有価証券報告書-第103期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/28 15:06
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【項目】
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事業等のリスク

当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する部分は、当社が有価証券報告書提出日現在において判断したものです。
(セグメント上のリスク)
石油製品セグメント
(1) 原油価格の変動について
当社グループは、石油製品の生産に必要な原油の殆どを輸入していますが、原油価格は過去においても大きく変動しており、アジアにおける原油需要の増加、中東やアフリカの産油国の政情不安、南米産油国における資源の国有化の動き、米国を始め石油消費国における環境規制・税制の動向、投機的な石油取引等により、今後も変動することが懸念されます。
また原油輸入を米ドル建てで行っているため、原油の調達コストは円の米ドルに対する為替相場の影響を受けます。
当社グループは、石油製品価格を国内の市場価格に連動させることによりマージンを確保することに努めていますが、原油価格の変動が大きい場合や国内石油市場の激しい競争等により国内の市場価格が低迷した場合、財政状態及び経営成績は重大な影響を受ける可能性があります。
なお当社グループは、たな卸資産を総平均法により評価しています。一般的に総平均法は、原油価格が上昇する局面では、期初の相対的に安価なたな卸資産による売上原価押し下げ影響により損益の改善要因となります。一方、原油価格が下落する局面では、期初の相対的に高価なたな卸資産による売上原価の押し上げ影響により損益の悪化要因となります。
(2) 市場の競争について
当社グループの石油製品事業は、複数の石油会社と競合しており、これらの中には当社グループよりも事業規模や市場シェアの大きい会社があります。また日本の石油市場は精製設備やSS数の過剰により激しい競争状態にあります。当社グループがこのような競争下において効率的な事業運営ができない場合、当社グループの財政状態及び経営成績は重大な影響を受ける可能性があります。
(3) 原油輸入先について
当社グループは、原油輸入のほぼ全量を中東地域に依存していますが、原油の安定調達を目的として主要な中東産油国と長期の原油輸入契約を締結し、同地域内におけるリスクの分散を図っています。しかしながら、これらの地域における政情不安、原油の生産調整、石油関連施設の事故等により、長期にわたって原油の輸入に制約が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績は重大な影響を受ける可能性があります。
(4) 石油製品の需要について
日本の石油市場は成熟しており、石油製品需要は徐々に減少すると見込まれています。更に、原油価格の高騰や、パリ協定に基づく地球温暖化に関する政府の対策等が、将来の石油製品の需要動向に影響を与える可能性があります。これらの要因により石油製品需要が減少した場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
(5) ニソン製油所プロジェクトについて
当社グループはアジア市場における石油及び石油化学事業の展開の一環として、クウェート国際石油、ペトロベトナム及び三井化学㈱(以下当社を含め、「スポンサー」という。)と共同でニソンリファイナリー・ペトロケミカルリミテッド(以下「NSRP」という。)を設立し、ベトナム社会主義共和国タインホア省ニソン経済区に20万バレル/日の石油精製設備とパラキシレンをはじめとする石油化学品製造設備を有するニソン製油所・石油化学コンプレックスの建設を進めてきました。
このプロジェクトの建設工事は平成29年4月末に完了し、平成30年5月に製品出荷を開始しています。
プロジェクトの総事業費は約90億米ドルと見込まれ、このうち50億米ドルは国際協力銀行をはじめとする銀行団によるプロジェクトファイナンスにより調達し、約40億米ドルはスポンサーによる出資及び貸付で調達しています。
当社グループはプロジェクトファイナンスによる調達額のうち、NSRPへの当社グループ出資比率相当の35.1%について銀行団に対し債務保証を行っており、建設工事の完了後に設備が一定の条件で稼働することができない場合、保証の実行により当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
また、当社グループはスポンサーによる出資及び貸付の35.1%を負担しますが、ベトナムにおける政治経済情勢、法律や規制及び雇用環境の変化等からプロジェクトが計画どおりに進展しない場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
当社グループはプロジェクトで想定される損失に対し㈱日本貿易保険の海外投資保険を付保していますが、このような保険が損失を填補するために必ずしも十分ではない可能性があります。
石油化学製品セグメント
(1) 原料コストの変動について
当社グループは、石油化学製品の原料であるナフサを自社製油所で生産するとともに市場から調達しています。ナフサ価格は、原油価格や、中国等において計画されている石油化学設備の新設による需要増加の影響を受けることがあります。ナフサ価格の変動を市場における激しい競争等の要因により石油化学製品の価格に適切に転嫁できない場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
(2) 需要の変動について
日本を含むアジアの石油化学市場は激しい競争状況にあり、需要の変動や供給の増加の影響を受けます。当社グループが石油化学事業を行うに際しては、日本やアジアの市場において、より事業規模が大きく経営基盤の確立した、あるいはより競争力を有する企業や米国産シェールガスによる基礎化学品等との競合にさらされます。また、最近において中国を始めとするアジアの国々における石油化学製品の需要は増加してきましたが、これらの国々における経済の低迷や他の要因により今後の需要は減少する可能性もあります。このような市場における競争の激化や需要の低迷により、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
資源セグメント
(1) 石油開発事業について
①資源確保について
当社グループは、商業生産につながる資源の権益の取得、発見に努めています。しかし、当社グループによる権益の取得や探鉱が成功しない場合や確認済みの資源を予定どおり効率的に開発することができない場合、将来の原油生産は減少することになります。更に、当社グループが保有する確認済みの資源はノルウェーに集中しており、探鉱活動についてはノルウェー、ベトナムの2地域で行っています。これらの地域における政治経済情勢等により当社グループの探鉱開発が中断され、確認済みの資源の開発や追加的な資源の発見ができない場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
②原油価格について
石油開発事業の近年の営業利益は、主に原油価格に支えられていますが、原油価格は過去においても変動しており、政治経済情勢あるいはその他の要因により将来的に原油価格が下落した場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
(2) 石炭事業について
当社グループはオーストラリアの自社鉱山等で石炭を生産し、主に日本及びその他のアジア市場で販売しており、これら地域における今後の石炭需要の伸びに対応して、生産能力を拡大しています。しかしながら、他のエネルギーへの需要の移動、環境及びその他の規制等により、需要が伸びない可能性があります。また、需要が増加した場合でも当社グループよりも事業規模が大きく、経営基盤が確立している他の企業との競争にさらされる可能性もあります。更に、当社グループによる石炭鉱山事業は気候の変動、事故、政治経済情勢、規制方針やその他の不確定要因の影響を受けるかもしれません。石炭需要の期待された伸びが実現しない場合や石炭価格の変動、他の企業との競争等により、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
その他セグメント
電子材料、アグリバイオ事業について
当社グループは将来の成長に向けて、電子材料分野やアグリバイオ分野において、付加価値の高い製品の開発を行っています。しかしながら、市場拡大の遅れや新素材を含む他社との開発競争等により、これらの製品の開発や生産あるいは市場の開拓で成果を挙げられるとは限りません。もし、当社グループが採算のとれる規模でこれらの製品の販売ができない場合、当社グループは開発コストを回収し、利益を確保することができない可能性があります。
(その他のリスク)
(1) 投資について
当社グループは事業資産の規模が大きく、既存の製油所・工場や販売設備等の維持更新、油田の権益取得や探鉱開発等の国内外の事業活動に多額の投資を必要とします。当社グループは当連結会計年度には、594億円の投資を行いました。今後も石油、石油化学を始めとする既存事業の競争力強化や石油開発・石炭事業の収益確保、新規事業育成のための投資を継続する予定ですが、投資に必要なキャッシュ・フローを生み出すことができない場合や外部調達ができない場合、予定した投資ができず期待された収益機会を失う可能性があります。更に経済情勢や市場環境の変化等によりこれらの投資が計画どおりの収益をあげられない可能性もあります。このような場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
(2) 有利子負債について
当社グループは、これまで有利子負債の削減を図ってきましたが、依然として多額の負債を負っています。当連結会計年度末における有利子負債残高は8,936億円で、当連結会計年度の支払利息は97億円です。
当社グループは、今後も有利子負債の削減に取り組んでいきますが、事業の継続、拡大に向けた投資を行うため追加的な資金調達が必要となるかもしれません。しかしながら、金融情勢の変化等により、資金調達に制約が生じた場合や金利上昇により金利負担が増加する場合、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。また、一部の有利子負債については、一般的な財務制限条項が付されており、今後、財務体質が大きく変動した場合には、当社グループの資金調達が影響を受ける可能性があります。
(3) 事業提携及び経営統合について
当社グループは競争力強化の一環として、他社との事業提携を進めてきました。このような提携は当社の事業遂行において重要な役割を果たしています。また、燃料油事業等の強化を目的として経営統合の検討も進めています。しかしながら、戦略的な提携や経営統合の検討においては、当社グループが出資先の経営、事業、資産に対して、十分なコントロールができない可能性があります。また、相手先企業の事情や当社グループの置かれた環境等によって事業提携及び経営統合が影響を受ける可能性や、当初期待した成果やシナジー効果等を十分に得られない可能性があります。このような場合、当社グループの事業、財政状態及び経営成績は重大な影響を受ける可能性があります。
(4) 事故、災害について
当社グループの事業は、自然災害や事故、これらに起因する操業停止等のリスクを有しています。自然災害には地震、津波、台風に加えて、日本という地震の多い地域に立地する製油所・工場における火災や爆発のリスクを含みます。当社グループの設備は人的、機械的なエラーによる事故の影響を受けることもあります。当社グループが保有する大型タンカーを含む原油や石油製品の輸送は、海賊や悪天候による転覆、衝突等の危険にさらされています。また、当社グループは労働紛争によるリスクにもさらされます。このようなリスクの発生により当社グループの事業は、長期間にわたって中断される可能性があります。
当社グループは事故や災害で想定される損失に対し、損害保険等を付保していますが、このような保険が損失を填補するために必ずしも十分ではない可能性があります。
(5) 環境に関する規制について
当社グループの事業は、当社グループが事業を行い、あるいは権益を有する日本やその他の国における広範な環境保全やその他の法的規制の下にあります。例えば、当社グループは、製油所や工場からの汚染物質の排出、廃棄物の処理等について規制を受け、基準を超える環境汚染発生に伴う罰則を受ける可能性もあります。また、日本や他の国の当局が新たな規制を行ったり、あるいは現在や将来の環境規制を遵守することにより多額の支出を伴う可能性があります。地球温暖化問題への取り組みに関連して、日本や他の国が温室効果ガスの排出の制限や新たな炭素課税を導入することにより、当社グループは多額の費用負担や投資が必要となる可能性があります。このような環境やその他の規制の遵守に伴う債務や義務の負担により、当社グループの財政状態及び経営成績は重大な影響を受ける可能性があります。
(6) 知的財産権について
当社グループは、事業の遂行のために知的財産権やライセンスを活用しており、特に石油精製技術や潤滑油、機能性樹脂、機能化学品、電子材料、アグリバイオ等の付加価値の高い製品分野において特許や企業秘密の位置づけは重要です。また、当社グループはブランドを商標登録しています。しかしながら、当社グループが保有する特許、企業秘密、商標が当社の知的財産権を保護するために十分であるとは限りません。
また、当社グループの企業秘密が従業員、取引先、その他の関係者によって不適切に取り扱われる可能性があります。
当社グループが、第三者から供与されている技術ライセンスが更新されない可能性や、第三者から知的財産権の侵害についてクレームを受けて、その技術を利用できなくなる可能性があります。
当社グループが事業遂行に必要な知的財産権を保護できない、あるいは全面的に活用できない場合、当社グループの事業や経営成績は影響を受ける可能性があります。
(7) 為替相場の変動について
当社グループは、多額の外貨建取引を行い、また外貨建の資産及び負債を有しています。このため、為替相場の変動は外貨建取引の収益や財務諸表の円貨換算額に影響を与えます。
また、為替相場の変動は、海外の連結子会社及び持分法適用会社の収益や財務諸表を円貨換算する場合にも影響を与えることになります。
(8) 資産価格の下落について
当社グループは、当期に固定資産の減損損失87億円を計上しました。今後も当社グループが保有する資産の価値が経済情勢等の変化により下落した場合には評価損が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。
(9) 個人情報の管理について
当社グループは、石油製品販売やクレジットカード事業等に関して顧客の個人情報や資産データを直接、間接に取り扱っています。当社グループは、これらの情報の管理不徹底やそれによってもたらされる問題への対処のために、多額の費用を負担する可能性があります。更に、顧客の個人情報が不適切に取り扱われ、あるいは管理上の問題が発生した場合、当社グループがその情報を直接管理していたかどうかにかかわらず、当社グループへの信頼の低下、クレーム、訴訟等につながり、当社の事業、経営成績は影響を受ける可能性があります。
(10) 株主との取引について
当社は、日章興産㈱、公益財団法人出光文化福祉財団と不動産賃貸借取引を行っており、取引条件は、近隣の相場をもとに決定しています。また、公益財団法人出光美術館に寄付を行っていますが、寄付金は当該公益財団法人の運営費及び当社の事業規模、宣伝効果などを勘案して決定しています。