有価証券報告書-第119期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

【提出】
2015/06/29 9:05
【資料】
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【項目】
115項目

研究開発活動

当社グループは有用な製品とサービスを社会に提供して、人類社会の幸福に貢献するという企業理念のもと、基盤となる事業ドメイン「社会インフラ」及び「産業設備」において、鋭意研究開発活動に努めております。近年は新事業創造に向けた研究開発成果の早期創出を目指して、コーポレート研究開発部門(クリモト創造技術研究所)と各事業部門との連携をより一層強化しており、市場直結型の技術開発を推進すると共に、オンリーワンの高機能材料ならびにその生産プロセスの開発に取り組んでおります。
当連結会計年度の研究費の総額は1,597百万円であり、セグメント別の研究開発費は、パイプシステム事業429百万円、機械システム事業166百万円、産業建設資材事業127百万円であります。主な研究概要とその成果については次の通りであります。なお、研究開発費については、開発部門で行っている各事業部門に配分できない基礎研究費用873百万円が含まれております。
~主要研究開発活動~
(社会インフラ関連)
① 水道管路耐震化に向けた製品の開発
地震が頻発するわが国において、管路の耐震性を高めることは重要課題であり、現状耐震性を有する管路比率は35%程度に留まっております。一方、管路の老朽化が年々進んでおり、耐用年数を超過した管路の比率は10%に迫っております。このような状況から管路更新・耐震化に資するため、新型耐震管GX形(75mm~300,400mm)の拡販に努め、東京都をはじめとする政令指定都市が広く採用するに至っております。また、当社が開発したS50形耐震管(50mm)については今年度から横浜市の正式採用が決定し、大幅に販売量が増加する予定であります。
GX形やS50形は耐震性を有するだけでなく、管外面塗装の耐久性を大幅に向上させております。この高耐久性塗装については長年の知見を活用し、製造コストにも優れた塗装システムを開発するに至りました。当該塗装について本年1月からGX形管に適用を開始しております。
今年度はさらなるコストダウンと管路布設における新技術開発を進めていく予定であります。
② インフラ向け更新管の開発及び交通インフラ向け新規商材の開発
当社は連続FW成形*1技術をコア技術として、電力ケーブル保護管、下水道管及び農業用水管など主にインフラ事業分野向けにFRP(M)管を販売してきました。近年、インフラ事業の新設投資は成熟期を迎え、既存設備の更新や寿命延長が課題となっております。そこで、当社はその分野で培った技術力を生かし、施工性に優れ、且つ高耐震性、高強度を有した更新管及び継手の開発に注力しております。今後、この分野における製品開発を加速させ、既に市場投入している電力用可撓継手の他、排水機能付き統一型吸音板*2やポリエチレンシース*3など、インフラ分野向けに順次新製品を投入していく予定であります。また、自動車を代表とする交通インフラ分野に対しても、コンポジット材料の新規参入を進めております。
*1 FW成形:フィラメントワインディングと呼ばれるFRP成形法の一種。
*2 排水機能付き統一型吸音板:交通騒音対策で使用する金属製の吸音板であり、腐食を抑制する付加機能を有
している。
*3 ポリエチレンシース:プレストレスコンクリート橋のPC鋼材を被覆する管で、防食に寄与するポリエチレ
ンで構成している。
(産業設備関連)
① 二次電池向けプラント開発
当社の長年の粉体装置事業を基盤とし、リチウムイオンを主とする二次電池市場へ装置・システム・プラントで積極参入すべくプロジェクトを3年前より立ち上げこれまで以上に活動を推進しております。その一環として、営業活動、PR効果促進、技術ノウハウの獲得・構築及び各装置の改良・改善のため、当社住吉工場内に、電池スラリーの混練設備、電池原料の乾燥・焼成・粉砕設備を配置した二次電池用のテストセンターを設置しました。市場商品の無制御ゾーンを排除した信頼性のある高精度供給装置、摩耗に対するコンタミレス等に改良を加えた設備であり、本センターで顧客対応実証実験と自主実験による研究開発を進め、さらに創意工夫を重ねて改良・改善を行い、営業展開を強めております。
② 新型プレス C2Pの開発
近年の鍛造プレスは、騒音やメンテナンスの問題からクラッチブレーキが乾式から湿式に代わってきております。当社では現在、湿式クラッチブレーキの開発を行っており、それを採用した鍛造プレス及び自由なモーション設定可能なサーボプレスのC2Pシリーズの開発を進めております。また、住吉工場にC2Pプレスの試作機を設置して鍛造の研究開発を行い、営業活動を強めていく予定であります。
(クリモト創造技術研究所関連)
磁気粘性流体(MRF)の開発
磁気粘性流体とは、油の中に鉄微粒子を分散させた機能性流体であります。流体に磁力を与えると急激に粘性が増して半固体状態になり、磁力を取り除くと流動性のある液体状態に戻るという機能を有する流体であります。この特徴を利用して、自動車用ダンパー等に実用化されております。当社では、鉄微粒子を今までより小さいナノサイズにしたMRF(商標名:SoftMRF®)を新たに開発し、従来適用が少なかったクラッチ、ブレーキ等の回転系デバイスへの採用に向けて取り組んでおります。鉄微粒子のナノサイズ化によって、流体の再分散性、耐久性及び回転デバイスに封入した際の触感の向上を図ることができます。今後、市場拡大が予想されるハプティクスデバイス*関連分野での実用化を目指して、流体の製造コストダウンと安定生産技術の確立を進めると同時に、実用デバイスへの適用を進めております。
*ハプティクスデバイス:人間が手などを使って得る触覚や力覚を情報として扱う学問分野をハプティクスと称し、ここではナノMRFを使って主に力覚を人工的に与えられるデバイスを指します。