有価証券報告書-第105期(令和2年3月1日-令和3年2月28日)

【提出】
2021/05/27 10:32
【資料】
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【項目】
135項目

研究開発活動

当社は、「電動機(モータ)とその応用」を事業領域に定め、“世界初”“世界一”にこだわった製品・技術の研究開発をグローバルな体制で行っています。長期経営計画「2025年ビジョン」では、メカトロニクスを軸とした「工場自動化・最適化」と「メカトロニクスの応用領域」を事業領域に設定し、新しい価値と市場の創造を目指しています。
「工場自動化・最適化」では、これまでのソリューションに「デジタルデータのマネジメント」を加えたコンセプト「i3-Mechatronics(※1)」を軸とした産業自動化革命の実現に向け、メカトロニクス技術とICTの融合により、新しい自動化ソリューションの開発を継続しています。安川ソリューションファクトリ(埼玉県入間市)においては、データの収集・視える化、そして、蓄積・解析を一括して行うことができるソフトウェアツール「YASKAWA Cockpit(※2)」の実証を進めています。
「メカトロニクスの応用領域」では、メカトロニクス技術が応用できる分野を探索・実証しながら、事業化を見極めていきます。特に、Energy Saving分野(省エネ機器・高効率モータ)、Food & Agri分野(野菜生産システム・食品工場自動化)、Clean Power分野(風力/太陽光発電・電気自動車)、Humatronics分野(リハビリ機器・バイオメディカル用ロボット)に焦点を当てて取り組んでいます。
さらに、お客さまの要求に対してスピーディに対応できる体制を構築するために、基礎技術開発から量産試作までを一貫した開発拠点「安川テクノロジーセンタ」の開設(2021年3月開設)に向けて準備を整えました。
以上の取り組みにより当連結会計年度の研究開発費は17,851百万円となりました。
[研究開発分野]
長期経営計画「2025年ビジョン」の実現に向け、2020年度はソリューションコンセプト「i3-Mechatronics」の具体化に向けた研究開発に取り組みました。IoTを軸とする新製品・新技術開発、AI技術を製品に反映させるため、オープンイノベーションのさらなる強化を進めています。2020年7月、当社と株式会社YE DIGITALは、「i3-Mechatronics」を軸とした製造業向けのIoTソリューションの強化を図るため、合弁会社「株式会社アイキューブデジタル」を設立しました。
同じく2020年4月には、国立大学法人東京工業大学と「YASKAWA未来技術共同研究講座」を開設し、10年後の超軽量人協働ロボットの実現をゴールとした超軽量アクチュエータの共同研究を開始しました。2021年3月に開設した安川テクノロジーセンタ内では、国立大学法人九州工業大学との次世代ロボット共同開発も本格化します。
また、クラリベイト・アナリティクス(本社:米国フィラデルフィア)が独自に知財・特許動向を分析し、世界で最も革新的な企業・機関100社を選考する「Derwent Top100グローバル・イノベーター2020」に5年連続で選出されました。
当分野の研究開発費は3,932百万円です。
[モーションコントロール分野]
「i3-Mechatronics」で掲げる3つのiの一つ「integrated(統合的)」の強化のため、従来と比べて伝送効率が4倍の産業ネットワーク「MECHATROLINK-4」に対応したACサーボドライブ「Σ-7シリーズ」およびマシンコントローラ「MP3000シリーズ」を製品化し、生産現場の設備や装置から検出されるビッグデータの種類や量を大幅に向上しました。さらに、業界最高のモーション性能とデジタルデータソリューションを提供するACサーボドライブ新シリーズ「Σ-X」を開発しました。
また、ACサーボモータは1983年の市場投入以来、累積出荷台数2,000万台、インバータは1974年の世界初のトランジスタインバータを出荷して以来、累積出荷台数3,000万台を達成しました。
当分野の研究開発費は8,521百万円です。
[ロボット分野]
高速通信規格「5G」普及などによる半導体の設備投資拡大で需要増加が続く半導体製造装置用途として、当社のACサーボモータ「Σ-7シリーズ」のダイレクトドライブモータを採用した半導体ウエハ搬送用クリーンロボット「SEMISTAR-GEKKO MD124D」を開発しました。従来機種に比べて位置決め精度や振動発生を大幅に改善することにより、微細化や多層化など半導体製造プロセスの進化でますます高まるウエア搬送への要求に応えました。
主に電気・電子部品を始めとした3C(コンピューター・家電製品・通信機器)市場および三品(食品・医療品・化粧品)市場に向けては、クラス最高の動作性能を持つ小型ロボット「MOTOMAN-GP4」(可搬質量4kg)をラインアップに加え、多様化する一般産業分野のお客さまのニーズに応えるとともに「i3-Mechatronics」の提案力強化を目指しました。
また、自動化ニーズの高まる物流業界などでの箱詰めや箱積み工程に適用されるパレタイジングロボット4機種を製品化しました。MOTOMAN-PL190(可搬質量190kg)、320(可搬質量320kg)の2機種については、可搬質量の向上とともに大幅な形状のスリム化を実現しました。
産業用ロボットMOTOMAN(モートマン)は、1977年に市場投入以来、累積出荷台数50万台を達成しました。
当分野の研究開発費は4,244百万円です。
[システムエンジニアリング分野]
環境・エネルギー分野においては、産業用高圧と発電事業者用特別高圧の2つの領域で適用できる高電圧かつ高出力の分散型太陽光発電用パワーコンディショナ「XGI1500 150kW」を開発し日本市場に投入しました。
当分野の研究開発費は1,152百万円です。
※1 i3-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス):機械工学を表すメカニズムと、電気工学を表すエレクトロニクスを融合させた「Mechatronics(メカトロニクス)」に、3つの“i”(integrated:統合的、intelligent:知能的、innovative:革新的)を重ね合わせ、お客さまの工場の生産現場から、経営課題の解決に貢献するソリューションコンセプト。2017年10月に発表。
※2 YASKAWA Cockpit(安川コックピット):「i3-Mechatronics」コンセプトを実現するソフトウェアソリューション