有価証券報告書-第104期(平成31年3月1日-令和2年2月29日)

【提出】
2020/05/28 14:33
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【項目】
90項目

研究開発活動

当社は、「電動機(モータ)とその応用」を事業領域に定め、“世界初”“世界一”にこだわった製品・技術の研究開発をグローバルな体制で行っています。前中期経営計画「Dash 25」の遂行状況を踏まえて、2015年4月20日に開示した長期経営計画「2025年ビジョン」の見直しを行い、メカトロニクスを軸とした「工場自動化・最適化」と「メカトロニクスの応用領域」を事業領域に設定しました。
「工場自動化・最適化」では、これまでのソリューションに「デジタルデータのマネジメント」を加えたコンセプト「i3-Mechatronics(※1)」を軸とした産業自動化革命の実現に向け、メカトロニクス技術とICTの融合により、新しい自動化ソリューションの開発を加速しました。2018年12月より本格稼働開始した安川ソリューションファクトリ(埼玉県入間市)においては、データの収集・視える化、そして、蓄積・解析を一括して行うことができるソフトウェアツール「YASKAWA Cockpit(※2)」の実証を進めました。
「メカトロニクスの応用領域」では、メカトロニクス技術が応用できる分野を探索・実証しながら、事業化を見極めていきます。特に、Energy Saving分野(省エネ機器・高効率モータ)、Food & Agri分野(野菜生産システム・食品工場自動化)、Clean Power分野(風力/太陽光発電・電気自動車)、Humatronics分野(リハビリ機器・バイオメディカル用ロボット)に焦点を当てて取り組んでいます。
さらに、お客さまの要求に対してスピーディに対応できる体制を構築するために、基礎研究から量産試作までを一貫する研究開発拠点「安川テクノロジーセンタ」の新設(2021年予定)に向けて準備を行っています。
以上の取り組みにより当連結会計年度の研究開発費は18,999百万円となりました。
[研究開発分野]
長期経営計画「2025年ビジョン」の実現に向け、2019年度はソリューションコンセプト「i3-Mechatronics」の具体化に向けた研究開発に取り組みました。IoTを軸とする新製品・新技術開発、AI技術を製品に反映させるため、オープンイノベーションのさらなる強化を進めています。
また、メカトロニクスの応用領域拡大に向けて、前腕回内回外リハビリ装置「CoCoroe PR2(ココロエ ピーアールツー)」を製品化しました。本装置は、前腕の回内・回外運動のリハビリに特化した装置で、日本国内において管理医療機器(クラスⅡ)/特定保守管理医療機器として医療機器認証を取得しました。
当分野の研究開発費は4,694百万円です。
[モーションコントロール分野]
「i3-Mechatronics」の具体的なソリューションの一つとして、モーションとロボットの制御を統合しデータ収集・解析をリアルタイムに行える「YRMコントローラ(仮称)」を開発し「IIFES 2019」へ参考出展しました。また同展示会では、各種センサデータをリアルタイムで収集・解析し装置制御へフィードバックすることが可能な次期サーボドライブのコンセプトを紹介しました。インバータでは、機械・設備の状態や情報の可視化、故障予兆診断や長寿命化を実現できる新機能を搭載した汎用小型高機能インバータ“GA500”を製品化しました。
安川ソリューションファクトリでは、サーボモータなどから検出したデータを「YASKAWA Cockpit」と連携させることで、装置の予防保全や製品の品質管理への活用実現を進め、ラインの不具合発生から改善までのサイクルの大幅な短縮や生産スピードの向上を達成しました。
当分野の研究開発費は7,965百万円です。
[ロボット分野]
「i3-Mechatronics」コンセプトの実現に向け、人口知能(AI)を活用したロボットによる自動搬送や研磨などのアプリケーションを2018年に設立した株式会社エイアイキューブと開発し、「2019国際ロボット展」に出展しました。デジタル空間に仮想の製造現場を再現し、現場のデータの反映による高精度なシミュレーションで開発や生産を効率化する技術「デジタルツイン」の開発も進めています。
安全柵が不要で人と並んで作業ができる人協働ロボットのさらなる用途拡大のため、新たなラインアップとして、ちりやほこり・液体などへの耐環境性を向上させた人協働ロボットMOTOMAN-HC10DT防じん・防滴仕様タイプ、食品製造ラインで求められる安全性や衛生面へ配慮した人協働ロボットMOTOMAN-HC10DTFを製品化しました。
また、環境に配慮したエコカーの開発が世界規模で進められ、自動車の材料や製造ラインの構成が大きく変化しつつある中、新しい素材の溶接や高付加価値ラインの構築に対応した新型ロボットを開発し、ラインアップの拡充を図りました。自動車分野以外の一般産業分野向けでは、高速なサイクルタイムが求められる小型部品の組立工程や搬送工程などに最適な水平多関節型スカラロボットを開発・製品化しました。
当分野の研究開発費は4,513百万円です。
[システムエンジニアリング分野]
環境・エネルギー分野においては、省エネ・創エネ技術を応用し、大型風力・太陽光発電関連機器の開発など、Clean Powerのコア事業化を進めました。米国においては、ユーティリティ規模の太陽光発電市場に対応したパワーコンディショナ「XGI1500」を開発しました。
当分野の研究開発費は1,825百万円です。
※1 i3-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス):機械工学を表すメカニズムと、電気工学を表すエレクトロニクスを融合させた「Mechatronics(メカトロニクス)」に、3つの“i”(integrated:統合的、intelligent:知能的、innovative:革新的)を重ね合わせ、お客さまの工場の生産現場から、経営課題の解決に貢献するソリューションコンセプト。2017年10月に発表。
※2 YASKAWA Cockpit(安川コックピット):「i3-Mechatronics」コンセプトを実現するソフトウェアソリューション