有価証券報告書-第180期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/25 10:20
【資料】
PDFをみる
【項目】
142項目

事業等のリスク

当社グループの注力事業領域である社会インフラ、エネルギー、電子デバイス、デジタルソリューションの各事業は、高度で先進的な技術が事業遂行上必要である上に、グローバルな激しい競争があります。このような状況下、当社が認識している当社グループの事業等のリスクのうち主要なものは以下のとおりですが、これらは当社グループの全てのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見できないリスクも存在します。このようなリスクが現実化した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
なお、以下に記載する事項は、当有価証券報告書提出日現在において入手した情報に基づいて当社グループが判断したものであり、不確実性が内在しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。
(1)経営方針に係るもの
1)東芝メモリホールディングス㈱の株式に係るリスク
当社グループは、近年、その設備投資・投融資をメモリ分野に集中することとしていましたが、当社は、2017年9月、メモリ事業を営む旧東芝メモリ㈱の全株式を譲渡するため、Bain Capital Private Equity, LPを軸とする企業コンソーシアムにより組成される買収目的会社である㈱Pangeaと株式譲渡契約(以下「本株式譲渡契約」という。)を締結しており、これに伴い、メモリ事業は非継続事業として取り扱われることとなりました。その後、本株式譲渡契約に従い2018年6月1日付で株式譲渡が実行され、当社は、当該株式譲渡の実行に伴い、旧東芝メモリ㈱の当該株式譲渡後の安定的な事業の移管実現を目的として、㈱Pangeaに合計3,505億円を再出資しました。この結果、旧東芝メモリ㈱は、当社連結対象から外れて、㈱Pangea及び旧東芝メモリ㈱は当社の持分法適用会社になり、2018年8月、㈱Pangeaは旧東芝メモリ㈱を吸収合併し、東芝メモリ㈱(以下当該合併後の東芝メモリ㈱を「東芝メモリ」という。)に商号変更し、2019年3月、東芝メモリを株式移転完全子会社とする株式移転によって発足した東芝メモリホールディングス㈱(以下「東芝メモリホールディングス」という。)の株式を取得し、東芝メモリホールディングスは当社の持分法適用会社になりました。当社が保有する東芝メモリホールディングスの株式の簿価は個別財務諸表において840億円、連結財務諸表において3,538億円(いずれも2019年3月末現在)であり、その議決権比率は40.2%(ただし、2019年3月31日現在においては、㈱INCJ及び㈱日本政策投資銀行に対して指図権を付与しており、当有価証券報告書提出日現在においては、㈱INCJに対して、指図権を付与しております。)です。このため、東芝メモリホールディングスの損益が当社グループの持分法投資損益に影響することとなりますが、メモリの主要用途のひとつであるスマートフォン市場は現時点では厳しい状況にあり、東芝メモリホールディングスに係る持分法投資損益については、2018年度の第4四半期において損失を計上しています。当社は東芝メモリホールディングスの経営に関与しておらず、また、東芝メモリホールディングスの業績に係る今後の見通しについて提供を受けておりません。そのため、東芝メモリホールディングス㈱の持分法損益の今後の見通しについて予想することは困難ですが、過去の実績としては、メモリ事業は需給の循環的変動傾向が顕著であり、業績は景気変動の影響を受けて大きく変動し、また、為替変動の影響を特に大きく受ける傾向にありました。
なお、今後、メモリ事業の市況悪化、自然災害、停電を始めとする不可抗力等により同社の業績が著しく悪化した場合、同社株式について減損損失を計上する、または、持分法投資損益に影響を与える可能性があります。
また、当社は、当有価証券報告書提出日現在においては、当社が保有する東芝メモリホールディングスの株式について、締結済の株主間契約に則り新規上場の実現に向けて協力し、安定株主として当面の間保有を継続する方針です。
本株式譲渡契約においては、表明保証の違反、あらかじめ規定された一定の米国国際貿易委員会による調査、訴訟等及び特許ライセンス契約等に起因した損失に関し、当社が500億円を上限として補償義務を負うことが規定されております。
2)モニタリング事業
「東芝Nextプラン」では、構造転換が必要な事業をモニタリング事業とし、定期的に改善状況をモニタリングすることとしており、各モニタリング事業のリスクは次のとおりです。
①システムLSI事業
システムLSIについては、開発費負担が大きく、2018年度において営業損益が赤字となっております。同事業の収益性の低下により、2018年度において同事業の長期性資産の減損損失を計上しており、引き続き厳しい事業の状況が見込まれます。「東芝Nextプラン」の策定に当たってシステムLSIの収益性の改善計画を策定しましたが、その後の市況悪化の加速などを踏まえ、売上、事業規模に見合った人員規模への見直しやコスト構造の改善により市況の影響を受けにくい事業体制への強化を目的として、東芝デバイス&ストレージ㈱において、事業構造改革を実施することを決定しました。この一環としてシステムLSIの営業部門や共通スタフ等に在籍する者について早期退職優遇制度を適用することとし、また、2019年度からはシステムLSIを1つの事業部に統合し、これまでに培ってきたアナログ、デジタル技術の一層の融合と、開発リソースの統合・再配分による、注力事業領域の強化と共通機能の効率化を図り、より一層事業運営体制を強化していきます。これらの施策が奏功しない場合、悪影響が生じる可能性があります。
②火力事業
火力事業においては、温室効果ガスの排出防止への取り組みが国際的に加速することにより主に石炭火力への投資抑制や再生可能エネルギーへのシフトが進み、新設案件が減少している現状と認識しており、2018年度、営業損益が赤字となっております。このため、今後の損益見込によっては長期性資産の減損が必要となる可能性があります。今後、サービス事業を中心とした事業体制へ転換し、人員配置、製造拠点の適正化を図りますが、競合他社との更なる市場競争の激化等により、悪影響が生じる可能性があります。
③モバイルHDD
HDDについては堅調に推移しているものの、モバイルHDDの市場規模は縮小していくものと認識しています。これを踏まえて、モバイル向けからエンタープライズ向けへシフトし、データセンター向けニアラインHDDの増産投資を含め、製造自動化の加速、製造能力適正化を進めていく方針ですが、米国と中国の貿易摩擦等による市況の悪化や競合他社との更なる市場競争の激化等により、悪影響が生じる可能性があります。
④産業モータ事業
インフラシステムソリューション部門の主要コンポーネントのひとつである産業モータについては、世界経済や各国の貿易政策による素材価格変動、為替変動等が製造コストに影響します。特にこの数年はこれらの要因による製造コストの増加で収益性に影響が出ており、生産性改善と価格是正等の対策を行っております。しかしながら市況の悪化や、さらなるコスト増の要因が増えた場合、当社グループの想定通りの収益性の改善がなされない可能性があります。
3)東芝Nextプランの前提条件
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針(対処すべき課題)」に記載しているとおり、当社は、2018年11月8日開催の取締役会において、基礎的な収益力の強化と成長に向けた投資の二本柱から構成される全社変革計画「東芝Nextプラン」について決議しております。
「東芝Nextプラン」において掲げる数値計画は、策定時において適切と考えられる一定の経済状況・産業動向その他様々な前提・仮定及び見通しに基づき策定されたものであり、当社グループが当該数値計画を達成できるかどうかは、本「第2 事業の状況 2事業等のリスク」に記載された事項を含む多くのリスクや課題の影響を受け、前提条件等が変化することがあり、当該数値計画を実現できず、事業計画を予定通り達成できない可能性があります。
4)戦略的提携・買収の成否
当社グループは、研究開発、製造、販売等あらゆる分野において、成長事業、新規事業を含む様々な事業につき、共同出資関係を含む他社との提携や買収を積極的に推進していました。このような提携や買収において、資金調達、技術管理、製品開発等、経営戦略について提携先と不一致が生じ、提携関係を維持できなくなる可能性や、提携や買収が期待どおりの効果を生まない可能性があります。また、提携先の財務状態の悪化、その他の事情により提携事業に対する追加の資金支出や債務保証を供与することを余儀なくされ、その結果、当社グループの業績や財政状態に悪影響を与える可能性があります。
(2)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に係るもの
1)大規模案件の受注に係るリスク
当社では、原子力発電システム、火力発電システム、電力流通システム(送変電・配電システム)、交通機器等において大規模案件の受注及び推進を行っていますが、案件の仕様その他の条件の受注後の変更、工程遅延、材料価格の高騰、政策の変更その他による計画変更・凍結・中止や災害発生等が大規模案件遂行に大きな悪影響を与えることがあります。そして、当初の見積りに不足があった場合、案件の収益が当初の想定より悪化した場合、案件が何らかの事情により遅延または中止となった場合等には、当該案件に関して将来の損失に備えて引き当てを行う、又は、計上した収益を遡って見直して損失として計上する可能性があり、2018年度においても、送変電・配電システム及び火力発電システム等において、損失を計上した案件があります。このような大規模案件における損失発生を回避するために、一定規模の案件については受注の段階で、分社会社のみならずコーポレートによって受注の可否について審査を行い、プロジェクトの管理を強化し、損失リスクの極小化を図っています。
このような施策によって、既受注の損失が発生している大規模案件は減っていますが、上に述べた案件の仕様その他の条件の受注後の変更、工程遅延、材料価格の高騰、政策の変更その他の事情によって大規模案件において損失が発生し、当社グループの業績や財政状態に悪影響を与える可能性があります。
2)エネルギーシステムソリューション部門の事業環境
当部門では、国内外の電力事業者を中心とする民間設備投資に係る売上が当部門の売上の相当部分を占めています。このため、これらの投資動向の影響を受けることから、景気後退、インフラ投資にかかる減税措置の動向、人件費の高騰等に起因する建築コストの増加、その他民間事業者の事業環境の変化等に伴う民間設備投資の低迷、為替変動が当部門の事業に悪影響を与える可能性があります。
電力事業のプラント案件では、当社が当社グループ内に機能を持たない所掌に関して、パートナー企業と責任を分担するコンソーシアムを組成し、設計・エンジニアリング、調達、建設工事を一括して、固定価格で受注することがあります。この場合、発注者に対し、パートナー企業と連帯債務を負うことが一般的であるため、パートナー企業の事業遂行能力の不足、分担業務の不履行やパートナー企業自体の財務状態の悪化や法的整理が生じた場合、当社がパートナー企業の債務を負担することとなり、予想外の大幅な費用負担の増大、現金支出の増大が発生する可能性があります。また、固定価格の契約の場合、建設コストの増加や納期遅延によって発生する損失は、発注元との分担の仕組みが導入されている場合を除いて、原則として受注企業が負担することになります。特に、当部門の主要事業の一つである原子力事業においては、テロ対策や大規模自然災害への安全対策の要請が高くなり、各国政府の安全基準の変更が相次いで実施されたことに加え、原子力発電所の新規建設機会が長期間存在していなかった地域における案件や最新鋭の施設の建設においてはベンチマーク可能な案件が存在しないこと等により、コストが当初の見積りと比較して予想外に増大したり、工程が予想外に長期化する案件が発生しました。
以上の事情を背景に、案件の中止、規制その他の事業環境の変更や変化、工程遅延や初号機に特有の想定外の事象が生じた場合に追加で発生したコスト等について発注元、パートナー企業、その他に転嫁できず回収不能となる可能性やその負担を巡り係争が生じる可能性があり、実際に訴訟において請求している案件もあります。受注を目的として当該案件を推進する事業者に出資を行う案件については、案件の動向次第によっては発注元その他第三者に対する損害賠償責任の発生、費用負担の発生、出資の減損、資金負担の増加や投資回収の遅れ等が生じる可能性があります。現在進行中の案件についても資金拠出者の方針変更等によりプロジェクトの継続が困難となる可能性があります。
また、電力事業のプラント受注においては、入札時、受注時、工事開始時に履行保証又は支出保証のため銀行保証状等の提出を求められることが通常です。さらに、「(5)取引慣行に係るもの 1)履行保証等」に記載のとおり、当社子会社がプラント等の物件を受注する際には、子会社による履行保証又は支払保証のために、当社が親会社保証を供与することがあります。当社は、既に子会社によるプラント受注において多額の支払債務及び履行債務に関して親会社保証を提供しているところ、子会社の財政状態の悪化等の結果、子会社により当該債務が履行されない状況に陥った場合、当社が親会社保証を履行する必要が生じ、当社に多額の追加的な現金負担が発生するとともに、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
原子力事業については、事業性評価及び他社との連携も含めてその事業の在り方についての検討を行っており、その結果、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
電力流通システム事業は、世界各国・各地域で海外事業を展開しておりますが、非常に厳しい事業環境にあります。また、国内においても、大型案件の追加コスト引当等が発生しており、同事業の2018年度の営業損益は、赤字となっています。このため、今後の損益見込によっては長期性資産の減損が必要となる可能性があります。
火力事業におけるリスクは上記「2 事業等のリスク (1)経営方針にかかるもの 2)モニタリング事業 ②火力事業」に記載のとおりです。
3)インフラシステムソリューション部門の事業環境
当部門は、公共インフラ、産業システムの領域に様々なソリューションとコンポーネントを提供しています。
当部門では、公共投資及び民間設備投資に係る売上が当部門の売上の相当部分を占めているため、世界各国、各地域における、公共投資の減少や遅れ、景気後退、インフラ投資にかかる減税措置の動向、人件費の高騰等に起因する建築コストの増加、その他民間事業者の事業環境の変化等に伴う民間設備投資の低迷、建築・住宅着工の動向等が、当部門の事業に悪影響を与える可能性があります。
当部門は、世界各国、各地域で事業展開を図っていますが、案件の仕様その他の条件の受注後の変更、政策の変更その他による計画変更・凍結、規制の変更、材料価格・人件費の高騰や災害発生等が事業遂行に大きな悪影響を与えることがあります。また、為替変動等も当部門の事業に悪影響を与える可能性があります。
産業モータのリスクについては、「2 事業等のリスク (1)経営方針にかかるもの 2)モニタリング事業 ④産業用モータ事業」に記載のとおりです。
4)ビルソリューション部門の事業環境
当部門では、昇降機、業務用空調機器及び産業光源等に関する事業を遂行しており、昇降機及び業務用空調機器に関しては、中国国内に製造拠点を持ち、中国国内で販売も行っており、当社グループの昇降機及び業務用空調機器の海外事業においては中国が主要市場の一つとなっています。そのため、中国国内の景気後退、建築コストの増加、その他事業環境の変化等に伴う民間の設備投資の低迷、建築・住宅着工の動向等が、当部門の事業に悪影響を与える可能性があります。今後の米国と中国の貿易摩擦の状況によっては、これらの事業の遂行に悪影響を与える可能性があります。
5)リテール&プリンティングソリューション部門の事業環境
当部門は、流通小売業・サービス業、一般オフィス、製造・物流業及び特定顧客向けのリテールソリューションと一般オフィス、製造・物流業向けのプリンティングソリューションを提供しています。当部門の業績は、各地域での政治、経済、税制、環境対応規制及び為替の変化、顧客の業績悪化による設備投資の延期や中止、複合化・システム化に伴う業界再編の加速、競合他社との更なる市場競争の激化、当該業界への新規参入等により、悪影響が生じる可能性があります。
6)デバイス&ストレージ部門の事業環境
業績は景気変動の影響を受けて大きく変動し、また、為替変動の影響を受ける傾向にあります。また、当部門は海外を中心とした同業他社との厳しい競争下にあります。さらに、技術革新や消費者市場・供給先メーカーの動向などにより左右され、需要を事前に正確に予測することは困難な傾向にあり、設備投資を実施しても、予期せぬ市場環境の変化に伴い、販売に至るまでの間に需要が変動し、想定した販売規模に合致しない可能性、あるいは供給過剰による製品単価の下落の悪影響を受ける可能性等があります。また、市況が下降局面を迎えたり、新製品の立上げが遅れたり、生産が計画どおり進まなかったり、新技術が急速に出現したりすることにより、現在の製品の競争優位性が失われ又は低下する可能性があります。また、米国と中国の貿易摩擦等の市況の悪化によってディスクリート等に悪影響が生じる可能性があります。
システムLSI及びモバイルHDDの各事業におけるそれぞれのリスクについては、システムLSI事業については「2 事業等のリスク (1)経営方針にかかるもの 2)モニタリング事業 ①システムLSI事業」、モバイルHDDについては「2 事業等のリスク (1)経営方針にかかるもの 2)モニタリング事業 ③モバイルHDD」に記載のとおりです。
7)デジタルソリューション部門の事業環境
当部門では、金融業、大手製造業等の民間IT投資や政府、地方公共団体向け等の公共IT投資に係る売上が当部門の売上の相当部分を占めています。このため、これらの投資動向の影響を受けることから、景気後退等に伴う民間IT投資の低迷や公共IT投資の減少や遅れが当部門の事業に悪影響を与える可能性があります。当部門のソリューション・サービスは、請負契約で受注することが多く、受注から納期までの期間が比較的長く、当初の見積りに不足があった場合やプロジェクト管理に問題が発生した場合等には、想定を超えるコストが発生する可能性があります。また、納期遅延や、納入したシステムに瑕疵が発生した場合は、追加でのコスト負担に加え、発注者に対し損害賠償する必要が生じる可能性があります。
8)その他部門の事業環境
当部門は、リチウムイオン二次電池「SCiBTM」を提供しており、需要の拡大を見込み設備投資を行っていますが、需要が予想より下回ったり、生産が計画どおりに進まなかったり、新技術が急速に出現したりすることにより、現在の商品の競争優位性が失われ又は低下し、損失を計上する可能性があります。当社製のリチウムイオン二次電池は自動車等幅広い製品に組み込まれているため、当社製品に重大な瑕疵等が発生した場合、リコール等が発生し、多額の損失を被る可能性があります。
9)財務リスク
当社の連結及び単体の経営成績及び財政状態は、当社又は当社グループの事業活動の影響を受けるほか、主として以下の財務的な要因の影響を受ける可能性があります。
① 未払退職及び年金費用
期間純退職及び年金費用及び退職給付債務の計算に影響を与える最も重要な仮定は、割引率と年金資産の期待収益率です。割引率は、現在利用可能で、かつ、年金給付の支払期日までの間利用可能と予想される高格付けで確定利付の社債及び確定利付の国債の利回りなどを考慮して決定しています。期待収益率は、保有している年金資産の構成、運用手法から想定されるリスク、過去の運用実績、年金資産運用の基本方針及び市場の動向等を考慮して決定しています。
当社グループは、年金制度の積立状況(退職給付債務と年金資産の公正価値の差額)を連結貸借対照表で認識しており、対応する調整を税効果控除後、資本の部の「その他の包括損益累計額」に含めて報告しています。この調整の対象は未認識の保険数理上の損失、過去勤務費用及び移行時債務残高であり、適用される会計基準に従い会計処理の上、期間純退職及び年金費用として認識されます。運用収益の悪化による年金資産の公正価値の減少や、割引率の低下、昇給率やその他の年金数理計算に使用する前提とする比率の変動による退職給付債務の増加に伴い年金制度の積立状況が悪化し、その結果、当社グループの株主資本は悪影響を受け、また、その他の費用として計上される期間純退職及び年金費用が増加する可能性があります。
② 長期性資産及びのれんの減損等
長期性資産について、減損の兆候があり、かつ資産の帳簿価額を回収できない可能性がある等の場合、当該長期性資産について帳簿価額を公正価値まで減額し、当該減少額を損失として計上する可能性があります。また、当社の連結貸借対照表には、米国会計基準に基づき相当額ののれんが計上されています。のれんについては、1年に1回減損テストを実施しており、減損テストにおいて、報告単位の帳簿価格がその公正価値を上回る場合に、当該報告単位に割り当てられたのれんの総額を上限として、その上回る額を減損額として認識することになります。さらに、1年に1回の減損テストに加えて、事業環境の変化等による企業価値の下落を示唆する状況が発生した場合で、帳簿価額の合計額が公正価値を上回っている場合は、減損を認識することになります。したがって、長期性資産やのれんの対象事業の将来キャッシュ・フローの見込み、加重平均資本コストの割引率の変動によっては、減損を計上する可能性があります。
当社の連結貸借対照表に計上されているのれんのうち、主要なものには、東芝テック㈱グループに関するもの、東芝エレベータ㈱グループに関するもの、㈱ニューフレアテクノロジーに関するもの等があります。東芝テック㈱グループ、東芝エレベータ㈱グループに関するのれんについては、各社が非上場の他社を買収した際に計上したものです。なお、東芝テック㈱の作成する連結財務諸表においては、同社の準拠する日本会計基準に従い、のれんの均等償却を行っておりますが、当社の連結財務諸表が準拠する米国会計基準においてはのれんの償却は認められていないため、のれんの残高に差異が生じております。㈱ニューフレアテクノロジーに関するのれんは、当社が㈱ニューフレアテクノロジーを子会社化した際に計上したものであり、同社は上場会社であることから、減損判定における公正価値の測定において市場環境や当該会社の業績見通しのほかに同社の株価も参照します。同社の業績は堅調に推移しておりますが、2018年度第3四半期において、株式市場全体の相場が軟化した影響を受け、同社の株価が下落したことを主因として同社株式の公正価値が下落したため、同社に関するのれんにつき、減損損失を計上いたしましたが、引き続き相当額ののれんの残高があります。
上記を含め、当社グループが保有している投資有価証券や関連会社に対する投資の公正価値が下落した場合、損失を計上する可能性があります。
③ 為替変動の影響
当社グループの事業活動は、世界各地域において様々な通貨を通じて行われているため、為替相場の変動の影響を受けます。
当社グループは、売上外貨と購入外貨のバランス化を図り、為替相場の変動の影響を極小化する対応に努めていますが、セグメント毎の事業規模のバランスが変動すること等により、営業損益が為替変動の影響を受ける可能性があります。また、急激な為替変動により、外貨建ての債権債務の計上時期と決済時期の為替レートの差異から生じる為替換算差損が発生する可能性があります。
当社グループの保有する外貨建ての資産、負債等を連結財務諸表の表示通貨である円に換算することによって発生する外貨換算調整額は、資本の部の「その他の包括損益累計額」に含めて報告されます。このため、当社グループの株主資本は為替相場の変動により悪影響を受ける可能性があります。
④ 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産を計上しています。当社グループは、入手可能な証拠に基づき実現可能性が低いと判断されるものを対象として、繰延税金資産に対する評価性引当金を計上しています。評価性引当金の計上は、見積りを含む本質的に不確実な処理です。
今後、さらに評価性引当金の計上が必要となる場合があり、将来の当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
また、繰延税金資産、評価性引当金の計上は現行の税制度を前提として行っており、税制の改正が行われた場合には影響を受ける可能性があります。
10)資金調達環境の変化等
当社は、従来より営業活動によるキャッシュ・フロー、銀行等の金融機関からの借入金並びにCPや社債のような債券の募集等により資金を調達しております。これらの資金調達手段は世界経済動向、金利等の市場環境、資金需給の影響を強く受けるため、これらの環境の変化が当社グループの資金調達に関して悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社が複数の金融機関との間で締結している借入に係る契約には財務制限条項が定められており、今後当社の連結純資産、連結営業損益又は格付が財務制限条項に定める水準を下回ることとなった場合には、借入先金融機関の請求により当該借入れについて期限の利益を喪失する可能性があります。
当社は、1,800億円の劣後特約付ローンによる借入を行っていましたが、2019年5月13日付公表の「ハイブリッドファイナンス(劣後特約付ローン)の期限前弁済に関するお知らせ」にありますように2019年6月25日付で期限前弁済を実施しました。
(3)取引先等に係るもの
1)資材等調達
当社グループの事業活動には、部品、材料等が適時、適切に納入されることが必要ですが、部品、材料等の一部については、その特殊性から外注先が限定されているものや外注先の切替えが困難なものがあります。部品、材料等の供給遅延等が生じた場合には、必要な部品、材料等が不足する可能性又は購入のための費用が増加する可能性があります。また、当社グループが競争力のある製品を市場に供給するためには、競争力のある価格で部品、材料を購入するとともに、外注先を含めたサプライチェーンの最適化が必要ですが、昨今の材料価格、人件費の高騰や為替変動により、必要な部品、材料などの購入費用が増加する可能性があります。さらに、当社グループの生産活動をはじめとする事業活動には、電力が安定して供給されることが必要ですが、国内の原子力発電所の稼動停止に伴う電力供給不足と為替変動を受けた燃料費上昇により、電気料金の更なる値上げが行われる可能性があります。このように、主要な外注先からの調達に支障を来たした場合や、電力供給不足、電気料金の更なる値上げが行われた場合には、当社グループの競争力に悪影響を与えることがあります。また、調達した部品、材料等に欠陥が存在し、仕様が満たされていない場合は、当社グループ及び東芝ブランドの製品の信頼性及び評価に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、日本国内においては、一定の外注先に対する支払サイトの短縮等支払条件の改善を求める政府の施策が推進されています。このような状況下、今後外注先に対する支払条件を変更する可能性があり、その場合には、一時的に必要となる運転資金が増加し、キャッシュ・フローを中心に当社グループの業績及び財政状態に影響を与えることが見込まれます。
2)人的資源の確保
当社グループの事業の成否は、開発、生産、販売、経営管理等のすべてのプロセス、分野における優秀な人材の確保に大きく依存しています。特に事業のグローバル展開及び先端的な開発・研究の推進には、人材の確保が必要不可欠です。しかし、各プロセス、分野における有能な人材は限られており、人材に対する需要が高まっているため、人材確保における競争が激しくなっており、人件費も高騰しております。このため、在籍している従業員の流出の防止や新たな人材の獲得ができない又は獲得するために従来以上のコストが必要となる可能性があります。
(4)製品、技術等に係るもの
1)新規事業
当社グループは、新規事業を営む会社に投資をし、新規事業に関して他社と提携し、又は新規事業を自ら積極的に推進しています。
新規事業は不確定要因が多く、事業計画を予定どおり達成できなかった場合は、それまでの投資負担等が、当社グループに悪影響を与える可能性があります。
(5)取引慣行に係るもの
1)履行保証等
当社は、当社子会社がプラント等の物件を受注する際に、取引先の求めに応じて契約履行保証等の親会社保証を供与することがあります。この親会社保証は、商習慣から経常的に行われているものですが、当社子会社が契約上の義務を履行できない場合には、当社に損失が発生する可能性があります。
一部の契約においては、当社の連結純資産、連結営業損益又は格付が当該取引先との契約に定める水準を下回ることとなったため、該当する保証について、親会社保証から信用状、ボンド又は現金担保の提供による保証に切り替え等を行う必要が生じ、追加費用負担が発生する可能性があります。
(6)新製品及び新技術に係るもの
1)新商品開発力
先進的で魅力的な商品、サービスを提供することが当社グループの責務です。しかしながら、急激な技術の進歩、代替技術・商品の出現、技術標準の変化等により、新商品を最適な時機に市場に投入することができない可能性、新商品が市場から支持される期間が計画期間を下回る可能性があります。また、技術開発に必要な資金と資源を今後も継続して十分に確保できない場合、新商品の開発、投入に支障を来たす可能性があります。
当社グループは、経営資源の集中と選択を高める観点から、研究開発においても販売時期を考慮した上で、当社独自の先端技術の開発に開発テーマを厳選しています。特定の商品、技術分野においては、他商品、技術分野に研究開発対象を厳選することに伴い研究開発が進まず、その結果、当社グループの技術面における優位性が損なわれる可能性があります。
(7)法的規制等に係るもの
1)情報セキュリティ
当社グループは、技術、営業その他事業に関する営業秘密を多数有しています。当社グループは、情報管理体制の整備及び厳重化、社員教育等を通じて、かかる営業秘密のグループ外への漏洩を防ぐ方策を講じていますが、過去には営業秘密の漏洩を疑わせる事態も発生しており、漏洩の結果、第三者がこれを不正に取得、使用するような事態が生じた場合、当社グループの競争力が損なわれ、当社グループの事業や業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
また、当社グループは、事業遂行に関連して、顧客、取引先、従業員等の個人情報を有しています。当社グループは、情報管理に万全を期していますが、予期せぬ事態によりかかる情報が流出し、第三者がこれを不正に取得、使用するような事態が生じた場合、当社グループのブランドイメージや社会的評価、事業に悪影響を与え、当社グループが損害賠償責任を負う可能性があります。
加えて、当社グループの事業活動において情報システムや情報通信ネットワークの役割は極めて重要です。当社グループは、情報システムや情報通信ネットワークの安定的運用と安全対策の充実に努めていますが、コンピュータウイルスや不正アクセスなどのサイバー攻撃、ソフトウェア又はハードウェアの障害、外部事業者が提供する情報通信サービスの停止、災害等により情報システムや情報通信ネットワークが機能不全に陥る可能性は皆無ではなく、その結果、当社グループの事業が悪影響を受ける可能性があります。
2)コンプライアンス、内部統制関係
当社グループは、世界各地域において様々な事業分野で事業活動を展開しており、各地域の法令、規則の適用を受けます。当社グループは、コンプライアンス(法令遵守)、財務報告の適正性確保を始めとする目的達成のために内部統制システムを構築し、運用していますが、2015年度に、当社において過去数年間にわたって利益の先取りや費用の先送り等不正な会計処理が継続されていたことが判明し、財務報告に係る内部統制の不備を認識しました。当社は、2015年9月30日付で発足した経営刷新体制のもとで、適切な内部統制の整備、運用をすすめてまいりました。その結果、2015年度において財務報告に係る全社的な内部統制の重要な不備を是正するための改善策についての整備は完了し、運用も概ね定着したものの、運用期間の制約からすべての改善策について必ずしも十分には運用状況が確認できなかったこと、2016年3月31日を基準日として行う財務諸表監査において修正事項及び決算・財務報告プロセスに係る不備が発見されたことを勘案し、2015年度において開示すべき重要な不備が存在するものと判断いたしました。その後、2016年度においては、前事業年度末におけるこれらの開示すべき重要な不備の是正措置は完了し、その他対象項目の整備・運用評価の状況を勘案した結果、2016年度の財務報告に係る内部統制は有効と判断いたしました。
また、内部統制システムは本質的に内在する固有の限界があるため、その目的が完全に達成されることを保証するものではありません。したがって、将来にわたって法令違反等が発生する可能性が皆無ではありません。また、法規制や当局の法令解釈が変更になることにより法規制等の遵守が困難になり、一定の地域又は分野で事業継続が困難となる可能性や、法規制等の遵守のための費用が増加する可能性があります。さらに、当社グループがこれらの法規制等に違反した場合には、当社グループが、課徴金等の行政処分、刑事処分若しくは損害賠償請求の対象となり、又は当社グループの社会的評価が悪影響を受け、その結果、当社グループの事業や業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があり、過去には課徴金の行政処分を受けたことがあります。
3)環境関係
当社グループは、世界各地域において、大気汚染、水質汚濁、有害物質、廃棄物処理、製品リサイクル、地球温暖化防止、エネルギー等に関する様々な環境関連法令の適用を受けています。当社グループの過失の有無にかかわらず、世界各地に有する製造等の拠点における土地の浄化責任を負うことがあるなど、過去分を含む事業活動に関し、環境に関する法的、社会的責任を負う可能性があります。また、将来環境に関する規制や社会的な要求がより厳しくなり、有害物質の除去や温室効果ガス排出削減等の責任がさらに追加される可能性があります。
当社グループは、事業遂行に際し、様々な化学物質、放射性物質、核燃料物質等を取り扱っていますが、自然災害、テロ、事故、その他不測の事態(当社グループがコントロールできないものを含む。)が発生することにより、万一環境汚染が発生し、又はそのおそれが発生した場合には、当社グループに損失が生じ又は当社グループの社会的評価に悪影響を与える可能性があります。
4)品質問題
当社グループは、製品の特性に応じて最適な品質を確保できるよう、全力を挙げて品質管理に取り組んでいますが、これまでも予期せぬ事情によりリコール、訴訟等が発生しており、今後もそのような事態に発展する品質問題が発生する可能性は皆無ではありません。また、大型案件で重大な品質問題が発生し、顧客への納入の大幅な遅延や再作業が必要となった場合、多額の費用負担や損害賠償責任が生じる可能性があります。
(8)重要な訴訟事件等の発生に係るもの
1)証券訴訟
当社は、2015年、過去に不正な会計処理が行われたことが判明し、過年度の有価証券報告書等の訂正を行いました。当該不正な財務報告について、国内において複数の訴訟提起がされ、約1,770億円の損害賠償請求を受けており、当社は合理的に見積り可能な金額を引当計上しています。(「第5 経理の状況 注記.24」参照)。これらの訴訟については、訴訟提起から相当期間が経過しており、2019年度から2020年度にかけて一部の訴訟において一審判決や和解の勧告がなされる可能性があります。これらも含め今後の経過に応じて既に計上している引当金についても適宜合理的に見積り可能な金額を見直していくことから、追加の費用計上が必要になる可能性があり、また一定の支払が必要となる場合には、キャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
また、米国カリフォルニア州で当社を被告として提起された集団訴訟は地方裁判所で棄却され、この決定について原告が上訴していましたが、2018年7月、地方裁判所判決を破棄し、原告が訴状を修正し再提出することを許容すべく本件を地方裁判所に差戻す旨の上訴審判決が出されました。2018年10月、当社は、当該上訴審判決を不服として、連邦最高裁判所に対して上告申立てを行いました。さらに、当社グループは、会計処理問題に関連して、当局からの調査等を受け、又は将来受ける可能性があります。これらの結果、何らかの処分等を受けた場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
2)争訟等
当社グループは全世界において事業活動を展開しており、訴訟やその他の法的手続に関与し、当局による調査を受けています。また、今後そのようなことが生じる可能性もあります。地域ごとの裁判制度等の違いやこれらの手続は本来見通しがつきにくいものであることから、通常の想定を超えた金額の支払が命じられる可能性も皆無ではありません。このため、これらについて当社グループに不利益な決定がなされた場合、その決定の内容によっては当社グループの事業、業績や財政状態に悪影響を与える可能性があります。また、様々な事情により、支払が命じられる可能性が極めて低いものの訴額の大きな訴訟が提起される可能性も皆無ではありません。
当社グループは、半導体、CRT、光ディスク装置の製品について、欧州委員会又はその他の競争法関係当局から調査を受けています。また、集団訴訟等が提起されている製品もあります。
2017年8月、欧州において、過去にブラウン管が組み込まれた製品を購入した原告から、当社グループ会社3社及びグループ外1社に対し、2007年まで当社の持分法適用会社であった松下東芝映像ディスプレイ㈱(設立当時)が、ブラウン管に関する欧州競争法違反行為に関与し、その結果2003年1月から2006年12月の期間に損害を被ったとして、損害賠償請求訴訟が提起されました。
2017年12月、米国サウスカロライナ電力&ガス社他の電力購入顧客から、同州VCサマー原子力発電所2号機・3号機の建設プロジェクト中止に伴い損害を受けたとして、当社に対し損害賠償を求める集団訴訟が提起されました。
(9)役員、従業員、大株主、関係会社等に関する重要事項に係るもの
1)電力流通システム事業に関する提携
当社グループは、ロシア法人PJSC "Power Machines"(以下「Power Machines」という。)と合弁でオランダ法人PM&Tホールディング社を設立し、当社グループがPM&Tホールディング社の議決権の49.99%を、Power Machinesが議決権の50.01%を保有しています。PM&Tホールディング社はロシア法人Power Machines Toshiba High Voltage Transformers社の議決権の100%を保有しています。合弁相手方であるPower Machinesが米国財務省外国資産管理局(Office of Foreign Asset Control)から制裁対象(Specially Designated Nationals)に指定されたことが判明したことから、当社グループはその対応につきPower Machinesと交渉を行っています。交渉の結果によっては、当社グループに一定の損失が発生する可能性があります。
2)天然ガスに関する契約
当社グループは、2019年5月、仏国エネルギーメジャーTotal S.A.のシンガポール子会社であるTotal Gas & Power Asia Private Limited(以下「Total」という。)との間で、米国産液化天然ガス(以下「LNG」という。)にかかる事業(以下「LNG事業」という。)を行っている当社連結子会社東芝アメリカLNGコーポレーション(以下「TAL」という。)の発行済株式の全てをTotalに譲渡し(以下「本件株式譲渡」という。)、本件株式譲渡の完了と同時に、当社グループ会社間で締結しておりますLNG事業に係る各契約、及び、当社グループと顧客との間で締結している取引契約を含む、当社グループのLNG事業に係る全ての契約を移管又は解除(以下、本株式譲渡と合わせて「本件譲渡」という。)することといたしました。本件譲渡の完了により、2019年度に約930億円(連結)の損失の発生を見込んでいます。
なお、当社は、TAL社が米国の天然ガス液化役務提供会社であるFLNGリクイファクション3社(以下「FLIQ3」という。)との間で締結している天然ガスの液化に関する加工委託契約上の義務に関する親会社保証(以下「当社保証」という。)をFLIQ3に提供しています。当社とTotalは、当社がFLIQ3へ提供している当社保証をTotalグループからの保証に置き換えることで解除することでも合意しており、FLIQ3の承認を経て保証解除される予定であり、2020年3月末までに本件譲渡を完了させる予定です。
(10)その他
1)知的財産権保護
当社グループは、知的財産権の確保に努めていますが、地域によっては知的財産権に対する十分な保護が得られない可能性があります。
当社グループは、第三者からの使用許諾を受けて第三者の知的財産権を使用していることがありますが、今後、必要な使用許諾を第三者から受けられない可能性や、不利な条件での使用許諾しか受けられなくなる可能性があります。
また、これまでも当社グループは知的財産権に関する訴訟等を提起され、又は自らの知的財産権を保全するために訴訟等を提起したことがあり、今後もこのような訴訟等が生じる可能性があります。このような訴訟等には、時間、費用その他の経営資源が費やされ、また、訴訟等の結果によっては、当社グループが重要な技術を利用できなくなる可能性や損害賠償責任を負う可能性があります。
また、当社は、当社グループ以外の会社に東芝商標等の使用を許諾している商品があります。当該許諾に当たっては、当該商品に起因する損害は、許諾先の会社が全責任を負うこととなっておりますが、当該商品に起因する損害を被った第三者から、何らかの請求をされる可能性や、当社グループ製品の品質に対して風評被害が生じる可能性があります。
2)社会情勢等
当社グループは、全世界において事業を展開していますが、米中貿易摩擦をはじめとする、国内外の各地域の政治、経済、社会情勢や政策の変化、投資規制、収益の本国への送金規制、輸出入規制、外国為替規制、税制等を含む各種規制の動向、為替レートの変動が各地の需要、当社グループの事業体制に悪影響を与える可能性があります。
3)大規模災害等
当社グループの生産、販売拠点が存在する地域において大規模災害、ストライキ、テロ、新型インフルエンザ等の感染症が発生した場合多大な悪影響を受ける可能性があります。
また、当社グループの生産、販売拠点において地震、洪水、台風等の大規模災害が発生した場合には、生産設備の破損、原材料部品の調達停止、物流販売機能の麻痺等により、生産拠点の操業停止等が生じ、資産価値や生産販売能力に重大な悪影響を与える可能性があります。過去においては、東日本大震災、タイ及びインドにおける洪水により、当社グループの事業は影響を受けました。なお、東芝メモリホールディングス㈱の主要な製造拠点は四日市市にあり、南海トラフ地震が生じた場合には東芝メモリホールディングス㈱の株式価値に悪影響を与える可能性があります。
4)模倣品対策
当社グループは、東芝ブランドの価値の保護、増大に努めていますが、世界各地において、模倣品が多数発生しています。当社グループは模倣品の撲滅に努めていますが、多量の模倣品が流通することにより、東芝ブランドの価値が毀損され、当社グループ製品の売上に悪影響を与える可能性があります。
5)株主還元等
当社は、東芝メモリ㈱の株式譲渡が完了したことにより計上される相当額の譲渡益のうち当面活用の予定がないものについては、その一部を株主の皆様に還元させていただくことが、ROEの向上等、当社の企業価値と株主共同の利益の向上という観点から適切であると判断し、2018年11月9日から2019年11月8日までの期間において7,000億円を上限として、自己株式の取得を行うことを決定いたしました。しかしながら、自己株式の取得は株式の需給、流通量や市場環境の変化等の当社の支配の及ばない事由により左右されるほか、事業環境の急激な変化等の影響も受けるため、1年間の取得期間中に取得価額の総額及び取得株式の総数が上限に達しない可能性があります。
なお、2019年5月31日(受渡日ベース)時点の取得株式の総数は124,024,300株、取得価額の総額は448,951,139,862円です。
6)当社株式の流動性
当社株式は、2017年8月1日付で東京証券取引所及び名古屋証券取引所の市場第二部に指定替えとなり、日経平均株価及びTOPIXの構成銘柄から除外されました。これに伴い、国内を中心とする一部機関投資家の売買対象から当社株式が除外されたと考えられます。当社は、市場第一部への速やかな復帰を目指していますが、市場第一部への指定は東京証券取引所及び名古屋証券取引所の判断によるため、どの時点で復帰できるかは不明であり、当社株式の流動性や需給への一定の制約が生じる可能性があります。