有価証券報告書-第71期(平成30年1月1日-平成30年12月31日)

【提出】
2019/03/22 17:00
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63項目

研究開発活動

2009年の協業開始より、これまで当社とDMG MORI AKTIENGESELLSCHAFT(以下、「AG社」)で蓄積してきた技術や経験を最大限に活かした商品やサービスをご提供すべく、グループの力を結集して日々の研究開発活動を推進しております。
これまで、3D CADシステム、開発部品表や開発プロセス等開発環境の統一整備を行いながら、新機種の共同開発、基幹ユニットの共通化も推し進めてまいりました。AG社との協業がスタートした2009年の時点で両社合わせて300以上あった機種数も、重複機種や低利益率機種の整理を行い、2018年末時点では152まで集約することができております。今後も集約を進め、日独で蓄積した技術を最大に活用する開発環境を整備してまいります。さらに近年においては、ロボットを使った自動化システムや機械オペレータの作業を軽減するテクノロジーサイクル(組込ソフト)の開発、アディティブ・マニュファクチャリング(積層造形)やレーザ加工等の先端加工技術を使った新しいもの造り、人工知能(AI)やIoTを駆使して機械の稼働率や加工能率を最大化するための研究開発に重要課題として取組んでおります。
2018年度は、最高レベルの高速性と高精度を両立させた横形マシニングセンタの決定版NHX4000/5000 3rd Generationや、36種類のワイドバリエーション、省スペース設計で自動化のベースマシンとして最適なALXシリーズ、圧倒的な切削能力と高精度を実現した大型ターニングセンタNLX6000/1000等、AG社と合わせて10の新機種発表を行いました。2019年度はターニングセンタ、マシニングセンタ、積層造形機(アディティブ・マニュファクチャリング、以下「AM機」)等5機種の新機種発表を予定しております。
近年熟練加工技術者の不足から自動化の要求が高まっております。当社では2017年に生産した工作機械の17%であった自動化率が、2018年には24%、2019年には30%と飛躍的に増大する見込みであり、そのなかでもフレキシブルに対応できるロボットを用いた自動化システムの増加が顕著になっております。これまで主として自動車部品などの量産部品を自動化の対象としておりましたが、中品種中量生産や多品種少量生産の複雑なワークに対しても自動化要求が発生しており、これからは5軸加工機や複合加工機を中心とした工程集約と自動化の組み合わせが重要になってくると考えられます。当社ではワークの取り付け・取り外し作業からオペレータを開放し、人間はより高度なプログラミングや加工技術の開発等に専念できるよう自動化システムの開発に注力しております。具体的にはロボットを用いたモジュール型システムのMATRISに続き、より容易に導入可能なMATRIS-mini、設置面積を最小限におさえた自動搬送システムD-CARRY等の新しいロボットの利用や、軌道が不要な自動走行AGVと協調ロボットのシステム等であります。
自動化システムでは24時間365日のシステム稼働を目指し、また特に夜間や休日等は無人で運転することが求められるため、工作機械とシステムに組み込まれる周辺装置の品質が非常に重要となります。また、オペレータに依存していた切屑の清掃等の保守、加工状況の監視、加工精度の管理、工具状態の監視と摩耗や折損した工具の交換等をシステムが監視する必要があります。これらの要求に対処するために自動化をサポートする技術の開発に注力しております。現在開発中の技術として、周囲温度変化だけではなく加工状況に応じて熱変形をAIで推定し熱変位補正を行う機能、加工中のビビリ振動を検出しその発生を軽減する機能、切屑の堆積を画像で検出し自動的に洗い流す機能、機上で3次元測定器のように加工精度を測定する機能、工具の摩耗や折損を加工中や工具交換時に検出し予備工具と交換する機能等であります。IoT、センシング、AIの技術が用いられることによって、このような機能を実現いたします。
AM機においては、パウダーベッド方式の製品で生産性、安全性、操作性、メンテナンス性等に関するお客様の声を反映し、全面的に改良したLASERTEC 30 SLM 2nd Generationや、LASERTEC 12 SLMを発表し、製品の改善、シリーズ拡充を図っております。またパウダーノズル方式でも直径1m以上の積層可能なAM機の開発を行っており、医療や航空宇宙関連部品での積層造形需要に応えてまいります。
また、お客様にとって煩雑で手間と時間がかかる段取り等の作業の負担を大幅に軽減させるソリューションをご提案する「テクノロジーサイクル」の開発に注力しております。「テクノロジーサイクル」とは、機械本体、工具やロボット等の周辺機器、アプリケーションやソフトウエア、そしてCELOSなどのHMI(Human Machine Interface)を融合したソリューションであります。これを用いることによって、従来は専用機や専用プログラム、複雑な工具を使って加工していた高度な製品を、簡単、短時間で、高精度に加工することを可能にしております。今後もお客様の生産性向上につながるソリューション提供を続けてまいります。
2018年度は、5軸加工機の回転軸の幾何公差を自動で簡単に測定・補正し、温度変化や重力等の影響による運動誤差を補正する3Dクイックセット、ギヤ加工のプログラム作成や加工時間を1/3以下に短縮可能な“ギヤスカイビング”や“ギヤホビング”の対象機種を拡大いたしました。2019年度もグラインディング加工サイクル等新たに3種類の機能を開発し合計で30以上のテクノロジーサイクルラインナップとする計画であります。
これらハードウエア・ソフトウエア製品の開発だけでなく、お客様へ価値を提供するサービスの充実にも力を入れております。そのひとつとしてCELOS Clubがあげられます。これは操作パネルのソフトウエアの無償アップグレードサービス、機械を集中管理するPCソフトウエアの提供、機械の稼動情報の提供等を継続的に行い、15~20年という長期間にわたって使用される工作機械に新しい価値を提供し続けるサービスであります。2016年から2018年末までにすでに600台(約450社)以上にご利用いただいており、2019年も引き続き300台以上の受注を目標としております。
このようにDMG MORIグループ全体が一丸となって研究開発を進めております。これらの活動を推進することによって、お客様に最大の価値をご提供し、お客様の発展、ひいては全世界の製造業の発展に寄与していきたいと考えております。
以上の研究開発活動の結果、無形資産に計上された開発費を含む当連結会計年度の研究開発費の総額は12,018百万円となっており、セグメント別としては、マシンツール11,380百万円、インダストリアル・サービス637百万円となっております。