有価証券報告書-第102期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/18 15:01
【資料】
PDFをみる
【項目】
95項目

対処すべき課題

ソニーのマネジメントが認識している経営課題とそれに対処するための取り組みは以下のとおりです。文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。
世界経済は、米国における財政支出や減税効果に支えられ、全体としては拡大基調が継続したものの、2018年度後半は米中貿易摩擦の影響で市場が不安定な状態となっています。日本においては、2018年度前半の相次ぐ自然災害が下押し圧力になったものの、復旧がおおむね順調に進んだことにより経済は底堅く推移しています。一方で、中国経済、米中貿易摩擦、英国の欧州連合離脱などの今後の進展次第で世界経済が減速局面に入る可能性があります。
ソニーをとりまく経済環境は、主にエレクトロニクス事業における、競合他社からの価格低下の圧力、一部の主要製品における市場の縮小及び商品サイクルの短期化といった要因によって不透明性が増しています。
これらの状況の下、ソニーは2018年5月22日に2018年度~2020年度の3年間の中期経営計画(以下「第三次中期経営計画」)を発表しました。「人に近づく」を経営の方向性として、以下の具体的な経営方針のもと、持続的な社会価値と高収益の創出をめざし、経営に取り組んでまいります。
また、ソニーは、個々の事業の強化に加え、コンテンツIPとDirect to Consumer(以下「DTC」)サービス間での協業や技術を軸とした各事業間のシナジーの追求をさらに深め、「テクノロジーに裏打ちされたクリエイティブエンタテインメントカンパニー」として進化してまいります。
経営方針
・ ユーザーに近づくためのDTCサービスと、クリエイターに近づくためのコンテンツIPを強化し、それぞれに共通の感動体験や関心を共有する人々のコミュニティ「Community of Interest」を創出します。
・ 映像と音を極める技術を用いてユーザーとクリエイターを繋ぐソニーブランドのエレクトロニクス(以下「ブランデッドハードウェア」)事業を、安定的に高いレベルのキャッシュ・フローを創出する事業とします。
・ 人が生きる現実世界を向き、また感動をもたらすコンテンツの創造に欠かせないCMOSイメージセンサーの領域でイメージング用途での世界No.1を堅持し、さらにセンシング用途でも世界No.1をめざします。
2018年度の成果
・ DTCサービス強化
・ ソニーの単一セグメントとして過去最高の売上高と営業利益を計上したG&NS分野の成長を牽引した「PlayStation™Network」(以下「PSN」)の成長
・ コンテンツIP強化
・ EMIの完全子会社化により、世界最大の音楽出版事業を擁する企業へ
・ G&NS分野、音楽分野及び映画分野において、IPを活用したヒットを数多く創出
・ ブランデッドハードウェア事業
・ クリエイターとユーザーをつなぐ製品展開の継続
・ G&NS分野に次ぐネット・キャッシュ・インフローの創出
・ CMOSイメージセンサー
・ イメージング用途で、高精細化と多眼化・大判化が進むスマートフォン市場への高付加価値商品の安定供給を実現し、金額シェアでNo.1のポジションを堅持
・ 車載、センシング用途で着実な事業立ち上げ
ソニーグループ及び各事業の主たる取り組み
ソニーが擁する事業(ゲーム、音楽、映画及びアニメーションを含むコンテンツIPエンタテインメント事業、エレクトロニクス事業、ならびにPSN及び金融サービスを含むDTCサービス事業)は、全てテクノロジーと不可分です。個々の事業の取り組みとあわせ、コンテンツIPとDTCサービス間での協業、テクノロジーを軸とした各事業間のシナジー追及のための取り組みは以下のとおりです。
<ゲーム&ネットワークサービス>・ 「イマーシブ(没入感)」と、「シームレス(いつでも、どこでも切れ目なく)」を進化のテーマとします。
・ 次世代コンソール:演算性能のさらなる向上と超高速広帯域の専用SSDとの組み合わせにより、圧倒的な描画スピードが創出する「イマーシブ」なゲーム体験を提供
・ プレイステーションストリーミング:「リモートプレイ」と「PlayStation™Now」(以下、「PS Now」)の進化により、いつでもどこでも「シームレス」なゲーム体験を提供
・ 「リモートプレイ」:2019年には累計販売台数が1億台に到達する見込みの「プレイステーション 4」(以下「PS4®」)がストリーミングサーバーとなり、ユーザーに最も近い場所からストリーミングを提供
・ 「PS Now」:「PS4®」ユーザーにも、「PS4®」コンソールをお持ちでないお客様にも「イマーシブ」なゲーム体験を提供
・ コンピューティング、ストリーミング、クラウド、5Gなどの最新技術と、優れたコンテンツにより、「プレイステーション」のミッションである「The Best Place to Play」を追求します。
<音楽・映画>・ コンテンツIPの強化を基本戦略とします。定額ストリーミング市場の伸びから得られる事業機会を最大化するため、コンテンツIPの質と量を強化するとともに、アーティストの発掘や育成を通して、新たなIPを生み出していきます。
・ 音楽:高い市場シェアとライセンス型のリカーリングビジネスモデルで安定した収益の拡大を見込む
・ 映画:独立系スタジオとしての強み、再活性化が可能な数多くのコンテンツIPライブラリ、及びソニーグループ内のIPシナジーによって、強い競争ポジションの獲得をめざす
<ブランデッドハードウェア>・ ソニーブランドを冠するHE&S分野、IP&S分野、MC分野の3つのエレクトロニクス事業セグメントで構成される領域をブランデッドハードウェアと定義し、ソニーグループが今後も成長投資を続けていくためのキャッシュカウと位置づけています。この領域においては、引き続きいたずらに規模は追わず、プレミアム路線を堅持します。
・ ソニーは、2019年4月1日付の組織変更及び担当上級役員の変更にともない、2019年度第1四半期より、業績報告におけるビジネスセグメント区分を変更し、従来のHE&S分野、IP&S分野及びMC分野を合わせ、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野とします。これにあわせて、ソニーは以下の取り組みを進めていきます。
・ (1)事業の最適化・効率化の追求、(2)事業間の人材の流動化や活性化を図り、モバイル・コミュニケーション事業を含む既存事業の強化、(3)ソニーの技術力を活かした新規事業の育成促進をめざす
・ クリエイターとユーザーをつなぐ商品を創出し、最も信頼され、愛されるブランドとして進化する
<半導体>・ これまで培ってきた技術力を活かし、今後も業界トップのポジションを堅持します。
・ スマートフォン市場は成熟の一方、スマートフォンに搭載されるカメラの多眼化・大判化によってセンサー需要は拡大。スマートフォン向けのTime-of-Flightセンサーの需要の立ち上がりを見込む
・ 今後数年の増産投資は必要だが、CMOSイメージセンサーの生産設備は陳腐化しにくく、長期的に投資リターンは高い事業と位置付ける
・ 長期的成長に向けた、車載用センサー、エッジAIへの取り組み
・ 測距、車載などの領域で事業を拡大。車載用センサーは、社外から高い評価を獲得
・ CMOSイメージセンサーの積層構造にAI機能を埋め込み、CMOSイメージセンサー自体をインテリジェント化
<金融>・ 継続的に高収益を実現し、ソニーグループの安定的な利益基盤の一つである金融分野は、お客様と直接、かつ大変深いつながりを有する事業領域です。ITを活用した金融サービス、いわゆるフィンテックでさらにお客様に近づくことをめざします。
長期的ビジョンと社会価値
・ 地球、社会の中の一員としてのソニーでは、全ての事業活動を通じて、経済価値の追求と同時に、社会価値の創出、それによる、より良い地球環境、社会づくりに継続して貢献していきます。
・ 感動をミッションとするソニーは、「Community of Interest」を創造し、人々の心を豊かにすることに貢献することによって社会価値を生み出していきます。
・ 同時に、地球環境や社会があって事業が成り立っているという認識のもと、環境、人権などに対する取り組みを、長期視点でサプライチェーン全体にわたり継続していきます。
・ イメージングやセンシング技術で、自動運転時代のモビリティの安全への貢献をすべく、事業の育成に取り組んでいきます。
・ 広義での教育(クリエイターの育成、子どもたちへのプログラミング教育ツールの提供、事業インキュベーション)にも取り組みます。
第三次中期経営計画 数値目標
・ 経営をより長期視点で行っていくため、経営指標には3年間累計の指標を用います。
・ 2018年度~2020年度においては、営業活動によるキャッシュ・フローを最も重視する経営指標とし、3年間で、金融分野を除くソニー連結ベースで2兆2,000億円以上の営業活動によるキャッシュ・フローの創出をめざします。
・ 創出されたキャッシュの配分については、CMOSイメージセンサーへの投資増額により、設備投資に1兆1,000億円~1兆2,000億円を支出することを計画しています。残る1兆円~1兆1,000億円については、戦略投資を最優先としつつ、株主還元にも適切なバランスのもと配分し、さらなる企業価値の向上をめざします。株主還元については、配当の長期、安定的な増額を進めていく方針です。
・ また、連結株主資本利益率(以下「ROE」)は10%以上の水準を継続することをめざします。
・ なお、2018年度に戦略投資の一環として、3,928億円を支出し(有利子負債の承継を含む)、EMIを完全子会社しました。
・ 一株当たり利益の成長を重視する考えのもと、2018年度に1,000億円の自己株式の取得を実施しました。2019年度においては、上限2,000億円の自己株式の取得枠を設定しています。自己株式取得は、今後も長期的な株主価値向上に向けて、戦略的な投資機会や財務状況、株価状況等を勘案した上で、機動的に行っていく方針です。
・ 2018年度の連結ROEは27.3%となり、経営数値目標として掲げている10%以上の水準を維持しました。
環境中期目標 「Green Management(グリーンマネジメント) 2020」
2015年6月にソニーは、2016年度~2020年度のグループ環境中期目標 「Green Management(グリーンマネジメント)2020」を策定しました。この中期目標では、以下の3点を注力すべき重点項目とし、環境負荷を低減するための様々な施策を推進しています。
・ エレクトロニクス事業においては、2020年度までに製品の年間消費電力量の平均30%削減(2013年度比)、エンタテインメント事業では、コンテンツの活用を通じて全世界で数億人以上に持続可能性の課題を伝えることをめざすなど、各事業領域で特色を活かした目標を策定し、施策を推進
・ 製造委託先や部品調達先に温室効果ガス排出量や水使用量などの削減を求めるなど、バリューチェーン全体における環境負荷低減の働きかけを強化
・ 再生可能エネルギーの導入を加速
ソニーグループは、2050年までに自社の事業活動及び製品のライフサイクルを通して「環境負荷ゼロ」を達成することを長期的ビジョンとして掲げています。「Green Management 2020」は、「環境負荷ゼロ」達成のために、2020年度までに成し遂げなければならないことを2050年から逆算して定めています。「Green Management 2020」の実行により、「環境負荷ゼロ」達成に向けて環境負荷低減活動をさらに加速していきます。この一環として、ソニーは国際NGO団体であるThe Climate GroupがCDPとのパートナーシップの下で運営するイニシアチブである「RE100」に加盟し、2040年までに自社の事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーにすることをめざします。
また、ソニーはWWF(世界自然保護基金)が実施する温室効果ガス排出削減プログラムであるクライメート・セイバーズ・プログラムに引き続き参加します。気候変動にかかる目標については、その難易度及び進捗状況について、WWF及び第三者認証機関による検証を受けています。
グループ環境中期目標 「Green Management(グリーンマネジメント)2020」及び環境への取り組みの詳細は、ソニーのサステナビリティレポート(http://www.sony.co.jp/SonyInfo/csr_report/)をご参照ください。