有価証券報告書-第112期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/20 11:30
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65項目

業績等の概要

(1)業績
当連結会計年度における経済情勢を振り返りますと、米国では雇用の改善などを背景に回復傾向が持続しました。一方、金融緩和など景気刺激策によって緩やかな回復を示した欧州は、当連結会計年度終盤に入って回復基調にやや陰りがみられ、中国は過去に行った過剰な設備投資の影響により投資が縮小し、新興国でも資源価格の下落などの影響を受け、成長鈍化の傾向が続きました。わが国の経済は、企業業績が改善傾向にあるものの、新興国経済減速の影響を受け、企業の生産活動は伸び悩みました。このように、世界経済全体としては、中国や新興国での経済成長の鈍化の影響が大きく、景気の足踏み状態が続く1年となりました。
こうした経営環境の下、当連結会計年度における当社グループの連結売上高は、1兆317億円(前連結会計年度比2.9%増)となりました。事業セグメント別では、情報機器事業は商業印刷向けに上位機種のカラー機の販売が伸長したことに加え、企業買収や対ドルの円安効果も寄与して増収となりました。産業用材料・機器事業は、産業用光学システム分野では計測機器での買収効果もあり増収となりましたが、機能材料分野ではディスプレイ製品の市況悪化の影響を受け減収となりました。ヘルスケア事業は米国での企業買収も寄与し増収となりました。
営業利益は、600億円(同8.7%減)となりました。情報機器事業は、競争環境が厳しい中で進める業容転換の費用増とともに、当連結会計年度後半には損益影響が大きい対ユーロでの円高が進行、加えて、次年度に向けての事業構造改善費用の引当も行ったことから、小幅ながら減益となりました。ヘルスケア事業は国内外でのデジタル製品の販売増で増益基調が鮮明になりましたが、産業用材料・機器事業は主力製品の販売減により減益となりました。これらに加えて、当連結会計年度前半に実施した構造改革費用もあり、グループ全体でも減益となりました。税引前利益は、580億円(同11.4%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は、翌連結会計年度以降の税制改正に伴う法人税率等の引下げが行われることとなった影響等により319億円(同21.9%減)となりました。
当社は、2014年度より中期経営計画「TRANSFORM 2016」を始動させました。既存事業の高付加価値化を進める一方、お客様に密着してお客様や社会が抱える課題を解決する新たなビジネスを創出する取り組みを加速しています。
日本、アジアにおける高齢化社会の進行に伴う要介護者の増加と介護スタッフ不足という社会的な課題を解決する「ケアサポートソリューション」は、日本において第一号の受注を獲得しました。
また、独自のビデオマネジメントシステムを強みとする監視カメラメーカーMOBOTIX AG(本社:ドイツ)の株式の65.5%を取得する契約を締結しました。当社独自の3Dレーザーレーダーをはじめとする産業用光学システムと組み合わせた高品質なセキュリティシステムなど、幅広い業種業態に向けたソリューション提供につなげていきます。
更に、日本では当社グループの総合力を結集して、製造業としての自社実践で培った当社独自のデジタルマニュファクチュアリングやデジタルマーケティングによるノウハウを活用したデジタルワークフロー改革の支援や、業種業態別ソリューションを提供するため、国内事業を再編し、2016年4月よりコニカミノルタジャパン株式会社として活動を開始しました。また、顧客体験に基づくデジタルマーケティング施策の立案、コンテンツ制作で実績のあるネットイヤーグループ株式会社(本社:東京都中央区)と資本業務提携契約を締結し、デジタルマーケティングの提供力を高めました。
当社グループへの外部評価について
当社は、中期経営計画「TRANSFORM 2016」で掲げた諸施策を確実に実行し、業容の転換による持続的な成長を目指すとともに、企業の社会的責任(CSR)の取り組みを経営の根幹として位置づけ、環境、人権、労働、ガバナンスなど幅広い側面での活動に取り組むことで、グローバル社会から支持され、必要とされる会社を目指します。
こうした活動が外部機関によって高く評価を受けております。2015年度は日本経済新聞社が実施した第19回「環境経営度調査」において、製造業総合ランキング1位を2年連続で獲得しました。「JPX日経インデックス400」に3年連続で選定されたほか、経済産業省と東京証券取引所が共同で取り組む「健康経営銘柄」に2年連続で選ばれました。また、世界的に権威のある社会的責任投資(SRI)指標である米国の「Dow Jones Sustainability World Index」に4年連続で採用されました。SRI分野の調査・格付機関であるRobecoSAM社からは「シルバークラス」に選定されました。
このように、当連結会計年度は世界経済の停滞に伴う企業の投資抑制や競争環境の激化の影響を受け、単年度の業績としては厳しい1年となりましたが、中期経営計画「TRANSFORM 2016」の中間年度として中長期の成長を目指した施策では多くの成果を挙げました。
セグメント別の状況は以下のとおりであります。
①情報機器事業
<オフィスサービス分野>主力のA3カラー複合機においては、米欧市場での競争環境が激化する中、当社は利益重視の販売方針に沿い、中高位機種を中心に販売拡大に努めました。モノクロ機でも、前年を上回る販売台数となりました。大企業におけるグローバル調達に対応した大口商談では、当社の重要顧客であるBMWグループやAllianz社(ともに本社:ドイツ)から当社の出力環境最適化サービスが高く評価され、複数年にわたるグローバルサービスの契約更新を獲得しました。また当社が中堅・中小企業向けに展開する入出力機器とITサービスを組み合せた「ハイブリッド販売」においては、紙文書を当社の複合機からスキャンし、必要な情報を自動的に抜き出して基幹システムに連携させるといったお客様のワークフローの改善にむけた提案、またお客様のIT環境を一括で保守、運用までを請け負うMIT(Managed IT)サービスといった複合的なサービスの提供による成約事例を積み上げています。
<商業・産業印刷分野>プロダクションプリントでは、デジタルカラー印刷システムの最上位機種「bizhub PRESS(ビズハブ プレス)C1100」が欧米を中心に販売を伸ばしました。従来の中小印刷企業中心の顧客基盤から大量の出力ボリュームが見込める中堅及び大手商業印刷企業へと顧客層の拡大に努めました。
企業のマーケティング部門における印刷物コスト最適化及び業務プロセス改善を支援するMPM(Marketing Production Management)サービスでは、既存顧客に対してサービス提供地域を拡大する取り組みを進めました。
産業用インクジェットでは、インクジェットヘッドなどコンポーネント製品が大判プリンタ向けに堅調に推移しました。株式会社小森コーポレーション(本社:東京都墨田区)と共同開発したUVインクジェット枚葉印刷機「KM-1」は、発売に向けた準備が完了し、2016年度より本格販売を開始いたします。また、2014年度に資本・業務提携を開始したMGI Digital Technology(本社:フランス)への出資比率を高め、同社が持つデジタル印刷機器に関する高いマーケティング力と独創的な製品開発力を活用し、産業印刷市場への事業拡大を図ります(効力発生日:2016年4月1日)。
生産面では、国内外でデジタルマニュファクチュアリングを進めています。既に2015年5月から本格稼働を開始したマレーシアの生産拠点では、最先端のICTを活用した工程の自動化・効率化への取り組みが成果を挙げ、デジタル複合機生産において継続的に製造原価を低減する体制を強化しました。
これらの結果、当事業の外部顧客に対する売上高8,321億円(前連結会計年度比3.0%増)、営業利益は702億円(同3.4%減)となりました。売上高は企業買収効果に対ドル円安の為替効果も加わり、増収となりました。利益面では北米での有形固定資産売却益がありましたが、損益影響が大きい対ユーロでの円高傾向が続いたことに加えて、サービス提供力強化をはじめとした業容転換のための費用増や事業構造改善費用の引当もあり、小幅な減益となりました。
②ヘルスケア事業
国内は超音波画像診断装置「SONIMAGE(ソニマージュ) HS1」が、整形領域で高い評価を受け、大幅に販売を拡大しました。一方、2015年10月に買収したViztek社(本社:米国)が、当連結会計年度後半以降当社の連結対象に加わり、米国での売上は前連結会計年度から増加しました。
主力製品では、医療ITサービスとしてPACS(医療用画像保管・転送システム)が好調を持続、カセッテ型デジタルⅩ線撮影装置「AeroDR(エアロディーアール)」は海外を中心に販売を拡大しました。
これらの結果、当事業の外部顧客に対する売上高は898億円(前連結会計年度比14.4%増)、営業利益は39億円(同85.0%増)となりました。主力製品の販売増及び海外での増収に伴う粗利増と、それら製品・機器の設置台数を基盤とした保守契約の件数増が収益性の改善に貢献しました。
③産業用材料・機器事業
<機能材料分野>TACフィルムは、当連結会計年度半ばから新興国市場における需要減退によるサプライチェーンでの在庫調整が長引き、大型液晶テレビ向けの販売が減速しました。中小型パネル向けは当社が得意とする薄膜製品の販売が当連結会計年度後半には回復に転じましたが、テレビ向け販売の減少を補い切れず、販売は前連結会計年度から減少しました。
<産業用光学システム分野>計測機器は、主力の光源色計測機器が当連結会計年度の後半に販売を伸ばすとともに、2015年8月に買収したRadiant社(本社:米国)が連結対象に加わったことも寄与し、増収となりました。また、産業・プロ用レンズではプロジェクションマッピングなどイベント向けプロジェクター用光学ユニットが好調を持続し、増収となりました。
これらの結果、当事業の外部顧客に対する売上高は1,059億円(前連結会計年度比6.0%減)、営業利益は170億円(同13.7%減)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の連結キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フロー592億円の創出と、設備投資やM&Aを中心とした投資活動によるキャッシュ・フロー1,107億円の支出の結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは515億円のマイナスとなりました。
また、財務活動によるキャッシュ・フローは205億円のマイナスとなりました。
その他に、現金及び現金同等物に係る為替変動の影響額54億円の減少があり、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末比775億円減少の999億円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税引前利益580億円、減価償却費及び償却費513億円等によるキャッシュ・フローの増加と、法人所得税の支払い169億円、営業債務及びその他の債務の減少による減少103億円、営業債権及びその他の債権の増加による減少62億円、棚卸資産の増加による減少47億円等によるキャッシュ・フローの減少により、営業活動によるキャッシュ・フローは592億円のプラス(前連結会計年度は1,019億円のプラス)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
主として情報機器事業における設備投資等の結果、有形固定資産の取得による支出は383億円、無形資産の取得による支出は119億円となりました。一方で、主として北米の資産を売却したことにより、有形固定資産の売却による収入は95億円となりました。情報機器事業におけるDactyl Buro du CentreとOMR Impressionsの2社、産業用材料・機器事業におけるRadiant社、ヘルスケア事業におけるViztek社等の買収をした事により、子会社株式の取得による支出575億円、事業譲受による支出33億円、持分法で会計処理されている投資の取得による支出26億円となり、投資活動によるキャッシュ・フローは1,107億円のマイナス(前連結会計年度は540億円のマイナス)となりました。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは515億円のマイナス(前連結会計年度は479億円のプラス)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
社債の発行及び長期借入れによる収入387億円によるキャッシュ・フローの増加と、社債の償還及び長期借入金の返済による支出277億円、配当金の支払による支出124億円、自己株式の取得による支出100億円、短期借入金の純減少額94億円等によるキャッシュ・フローの減少により、財務活動によるキャッシュ・フローは205億円のマイナス(前連結会計年度は621億円のマイナス)となりました。
(3)IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項
(のれんの償却)
日本基準では、のれんの償却については償却年数を見積り、その年数で償却することとしておりましたが、IFRSではIFRS移行日以降の償却を停止しております。
(表示組替)
日本基準では、営業外収益、営業外費用、特別利益及び特別損失に表示していた項目を、IFRSではその他の収益、その他の費用、金融収益及び金融費用に表示しております。