有価証券報告書-第88期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/28 13:18
【資料】
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【項目】
107項目

研究開発活動

当社は「技術に立脚し社会が求める優れた商品を提供する」ことを企業理念とするとともに、環境問題・社会要請などにも応えるべく以下のような研究開発に取組んでおります。当事業年度の試験研究費の総額は148百万円であります。
⦅水素ステーション用及び水素充填用圧縮機⦆
既に市場投入・販売展開している『水素ステーション用一括昇圧型水素圧縮機』(商品名HyKom340)は、定置形水素ステーションの標準仕様(吐出圧力:82MPa、吐出量:340N㎥/h)であり、数多くの優れた技術を取り入れた製品で、当事業年度は10箇所の水素ステーションに納入しました。
2019年度に取得した超高圧水素関連の特許(特許第6533631号 ガス圧縮機及びガス圧縮機の製造方法)を製品に展開し、ピストンリング交換周期を従来の2倍以上に長寿命化することに成功しました。また、硫黄成分を含まないピストンリングを開発し、圧縮した水素の高品質化に成功しました。市場の期待は、水素ステーション圧縮機及びパッケージユニットの更なるコンパクト化、コストダウン、消耗部品の品質向上・長寿命化で、これらのニーズに応えられる製品を引き続き開発してまいります。
当事業年度は、吐出圧力20MPaクラスの充填用水素圧縮機を、山梨県が運営する米倉山電力貯蔵技術研究サイト(甲府市)、及び福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)(浪江町)に納入しました。カーボンニュートラルな社会の実現に向けて、充填用水素圧縮機のラインナップも拡充してまいります。
⦅電気化学式水素ポンプの開発・実証を完了⦆
当社と東レ株式会社は、共同で進めていたNEDO助成事業である「超高圧水素インフラ本格普及技術研究開発事業/水素ステーションのコスト低減等に関連する技術開発/電気化学式水素ポンプの開発・実証」において、電気化学式水素ポンプシステムの開発・実証を2021年2月末で完了しました。
電気化学式水素ポンプシステムは、再生可能エネルギーなどの電力を用いて、水素の酸化還元反応により水素を圧縮するPEM形水素圧縮装置です。本事業では、世界最高水準の4.1N㎥/h×40MPa仕様の電気化学式水素ポンプシステムの商用化を目指し、東レが水素を圧縮するキーマテリアルである電解質膜とスタックの開発を担い、加地テックがそのスタックを内蔵したシステムを開発するとともに、19.6MPa仕様の電気化学式水素ポンプシステム実証機を試作し、山梨県が運営する米倉山電力貯蔵技術研究サイト(甲府市)に設置しました。
米倉山での実証試験では、太陽光発電による電力とPEM形水電解評価設備で製造したグリーン水素を、今回開発した電気化学式水素ポンプシステム実証機で圧縮し、19.6MPa高圧ガスボンベへの水素充填に国内で初めて成功し、実証試験を完了しました。これは、国内初の連続PEM形水電解・PEM形水素ポンプシステムの実証となります。
電気化学式水素ポンプシステムは、従来の機械式水素ポンプと比較して、振動や騒音が無くコンパクトな設計が可能であることから、P2G(Power to Gas)設備全般、水素出荷用ボンベ充填設備や燃料電池フォークリフト充填設備等、水素圧縮を必要とする幅広い用途への展開が期待できます。今後、商用化(大容量化・高圧化)に向けた開発を継続してまいります。
当社は、経済産業省が提起している脱炭素社会の実現に向けたイノベーションに果敢に挑戦する企業「ゼロエミ・チャレンジ企業」の一員であり、また2020年12月7日に発足した水素社会の実現を推進する団体「水素バリューチェーン推進協議会(JH2A)」の会員として、水素社会の実現に向け、水素インフラを担う圧縮装置の開発・製造・販売に今後も注力してまいります。
また当社は、上記以外にも、成長分野市場が求める商品の開発と市場投入を実現するため、そのベースとなる高圧技術・環境対応技術の基礎研究を継続するとともに、既存商品の更なる改良開発を進めております。