーワードとした新たな分析サービスを積極的に展開し、取引単価の大幅な向上を目指す方針であります。新たなサービスを投入するためには、設備ならびに人材への先行投資が必要となるため、本事業に係る事業化の遅れは業績を悪化させるおそれがあります。
② 基礎研究の強化に伴う収益構造及びキャッシュ・フローの変化について
当社グループは、診断・試薬事業及び遺伝子組換えカイコ事業の両事業を主軸としております。当該事業における基礎研究は、研究開発費の負担が大きく、研究開発の成否リスクが高いことに加えて、直ちに収益を生むものではないため、業績及び財政状態を悪化させる可能性があります。
また、このような収益構造の変化に加え、新設事業が順調に立ち上がらない場合には、営業損失や営業キャッシュ・フロ―のマイナスが常態化するおそれもあります。さらに、研究開発テーマの大幅な変更により、従来の設備の改修や除却が必要となるおそれもあります。このような場合、固定資産にかかる減損や除却の実施により、固定資産の帳簿価額が大幅に切り下げられる可能性があります。
③ リポタンパク質プロファイリング技術への依存度について
当社グループの基盤技術は知的財産とノウハウによって守られたリポタンパク質プロファイリング技術であり、これが当社グループの最大の強みであります。しかしながら分析技術の発達によって、より進歩した技術が出現する可能性は否定できません。新たな技術が台頭した場合、当社グループのリポタンパク質プロファイリング技術を基盤とする競争優位性のほとんどが、短期間に失われるおそれがあります。
(2) 各事業に関するリスク
① 研究用試薬市場の特性と収益の伸び悩みについて
研究用試薬の市場は、研究の多様化に対応する必要があるため、製品は多種類かつ一製品当たりの売上は限定的であるという特徴があります。さらに、近年は競合他社との販売競争が激化し、価格低下に拍車がかかってきており、急激な市場の拡大は考えにくい状況にあるものと思われます。
当社グループにおいては、新製品の開発が計画通りに進まなかったり、あるいは新製品の販売動向が期待通りに推移しなかったり、既存製品の製造販売が何らかの要因で縮小又は中止となった場合には、売上が伸び悩み、且つ利益率の低下が生じて、当社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。
② 医薬用関連に関するリスクとパイプラインの概況について
当社グループは、医薬用関連において、治療用医薬品及び診断用医薬品のシーズを探索し、その開発権や製造販売権等の権利を製薬企業に譲渡又は許諾する事業を行っております。すなわち、権利譲渡又は権利許諾の対価として契約金を、また、特許の使用料としてロイヤリティーを譲渡先又は許諾先の企業から受領するビジネスモデルであります。しかしながら、有望なシーズを想定どおりに探索できない場合、探索できたが譲渡又は許諾する企業が見つからない場合、当社グループが想定した契約金やロイヤリティーを確保できない場合、あるいは、譲渡先又は許諾先の企業において候補品の開発の遅滞又は中止となった場合には、マイルストーン契約金やロイヤリティーが計上できず、将来、当社グループの業績及び経営計画に大きな影響を与える可能性があります。なお、、「第1 企業の概況 3 事業の内容」及び「6 研究開発活動」に主要なパイプラインの概況を記載しておりますが、その推進には常に上述のようなリスクが伴い、開発中のパイプラインの成否によって、将来当社グループの業績及び財政状態は大きな影響を受けることとなります。
③ 遺伝子組換えカイコ事業における環境の変化について
遺伝子組換えカイコ事業の元になっている養蚕技術に関しては、わが国における養蚕業の衰退と養蚕農家の高齢化が重なり、その承継が難しくなってきています。さらに、そのような状況下でカイコの飼料も含めた養蚕にかかる物資などの供給体制が、将来にわたって安定的に継続されていくものかどうか不安が残ります。これらが途絶えた場合、事業の継続が困難になります。
(3) 事業遂行上のリスク
① 知的財産権に係る訴訟リスクについて
当社グループの事業を遂行していく中で、他者の知的財産権を使用することも多々あります。当社グループでは適法な手続のもとに他者の知的財産権を使用することとしておりますが、当社グループの認識外で他者の知的財産権を侵害している可能性もあります。当社グループでは、他者の知的財産権への抵触が判明した時点で遅滞なくライセンス契約を締結してきたため、今までに知的財産権の侵害を理由とする訴訟を提起されたことはありませんが、事業の拡大とともにこのようなリスクは増大するものと思われます。当社グループは、知的財産権に関する管理体制をより強化していく方針でありますが、訴訟が提起された場合、当社グループの事業戦略や業績に重大な影響を与える可能性があります。
② 第三者等の侵入について
当社グループの研究所においては、実験動物及び遺伝子組換えカイコが飼育されております。当社グループは、十分なセキュリティー体制の下にこれらの管理を行っておりますが、第三者等の侵入・危害を完全に防ぐことができない場合には、無菌施設内の動物やカイコヘの雑菌の感染等によって、当社グループの事業活動に大きな影響を与える可能性があります。また、第三者等によって誤解を与えるような風評を流布された場合には、当社グループの企業イメージが損なわれる可能性があります。
③ 当社と同一商号を有する海外販売代理店について
当社と同一商号を有する会社が米国及びドイツに存在し、これらの会社は現在、当社の海外販売代理店となっております。しかしながら、当該各社と当社との資本関係及び役員の兼任関係は全くなく、当社が各社の経営について責任を負う必要はありませんが、商号が同一であるため、同一グループであると誤認される可能性があります。当社では、このような誤認が生じないようホームページ上で注意を喚起しておりますが、各社の会社イメージが悪化した場合など、何らかの影響を当社が蒙る可能性がないとは言えません。
④ 為替レートの変動について
当社グループは、診断・試薬事業において、海外企業から研究用試薬等を輸入しているほか、海外販売代理店に対して研究用試薬等を輸出しております。現状、当社グループは、為替予約等による為替リスクのヘッジを行っていないため、為替レートの動向は当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
⑤ 機密情報の流出について
当社グループの事業を遂行する上で、社外の研究者や研究機関との情報交換は有益であると考えており、今後も積極的に情報交換を行っていく方針であります。一方で、他社に機密情報を窃取された場合、企業にとって致命傷となりかねません。このため、当社グループでは、基幹システムやサーバーのセキュリティー強化に加え、情報を外部に開示する際の手続を明確化して組織の末端まで周知徹底させておりますが、万が一機密情報が流出した場合には、多大な損害を被るおそれがあります。
⑥ 自然災害について
地震等大規模な災害が発生した場合には、設備等の損壊あるいは事業活動の停滞によって、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります。
(4) 組織に関するリスク
① 小規模組織であることについて
当社グループは、当連結会計年度末現在、役職員計63名(臨時従業員を除く。)の小規模な組織となっております。当社グループは、内部統制などの組織的対応の強化を図っておりますが、現状は小規模組織であり、人的資源に限りがあるため、個々の役職員の働きに依存している面もあり、役職員に業務遂行上の支障が生じた場合又は役職員が社外流出した場合には、当社グループの業務に支障をきたす可能性があります。一方で、組織規模の急激な拡大は固定費の増加につながり、当社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。
② 人材の確保と研究開発力の維持について
当社グループでは、事業の変化に伴って、人材の確保と育成が重要な課題となっており、内部での人材育成及び外部からの人材登用に努めております。しかしながら、適正な人材の確保、育成及び維持が計画どおりに進捗しなかった場合又は人材が社外に流出した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
特に、研究開発での人材不足は、当社グループの生命線である研究開発力の低下につながるおそれがあります。また、会社規模の変動とともに組織が硬直化し、モラルハザードが発生した場合にも、研究開発力が低下するおそれがあります。研究開発力は当社グループの強みであるため、これが失われた場合、業績に大きな影響を与える可能性があります。
(5) 規制に関するリスク
① 法的規制について
イ 薬事法
当社グループが株式会社ニッピより委託製造する牛海綿状脳症に対する動物用体外診断用医薬品ニッピブルBSE検査キットは、薬事法の規制を受けております。本製品は、当社グループの主力製品の一つであり、今後、法改正等によって規制が強化された場合には、大きな売上減少要因となる可能性があります。
ロ 遺伝子組換え生物等規制法
遺伝子組換え生物等の使用による生物多様性への悪影響を阻止する目的で、平成16年2月に「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(遺伝子組換え生物等規制法)が施行されました。当社グループが保有する藤岡研究所及び三笠研究所は当該法律が適用される施設であるため、今後、法改正等によって規制が強化された場合には、研究開発の遅延等によって業績に重大な影響を与える可能性があります。
ハ 廃棄物処理法
当社グループが事業で使用する実験動物に由来する排出物などは、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)の規制を受けております。今後、法改正等によって規制が強化された場合には、処理コストの上昇などによって、業績に影響を与える可能性があります。
ニ 毒劇物取締法
当社グループが事業で使用する研究用試薬は、「毒物及び劇物取締法」(毒劇物取締法)の規制を受けております。今後、法改正等によって規制が強化された場合には、処理コストの上昇などによって、業績に影響を与える可能性があります。
② 公的研究機関及び大学との関係について
当社グループは、公的研究機関や大学との連携を通じて、研究開発業務や事業基盤の強化を行っております。これまでにも、公的研究機関の職員や大学教員から技術指導を受け、あるいは公的研究機関や大学との共同研究を行うなどして事業を推進してまいりましたが、企業と公的研究機関等との関係は、法令や公的研究機関等の内部規程の影響を受ける可能性があります。また、公的研究機関や国立大学の法人化等によって、公的研究機関や大学の知的財産権に関する意識も変化しつつあります。したがって、当社グループの想定どおりに共同研究や権利の取得を行うことができない可能性があり、そのような場合には、当社の事業戦略や業績に大きな影響を与える可能性があります。
(6) その他のリスク
株主還元政策について
当社は、継続的かつ安定的な配当を行うことを基本方針としております。また、内部留保については、企業価値を高めるべく研究開発に再投資し、自己資本利益率を高めていく考えであります。
このような方針に基づき、当社は、配当と内部留保のバランスを勘案しながら株主還元を図っていく予定でありますが、研究開発型企業であるため、研究開発費負担の増大等によって、安定した配当可能利益を確保できない可能性があります。
(注) 用語解説については、「第4提出会社の状況 6コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に記載しております。