有価証券報告書-第89期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/23 15:01
【資料】
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【項目】
153項目

研究開発活動

当社グループ(当社及び連結子会社)は、「人と地球に喜ばれる新たな価値を創造します。」を全ての礎に、事業活動を通じて持続可能な社会の発展に貢献することを目指しています。
「Right(正しい、最適、適切)、Unique(独自性、差異化)、Green(環境にやさしい)」を兼ね備えた、「美しい電子部品を究める」ことを事業の根幹とし、70年の歴史の中で育んだ当社グループ独自の強みを最大限に活かし、新しい価値を創造しています。
当社グループの研究開発費の総額は30,688百万円です。
(1)電子部品事業
当社の価値創造の源泉は、市場のニーズを捉えた「美しい電子部品」です。そして、それをタイムリーに世の中に送り出すことが、私たちの価値創造です。創業以来70年の中で、深化・融合した技術と脈々と受け継がれている企業風土が相まって、価値創造を支えています。
人とメディアのより快適なコミュニケーションを目指し、「HMIの深化」「センサバラエティの拡大」「コネクティビティをキーとしたビジネスの拡大」を独自の柱とし、固有技術の深化・融合により、新たな価値ある製品を開発しています。
また、更なる未来を見据えた技術開発は、現在所有する技術に留まらず、新たな技術領域への挑戦に向けて、大学や研究機関・他企業とのオープンイノベーションやアライアンスにもこれまで以上に取り組み、当社独自の生産技術力と組み合わせて、今までにない新しい製品を新しい市場に送り出すために、ダイナミックな技術開発を行っています。
電子部品事業に係わる研究開発費は16,820百万円です。
① 車載市場
自動車産業における100年に1度の大変革期の中、その中心にあるCASEに対応した各種センサやデバイス製品の開発に加え、コクピット・インテリアデザイン、運転操作システムで差別化する各種モジュール製品まで幅広く開発を行っています。
<車載モジュール製品>車の更なる安全・安心、かつ快適な車室内空間を実現するために、人と機器をつなぐHMI技術及びセンシング技術を応用した商品開発を行っています。小型電子シフターをはじめ、様々な車室内機器の操作性向上を目的に、ハプティック®、タッチパッド、静電入力スイッチなどの開発を進めています。これら複合化・多機能化に加え、大学や研究機関と共同研究を進めている人間工学に基づいた、心地良く快適な操作フィーリングを追求することで付加価値向上を図るとともに、要素技術開発により更なる環境配慮型製品の開発を推進します。
一方、事業の良質化を重要課題とし、材料や部品の共通化及び設計・開発工程の標準化を推進するとともに、フロントローディングでの原価作り込み、サプライチェーンマネジメントの強靭化により、収益力の強化に取り組みます。
<車載デバイス製品>安全と環境価値に貢献するデバイス創出となる“Be an Active Safety supplier”を目指し、予防安全とセーフティ事業の拡大に向けて、車両の運転支援技術の一つ、C-V2X(Cellular based Vehicle to X)を市場投入しました。更に5G通信方式に対応をした開発も進んでいます。自動運転走行で必要となるActive safety実現に向けて、イメージング処理技術とセンサ融合による安全運転支援実現のため、高周波技術を核としたミリ波センシング(乗員検知、障害物検知、モーション検出)も開発を進めています。
また、デバイスの要素技術とソフトウェアを融合させ、スマートフォンエントリーシステムやリモートパーキングシステムへデバイスを提供し、お客様の付加価値向上へ貢献できるよう取り組んでいます。
電気自動車の安全に貢献する重要部品である電流センサについては、当社の強みである小型軽量化、高精度・大電流センシング技術を使ったデバイスを、お客様に提供しています。
更に、車内の安全・快適空間実現に向け、HMIデバイスにおいては、デザイン性と操作フィーリングを両立する新たな加飾印刷技術と、静電・ハプティックデバイスの提供を始めています。
② 民生その他市場
スマートフォン、ノートPC、小型プリンタをはじめとするモバイル市場やEI市場において、機器の軽薄短小・操作性・快適性・省エネ・高速大容量化等に貢献すべく、新素材からデバイス、モジュール製品等の幅広い分野で研究開発を行っています。
<モバイル市場>スマートフォン向けでは、カメラモジュールの高機能化に対応するため、新方式の手振れ補正用アクチュエータの開発に注力しています。また、顧客ニーズに対応する入力操作デバイスとして、高信頼性のスイッチ/タクトスイッチ®、センシングデバイスとして、磁気センサ/地磁気センサ/圧力センサの新製品開発に更に注力していきます。新製品として、タッチパネルセンサ技術を応用した空中入力ソリューションAirInput™の開発を行います。
ゲーム向けでは、コントローラーに求められる高精度/長寿命/高感度を実現させるHMI技術を応用しスイッチ/ジョイスティック/ボリューム/ハプティック®の開発に注力していきます。
これらの製品は、当社固有の金型/精密加工技術、接点/抵抗/静電/圧電/光/磁気/電気/熱の設計技術を応用し開発され、自動化/生産工程設計技術で安定した供給と品質が保証されています。
ICT(Information and Communication Technology)による「超スマート社会」の実現が政府より打ち出されて以来、日本をはじめ先進各国でビッグデータを活用した革新的な取り組みが急速に広がりはじめています。工業、インフラ、物流、ウェアラブルなどあらゆる分野で市場が形成されはじめており、情報技術、エレクトロニクスの重要性が高まっています。当社グループはIoTスマートモジュールを用いて通信等各社との協業によるソリューション提案を様々な分野で進め、EIとして中国、インド、マレーシア等、各国での展示会に出展し、光通信やIoT等、進展する市場の新規開拓も進めてきました。
Energy分野では、大手海外企業とスマート分電盤用電流センサを量産開始して以来、家庭向け蓄電池システムの量産も実施してきました。当社独自の軟磁性アモルファス材料 リカロイ™を用いた製品を基に、小型高効率技術を追求し、省エネルギー分野でのビジネス開発を継続して進めます。
IoT分野では、物流資材遠隔監視システムを積極的に展開します。この物流資材遠隔監視システムはパレットやコンテナ、カゴ台車など物流資材の位置を遠隔で確認することができるモニタリングシステムです。超低消費電力駆動のため無充電で10年稼働が可能です。物流資材の位置や流通経路を把握して紛失や偏在の課題を解決することで、物流・配送業務の効率化や物流資材の緊急調達コスト削減に貢献します。また、配送効率の向上は輸送車両のエネルギー消費量も低減するため、CO2の削減ひいてはカーボンニュートラルの実現にも寄与します。次にアナログメータ監視システムも積極的に展開します。手軽で導入ハードルの低いIoTソリューションを開発する事で巡回検針工数を低減するほか、目視による読み取り・転記ミスも防止することで、業務効率の向上による労務コスト削減に貢献します。あわせてセンサデバイスの販売に加えシステム提供による年額課金制としたリカーリングビジネスを積極的に推進します。これら様々なビジネス形態の中で、スピーディーな事業基盤の確立に向け電子部品事業の強みであるハードウェア技術とサービスビジネスフレームワークを融合するとともに、ハードウェアを中心にしたモノビジネスからサービス含むコトビジネスへの移行を推進し、ワンストップ型ソリューションビジネスの展開を進めます。
(2)車載情報機器事業
社会環境が変化し、CASEに対する動きが自動車業界において活発になっています。そのような状況を踏まえ、従来から進めている「Digital Cabin」製品群の提案及び製品開発において、テイ・エス テック株式会社と次世代自動車をターゲットとした新たな車室内空間の開発に向けた業務提携契約を締結しました。それぞれが持つ技術・製品力を持ち寄り、効果的なシナジー発揮を目指しています。
この「Digital Cabin」領域においては、インフォテインメント機器だけでなく、サウンド領域の重要性が高まっています。新しい車室内空間におけるプレミアムサウンドとして、各座席で異なった音楽鑑賞や音による運転支援などを提供するゾーンサウンドの開発を行い、次世代車両にふさわしい新しいプレミアムサウンドを創出します。
また、近年力を入れているEV車両向けの音響機器開発も継続していきます。各国で装着が義務付けられる歩行者向け警告装置(AVAS)については、単純な警告機能だけでなく、車両の状況を踏まえて音を切り替えることが出来る次世代型の商品をプラットフォーム製品として開発しています。更に、運転者の嗜好に合った疑似エンジン音を創出するASD(Active Sound Design)やEVで問題となっているロードノイズをキャンセルするRNC(ロードノイズキャンセル)機器などに注力しています。
車載情報機器事業に係わる研究開発費は13,681百万円です。