有価証券報告書-第166期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/20 13:05
【資料】
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【項目】
182項目

事業等のリスク

当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、次のとおりであります。
なお、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、「第2 事業の状況」の他の項目、「第5 経理の状況」の注記事項、その他においても記載しておりますので、併せてご参照ください。
また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
1.主要市場の経済状況等
当社グループの国内向け販売は、自動車、造船、電気機械、建築・土木、IT、飲料容器、産業機械などを主な需要分野としております。海外向け販売は、当連結会計年度の売上高の36.3%であり、最大の需要国である中国を含むアジア地域が、海外売上高の過半を占めております。
従って、当社グループの業績は、これらの需要分野の動向、需要地域における経済情勢等により、売上高や受注高の減少の影響を受けることに加え、お客様の財政状態の悪化による債権回収の遅延等の影響を受ける可能性があります。また、海外の各需要地域における政治・社会情勢、各地域における事業の監督や調整の困難さ、労働問題、関税、輸出入規制、通商・租税その他の法的規制の動向が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、各製品市場において、国内外の競合各社との厳しい競争状態にあり、競合各社による当社製品よりも高性能な製品開発や迅速な新製品の導入等、その状況次第では当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
2.鋼材販売数量・価格の変動
当社グループの販売する鋼材の数量・価格は、国内外の需要分野の動向や国際的な鋼材需給・市況により影響を受けます。
国内鋼材販売の形態は、大きくは製品数量・規格等を直接お客様との間で取り決めて出荷する「紐付き」と、お客様が不特定の状態で出荷する「店売り」とに分かれますが、当社の場合ほとんどが「紐付き」であります。鋼材の需給状況が変動した場合、「店売り」価格の方がより敏感に連動するものの、最終的には「紐付き」価格も影響を受けることになります。また、鋼材販売数量の25%を占める輸出鋼材の販売数量・価格についても、各需要地域における鋼材需給等により影響を受けます。
これらの鋼材販売数量・価格の変動が、当社グループの業績に影響を及ぼします。
3.原材料等の価格変動等
当社グループが調達している鉄鉱石、石炭、合金鉄・非鉄金属、スクラップ等の鉄鋼原料価格及びそれらの輸送に関わる海上運賃等は、国際的な市況、為替相場、法規制、自然災害、政治情勢等により影響を受けます。特に、鉄鉱石及び石炭については、原産国や供給者が世界的にも限られていることから、需給動向が国際市況に与える影響が大きくなる傾向があります。これらの価格・運賃の変動が、当社グループの業績に影響を及ぼします。
また、アルミ・銅におきましては、アルミ・銅の地金価格の変動は基本的にお客様に転嫁する仕組みとなっております。しかしながら、地金価格の市況が短期間に大きく変動した場合には、会計上の在庫評価影響などによって、当社グループの業績に一時的に影響が生じる可能性があります。
さらに、当社グループは、耐火物等の副資材、設備投資関連資材及び電装品、油圧機器、内燃機器等の資機材を外部調達しており、これら資機材の価格変動が、当社グループの業績に影響を及ぼします。
加えて、上記原材料やこれらの資機材等の調達先との取引関係に重大な変更があった場合にも、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
4.環境規制等の影響
鉄鋼やアルミ・銅を中心に、その生産活動の過程において廃棄物、副産物等が発生します。当社グループでは、国内外の法規制に則った適切な対応に努めておりますが、関連法規制の強化等によって、過去に売却した工場跡地等であっても土壌汚染の浄化のための費用が発生するなど、業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、今後二酸化炭素等の排出に関連して数量規制や税の賦課が導入された場合には、鉄鋼を中心に当社グループの事業活動が制約を受け、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
5.事故、災害等による操業への影響
当社グループの生産設備の中には、鉄鋼の高炉、転炉など高温、高圧での操業を行なっている設備があります。また、高熱の生産物、化学薬品等を取り扱っている事業所もあります。対人・対物を問わず、事故の防止対策には万全を期しておりますが、万一重大な労働災害、設備事故等が発生した場合には、当社グループの生産活動等に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、国内外の製造拠点等において、大規模地震や台風等の自然災害、新型インフルエンザ等の感染症、その他当社グループの制御不能な事態により操業に支障が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
6.訴訟等のリスク
当社グループは、国内、海外において多岐にわたる分野で事業活動を行なっており、その遂行にあたっては、当社グループが展開している様々な事業に関連する法令(安全保障貿易管理、独占禁止、贈収賄規制などに関するもの)、その他の社会規範を遵守し、公正で健全な企業活動を行なうことを指針としております。しかしながら、法令違反等を理由として罰金等を科される状況が発生した場合には、当社グループの業績や社会的信用力に影響を及ぼす可能性があります。また、製品の品質上の欠陥を理由に、訴訟を提起され若しくはその他のクレームを受けることによる費用の発生や、販売量の減少等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社グループの製品・生産プロセス等が第三者の知的財産権を侵害する場合や、当社グループの技術・ノウハウを知的財産権等により法的に保護できない場合にも、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
7.財務リスク
① 為替レートの変動
当社グループの外貨建取引は主として米ドル建で行なわれており、当連結会計年度におけるドル収支は輸入超過であります。当社グループは、短期的な対応として為替予約等を実施しておりますが、変動リスクを完全に排除することは困難であり、為替レートの変動は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 金利率の変動等
当連結会計年度末における当社グループの有利子負債残高は7,242億円(電力プロジェクトファイナンスを含めると7,603億円)であります。これらの負債及び新規の借入金・社債等に関し、金融情勢の変化等による金利率及びその他の条件の変動等が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 融資・債務保証等
当社グループは、関係会社等に対して融資等、及び関係会社やお客様等における一部の金融機関借入等に対して債務保証等を行なっております。将来、これらの融資等の回収が滞ったり、債務保証等の履行を求められる状況が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ たな卸資産の価値下落
当社グループが保有しているたな卸資産について、収益性の低下等に伴い資産価値が低下した場合は、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。
⑤ 投資有価証券の価値変動等
当社グループが保有する投資有価証券の当連結会計年度末の連結貸借対照表計上額は1,900億円であります。上場株式の株価変動などに伴う投資有価証券の価値変動は、当社グループの業績に影響を及ぼします。
加えて、年金資産を構成する上場株式の株価変動により、退職給付会計における数理計算上の差異が生じ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 繰延税金資産の計上
当社グループでは繰延税金資産について、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を判断して計上しております。しかしながら、今後将来の課税所得の見積り等に大きな変動が生じた場合には、繰延税金資産の取崩しが発生し、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。
⑦ 固定資産の価値下落
当社グループが保有している固定資産について、時価の下落・収益性の低下等に伴い資産価値が低下した場合は、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。
⑧ 資金調達
当社グループは、主に銀行借入、社債発行及びコマーシャル・ペーパーの発行等により事業活動に必要な資金を確保しております。従って、景気の後退や金融環境の悪化、当社グループの信用低下等により、資金調達が想定どおりの条件で適時に実施できない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
8.中期経営計画の実現等
当社グループは2016年4月に発表した中期経営計画の進捗状況を踏まえて同計画の見直しを実施し、2019年5月に中期経営計画ローリングとして発表しております。しかしながら、成長分野・地域として掲げた分野・地域の市況や為替レートの状況等の前提条件が想定と異なる場合や、当該差異により予定どおり計画を遂行できない場合、当社グループは、輸送機軽量化やエネルギー・インフラ分野での成長、鉄鋼及び建設機械の収益力強化、電力の安定収益化といった取組みが実現できない可能性があります。
また、当社グループは、海外企業との業務提携やジョイントベンチャーを進めていますが、製品開発・サービス提供が困難を伴うことや、当初予定していたシナジー効果が実現されないこと等、これらの業務提携等が上手くいかない又は想定していた将来の事業機会を得ることができない可能性があります。
9.品質不適切行為による影響
当社グループにおいて、公的規格又は顧客仕様を満たさない製品等(不適合製品)につき、検査結果の改ざん又はねつ造等を行なうことにより、これらを満たすものとしてお客様に出荷又は提供する品質不適切行為を行なっていたことが前連結会計年度に判明しました。
当社グループは、不適合製品の出荷先のお客様とともに、不適合製品を使用したお客様の製品に対する品質影響(安全性含む)についての技術的検証を進めてきた結果、不適合製品を納入したことが判明している、のべ688社全てのお客様より、安全上の問題がない、あるいは、安全性に当面の問題はないとのご確認をいただきました。なお、安全性に当面の問題はないとの見解をいただいている製品に関しましては、今後も必要に応じ、お客様にご協力をいただきながら、追加の検証を進めてまいります。
また、品質不適切行為に関し、当社は2018年7月に不正競争防止法違反の疑いで起訴されたほか、当社グループは不適合製品を米国のお客様に対して販売した疑いがあるとして、2017年10月より、米国司法省の調査を受けております。
加えて、当社グループは、(1)カナダにおいて、当社グループの製造した自動車向け金属製品や、それらを使用して製造された自動車に関する、経済的損失の賠償等を求めるクラスアクション、(2)米国において、当社ADR証券に関する、米国証券法違反(コンプライアンス体制等の虚偽表示)に基づくクラスアクション、(3)米国において、当社の製造した金属製品を使用して製造された自動車に関する、転売価値の下落等の経済的損失の賠償等を求めるクラスアクション、の3つの民事訴訟を提起されました。今後も同様の訴訟を提起される可能性があります。
上述の民事訴訟のうち、(1)カナダでのクラスアクションについては、2019年6月に原告との間で、当社が和解金として総額1,950千カナダドル(約159百万円)を支払い、原告側が訴訟を取り下げることを主な内容とする和解の基本合意書を締結いたしました。今後、原告との間で正式な和解合意書を締結し、カナダ国ブリティッシュコロンビア州上位裁判所の承認を得るとともに、同裁判所の承認を条件に、同国オンタリオ州上位裁判所における訴訟の却下手続きをとる予定です。また、(2)米国での当社ADR証券に関するクラスアクションについては、2018年9月に、当社が和解金を支払うことで原告側が訴訟を取り下げるという和解に合意しました。その後、2019年2月には裁判所により和解が承認され訴訟が終結しました。
不正競争防止法違反の疑いでの起訴については、2019年1月の第2回公判において求刑が行なわれ、3月に罰金1億円の有罪判決が確定いたしました。
米国司法省の調査及び上述の民事訴訟の(3)米国での当社の製造した金属製品を使用して製造された自動車に関するクラスアクションについては、現時点で最終的な罰金額・損害賠償額等を合理的に見積ることは困難ですが、金銭的負担が生じる可能性があります。また、お客様などで発生する製品の交換、検査に係る補償等への対応費用が新たに発生する可能性もあります。
今後の進捗次第では、品質不適切行為に係る信用低下による受注等の減少や、お客様等への補償費用を始めとする損失の発生、罰金や損害賠償の発生等が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、品質不適切行為を踏まえ、再発防止のための品質ガバナンス体制等を構築し、信頼の回復に努めておりますが、これらの再発防止策が予定どおりに実施されない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
10.人材確保に関するリスク
当社グループは、事業の維持・成長に必要な人材の確保に努めておりますが、今後、少子化、景気回復による労働市場の需給バランスの変化や人材の流動化の進展等により、人材の確保が想定どおりに進まない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当連結会計年度末現在では予測できない上記以外の事象の発生により、当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。