訂正有価証券報告書-第72期(平成27年10月1日-平成28年9月30日)

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2018/02/05 9:46
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123項目

研究開発活動

当社グループは、常に変化し高度化を続ける顧客ニーズに的確に応えていくために、営業部門との連携強化を図りながら、新製品、新技術を生み出す研究開発を推進しております。特に、近年需要が急増し、高品質化している二次電池や電子部品などの材料、トナー、医薬品、機能性食品などの粉体処理や、環境・エネルギー関連の各種材料処理、ならびにこれらに関連した様々な粉体特性評価のために、たゆまない研究開発による新たなチャレンジに取り組んでおります。
当社グループは、研究開発拠点を持つ日本ならびに欧米の連結子会社が連携して積極的に情報交換などを行うとともに、各々の技術的な特長を生かしながら、研究開発テーマをグローバルに分担しています。具体的には、研究開発テーマは、各社の研究開発担当部門のリーダーで構成される国際研究開発会議で審議され、調整が行われます。
グループの中核企業である当社は、昭和33年に設立された「粉体工学研究所」を中心に研究開発を推進し、新しい粉体技術の創成を目指しております。
当社グループは、数年前より画期的な製品のアイデアの探索のために異なる部門のスタッフからなるi-teamを結成し、そこで提案されたテーマを当社グループの研究開発評価システム「Stage Gate Process」に乗せて研究開発を進めております。このStage Gate Processは、開発のステージを5段階に分けて、それぞれのゲートでそのテーマを進めるか否かの判定を行い最終的な製品化を目指すもので、既にいくつかの実績を挙げております。
一方、本世紀初頭より重点的に取り組んでおりますナノパーティクルテクノロジー関連の研究開発については、当社のマテリアル事業部 製薬・美容科学研究センターを中心として、生分解性ナノ粒子を用いたDDS(薬物送達システム)技術を中軸に据えて、ビジネスに直接結びついた形で製品開発や応用研究を推進しております。
研究開発の推進においては、特にニーズへの対応が重要であり、近年需要が急増し高品質化しております、二次電池や電子部品の材料、トナー、医薬品、機能性食品などの粉体処理、環境・エネルギー関連の各種材料処理、その他様々な粉体特性評価のために、新しい粉体関連装置やシステムあるいは新技術を生み出す努力を続けております。
当連結会計年度における研究開発活動の主なものは以下のとおりであります。なお、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は7億3千9百万円であります。
セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。
1 粉体関連事業
当事業に係わる研究開発費は5億7千3百万円であります。
当社グループの基幹事業である粉体関連事業においては、高機能材料を生み出す粉体処理機械ならびにシステムの開発やその効率化を目指した研究開発を推進すると共に、機能性ナノ粒子を使った化粧品や育毛剤等の新しい材料製品の開発にも力を入れております。
○電子機器関連材料(二次電池材料、磁石、トナー等)
この度、新たに粒子の被覆や精密分散、球形化、非晶質化等を行う乾式粒子複合化装置ノビルタベルコム NOB-VCを開発し、販売開始することになりました。当装置は、当社で平成16年度より販売を開始し、二次電池やトナー、医薬品、化粧品、顔料等における材料加工の分野で数多くの納入実績を有する乾式粒子複合化装置ノビルタの特長・能力を継承しつつ、省スペースでの大容量処理を目的に開発したものです。最大有効容量は従来装置の約5倍、同一動力で比較した原価低減率は30%以上、容積当たりの投入量は従来装置の約2倍で、コンパクトな設計が可能なため、清掃性が大幅に向上しております。
○食品・医薬関係
本年より本格的な市場販売を開始したCPミキサは、中央に垂直なパドルを持った混合機で、従来のナウタ型混合機に比べて混合速度がはるかに大きく構造もシンプルであるため、特に食品、医薬品への応用が期待されております。さらに、同様の構造をもったCP真空乾燥機は、これらの優れた混合機能を生かした真空乾燥機として食品・医薬品や化成品にも実績を挙げております。また、強力なせん断混合機能をもったサイクロミックスは、粉末吸入製剤の製造に向けて強い関心が示され、既にいくつかの製薬企業の研究所に納入されており、今後の展開が期待されます。
○PLGAナノ粒子関係
当社では、微粒子技術を用いた材料事業展開の一つとして、生分解性の生体適合性高分子PLGA(乳酸グリコール酸共重合体)ナノ粒子に薬物を封入し複合化する技術をベースにして、機能性化粧品ナノクリスフェアや育毛剤ナノインパクトなどの製品で事業化を進めております。
この度、アンジェスMG株式会社、森下仁丹株式会社及び大阪大学大学院医学系研究科と実施いたしました、核酸含有PLGAナノ粒子技術を用いた経口DDS製剤の国内特許が成立いたしました。本特許は、新薬として注目されております核酸医薬であるNF-KBデコイオリゴを当社が開発したPLGAナノ粒子に含有させ、さらに森下仁丹が持つ腸溶性シームレスカプセルに内包した経口製剤です。医薬品の生体内での安定性を高めるPLGAナノ粒子技術と医薬品を腸まで確実に届ける腸溶性シームレスカプセル技術を組み合わせることで、核酸医薬の生体内での高い安定性と薬理効果の発揮が期待されるものです。難治性炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)の根治治療として期待される技術であり、今後、核酸医薬品の経口製剤として早期実用化を目指した取り組みを進めてまいります。
○ミネラル・無機材料関係
研究開発の焦点は、新型超微粉分級機や工場内リサイクルあるいは鉱物処理の省エネを目指した新型造粒機に向けられております。さらに、摩耗性の強い原料用の新型耐摩耗分級ロータのパイロット試験に成功し、取引先での実証試験でもよい結果が得られております。加えて、ロングギャップミルの新しく設計されたロータやバッフルプレイトはテストセンターで極めて良好な結果を示しており、近々取引先での最初の実用化テストが予定されております。
また、使用済みタイヤのリサイクルから得られるカーボンブラック原料を高機能な応用に適用するためには、これらの中にある微量の粗粒子を解砕する必要があり、これに対して流動層式ジェットミルを通常とは異なる適当な条件範囲で操作することにより、大幅な省エネを図ることが見出されております。
○測定装置関係
当社のロングランヒット製品の一つである粉体特性評価装置パウダテスタの最新型PT-Xについて、さらに新たな改良を取り入れ、より使いやすく性能を高めた装置の開発を行い、世界的な販売展開を目指しております。また、粉体と液体との親和性の評価に使用されております浸透速度測定装置ペネトアナライザを使って、打錠された医薬品等の液体との濡れ性を評価するために特化したジグの開発などを行い、その応用分野を広げております。
さらに、英国Xoptix社との提携により技術導入したレーザ回折・散乱法によるオンライン粒子径分布測定装置オプティサイザの実用化を進め、システムの遠隔モニタリング・制御への応用を目指しております。本装置は堅牢な構造で耐久性に優れ、検定、調整が容易で安価な装置となっており、多くの粉砕システムに適用できる可能性があります。
○集塵・精密空調設備関係
粉体システムにおける製品の回収や粉塵ダストの除去などのために、バグフィルタは欠かせない要素となっております。そこで、改めてその集塵機構を見直し、バグフィルタの取り付け方法も含めてより使いやすく、小型で処理風量の大きな高性能集塵機の開発を目指し、新しい構造を考案しその有用性の実験的検証を継続しております。
○その他
Hosokawa Micron Ltd.(イギリス)では、納入した粉体システムの粉砕機や分級機等の主な機械に取り付けた動力計や温度計、振動計等の計測器からのデータを、インターネットの利用により遠隔地で記録、解析し、これらをシステムの適正な運転や、部品の交換時期の見極め等に活用する手法を構築し、その実用化を進めております。
2 プラスチック薄膜関連事業
当事業に係わる研究開発費は1億6千5百万円であります。
当社グループのプラスチック薄膜製造装置では、溶解された種類の異なるプラスチックをノズルから噴出して冷却し、最大11層までの円筒状の多層フィルムを連続的に製造することができますが、本装置において重要な要素の一つに冷却リングがあります。これまでの冷却リングには空気の入口が4~8つありましたが、内部で良好な気流が得られるように設計し、ガラスファイバ複合体を利用することにより空気入口ソケットを1つにまとめることに成功いたしました。これにより装置の設置や操作が一段としやすくなりました。