有価証券報告書-第120期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/25 14:56
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【項目】
99項目

研究開発活動

当社グループは、JTEKT GROUP VISION「No.1 & Only One-より良い未来に向かって-」を2014年4月に策定し、必要な要素として「価値づくり」「モノづくり」「人づくり」という3本の柱を掲げております。そのなかの「価値づくり」が技術の分野では特に重要であり、ステアリング、駆動系部品、ベアリング、工作機械・メカトロニクス商品を中心に、まだない価値をつくり続けるという想いを込めて、研究開発活動を推進しております。
お客様の期待を超えるような新しい価値を生み出し続けるために、先を見据えた将来の商品に繋げる基盤要素研究に取り組んでおります。その内容は強い技術領域をさらに進化、融合させるもので、トライボロジー(潤滑、摩擦、摩耗等を対象とする科学技術)・材料技術、要素・基盤技術、システム制御技術、超精密加工技術などをベースにしております。また、「地球にやさしい、安全・安心・快適」な新商品をスピーディかつ確実に提供することを目的に、成長分野を視野に入れた積極的な研究開発に取り組んでおります。
なお、当連結会計年度における研究開発費は64,712百万円であり、各セグメントにおける研究開発活動の状況は、次のとおりであります。
(1) 機械器具部品
① ステアリング事業
ステアリング事業では、自動車の低燃費/高機能化に貢献できる電動パワーステアリングの全ラインアップを品揃えしており(Only One)、また、グローバルシェアは25%を超え世界トップであります(No.1)。今後も社会やお客様のニーズにお応えした商品を提供するため、次世代商品の開発に取り組んでまいります。当連結会計年度の主な成果としては、次のとおりであります。
より大きな車両への適用、ならびに高度な自動運転に対応するため、システムの機能安全への取り組みを強化しております。当期は、従来の電動パワーステアリングシステムの電気系統を冗長化したシステムを受注いたしました。電気系統を完全二重系とすることにより、システム失陥のリスクを回避でき、安全性の飛躍的な向上を図ることができました。
また、ステアリングホイールとステアリングギアとの間のメカニカルなリンクをなくし、ステアリングホイールの操作を電気信号でタイヤに伝えるステア・バイ・ワイヤシステムを受注いたしました。メカニカルなリンクがないため、より一層の安全性が求められる中、当社が開発したリチウムイオンキャパシタをシステムの補助電源として採用することにより、当社システムの冗長範囲の拡張を図ってまいります。ワンランク上の機能安全を実現することにより、未来のモビリティー社会に貢献してまいります。
② 駆動事業
駆動事業では、従来からのドライブライン技術(ドライブシャフト、プロペラシャフト及びトルクコントロールデバイス等)の深化を進め、安全・安心・快適に向けたシステムトータルでのソリューションを提供し、モビリティー社会に貢献できるよう開発に取り組んでおります。また、電動化に向けて、四輪駆動システムメーカーの強みを生かした4WDシステム「eモーター後輪駆動ユニット」の開発や、駆動用モーターの油冷・潤滑用途へのオイルポンプ技術の展開、ならびにFCV向けにも引き続き、低コストな高圧水素バルブ及び高圧水素減圧弁の開発を進めております。また、商品力を向上するため、当社保有技術のステアバイワイヤシステムやリチウムイオンキャパシタとの協調等、差別化を進めております。当連結会計年度の主な成果としては、次のとおりであります。
当社の主力商品の一つである電子制御4WD用カップリング(ITCC)においては、新開発の電磁クラッチと組み合わせた新4WDシステムを量産いたしました。また、フロントデファレンシャル用として、トルセンも小型スポーツ車に採用され、2020年度に量産開始予定です。さらに、豊精密工業株式会社との連携により、さらなる商品力向上に取り組んでまいります。
③ 軸受(ベアリング)事業
軸受事業では、環境規制への対応、高効率化のニーズが高まる中、これまで培ってきた基盤技術をさらに進化させるとともに、自動車の電動化や産機分野での使用環境の多様化に対応する、新たな商品開発に取り組んでおります。当連結会計年度の主な成果としては、次のとおりであります。
自動車用ベアリングでは、主に変速機で使用される「クリープ摩耗抑制玉軸受」を開発いたしました。この製品は、変速機のハウジング内で起こる軸受のクリープによるハウジングの摩耗を抑制いたします。また、EVやHV等の電動車に適した電動キャリパブレーキへの適用を目指した「非循環ボールねじ」を開発いたしました。これらの製品は車両の軽量化やCO2排出削減に貢献いたします。
さらに当社では、FCVへの対応として業界初となる水素ガス環境下で軸受を評価できる「水素環境用軸受評価試験機」を開発いたしました。この試験機により、水素環境中における材料及び潤滑剤の評価が可能となり水素環境でも安心して使用できる軸受の開発が可能となりました。
産機用ベアリングでは、成長産業である半導体分野での欧州化学物質規制に対応した真空・クリーン用ベアリング「EXSEV®-EX」の開発や光学フィルム製造装置などに使用する特殊環境用軸受として、耐食性が従来品の3倍となる長寿命軸受「コロガードプロベアリング®-ZO」を開発いたしました。また当社が国内トップシェアを誇る、鉄鋼設備用ベアリングでは、設備の長期安定操業とLCC(ライフサイクルコスト)低減に貢献する「焼結機パレット台車加圧ローラ用軸受」の改良を行い、軸受寿命従来比2倍を達成いたしました。さらに高荷重・極低速回転、水及び水蒸気環境下での耐久性を向上させたJHS(ジェイテクト・ハイパー・ストロング)軸受のシリーズ第三弾となる連続鍛造設備用長寿命自動調心ころ軸受「JHS®330」を開発いたしました。これからもお客様の価値を創造するモノづくりに取り組んでまいります。
(2) 工作機械
工作機械・メカトロ事業においては,モノづくりイノベーションカンパニーとして、工作機械、IoEソリューション、ライフサイクルサポートなどあらゆる価値を提供しております。研究開発活動においては、まだない価値をつくり続けるため新たな技術開発及び開発した技術を組み込んだ新商品の開発を推進しております。当連結会計年度の主な成果としては、次のとおりであります。
労働人口の減少ならびに熟練技能者の減少により、自動化・省人化の要求が高まっております。当社では,熟練者のみが感じ取れる微小な加工状態の変化を監視する、高度なセンシング機能を産学連携により開発し,加工条件の設定においても熟練者のノウハウを組み込んだ知能化システムを開発いたしました。
EV化に伴い高機能な減速機の需要が増加しており、これに使用されるギヤは静粛性の向上など新たな機能が求められます。当社ではこの要求に対応するため,工法,工具を含めた独自の歯形理論に基づく創成技術を開発いたしました。
工程集約による生産効率の向上や航空機など高付加価値市場をねらい,コンパクトで高い主軸剛性を持つフレキシブル旋回主軸を開発し、5軸マシニングセンタ「FH630SX-5A」の販売を開始いたしました。本機は,高精度で高効率な切削能力が評価され,日刊工業新聞社主催2019年(第62回)十大新製品賞を受賞いたしました。