有価証券報告書-第133期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/18 14:00
【資料】
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【項目】
124項目

研究開発活動

当社グループは、事業を取り巻く環境がダイナミックに変化する中、将来に向けて持続的に成長・発展するために新事業の創出が不可欠であることから、当社グループのコア技術である高分子材料技術と総合評価技術をベースに外部技術との融合・協業を促進し、スピーディーな新技術の創出とタイムリーな商品開発を目指しています。
研究開発にあたっては、新機能・高品質の材料設計開発を担う材料技術統括部と、当社グループのコア技術の深化、データサイエンス、シミュレーション技術開発を担う基盤材料開発研究所、そして材料の分析や試作試験を担当する評価試験部で進めています。
また各事業部では、「自動車(モビリティ)」「エレクトロニクス」「インフラ・住環境」「ヘルスケア」に該当する新製品・改良品の研究開発を実施しているほか、2020年4月には品種別に分かれていた開発センターなどを統合し、新たに「新商品開発センター」を設置しました。開発テーマの選択と集中を実施しつつ、開発のスピードアップと早期事業化を図ります。
さらに、新製品の開発と市場開拓を急ぐ中で、親会社である住友電気工業株式会社との連携を強化し、シナジーを創出できるよう進めていきます。
なお、当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費の総額は13,050百万円であります。
セグメント別の研究開発活動を示すと、次のとおりであります。
① 自動車用品
自動車(モビリティ)分野においては、CASEといった技術革新への迅速な対応にとどまらず、環境問題をはじめとする社会課題解決への積極的な関与が求められています。「防振」「自動車用ホース」「ウレタン」の3事業本部とファインエラストマー事業部では、顧客ニーズに対応した製品やCASEに関する技術などについて、研究開発・技術確立を進めています。
新商品開発センターでは、圧力の検知により、呼吸や心拍などの生体情報(バイタルデータ)を測定することが可能な当社独自開発の「スマートラバー(SR)センサ」を応用し、SRセンサを座席に設置するドライバーモニタリングシステムのプロトタイプを2021年3月に完成させました。上市に向けて、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)と「住友理工-産総研 先進高分子デバイス連携研究室」を2020年10月に設立し、実証実験を継続しているほか、収集したバイタルデータを活用したサービス展開も視野に、他社との協業も含めたビジネスチャンスの拡大を図っています。また、電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)向けの基幹部品についても、次世代車種を見据えた研究開発を継続的に実施しています。さらに、EVで注目される熱マネジメントへの対応製品においては、車室内の断熱効果を高める薄膜高断熱材「ファインシュライト™」を2020年9月に発売しました。省エネや環境負荷軽減に貢献できる製品で、さらなる技術開発を進めます。さらに、EV用の電池やモーターをはじめとする部品の熱マネジメントへの対応で、冷却系ホースや電池用の断熱材などの開発にも着手しています。
当連結会計年度における自動車用品に係る研究開発費は、11,641百万円であります。
② 一般産業用品
エレクトロニクス分野においては水現像フレキソ版材や、高機能、高精度部品の材料開発を積極的に進めています。インフラ・住環境分野では、鉄道車両用防振ゴム・高圧ホース等のコア技術の強化・再構築を図るとともに、住宅市場でのさらなる事業展開を継続し、事業体質の強化・新規事業の創出を図っています。また、ヘルスケア分野では、心拍や呼吸など生体情報を同時に計測できる診断用機器「体動センサ」の開発に注力しています。大阪大学と共同で、新型コロナウイルス感染症などの感染者の呼吸や心拍の変化について、本機器を介して遠隔で収集、解析するための研究が進められています。また、厚生労働省が推奨している、フレイル予防の進展を見据えたヘルスケア製品の実証研究と実用化促進のため、当社の小牧本社・製作所が所在する愛知県小牧市と2021年1月に「健康づくり等の推進に係る包括連携協力に関する協定」を締結し、医療・介護・日常生活をつなぐ新たな製品やシステム、サービスの創出を目指しています。このほか、北海道大学発のスタートアップと共同で開発し、2020年8月に発表した「マイクロ流路装置」は、最先端技術である「ドラッグデリバリーシステム」のベースとなり、医薬品や化粧品などの研究開発のスピードアップに貢献すると期待されています。一方、「ファインシュライト™」は、コロナ禍の宅配需要の盛り上がりにおいて、自動車に先んじてフードデリバリー専用の温熱シートに採用されています。
当連結会計年度における一般産業用品に係る研究開発費は、1,409百万円であります。