有価証券報告書-第72期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

【提出】
2020/03/24 17:04
【資料】
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【項目】
92項目

研究開発活動

2009年の協業開始より、これまで当社とAG社で蓄積してきた技術や経験を最大限に活かした商品やサービスをご提供すべく、グループの力を結集して日々の研究開発活動を推進しております。当社では当期にR&Dカンパニーを発足し、要素技術、新機種開発、既存機種の改善改良、マニュアル、知財からなる組織構成で運営しております。
要素技術に関しては自動化・省人化を実現するために自動化システムの開発を強化するとともに、自動化システムで重要になる切屑処理、プロセスモニタリング、機上計測、機械の稼働状況モニタリング、長時間にわたる運転での精度維持等の技術開発を、新機種開発においては複合加工機、5軸加工機とAM機の強化を進めております。当期には欧州での横形マシニングセンタ販売を強化するためにSIEMENSコントロール付き機種を新たに投入いたしました。またインドのラクシュミ社でのライセンス生産の開始、中国・天津工場での大型横形マシニングセンタの生産を開始してさらなる海外市場対応の強化に努めております。
熟練加工技術者が確保しにくい状況であることと、高コスト国での競争力維持のため、自動化・省人化の要求が高まっております。当社ではワークの取り付け、取り外し作業からオペレータを解放し、人間はより高度なプログラミング、初品チェック、加工技術の開発等に専念できるよう自動化システムの開発に注力しております。ワークハンドリングに関しては、従来から好評であったロボットを用いた自動化モジュールシステムのMATRISをさらに高度化し、より複雑なシステムに対応できるようにすることでシステム適用数を倍増しております。さらにAGVに協働ロボットを搭載し、レーザとカメラで障害物を検出し、自動的に回避しながら運転し、段取りステーションで非接触給電を行うことにより連続無人運転が可能な自律型走行ロボットAGVを新たに開発いたしました。
当社では当期から切屑・クーラント・ミスト部を発足させて専門的に取り組んでおります。その成果としてカメラ画像をもとに切屑の場所と堆積量をAIが推論し、クーラントの吐出角度を自動調整することで機内の切屑を排出する技術も開発し、長時間オペレータが機内の清掃を行わなくても機内がクリーンに保てる機械を実現いたします。さらに、NHXシリーズにゼロスラッジクーラントタンクを標準装備して販売を開始いたしました。これはタンク内でクーラントを攪拌し、微細なスラッジの堆積を抑えて効率的に回収し処理する当社の新技術です。これらの技術は、お客様の生産現場では清掃作業の時間や故障を減少させ、長時間の無人運転が可能になる等生産性向上に寄与いたします。
さらなる自動化、複合化を進めるために工作機械と計測装置の複合化に取り組み、機上での計測機能として非接触機上計測と非接触の工具形状摩耗測定のシステムの開発も進めております。
新機種開発においては、大型部品を安定して加工できるNLX 6000|1000は、ベルトレス駆動のモータ一体型大径主軸やその主軸と完璧に同期する回転工具主軸が特徴であり、建機・エネルギープラント業界のお客様に満足いただける新製品であります。DMP 70では全軸に搭載したスケールフィードバックと高い剛性、冷却機能によって、5㎛という高い位置決め精度を実現いたしました。その他トポロジー最適化技術を活用し、切削能力は据え置きながらも大幅な剛性向上と軽量化を達成した工作機械を製作いたしました。
AM機においては、パウダーベッド方式の、切削では不可能な複雑形状ワークの造形に適するLASERTEC 30 SLM の販売を開始いたしました。同機は、新開発のパウダーモジュールシステム「rePLUG」を採用しており、カートリッジ内に材料粉末用のフィルタを2つ搭載し、一方のフィルタ交換が必要な場合でも機械を停止せずに自動的に切り替えることで、長時間運転を可能にいたしました。またパウダーノズル方式でも直径1m以上の積層可能なAM機LASERTEC 125 3D hybridと、最長3.5mの長尺ワークの積層が可能なLASERTEC 6600 3D hybridを開発し、航空宇宙関連部品等での大型積層造形を可能といたします。
また、お客様にとって煩雑で手間と時間がかかる段取り等の作業の負担を大幅に軽減させるソリューションをご提案する「テクノロジーサイクル」の開発に注力しております。「テクノロジーサイクル」とは、機械本体、工具やロボット等の周辺機器、アプリケーションやソフトウエア、そしてCELOS等のHMI(Human Machine Interface)を融合したソリューションであります。これを用いることによって、従来は専用機や専用プログラム、複雑な工具を使って加工していた高度な製品を、簡単、短時間で、高精度に加工することを可能にしております。当期は平面の研削を行う”フラットグラインディング”、スプライン等のブローチ加工を簡単に実現可能とする”ギヤグラインディング”を新たに開発いたしました。来期はさらにテクノロジーサイクルの拡張を計画しており、今後もお客様の生産性向上につながるソリューション提供を続けてまいります。
当期には数多くの新規開発プロジェクトを進めました。これらの開発プロジェクトのほとんどは来期に製品となります。内容としては、複合加工機、AM機、自動ワーク搬送装置、テクノロジーサイクル、自動計測システム、主軸、刃物台、モータ等の要素技術等、多岐にわたります。来期にも同規模の開発を推進し、お客様に最大の価値をご提供し、お客様の発展、ひいては全世界の製造業の発展に寄与していきたいと考えております。
以上の研究開発活動の結果、無形資産に計上された開発費を含む当連結会計年度の研究開発費の総額は12,407百万円となっており、セグメント別としては、マシンツール11,828百万円、インダストリアル・サービス578百万円となっております。