有価証券報告書-第64期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

【提出】
2015/06/25 10:51
【資料】
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【項目】
106項目

研究開発活動

当社は、「No.1 & Only 1 技術・サービスの創出で世界をリード」を研究開発の理念とし、表面改質技術を軸足とするOnly 1 コア技術の継続的な自主創造と、コア技術やその周辺技術を含め独創的なNo.1 商品・サービスの開発を進めております。これにより表面改質技術をコアとする顧客満足度の高い総合ソリューションの徹底追及とその実現に努めております。
当社の研究開発は、将来を見通した先行研究と顧客ニーズに即応する商品開発の2本柱で推進しております。また、以下の3点を重点研究開発領域としております。
① 溶射技術開発(一般産業機械・装置全般の部材開発、コーティングプロセス開発)
② 半導体部品化技術(溶射技術等による半導体・液晶パネル製造装置部品等の開発)
③ 薄膜プロセス(PVD、CVD、DLC、TD、ZAC)、有機コーティング
当社グループの研究開発活動は溶射技術開発研究所が中心となって推進し、産学連携推進によるオープンイノベーションと人的交流によるグローバル化を推進することで、研究開発の加速と共に早期の事業化をめざしております。一方、即応性が求められる商品開発や生産技術的な課題については、各工場の生産技術部門と溶射技術開発研究所とが相互に協調することで、顧客ニーズへの迅速な対応を行っています。なお、薄膜プロセスに関しましては、連結子会社の日本コーティングセンター株式会社とも協調して研究開発を進めております。
当連結会計年度における当社グループの研究開発費の総額は7億46百万円であり、セグメントごとの主な内容は次のとおりであります。なお、当社グループの研究開発費につきましては、事業セグメントへの配分が困難なものも多いため、セグメントごとの研究開発費の金額は記載しておりません。
(1) 溶射加工
当社は先端技術のインフラ的要素をもつ素材やエネルギー分野において高機能部材に対する表面改質技術の適用開発を推し進めております。素材分野では、例えば鉄鋼メーカーに対しては、自動車の軽量化に貢献する高張力鋼板の生産ラインへ新しい溶射技術を適用することによって、より高品質な製品、より高い生産効率に寄与できるような皮膜開発を推進しております。具体的には、主に各種熱処理炉内ロールや溶融亜鉛めっき浴中で使用される部材がこれにあたり、従来の皮膜性能を凌駕する新たな皮膜提供を行っております。これらの技術は今後の鉄鋼関連分野におけるグローバルな技術供与への展開も期待されます。非鉄金属分野におきましても、生産時に大きな問題となる生産設備への金属凝着が生じない皮膜開発を進め、顧客とともに適用皮膜の最適化を進めております。
エネルギー分野では、原発停止に伴う火力発電所の稼働率向上を背景に、石炭焚きボイラ設備におきましては効率向上、メンテナンス期間の延長要求に対する新規皮膜開発や提案を行い、実機性能評価を実施しています。一方、ガスタービン発電機部材に関しましては、高温酸化を防止するNi基合金皮膜、部材を超高温から保護する遮熱セラミックス皮膜を中心に皮膜開発を進めており、特に遮熱セラミックス皮膜開発におきましては、大学等との共同研究を通じて、従来の皮膜を凌駕する低い熱伝導率を有する皮膜の開発を行い、その特性評価を進めております。また、水力発電所における発電機部材におきましては、昨年度、中国の清華大学と材料学院との共同研究で開発した耐土砂摩耗コーティングの適用拡大を進めております。その他、地熱発電、風力発電、2次電池製造装置部材等々につきましても、顧客の要求に応じた要素技術開発を行っております。
一方、当社は半導体製造装置部品向けに耐プラズマ・コーティング技術の開発や静電チャックの開発を進めております。半導体製造装置であるプラズマエッチング装置部品の内面には耐プラズマ性に優れたアルミナ(Al2O3)やイットリア(Y2O3)などの酸化物セラミックコーティングが採用されておりますが、年々細線化するナノレベルの配線幅に即した新たなコーティング技術が求められており、新たな材料開発または製造プロセスの開発、これに伴う評価技術開発を平行して実施しております。また、半導体部品化技術の一つとして、次世代静電チャック部材の開発があり、客先の多様化する要求機能に応えるべく、コーティング材料や構造設計等の開発に取り組みながら、部品化試作を進めております。
(2) PVD処理加工
連結子会社の日本コーティングセンター株式会社では、主にPVD(物理蒸着)処理被膜の開発を行っており、当期は新たなPVD被膜として表面が非常に平滑な「Lunass(ルーナス)」を実用化いたしました。この被膜は機械部品に発生する焼きつきやかじりを防止し、また樹脂に対する離型性にも優れた効果を発揮します。また、昨年度開発した高精度な製品への適用を実現したDLCコーティング「スリック-NANO」につきましては、実機への適用開発を進めております。
(3) その他
当社では溶射加工以外に、TD処理加工やZACコーティング加工、PTA処理加工等、機能皮膜の継続的な商品開発を行っております。このうち、特に重点研究領域に位置づけている薄膜プロセス、有機コーティングにおきましては様々な研究開発を進めております。当社DLCコーティング(WIN KOTE)の技術開発では、溶射加工技術との組み合わせによるハイブリッドコーティングや化学反応し難いDLCの特徴を生かした超耐食性被膜等の被膜開発を進めました。
有機コーティングでは、マイクロ波術具に関する国プロにおいて当社の開発した有機コーティングに生体組織の焦げ付き防止効果が認められており、適用に向けた検証試験を進めております。なお、DLCコーティングにつきましては、日本コーティングセンター株式会社とも技術情報を共有し、それぞれの有する装置特性、被膜特性を生かした対応を行っております。
(4) 特許出願状況等
当社グループは積極的な特許出願によって、開発技術および皮膜商品の防衛とその権利化に努めております。当連結会計年度の実績は、特許出願40件、特許登録21件であります。