有価証券報告書-第100期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/23 15:07
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研究開発活動

当社グループは事業ドメインを「Power Electronics」と定め、この分野において一段上の企業像を目指すべく研究開発活動を進めております。基本方針としては、エコ・省エネ、グリーンエネルギー市場を核とした成長戦略の実現及び技術マーケティングの確立と効率的な開発マネジメントによる新製品開発の促進を掲げ、研究開発に取り組んでおります。また、一部の連結子会社にも研究開発部門を設けております。当連結会計年度における研究開発費の総額は売上高の10.08%に当たる159億98百万円であります。
セグメントごとの研究開発活動を示すと次の通りであります。
(1) 半導体デバイス事業
半導体デバイス事業においては、製品開発における技術マーケティングの導入により成長市場へのシフトを担う製品開発に注力するとともに、開発工程管理の強化により開発スピードのアップを図っております。また、成長著しい新興国向けの汎用品の製品開発にも積極的に取り組んでおります。当連結会計年度における研究開発の主な成果は次のものがあります。
・TinyDSP及びA/D変換器やコンパレータなど周辺機能との密接な連携により、デジタル制御電源に必要なリアルタイム処理を低遅延で実行、ゼロ時間でタスク切替えが出来る16ビット・プロセサ デジタル制御電源向けイベント・プロセシング・ユニットEPUを開発
・過熱時に働く保護動作温度を抵抗1本で調整可能、仕様に合わせた設計が容易にでき、生産性の改善や自動実装化要求に応える表面実装型高圧三相モータドライバIC SX1Aシリーズを開発
・IPM内部にサーミスタを搭載することで、より正確にパッケージ温度を測定することが可能、出力性能を最大限に発揮しながら、安全にモータの回転制御を行うことができる高圧三相モータドライバIC SCM3000シリーズを開発
・Xコンデンサ放電機能を搭載し、無負荷時電力規制・効率規制・安全規格に適合した超低スタンバイ電力対応AC/DC電源用IC SSC3S241CA, SSC3S927を開発
・最大50Aの電流に対応、低熱抵抗、絶縁距離確保、低ノイズ特性を実現したハイブリッド車・電気自動車のエアコンシステムに最適な高耐圧HVモータ用IC SAE6500シリーズを開発
・薄厚ウエハ加工技術と最適化したセル構造により、高速性とトレードオフ関係にあるコレクタ エミッタ間飽和電圧を抑えることに成功、最大100kHzの高速スイッチングを実現するフィールドストップ(FS)型IGBTを開発
・VF低減と同時にIRの上昇抑制を実現、車載向けオルタネータの高効率化に対応した交絡構造のPNダイオードSG-17NNJ23を開発
・NEDOの「低炭素社会を実現する新材料パワー半導体プロジェクト」にて、SiCパワーデバイスの性能を十分に活用するために必要な低インダクタンスを実現するフリップチップ技術、サージ電圧を低減するスナバ回路を開発、それらを応用した高温動作SiCパワーモジュールを開発
・LED照明の調光調色は、色温度が異なる2種類のLEDと2台の調光電源を用いる制御方法が一般的であるが、この場合、PWM調光器での制御が難しくなる。調光制御を電源側、調色制御をモジュール側で行い、2台必要であった調光電源を1台にすることができ、PWM調光器での制御を容易にする汎用型LED照明用調色モジュールを開発
・従来のMD製品に内蔵している「CPU+TinyDSP」に加え、専用コア「EPU」を新規搭載し、電源のマルチタスク処理を更に強化したデジタル制御電源専用マイコンMD6603を開発
・独自のライフタイムコントロール技術により、低ノイズを維持しながら低損失を実現したリカバリ特性改善MOS FETを搭載、キャリア周波数が高く軽負荷時の効率が重視されるファンモータ用途において省エネに貢献する制御IC SLA6871MZを開発
・ホール素子対応の入力インターフェース、FG出力、保護機能を搭載した3相ブラシレスモーター駆動用IC SI-663xMシリーズを開発
・最大16個のLED直列駆動が可能、それぞれのLEDのオープン、ショート機能を搭載し、その故障信号をCPUに伝達できる自動車ヘッドライト向け高輝度マトリクスLEDバイパススイッチIC SPF5047を開発
・電流検出機能と電流PWM制御機能を有した高精度電流リニア制御用ハイサイドスイッチIC SPF5045を開発
・全負荷範囲の効率向上のため、負荷に応じて自動的にグリーンモード、バースト発振モードに切替え、充実した保護機能によりコストパフォーマンスの高い電源システムを容易に実現できるパワーMOSFETと電流モード型PWM制御ICを1パッケージにしたPWM型スイッチング電源用パワーIC STR6A100シリーズを開発
・高効率スタンバイ機能、デッドタイム自動調整機能や共振外れ検出機能等、充実した保護機能を搭載し、コストパフォーマンスが高く小型・高効率・低ノイズの電源システムを容易に構成可能、ハイサイドのパワーMOSFETをドライブするフローティングドライブ回路を内蔵したLLCタイプの電源共振型電源用制御IC SSC3S927を開発
・待機状態の多い電子機器において軽負荷時にはパルススキップ動作を行うことで超高効率を実現、過電流保護、低入力禁止、過熱保護等の保護機能を有したパワーMOSFET内蔵の同期整流型チョッパレギュレータIC NR260シリーズを開発
・アルミダイカスト材への圧入に対応、高耐熱・高寿命保証のプレスフィット型ツェナーダイオード SG-C17VVZ27を開発
・トレンチ構造を採用し、従来製品と比べ順方向電圧特性と漏れ電流特性を改善、電源の回路効率の向上や高周波数化を実現したショットキーバリアダイオード FMETシリーズを開発
・小型パッケージでありながら高輝度と長寿命を実現、狭いスペースでも搭載可能で車室内インテリアに最適なミニバスタブLED2414(SEP1**1816DA, SEP1**1810DA, SEP1**1820DAシリーズ)を開発
・高効率LEDと専用電源を採用することで従来の電源内蔵型直管形LEDランプから約30%の効率向上を達成、拡散性の高いカバーを使用することでLEDイメージを抑えてムラのない発行を実現した高効率電源内蔵型直管形LEDランプ NVL12P11N0CSを開発
なお、GaNデバイスに関しては、NEDO基盤技術研究促進事業(民間基盤技術研究支援制度)「電源用GaN on Si 電子デバイスの研究」で得られたGaN on Si 技術を活かし、HEMT構造の横型デバイスの量産中で、より低コスト化のため、歩留改善に取り組んでおります。バルクGaN基板を用いた縦型デバイスでは、JST研究成果展開事業(スーパークラスタープログラム)に参加し、横型デバイスを超える性能向上の検討を進めております。
SiCデバイスに関しては、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の高温実装技術テーマにおいて、SiCデバイスの高耐熱実装実用化に向けた技術開発を進めております。並行して、NEDO「太陽光発電システム効率向上・維持管理技術開発プロジェクト/太陽光発電システム効率向上技術の開発/次世代長寿命・高効率ACモジュール開発」を受託開発しており、高効率・高信頼性のSiCモジュールの開発を進めております。
半導体デバイス事業に係る当連結会計年度の研究開発費は147億78百万円であります。
(2) PM事業
PM事業においては、対応市場及び製品構成の組み替えによる利益体質の確立をテーマに、エコ・省エネ、産機・新市場への拡販並びに高付加価値製品の開発に取り組んでおります。当連結会計年度における研究開発の主な成果は次のものがあります。
・大電流・高速負荷応答性を備え、PMBus対応のハイパワー・高効率なPOL用DC/DCコンバータ BR211を開発
PM事業に係る当連結会計年度の研究開発費は3億29百万円であります。
(3) PS事業
PS事業においては、グリーンエネルギーをキーワードに「発電・送配電・消費・蓄電」の分野への事業拡大を図るとともに、高効率変換技術を追求して継続的な新商品創出に取り組んでおります。当連結会計年度における研究開発の主な成果は次のものがあります。
・システム全体のエネルギー効率を高め、省エネ化・低コスト化が期待されている高電圧直流給電システムに対応、出力容量1500Wの電源装置を開発
・再生可能エネルギーで作られた電気を蓄え安定供給を実現、蓄電池と充放電用DC/DCコンバータユニット、太陽光発電用パワーコンディショナを直流回路で接続した50kW級の蓄電池併設太陽光発電システムを開発
・発電量や異常状態等の各種情報をインターネットを介し遠隔地より監視可能、運転停止や出力制限等の制御機能を搭載した太陽光パワーコンディショナ遠隔監視・制御装置 PPS-OP05を開発
・高機能バイパス回路切換方式を採用し、故障時でも無瞬断切換を行い、出力を遮断することなく運転を継続できるバイパス回路付並列DC/ACインバータ装置 SDA502-D/48-N/5 を開発
・電源管理I/Fボードに対応、高品位でありながら可用性の高い良好な電力が供給でき、低背型でキャスター移動が可能な常時インバータ給電方式の中容量汎用UPS SNU-A103TT22, SNU-A103(752)TS2Xを開発
・独自の高周波回路により、高効率・小型化を実現、遠隔監視装置と組み合わせることでスケジュール運転が可能な蓄電池併設太陽光発電システム用DC/DCコンバータEMD620-051N450A1を開発
PS事業に係る当連結会計年度の研究開発費は8億90百万円であります。