有価証券報告書-第116期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

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2022/06/29 15:11
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事業等のリスク

当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を下記のとおり記載いたします。
これらの事項は、当社グループの業績および財務状況に悪影響を与える可能性がありますが、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、リスクの回避・分散および発生した場合の対応、リスクの移転、危機管理対策等に最大限努力する方針です。
下記事項には、将来に関するものが含まれますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであり、また、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。
(1)各事業の経営成績に影響を与える変動要因
当社グループは、化学、機械、建設資材の事業分野で様々な製品を製造・販売しており、各事業分野において想定されるリスクは以下のとおりです。
①化学事業
ベーシック事業については、同業他社の生産能力増強により当該製品の供給が大幅に増加した場合やベンゼン、ブタジエンなど主原料価格が国際的な需給バランスや原油等のエネルギー価格の変動により急激に変動した場合には、製品と主原料の価格差(スプレッド)が著しく縮小することで業績に悪影響を与える可能性があります。また、原料の一部については特定の地域や供給元に依存しているため、供給元の事故などにより必要な原料を確保できない場合があります。スペシャリティ事業については、情報技術やデジタル家電関連など短期的な世代交代が起こり得る製品では、顧客要求にタイムリーに応じられないことによる販売量の減少や競争激化に伴う価格低下によって業績に悪影響を与える可能性があります。
以上のようなリスクに対して、(一) 原料市況動向の注視と価格高騰時の製品価格への迅速な転嫁による適正スプレッドの確保、(二) 工場におけるコストダウン、(三)経営資源の重点投入によるスペシャリティ事業の成長加速など収益基盤の強化に積極的に取り組んでおります。
②機械事業
機械事業の主力製品は、ダイカストマシン、射出成形機、運搬機、除塵機、窯業機器、粉砕機等であり、世界の自動車販売台数の低迷や公共事業の減少など事業環境の悪化に伴い自動車メーカーや大手素材メーカーなどが設備投資を控えた場合には、受注や出荷、サービス提供の減少といった影響を受ける可能性があります。また、市場がグローバル化する中で、各国の景気の減速、貿易摩擦、競合メーカーの台頭などで販売が減少する可能性があります。
以上のようなリスクに対して(一)アフターサービス事業の拡充による収益拡大・安定化、(二)コストダウンの強化、(三)同業他社とのアライアンスによる業容拡大や収益基盤強化に積極的に取り組んでおります。
③建設資材事業
建設資材事業の主力製品であるセメントは、国内では、社会資本の整備が成熟期を迎え中長期的には需要が緩やかに減少していくと想定し様々な収益改善対策を実行しておりますが、想定を超えて短期間で公共事業や民間の建設工事が大きく減少する場合や石炭をはじめとする原燃料価格が高騰する場合には、業績に悪影響を与える可能性があります。また、輸出では、相当の生産能力を有する中国企業が輸出を始める場合、アジアを中心とした海外市場において需給が軟化し市況が低迷することで業績に悪影響を与える可能性があります。
当該事業分野は、三菱マテリアル株式会社と折半出資のUBE三菱セメント株式会社を設立し、2022年4月より同社へ移管しております。同社において以上のようなリスクに対し、生産体制の最適化や川下領域の生コンクリート事業を含めた販売・物流体制の再構築等、バリューチェーン全体で効率化を推進し統合効果を最大限発揮することで事業基盤の強化を図るとともに国内外で成長が期待できる事業への集中的な投資を進めていく方針です。
(2)地球環境問題
気候変動問題については、当社グループはこれまで石炭を有効活用しつつ事業の拡大を図ってきましたが、炭素税や規制等が強化された場合、税負担等が増加することでコストが増加する可能性があります。また、環境意識の高まりが脱炭素社会への移行を早め、ステークホルダーから気候変動問題への対応が遅れている企業と評価されることにより製品の販売が低迷するなど、企業価値に悪影響を与える可能性があります。さらに、地球環境の変化により自然災害が激甚化・高頻度化する場合、製造拠点の設備被害、物流網の遮断、原材料等の入手困難などにより生産活動に悪影響を与える可能性があります。
また、海洋プラスチックごみ問題については、プラスチック資源循環法の施行など資源循環に関する関心の高まりを背景に顧客等から当社グループ製品に対する要求が変化する可能性があり、この問題への対応が遅れることにより、製品の販売が低迷するなど、企業価値に悪影響を与えることが予測されます。
以上のようなリスクに対して当社グループは、これらの地球環境問題を経営の最重点課題と設定し、エネルギー効率の向上やカーボンニュートラルなバイオマス燃料への置き換えなどによりGHGの発生・排出の削減に注力するとともに、当社グループの強みを生かした環境負荷低減に資する製品・技術の開発と普及を推し進めることにより、脱炭素社会への貢献に努めております。また、廃プラスチックのリサイクルはもとより、これまで回収の難しかった複合プラスチックのリサイクル技術の開発など資源循環につながる取り組みについても積極的に行っています。
(3)製品品質・製造物責任
当社グループの製品は、自動車部品やデジタル家電、医薬品、家庭用品など身近なものから、社会インフラの整備まで多くの分野で使用されます。そのため、品質に瑕疵のある製品が出荷された場合、その波及範囲は広範囲にわたり、安全上や健康上他の問題に至らない場合であっても、当該製品の回収や顧客への損害賠償など多額の費用が発生し、さらに社会的な信用失墜により事業活動が低迷する可能性があります。
以上のようなリスクに対して当社グループは、工程管理を確実に行うための設備の維持や適切な測定機器の設置、作業マニュアルの整備、従業員の教育等に努め、必要十分な検査を行うことで万一の不良品流出を防止できる体制を構築するとともに、国内外を対象とした生産物賠償責任保険に加入しております。さらに、当社グループでは、過去に判明した品質検査上の不適切事案の再発防止に努めております。
(4)大規模事故(爆発・火災・漏洩事故)
当社グループの製造事業所、特に化学製品の製造工場では、多種、大量の高圧ガスや危険物等の原材料、電気、スチーム等のエネルギーを使用しており、設備故障、人為的ミス、自然災害により大規模な爆発・火災・漏洩が発生する可能性があります。その場合には、従業員・地域住民等の生命・身体・財産並びに環境へ重大な影響を与えることとなり、事故対応や復旧の費用、生産活動の停止による機会損失および顧客・地域住民に対する補償が生じることで、業績に深刻な影響を与える可能性があります。
以上のようなリスクに対して当社グループは、「安全はすべてに優先する」を環境安全共通の価値観として、関連法令の遵守の徹底、設備の定期点検および適切な維持補修、教育・経験を積んだ従業員の確保、管理マニュアルの整備、防災訓練の定期実施、環境安全監査等により、爆発・火災・漏洩等の事故の予防に取り組んでおります。
(5)研究開発
当社グループは、需要家のニーズに合わせた新技術・新製品をタイムリーに上市するために、あるいは次世代の事業の創出のために探索研究を含む研究開発に取り組んでおります。研究開発は、長期間にわたることもあり、研究開発テーマが計画どおり進まず、新製品の開発が著しく遅延したり、開発を断念した場合、あるいは医薬事業においては新薬の承認見送りや承認取り消しがなされた場合には、事業における競争力が低下し業績に悪影響を与える可能性があります。
以上のようなリスクに対して当社グループは、事業ポートフォリオに基づいて重点的に経営資源を投入し研究開発成果の早期実現と精度の向上を図ることにより、スペシャリティ事業の伸長に取り組んでおります。
(6)自然災害
当社グループは、国内外に製造拠点および営業拠点を有しており、これらの施設が、想定を超えた大規模な地震、台風、集中豪雨、津波などの自然災害により甚大な被害を受け、製造拠点における生産停止や営業拠点の活動休止等が発生する可能性があります。その場合には、建物・製造設備の復旧、棚卸資産の廃棄、設備の再稼働や原料調達・製品出荷の遅延などにより、多額の費用および機会損失が発生し業績に悪影響を与える可能性があります。
以上のようなリスクに対して当社グループは、災害発生時の対応マニュアル等の整備、建物・製造設備の計画的な改修・強化、定期的な防災訓練・教育、リスクマネジメント制度を活用した個別リスクの抽出と対策等を実施しております。また、早期に事業復旧を図る仕組みとして、自然災害発生時における事業継続計画(BCP)を策定し、定期的な見直しと訓練を行っております。
(7)パンデミック
現在においても新型コロナウイルス感染症が世界的に蔓延(パンデミック)しておりますが、このような新たな感染症の蔓延は、将来においても発生し、製造拠点における生産停止や営業拠点の活動休止等が発生する可能性があります。その場合には、設備の再稼働や原料調達・製品出荷の遅延などによって多額の費用や機会損失が発生する可能性があります。
以上のようなリスクに対して当社グループは、危機対応委員会を設置して、対応マニュアルの整備と各部署・事業所・グループ会社による「新型インフルエンザ等対応BCP」を定期的に見直し、感染予防策の徹底や感染者発生時の対応および業務継続の手段や対応方針を定めて、状況に応じた機動的な対応を図っております。また、危機対応委員会では、国内外におけるパンデミックの状況や政府・自治体の対応・方針、当社グループにおける感染者発生状況などをタイムリーに情報収集し、適宜、従業員の感染防止のための行動・対応指針を発出するなど、事業活動への影響を最小限とする対応を実施しております。
(8)情報セキュリティ
当社グループは、各種業務システムやプラント制御システムを利用しており、年々高度化しているサイバー攻撃や不測の事態によるシステム停止、重要情報の漏えいや破壊等の被害が発生した場合、生産活動の停止、損害賠償や信用の失墜により、業績に悪影響を与える可能性があります。
以上のようなリスクに対して当社グループは、情報セキュリティ委員会を設置し、関連規程の整備と周知、不正侵入探知・防御等の物理的・技術的な対策の立案、当社グループの全役員・社員に対するセキュリティ教育と訓練等を実施するとともに、CSIRT(Computer Security Incident Response Team)を設置するなどセキュリティインシデント発生時の被害を最小化するための体制を構築しております。また、これら対策状況を定期的に評価、改善を行いリスクの低減に努めております。
(9)法令・規制
当社グループは、国内外に製造拠点や営業拠点を有し、様々な国々・地域に製品を供給していることから、各国・地域における製造・営業活動に関わる法令・規制を遵守する必要があり、これらが改定された場合には、製造設備等の改修や変更、労働環境の整備などで費用が発生する可能性があります。また、法令・規制に違反した場合には、多額の罰金・制裁金・賠償金、従業員の収監などを受けるだけでなく、事業活動の制約や社会的信用に悪影響を与える可能性があります。特に、建設資材事業においては、セメント製造工程において原料や熱エネルギー代替として石炭灰、建設発生土、焼却灰、汚泥、廃プラスチック等の産業廃棄物を処理しておりますが、当社および当社の役員等が法令に違反した場合には、法に基づく行政処分の対象となり廃棄物を処理できなくなることから、事業活動および業績に多大な悪影響を与える可能性があります。
以上のようなリスクに対して当社グループは、事業活動に関わる国内の主な法規制をリスト化し、当該法令等の主幹部署と関連する部署とで法規制の改廃の情報を漏れなく共有する体制を整備すると共に、リスクマネジメント制度において法規制に関わるリスクを洗い出し、各々のリスクに対する対策を実施しております。また、当社グループの全役員・社員を対象にしたEラーニング・研修の定期実施等によって法規制の遵守とそれを堅持する企業風土を醸成しております。
(10)人的資本・人権
当社グループは、競争の激しい市場において、製品やサービスの提供を継続し企業価値の向上を図るためには、新規性のある製品や市場の創出、付加価値の高いビジネスモデルの構築などが必要であり、その実現のためには、クリエイティブな人材、マネジメントに優れた人材、ハードおよびソフト面の技術に関する優れた専門性を有する人材など、能力の高い人材を獲得する必要があります。また、従業員にはOJTや教育訓練の面から、経験豊富な人材並びに業務やプラント運転操作などのノウハウを持った人材の確保も重要になります。こうした優秀な人材の獲得が困難となる場合や、重要な人材の社外流出が生じた場合には、企業活動に悪影響を与える可能性があります。
以上のようなリスクに対して当社グループは、経営方針に「個性と多様性の尊重と働きやすい職場環境の整備」を掲げて、必要とする人材の確保と定着を図るために、働きがいのある職場を提供するとともに、ワーク・ライフバランスの充実を図り、賃金を含む待遇改善、労働時間の短縮、女性活躍推進、シニア人材の活用、障がい者雇用に取り組んでおります。
一方、当社グループやサプライチェーンにおいては、国際的な「ビジネスと人権」に関する意識の高まりを背景に人権に関する高度な対応が求められており、適切な対応が講じられていない場合、企業価値に悪影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対して当社グループは、UBEグループ人権指針のもとに取引先とともにサプライチェーン全体の人権尊重に取り組んでおり、人権デューデリジェンスの体制整備を推進しております。また、社内の人権教育体制を整え、人権教育を実施し、当社グループの全役員・社員が人権について正しい理解と認識を持ち行動できるよう取り組んでおります。
(11)金融市場
当社グループは、金融機関からの借入や社債の発行等による資金調達を行っております。主要金融市場において著しい混乱が発生する場合、あるいは当社に対する信用格付が大幅に引き下げられるなど信用力が著しく低下した場合には、好ましい条件で資金調達ができず、成長投資等のために必要な資金を十分に確保できない可能性があります。
以上のようなリスクに対して当社グループは、キャッシュ・フローを重視した経営を行い健全な財務体質を確保・維持すると共に、現預金、コミットメントライン等において十分な流動性を確保しながら、返済(償還)期限の分散、調達手段の多様化を図ることで、資金調達環境変動の影響を低減するよう取り組んでおります。また、当社グループは、外貨建てによる原材料等の輸入や製品等の輸出に伴い、外国為替相場の変動による影響を受ける可能性がありますが、債権債務を概ね均衡させるとともに、適宜為替予約等を実施することで、その影響の低減に取り組んでおります。
(12)海外事業展開
当社グループは、化学製品並びに機械製品については、海外に生産、開発、サービス拠点を有しており、アジア、北中南米、欧州等にて主に事業活動を展開しております。2021年度の海外売上高は、連結売上高の約37%を占めております。これらの事業活動には、海外の政治・経済情勢の悪化、戦争・紛争・テロ等に伴う社会的混乱、進出先の外資に対する規制強化、経済・通商政策の変更、環境関連の規制強化、労働争議の発生などのリスクを内在しており、これらが顕在化した場合は業績に悪影響を与える可能性があります。
以上のようなリスクに対して当社グループは、海外事業展開における緊急事態に速やかに対処するため、情報の集約や緊急時の対応などのマニュアルを整備し、専門コンサルタントを有効活用すると共に、危機対応委員会が主体となり、必要な情報の収集および現地の各拠点との適時、適切な情報共有を行える体制を整えております。さらに、有事の際には対策本部を設置し、従業員の安全を最優先事項として迅速・的確な対応を図って参ります。
(13)知的財産権
当社グループは、知的財産権が重要な資産であることを認識し、事業競争力の強化を図っておりますが、当社グループの重要な技術やノウハウが予期せぬ事態により外部に流出する可能性や当社グループの知的財産権が侵害される可能性があります。他方、将来的に他社との間で知的財産を巡って紛争が生じた際に当社グループに不利な判断がなされる可能性があります。このような場合には、事業における競争力が低下し業績に悪影響を与える可能性があります。
以上のようなリスクに対して当社グループは、国内外において知的財産権の取得・管理、さらに技術ノウハウなどの適正な情報管理等により知的財産の保護を図るとともに、第三者が保有する知的財産権についてもその権利を尊重し、特許クリアランスの確保に万全を期しております。
(14)買収・資本提携
当社グループは、事業拡大、技術獲得、または競争力強化等を目的として、国内外において企業買収・資本提携等を実施しております。このような買収や資本提携等においては、当初の期待を下回るシナジー効果、コスト改善の失敗、想定外の瑕疵の発覚や債務の拡大、出資先企業の経営成績や財政状態の悪化による企業価値の低下等によって業績に悪影響を与える可能性があります。
以上のようなリスクに対して当社グループは、事前段階の適切な市場調査やデューデリジェンス、慎重な事業評価と契約交渉、十分な社内審議等のプロセスを経ることで、リスクを極力低減させることに努めております。
(15)訴訟
当社グループは、国内外で行う広範な事業活動の中で訴訟、その他の法的手続に関わる場合があります。将来の帰趨を予測することは困難ですが、訴訟等において不利益な決定や判決がなされる場合には、業績に悪影響を与える可能性があります。なお、現在係争中の主な訴訟事件は次のとおりです。
2008年5月以降、建設作業等従事者およびその遺族らが国およびウベボード㈱(当社連結子会社)を含む建材メーカー40社余に対して、建設現場で使用されていた石綿含有建材の石綿粉じんを吸引して石綿関連疾患に罹患したとして、連帯して損害を賠償するように求めて訴えを順次提起していますが、これまでの判決において、ウベボード㈱に対する請求はいずれも棄却されました。現在、全国の裁判所に13件の訴訟が係属中で、その請求額は最大で64億円です。
(注)上記の請求額は、ウベボード㈱を被告とする訴えの請求額を合計したもので、国および他の建材メーカーと連帯して請求を受けているものです。
(16)サプライチェーン
当社グループは、国内外から原燃料を調達し、また、製品を出荷しています。これらのサプライチェーンにおいて、関連企業の倒産、戦争・紛争・テロ、パンデミック、自然災害、地球環境問題、人権問題等により原燃料価格の上昇、サプライチェーンの寸断等が発生し、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
以上のようなリスクに対して、当社グループでは、原燃料価格の上昇に対しては、製品価格への迅速な転嫁、製造コストの削減、サプライチェーンの寸断に対しては、原燃料の調達先および生産拠点の分散、適正な在庫量の確保等、リスクが顕在化した場合に被害を最小化するよう努めています。