有価証券報告書-第97期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2014/06/20 14:58
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116項目

研究開発活動

当社グループは事業ドメインを「Power Electronics」と定め、この分野において一段上の企業像を目指すべく研究開発活動を進めております。基本方針としては、エコ・省エネ、グリーンエネルギー市場を核とした成長戦略の実現及び技術マーケティングの確立と効率的な開発マネジメントによる新製品開発の促進を掲げ、研究開発に取組んでおります。また、一部連結子会社にも研究開発部門を設けております。当連結会計年度における研究開発費の総額は売上高の10.1%に当たる145億96百万円であります。
セグメントごとの研究開発活動を示すと次の通りであります。
(1) 半導体デバイス事業
半導体デバイス事業においては、製品開発における技術マーケティングの導入により成長市場へのシフトを担う製品開発に注力するとともに、開発工程管理の強化により開発スピードのアップを図っております。また、成長著しい新興国向けの汎用品の製品開発にも積極的に取組んでおります。当連結会計年度における研究開発の主な成果は次のものがあります。
・Siパワーデバイスと比較してより高温での動作が可能なSiCパワーデバイスの特長を活かした高温動作と高周波スイッチングを実現する小型・大容量の3相インバータに必要な、上限250℃の高温動作保証、高周波スイッチング対応の実装技術を開発
・インダクタを含む非絶縁・降圧型DC-DCコンバータ回路を1パッケージ内で構成してフルモールド化、放熱特性や外部への輻射ノイズ低減、信頼性に優れ、少ない部品点数でシンプルな電源回路の設計を可能にするハイブリッド型モジュール MPM80シリーズを開発
・当社独自のBCDプロセスを用いた制御ICと自社設計の超低オン抵抗MOSFETを1パッケージ化し、業界初のモータ実電流3Aで使用可能な、電圧定格60V、電流定格5Aのバイポーラ駆動用大電流ステッピングモータドライバ SX7230シリーズを開発
・高圧MOSFETを内蔵、少ない部品点数でLED照明の調光・調色制御用マイコンに必要な電源を構成できるLED照明向けマイコン用常駐電源IC LC201Sを開発
・従来、民生品として設計されていたSBDのチップ構造を見直し、MPS構造を採用・最適化することで従来品と比較して4倍のアバランシェ耐量を実現。車載用として高いアバランシェ耐量を保証したSBDを開発
・コスト・信頼性に優れた当社独自のSi基板を用いた窒化物半導体青色LEDの構造を改良、エピタキシャル層の厚膜化及びDBRによる光反射機能の追加により、従来品に比較して3倍の光出力を持つLEDを開発
・出力電流10mA程度の待機負荷での変換効率85%を実現、軽負荷時に超高効率なスイッチング電源を構成でき、出力にセラミックコンデンサが使用可能となるパワーMOSFET内蔵のチョッパレギュレータIC NR130シリーズを開発
・車載用ECUに必要なウォッチドッグ機能、イネーブル機能、パワーオンリセット制御機能を搭載、垂下型過電流保護、加熱保護回路を内蔵した面実装型システムシリーズレギュレータ SPF3010/SPF3011を開発
・スタンバイモード時0.27W以下の待機電力が可能で待機専用電源が不要になり低コストでの電源システム実現に貢献、入力補正機能内蔵によりワイド入力設計でも安全性の高い電源が設計可能な全波整流共振電源用制御IC SSC3S900を開発
・昇圧コンバータ方式を採用、LEDのVFばらつきを吸収する制御により高効率が実現可能な、電流モードPWM制御の昇圧型バックライトLED駆動制御IC BL0200/BL0100シリーズを開発
・低スタンバイ電力に対応するため起動回路とスタンバイ機能を内蔵、パワーMOSFETと電流モード型PWM制御ICを1パッケージにしたPWM型スイッチング電源用パワーIC STR3A200シリーズを開発
・VDSボトムポイントでのターンONが可能、スイッチング損失の少ない高効率なPFCコンバータを容易に構成可能な、臨界モード型PFCコンバータ用コントローラIC SSC2005S/SSC2006SAを開発
・従来製品と同等の機能を搭載しながら制御用ICとパワーMOSFETと電流検出抵抗を小型ZIPパッケージに内蔵したことで実装面積2分の1以下を実現した2相ステッピングモータユニポーラ駆動ドライバ STA7100MCシリーズを開発
・低耐圧・低Qg・低オン抵抗、高速スイッチングが可能で、DC/DCコンバータや同期整流の用途に適したMOSFET GKI/DKI/SKI/EKI/FKIシリーズを開発
・VF-trrのトレードオフを最適化することにより600V耐圧でVF:1.15typ.(1.3Vmax)を実現、DCM、CRM方式のPFCに適したFRD CTNS-6606Sを開発
・650V耐圧、少数キャリア注入によるリカバリー電流損失やtrrの温度依存性が無い、CCM方式のPFCに適したシリコンカーバイトSBD FMCAシリーズを開発
・CCFL事業で培ったノウハウ・設備をLED照明に応用した、照度計算に必要な「配光分布」「全光束」の光学特性取得から照明シミュレーションまでを自社技術・設備のみで実現可能とする基礎技術を開発
・レンズの組み合わせによりビーム角60°及び40°の配光を実現、電力106Wと水銀灯やメタルハライドランプと比べ大幅な電力削減が可能で、かつ独自のヒートシンク形状を採用して同クラスの施設灯と比較して57%の軽量化を実現した屋内高天井用の狭配光軽量型LED施設灯 NVCA5013WA50ND/NVCA5015WA50NDを開発
・当社従来品のSEP-Bシリーズの発光効率を改善し、業界トップクラスの170lm/Wを達成、大電流・高光束タイプで各種照明用途に適した高効率フラットLEDを開発
なお、NEDOのナノエレクトロニクス半導体新材料・新構造技術開発(窒化物系化合物半導体基板・エピタキシャル成長技術の開発)は2年目の継続研究が認められ、バルク基板を用いたGaNデバイスに対する課題解決の研究を行ってまいります。また、低炭素社会を実現する新材料パワー半導体プロジェクト(高耐熱部品統合パワーモジュール化技術開発)にて、SiCデバイス利用の周辺技術開発に対する取組みを継続しております。今後も、シリコンを用いた従来の製品では実現できない、高いパフォーマンスを持った製品開発に向けた活動を継続してまいります。
半導体デバイス事業に係る当連結会計年度の研究開発費は132億15百万円であります。
(2) CCFL事業
CCFL事業においては、市場環境が成長から成熟に変化した現状に対応すべく、当社特有の差別化技術の深化に取組みました。なお、当連結会計年度において売上が大幅に減少したことを受け、当社では、当事業の継続が不可能であると判断し、当事業からの撤退を決定しております。
CCFL事業に係る当連結会計年度の研究開発費は61百万円であります。
(3) PM事業
PM事業においては、対応市場及び製品構成の組み替えによる利益体質の確立をテーマに、エコ・省エネ、産機・新市場への拡販並びに高付加価値製品の開発に取組んでおります。当連結会計年度における研究開発の主な成果は次のものがあります。
・変換効率93% typを実現し、さらに調光・初期照度補正機能を搭載して省エネ化に貢献可能な、出力66WのLED照明用調光対応電源 LEA66D95を開発
・従来製品のピーク負荷電流対応の特長を維持したまま、自社IC・トランス・ソフトスイッチング技術を用いて効率化、小型化、低ノイズ化を実現した汎用電源 SWFシリーズを開発
・最適設計により実装面積を低減し小型化を実現、同期整流方式で高効率、産業機器市場など様々な用途に対応したユニットタイプの標準電源 SWGシリーズを開発
PM事業に係る当連結会計年度の研究開発費は5億円であります。
(4) PS事業
PS事業においては、グリーンエネルギーをキーワードに「発電・送配電・消費・蓄電」の分野への事業拡大を図るとともに、高効率変換技術を追求して継続的な新商品創出に取組んでおります。当連結会計年度における研究開発の主な成果は次のものがあります。
・多台数のフライホイール蓄電装置を接続し、ICTネットワークで一括監視・制御することによる短周期電力変動補償システムを開発、将来的な再生可能エネルギーの大規模な系統導入による電圧、周波数変動に対応する調整力不足の問題への解決方法を提唱
・常時インバータ方式のUPSで構成され、直流部にリチウムイオンバッテリを接続、負荷への出力を商用電力と蓄電池電力とで分担し、割合を外部設定で制御可能。電力制御機器と組み合わせることで節電や非常用電源としての蓄電システムを構成可能な無停電電源装置 EMUBシリーズを開発
・PFCコンバータ、共振型DC/DCコンバータを採用し高力率・高効率を実現、並列冗長運転可能、負荷容量に応じて増設可能で増設作業も容易。1U、19インチハーフラックサイズの省スペース設計で設置スペースを大幅に削減可能にした3相AC200V入力、DC48V系50A供給の整流器ユニット RSW48-50TP-1U-Aを開発
・当社従来品のSBUシリーズの直流リンク電圧を従来のDC400VからDC100Vに変更、DC100V電源により動作する公共インフラ非常用設備に適した無停電電源装置を製品化
・最適電圧制御によりメイン回路のトランスレスを実現し、高力率で小型、軽量化を図った民生市場向け無瞬断型パラレルプロセッシング給電方式UPS FBK-SPU-D 303TT2-PPを開発
・当社汎用インバータに、先に開発したPMモータ用レゾルバインターフェース基板をベースとした中国市場向けのSC-SDオプション基板と射出成型機制御用の油圧制御ブロックを内蔵した、PMモータ射出成型機向けのPMモータドライバを開発
PS事業に係る当連結会計年度の研究開発費は8億19百万円であります。