有価証券報告書-第73期(平成28年10月1日-平成29年9月30日)

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2017/12/20 9:33
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研究開発活動

グループの中核企業である当社は、昭和33年に日本で初めて粉体分野の専門研究機関である「粉体工学研究所」を設立するとともに、世界の粉体技術分野のリーディングカンパニーとして、多様化する顧客ニーズに応えて、粉体技術の最前線分野に挑戦することで、新技術創成を目指しております。
当社グループは、グローバルに事業を展開していく中で、日米欧に研究開発拠点を配置して、各研究開発拠点の技術的な特長を生かしながら研究開発テーマを分担することで、グローバルかつ効率的な研究開発体制をしいております。具体的には、研究開発テーマは、各社の研究開発担当部門のリーダーで構成される国際研究開発会議において審議が行われ、分担及び調整が行われております。
研究開発の推進におきましては、特にニーズへの対応が重要であり、例えば、近年需要が急増し高品質化している二次電池や電子部品の材料、トナー、医薬品、機能性食品などの粉体処理、環境・エネルギー関連の各種材料処理、その他様々な粉体特性評価等に対するニーズへの対応のため、新しい粉体関連のシステムや装置あるいは新技術を生み出す努力を続けております。
また、本世紀初頭より重点的に取り組んでおりますナノパーティクルテクノロジー関連の研究開発につきましては、当社のマテリアル事業部 製薬・美容科学研究センターを中心として、生分解性ナノ粒子を用いたDDS(薬物送達システム)技術を中軸に据えて、ビジネス化を含めた製品開発や応用研究を推進しております。近年、化粧品や育毛料などへの技術応用が進み、日本での売上が伸びるとともに、新たに中国をはじめとするアジアへの事業展開が進みつつあります。
当連結会計年度における研究開発活動の主なものは以下のとおりであります。なお、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は7億9千8百万円であります。
セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。
1 粉体関連事業
当事業に係わる研究開発費は6億2千9百万円であります。
当社グループの基幹事業である粉体関連事業においては、高機能材料を生み出す粉体処理機械ならびにシステムの開発やその効率化を目指した研究開発を推進すると共に、機能性ナノ粒子を使った化粧品や育毛剤などの新しい材料製品の開発にも力を入れております。
○電子機器関連材料(二次電池材料、磁石、トナー等)
電子機器分野は、近年特に注力すべきマーケットであり、粉体形状物質である二次電池の電極材やその他材料の高付加価値化、ネオジウム高性能磁石やトナーなどの高性能化など、電子機器関連材料のファイン化(超微粒子化)が大きなテーマであります。このような分野では、粒子の被覆や精密分散、球形化、非晶質化等を行う粒子複合化装置が重要であり、新型粒子精密複合化装置(ノビルタ ベルコム)を開発し、現在、積極的に営業活動を実施しております。
同機は、省スペースでの大容量処理を目的に開発され、最大有効容量は従来機の約5倍、同一動力で比較した原価低減率は30%以上、容積当たりの投入量は従来装置の約2倍と大きく、コンパクトな仕様になっております。
○食品・医薬関係
食品・医薬分野は、粉砕・混合・造粒・乾燥等の個別の粉体プロセスの高付加価値化が重要となる分野であります。昨年に本格販売を開始したCPミキサは、中央に垂直なパドルを持った混合機で、従来機に比べて混合速度が大きく構造もシンプルであるため、特に食品、医薬品への展開を進めております。
また、同様の構造をもったCP真空乾燥機は、これらの優れた混合機能を生かした真空乾燥機であり、食品・医薬品や化成品にも実績を挙げております。
さらに、強力なせん断混合機能をもったサイクロミックスは、粉末吸入製剤の製造に有効で、既にいくつかの製薬企業の研究所に納入されております。
○PLGAナノ粒子関係
当社は、ナノパーティクルテクノロジーを用いた材料事業展開の一つとして、生体適合性ナノ粒子のPLGA(乳酸グリコール酸共重合体)に薬物を封入する医薬技術をベースにして、機能性化粧品ナノクリスフェアや育毛剤ナノインパクトなどの製品を開発して、主に日本で事業化を進めております。
当連結会計年度は、顧客ニーズに具体的に対応する形で、PLGAを応用したまつ毛美容液アイリッシュセラムを新たに開発して、販売活動を開始いたしました。
○ミネラル・無機材料関係
ミネラル・無機材料分野は、産業の基礎資材として、重要かつ広範な裾野が広がる分野であります。具体的には、タイヤや電極材に混ぜられるカーボン、鉄鋼生産に必要な石灰、プラスチックに充填されるタルクや亜鉛華、顔料など多種多様に分かれます。
この分野では、ファイン化(超微粒子化)をキーワードに、超微粉砕化、分級の高性能化、工場内リサイクルあるいは鉱物処理の省エネを目指した新型造粒機などの開発が進められており、その一例として、高性能分級装置CR型の開発と粉砕装置・分級装置への応用が進められております。また、摩耗性の強い原料への対応として、部品の耐摩耗化等の検討が進められております。
○測定装置関係
当社の測定装置は、粉体物性特性評価を中心にして、基本商品が構成されているのが大きな特徴であります。
当社のロングランヒット製品の一つである粉体特性評価装置(パウダテスタ)は、世界に3,000台の販売実績があり、トナー、製剤、カーボンブラックなどの分野では、標準機として評価されております。現在、使いやすさをさらに改善することを検討中であり、世界的により広く販売を展開していくことを目指しております。
また、Xoptix社(イギリス)から技術導入されたレーザ回折・散乱法によるオンライン粒子径分布測定装置オプティサイザの実用化を進めるとともに、IoT技術への展開としてシステムの遠隔モニタリング・制御への応用に取り組んでおります。
○集塵・精密空調設備関係
当社の粉砕装置や分級装置は、微粉化した製品を乾式フィルタで回収するシステムを多数採用しておりますので、集塵装置の性能向上は、大変重要であります。
当連結会計年度は、製品捕集専用に、新たにパルスジェットコレクタVCP(耐圧型)とVSP(標準型)の2機種を開発して、販売を開始いたしました。同機は、プリーツ型フィルタを採用することで、従来機と比べて、設置面積、設置容量とも大幅に削減することに成功いたしました。
○その他
Hosokawa Micron Ltd.(イギリス)では、納入した粉体システムの粉砕機や分級機等の主な機械に取り付けた動力計や温度計、振動計等の計測器からのデータを、インターネットの利用により遠隔地で記録、解析し、これらをシステムの適正な運転や、部品の交換時期の見極め等に活用する手法を構築し、その実用化を進めております。
2 プラスチック薄膜関連事業
当事業に係わる研究開発費は1億6千8百万円であります。
当社グループのプラスチック薄膜製造装置は、溶解された種類の異なるプラスチックをノズルから噴出して冷却し、最大11層までの円筒状の多層フィルムを連続的に製造する世界最高レベルを有しております。
また、本装置において重要な要素の一つに冷却リングがあります。これまでの冷却リングには空気の入口が4~8つありましたが、内部で良好な気流が得られるように設計し、ガラスファイバ複合体を利用することにより空気入口ソケットを1つにまとめることに成功し、これにより装置の設置や操作が一段としやすくなりました。