有価証券報告書-第17期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/25 14:02
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【項目】
144項目

研究開発活動

当社グループは、主に橋梁工事の建設コスト縮減、品質向上、橋梁新製品開発および既設橋梁の維持管理、鋼構造物の生産技術、沿岸構造物の開発・実証に関連した研究開発活動を行っております。
当社グループにおける研究開発活動は、連結子会社である宮地エンジニアリング株式会社技術本部、計画本部および千葉工場技術研究所、ならびにエム・エム ブリッジ株式会社の生産・技術部、建設部が中心となり推進しております。当連結会計年度における研究開発費の総額は134百万円となっており、セグメントごとの研究開発活動の概要は以下のとおりです。
1.宮地エンジニアリング
当連結会計年度における研究開発費は87百万円であり、主な研究開発の状況は以下のとおりであります。
(1)施工技術に関する研究
① 大規模更新に関する研究
高速道路各社において、大規模更新、大規模修繕に関する計画が相次いで公表されており、これに貢献できる、老朽化した橋梁や床版の架け替えを短期間で可能とする技術の研究・開発に取り組んでおります。
② 工場溶接技術に関する研究
工場溶接工程の生産性向上を目的に、完全溶込み溶接継手の開先形状の狭開先化、ならびに高能率溶接法の適用の研究に取り組んでおります。
③ 現場溶接技術に関する研究
橋梁の現場溶接においては、これまでに多くの実験を重ね、現場溶接の新技術を開発してきました。現場溶接適用継手が多様化するなか、溶接品質の確保と施工性の向上に向けた研究を継続しております。
(2)新材料・新素材に関する研究開発
FRPの橋梁構造物への適用に関する研究
橋梁の計画的な維持管理の必要性から、今後市場の拡大が予測されるFRP検査路について、コスト削減のための構造の合理化や長支間化を目指して継続的に実験、調査を実施しております。「FRP合成床版」の材料技術を生かした新たな商品として、歩道拡幅用床版や、鉄道用の壁高欄、防風柵を実用化し、さらなる構造改善や常設足場などへの用途の拡大を図っております。また、首都高速道路株式会社と共同で開発した、地震などで生じた橋梁の段差を、道路啓開時に車両の通行を可能とする渡し板「F-Deck」は、他の道路管理者への拡販を図るとともに、緊急輸送時にも対応できる新たな商品「ダンパスデッキ」の開発を阪神高速技術株式会社と共同で進めております。さらに、西日本高速道路株式会社と共同開発したFRP伸縮装置は適用性に関する基礎試験を完了し、商品化のための検討をしております。
(3)構造・強度・検査に関する研究開発
① 鋼・コンクリート合成構造に関する技術検討
中小規模の架け替えのための合成床版橋「QS Bridge」および鋼・コンクリート合成床版「QS Slab」について、継続して構造・製作および施工に関する合理化、コスト削減のための改良の検討を進めると同時に、費用対効果と市場性の観点から今後の研究の方向性を継続して検討しております。
② 腐食・防食に関する研究
腐食・防食に関する研究を琉球大学と共同で実施しており、腐食した高力ボルト摩擦接合継手の残存すべり耐力評価手法の実験および解析による検討を進めております。また、鋼橋の防食性能向上のためのFRPパネルによる多機能防食デッキの開発のための基礎実験を開始しております。
③ 溶接継手の非破壊検査に関する研究
橋梁の完全溶込み溶接継手の超音波探傷検査に関する研究であり、溶接欠陥を挿入した試験体を用いて超音波自動探傷における溶接欠陥の検出性能の評価、適切な判定方法の検討を非破壊検査会社と共同で進めております。
(4)新製品・新技術に関する研究開発
① 橋梁のモニタリングシステムの適用に関する検討
既設構造物の延命化技術としてモニタリングシステム等の診断技術、耐荷力評価技術、補修・補強技術の開発、改良に取り組んでおります。また、施工時の安全性・品質確保へのモニタリングシステムの適用検討を進めており、OSMOS(光学ストランドモニタリングシステム)の無線型センサーLIRISを用いた遠隔モニタリングの適用実績を増やして有効性と有効活用に関する適用を進めております。
② 複合・合成構造の研究開発
従来のCFT(コンクリート充填鋼管)と比較して耐荷力・靭性の向上が期待できるRCFT(鉄筋コンクリート充填鋼管)、複合構造であるポータルラーメン橋の適用拡大等について検討を行っております。また、エム・エム ブリッジ株式会社との高速道路のオーバーブリッジにおけるロッキングピアの波形鋼板を用いた耐震補強に関してする共同研究は、合理的な補強構造と適用条件について検討を継続しております。東日本旅客鉄道株式会社の工程短縮を目的としたバラスト撤去低減可能な工事桁(斜めウェブ工事桁)の開発は、実橋への適用のための設計手法及び構造詳細の実験を含めた検討を実施しております。
③ i-Constructionへの取り組み
構造物の3次元モデルをツールとした設計や施工を行うBIM/CIMおよびドローンやレーザースキャナー、VR等を駆使したICT(情報通信技術)関連技術の導入や開発を推進するとともに、鋼構造物の製作工場および施工現場の生産性と安全性の向上を目的としたi-Constructionへの取り組みを行っております。
(5)施工工法等に関わる研究、取り組み
① PC業者、補修業者との連携
既設RC床版の更新技術、特に取り替え用プレキャストPC床版に関する技術(製品、施工)をPC業者と連携し、共同で研究することにより、現在高速道路会社で計画されている鋼道路橋の大規模改修事業に対応すべく、新工法等に取り組んでおります。また、今後本格化する補修・保全工事への対応に向け、補修業者と連携し、各種の課題に取り組んでおります。
② 送り出し工法の合理化に関する研究
当社で請け負う桁架設工事は鉄道・道路を跨ぐ工事が多いことから、送り出し架設工法が多く採用され、限られた時間内で安全に高速で鋼桁を送り出すことが求められております。これらの社会のニーズに応えるため、ここ数年をかけ新開発した「ジャッキ装置付全輪駆動式高速台車」をフル活用した、高速道路を跨ぐ支間100m級の長支間橋梁急速施工工事の詳細架設計画を進めており、今期中の実施工を予定しております。今後は適用工事範囲を増やし、さらなる効果の検証・改善を行いながら、より安全な急速施工を目指してまいります。
③ 建築分野における大空間鉄骨建方の研究
当社グループの建築分野で得意としている競技場大屋根鉄骨などの大空間構造物の建方について、総鋼重7000t級の大屋根をリフトアップ工法にて施工し工法の妥当性を検証することができました。また全長600mにも及ぶ長大な建屋を移動ステージ工法により最少設備を駆使して短工期で施工し、施工技術の有効性を実証しております。今後は実工事においてさらなる改良を加えながら、常に一歩進んだ技術を提供できるよう研究してまいります。
④ 建築構造物およびコンクリート床版切断技術の研究
先に開発した、建築構造物のコンクリート柱・壁や橋梁のコンクリート床版を切断する完全無水式ワイヤーソーシステムを応用した「M-SRシステム」により、実橋梁のコンクリート床版を粉塵や廃水を出さずに高効率に切断撤去工事を実施しその有効性を実証しております。橋面上への影響を最少とした新型のM-SRについても実証実験を終え、高速道路における床版更新時の床版撤去工事に適用すべく、同システムの検証と改良を進めています。今後は、実施工事に交通規制を最少にした高効率なシステムとなるよう、改良研究・開発に取り組んでおります。
2.エム・エム ブリッジ
当連結会計年度における研究開発費は47百万円であり、主な研究開発の状況は以下のとおりであります。
(1)施工技術・構造・材料・検査に関する研究開発
① 大規模更新・保全事業に関する研究
高速道路各社において需要が高まっている床版の取り替え、拡幅、架け替え工事を対象として、床版取り替えならびに壁高欄撤去時の作業の効率化・省力化と交通規制の影響を最小化するための施工方法、機材等の開発、実証試験を実施しております。
また、腐食・損傷した鋼部材の補修工法に関する研究を実施しております。
② 橋梁の耐風設計に関する研究
超小型模型でかつ、信頼性のある耐風検討を実現することが可能な簡易風洞実験ツール(S-VFD)を活用するなど、数値流体解析について、橋梁への適用を継続して検討しております。
(2)新製品・新技術に関する研究開発
① 沿岸構造物・環境技術に関する研究・実証
環境技術に対する研究開発として、微弱電流が流れる浮桟橋で活発に生息するサンゴの生態に注目し、サンゴの移植・増殖技術の研究を継続して実施しております。
② 生産性、安全性向上に資するi-Construction技術に関する研究
国土交通省が推進するi-ConstructionによるICT技術を活用した生産性、安全性向上に向けた適切な要素技術の開発、試行、検証に取り組んでおります。
③ 耐震補強工事に関する研究
従来、建築・機械分野で用いられている慣性接続要素について、長大橋耐震補強工事に適用するための実用化研究を東北大学他と共同で実施しています。
④ 複合・合成構造の研究開発
1.宮地エンジニアリング の項でも記載のとおり、ロッキングピアの波形鋼板を用いた耐震補強に関する共同研究を実施しております。