有価証券報告書-第116期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/07/15 11:28
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研究開発活動

当社グループは、経営理念である「新しい価値の創造」及び「Giving Shape to Ideas」というお客様への約束を掲げ、材料・光学・微細加工・画像の4分野のコア技術に関わる研究開発はもとより、コア技術を高度化・融合化するとともにICT、AI技術と組み合わせることで見えないものを見える化する技術をさらに発展させ、各事業セグメントにおいてお客様本位の新製品・サービスの開発を進めております。
当連結会計年度においては、中期経営計画「SHINKA 2019」に基づいた中期経営戦略基本方針に対応して、「技術競争力の実践的強化」、「継続的なイノベーション創出」を技術戦略の基本方針と定め推進してまいりました。
「技術競争力の実践的強化」の1つとして、AIを活用したIoT技術強化による、社内外のデジタルトランスフォーメーションを推進してまいりました。これを推進する担い手である専門技術人財を補強し、2017年3月比で、国内外で2倍となる500人体制にいたしました。注力分野として、データ分析から課題解決策を導く「データサイエンティスト」、短期間での開発、検証を繰り返すスピードを重視した「アジャイル開発リーダー」、ITサービス全体を設計できる「アーキテクト人財」を補強してまいりました。さらに、これらの人財を活用しお客様のデジタルトランスフォーメーションを支援するとともに、データを活用したマテリアルズインフォマティクス、プロセスインフォマティクスを研究開発、生産技術開発に適用し、社内のデジタルトランスフォーメーションも推進してまいりました。
「継続的なイノベーション創出」としては、コア技術とICT、AI技術を融合した新規ビジネスを展開してまいりました。オフィス領域では、中小企業のデジタルトランスフォーメーションを支援する複合機と高性能サーバーとITサービスを一体化した新サービス「Workplace Hub(ワークプレイス ハブ)」を日米欧にて展開し、業種別ソリューションなどでの拡大を推進しております。バイオヘルスケア領域では、コニカミノルタ、米国のAmbry社、Invicro社というグループ3社が保有するタンパク質精密定量化技術や遺伝子診断技術、画像解析技術を駆使し、人体の分子レベルでの診断や疾病・薬効の解析を可能にすることで患者様への適切な投薬・治療を支援するとともに、製薬会社にはバイオマーカーの特定や治験の効率化による創薬成功率向上を支援するサービスを提供いたします。当連結会計年度にはAmbry社でDNA検査に加えて生殖細胞系列遺伝子変異を評価するRNA検査を世界で初めて商用化し、遺伝子診断精度の向上に貢献してまいりました。また、乳がんなどの定期健診の受診者向け遺伝子診断サービス「CAREプログラム」を本格展開するための準備を進めました。乳がんは遺伝学的リスクが高いため、定期健診時に遺伝子診断を行うことで、早期発見や予防に大きく貢献できます。
また、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、当社グループの保有技術や製品の活用による迅速な社会貢献を検討してまいります。ウイルス感染の初動対策として、ドイツのMOBOTIX社のネットワークサーマルカメラを用いた非接触・顔部分のリアルタイム検知により体表温度の測定が可能なアプリケーションを開発し、2020年5月より提供を開始いたします。また、Ambry社では社会が求める喫緊の要請に応じ、CAREプログラムを通じたPCR検査を含む新型コロナウイルス検査サービスを米国で提供すべく準備を進めております。Invicro社ではグローバルな研究コミュニティをサポートするために、X線とCTイメージングに焦点を当てたCOVID-19関連の安全なデータレポジトリである「COVID-19iPACSプラットフォーム」を開発し、2020年5月から無料で公開いたします。
また、持続可能な地球・社会の実現をめざし、「環境」をメインテーマとして、省エネルギー、リサイクル可能な環境配慮型製品の開発、使用済み製品の廃材を高機能材料として再活用する技術、バイオマス由来材料を活用する技術の構築と社会実装を進めております。具体的には、複合機の本体や消耗品(トナーなど)に使う石油由来材料を再生材料へ転換し、プラスチック由来CO2排出量の削減を進めます。バイオマス由来材料や廃材を複合機などの高機能材料として活用するためには、一般的に石油からのバージン材に比べて性能が低下するとともに製品品質が安定しにくいという課題があります。当社グループが長年使ってきたコア技術の1つである材料技術、成形加工技術を発展させ、材料開発、材料選択、加工技術の組み合わせにより、新しい樹脂開発を進めます。複合機への展開だけでなく、様々な企業と本技術を共有し実用化することで、連携の輪をグローバルに広げ、環境価値の効果を飛躍的に大きくしていきます。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は740億円となりました。そのうち、オフィス事業及びプロフェッショナルプリント事業に係る研究開発費が369億円、ヘルスケア事業に係る研究開発費が45億円、産業用材料・機器事業に係る研究開発費が121億円、バイオヘルスケア分野を含むその他事業及び基礎研究費用が204億円であります。各事業部門別の研究の目的及び研究成果は以下のとおりであります。
(1)オフィス事業及びプロフェッショナルプリント事業
オフィス事業及びプロフェッショナルプリント事業においては、主に複合機やデジタル印刷システムの情報機器から資材、各種ソフトウェア、システムソリューションに至るまで幅広く研究開発を実施し、個々のお客様の働き方に合わせたクラウド利用サービス、ワークフローソリューションのご提案を合わせて行っております。
当連結会計年度においては、オフィスユニットでは、A3/A4複合機のラインアップを刷新し「bizhub(ビズハブ) iシリーズ」を発売いたしました。当製品では、強固なセキュリティー機能により、ウイルスやマルウェアを複合機で検知しオフィス内部の感染拡大を防ぐなど、オフィスのセキュリティー強化を支援します。さらに、リモートメンテナンスによる常時監視・保守や自動アップデートにより複合機が最適な状態に維持されるほか、災害時の早期復旧が可能になるなど、将来にわたって顧客の事業継続をサポートするサステナブルな高品質サービスを提供いたします。
プロダクションプリントユニットでは、クラス最高レベルの140ppmの印刷速度で生産性を向上させたデジタル印刷システム「AccurioPress(アキュリオプレス)C14000/12000」」を欧米より順次発売を開始いたしました。新たにヘビープロダクションプリント領域でのお客様に向けて、従来機種の印字画質で出力速度を140ppmまで向上させ、好評をいただいている自動品質最適化・検品ユニット「IQ-501」を搭載可能として、オペレーターのスキルレベルに依らず検品作業の負荷を低減したワークフローで、AccurioPro(アキュリオプロ)シリーズのワークフローソフトウェアなどとともに、さらに高い生産性を提供いたします。
産業印刷ユニットにおいては、プリントヘッドとインクジェット出力に最適なインク、さらにプリンターの“三位一体”の開発・展開を最大の特長として、拡大し続ける様々なアプリケーション(出力用途)への対応や、各市場からの高画質・高生産性ニーズに対応する研究開発を強化・推進しております。さらに、デジタル箔押し機により、高い信頼性に加え、高い付加価値と生産性を実現するソリューションの提案を行っております。
(2)ヘルスケア事業
ヘルスケア事業においては、デジタルX線撮影装置を基盤とした付加価値サービス拡充や電子カルテ・情報システムと連携した医療機関のIT化を図るシステムソリューションビジネスの強化に加え、超音波診断装置のシリーズ拡充等により、大規模病院と地域の診療所等との医療連携の実現やヘルスケア事業の中長期的拡大を図る研究開発を実施しております。
当連結会計年度においては、一般X線撮影装置を用いて“動画撮影”という新たな診断方法を実現したX線動画撮影システム(構成:X線動画解析ワークステーション「KINOSIS(キノシス)」と可搬型デジタルX線撮影装置「AeroDR fine(エアロディーアール ファイン)」)を多くの実臨床の現場に導入頂き、胸部における換気や血流などの新たな解析方法の開発や整形診断領域への拡張を進めています。本システムはその汎用性からアジア地域など新興国への展開も期待されています。付加価値アプリケーションとしては、病気のおそれがある部分を検出する診断支援AIの開発を進めており、医療機器としての申請とあわせて海外での事業の可能性も探究してまいります。
超音波診断装置では、高精細画像と直感的な操作性で国内整形外科市場において高シェアを獲得している「SONIMAGE(ソニマージュ) HS1」「SNiBLE(スナイブル)」の後継機種として、画質・ユーザビリティを向上させた「SONIMAGE HS2」と「SNiBLE2」を2020年2月に発売いたしました。高パフォーマンスCPUの採用などにより操作レスポンスを大幅に改善するとともに、血流計測を簡便に行える「Vascular NAVI機能」を搭載し、ベッドサイドで検査や処置を行うPoint of Care領域に新たな価値を提供いたします。
医療ITソリューションでは、医療被ばくの線量管理システム「FINO.XManage(フィノエクスマネージ)」に、新たな機能として、一般撮影の多様なデータを可視化・分析できるマネジメント機能「RADInsight」を搭載し、再撮影の管理や撮影技術の教育支援ツールを備えました。
ヘルスケア事業は、課題提起型デジタルカンパニーを目指し、ヘルスケア分野の「診断価値向上」・「早期診断」の実現により人々のQOL向上と医療費削減の両立に貢献するべく研究開発を強化・推進してまいります。
(3)産業用材料・機器事業
材料・コンポーネント分野における機能材料ユニットにおいては、液晶画面の基幹部材となる偏光板用保護フィルム向けに、従来のTAC製品に加え、新樹脂「SANUQI」(COP系)、「SAZMA」(アクリル系)等を新プラットフォームとする高付加価値商品の開発展開を開始し、さらに2.5mの広幅生産への対応も進めております。SANUQIに関しては既に販売を開始しており、これら新樹脂を用いて偏光板保護フィルム以外の市場へも展開できる商品の準備も進めております。
光学コンポーネントにおいては、成長が期待されるドローン用レンズや内視鏡用レンズ等の小型レンズ開発・試作に取り組むとともに、新規開発のイベント用プロジェクタレンズユニットの販売を開始いたしました。今後は光学技術・コンポーネント技術に加え材料開発との連携強化で小型レンズユニットの開発に注力し事業化推進を図ってまいります。
IJコンポーネントユニットにおいては、産業用インクジェットヘッド技術の開発、製品化に注力し、パナソニックインクジェットヘッド事業買収での技術の獲得により、さらなる製品ラインナップの拡充に取り組んでおります。
産業用光学システム分野における計測機器ユニットにおいては、トップメーカーとしてディスプレイ・光源色測定及び自動車メーカーなど幅広いアプリケーションで使用される物体色測定の分野で高品質な製品を提供しております。当連結会計年度においては、成長戦略の一環として、自動車生産工程の品質検査ソリューションを提供するスペインのEines Systems社を買収し、外観計測事業の立ち上げを加速しております。また、物体色測定用に色と光沢を同時測定し生産性向上に貢献する新世代の分光測色計「CM-26dG」を、ディスプレイやLED生産ライン向けにドイツのInstrument Systems社から高速分光測定器「CAS 125」を発売し、製品ラインの拡充を図りました。