有価証券報告書-第161期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/28 12:11
【資料】
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【項目】
143項目

研究開発活動

(1) 基本方針
当社グループは、企業理念の中で掲げている「円滑で安全な社会に貢献し、地球環境の保全をめざす」を実現するため、社会の変化やお客様の新たなニーズを的確にとらえ、4つのコアテクノロジー(トライボロジー(摩擦・潤滑)技術、材料技術、解析技術、メカトロ技術)と生産技術を駆使した製品や技術の開発を進めています。これらの開発活動を通して、高機能・新機能製品をタイムリーに市場へ供給することにより、より豊かな社会の実現と省エネルギーやCO2排出量削減など地球環境保全を図り、持続可能な社会の実現に貢献します。
産業全般における技術革新は急激に進み、AIやIoTの開発及び実用化、自動車産業における電動化・自動化など、企業として取り組むべき課題は拡大を続けています。さらには、カーボンニュートラルへの取り組みなど企業の社会的責任の重要性は増し、経営環境は急速に変化しています。こうした環境下においても、当社グループは企業理念のもと、トライボロジーとデジタルの融合による価値創出で、持続可能な社会の発展に貢献し、社会から必要とされ信頼される企業を目指していきます。
特に研究開発では、MTP2026において“Bearings & Beyond”を掲げ、既存製品の商品力強化と、新商品・新事業の拡大を目指します。
(2) 研究開発の状況
産業機械事業
「電動化・自動化」による一層の生産性の向上、技術サービスを通じて信頼性向上に貢献する「予知保全技術」、「カーボンニュートラルの実現」などが求められる中、当社グループは、これらのニーズに貢献する製品やサービスを開発しています。
電動化・自動化に関しては、電動射出成型機やサーボプレス機などの加工設備は、より複雑な形状の部品への対応や更なる生産性向上が求められています。これに伴い、ボールねじの単位時間あたりの走行距離が延びるため、「高負荷駆動用ボールねじ向け長寿命化技術」を開発し、長寿命化ニーズに対応しました。
予知保全技術に関しては、技術サービスを通じた信頼性向上のため、設備の状態をその場で測定・診断でき、安定稼働と保全の効率化に貢献する「ワイヤレス振動診断器」を商品化しました。
カーボンニュートラルの実現に関しては、軸受のライフサイクル全体におけるCO2排出量削減のために、世界で初めて100%植物由来の耐熱バイオマスプラスチックを保持器に適用し、「バイオマスプラスチック保持器搭載 深溝玉軸受」をエアコンファンモータ用軸受として開発しました。
さらに、人とロボットが協働する社会の実現に向けて、ロボット用アクチュエータ製品・技術の開発にも取り組んでいます。サービスロボットが、全方向へ滑らかに移動することを可能にする「アクティブキャスタ」や、生産現場の協働ロボットが、人に優しく安全・安心に稼働するために、衝突を高精度に検出して衝突力を緩和する「協働ロボット用アクチュエータ」を開発しました。また、神奈川県の「令和3年度新型コロナウイルス感染症対策ロボット実装事業」に参加し、医療従事者の負担を軽減可能な搬送アシストロボットの開発を進めています。医療分野に関しては、他にも遠隔医療の実現に貢献するために、技師の滑らかな検査装置操作を精密に再現する「球面パラレルリンクアクチュエータ」を開発し、世界初の心臓超音波検査ロボットに搭載されました。
今後一層高度化する産業機械市場のニーズに応えるため、総合開発力の向上を目指し、軸受製品と直動製品の国内開発拠点を統合しました。
自動車事業
電動化やEV化、そして自動化が進展する中、当社グループは、「走る」「曲がる」「止まる」に関する自動車の技術革新に対応し、省エネルギー、安全性、快適性を実現する製品・技術の開発に全方位で取り組んでいます。
「走る」に関しては、当社の要素技術をさらに高めるために、当社製品が使われるユニット全体を視野に入れて研究をしています。モータの高速化・小型化を可能にしたトラクションドライブ減速機、磁歪式トルクセンサ、電動シフトアクチュエータなど当社独自の機構に世界最高レベルの高速回転軸受を組み合わせることで滑らかな変速と航続距離延伸を実現する「シームレス 2スピード eアクスル コンセプト(Gen2)」をコンセプトモデルとして、「人とくるまのテクノロジー展2021」と「上海モーターショー2021」に出展しました。
「曲がる」に関しては、世界的なカーメーカーとの協業により開発した高出力シングルピニオン電動パワーステアリングの知見を活かし、さらなる改良やラインナップ拡充の開発を進めています。また、自動運転を視野に入れ、ステアバイワイヤシステムの開発を進めており、システムの中で大きな要素となる「操舵反力装置」「タイヤ転舵装置」を開発し、これらについても「人とくるまのテクノロジー展2021」に出展しました。
「止まる」に関しては、世界各国で実用化が進む自動運転や法規制に伴う自動ブレーキの採用拡大の中、より多くのお客様からのニーズに応えるため「電動ブレーキアクチュエータ用循環溝一体ボールねじ」のラインナップ拡充を進めています。なお、本製品は、世界で初めて循環部を冷間鍛造で一体成形し、さらに周辺部品を統合することで大幅なコンパクト化を実現したことが評価され、「2021年“超”モノづくり部品大賞」において「日本力(にっぽんぶらんど)賞」を受賞しました。
この他、軸受の摩擦低減、高速回転化、軽量化などのコア技術を通して、電動化や自動化に貢献する開発を推進しています。
当連結会計年度の研究開発費はグループ全体で19,175百万円であり、その内訳は、産業機械事業5,680百万円、自動車事業12,528百万円、その他965百万円です。