臨時報告書
- 【提出】
- 2018/12/07 15:21
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提出理由
当社は、2018年12月7日開催の取締役会において、当社の普通株式の併合(以下、「本株式併合」)を目的とする、2019年1月25日開催予定の臨時株主総会(以下、「本臨時株主総会」)を招集することを決議いたしましたので、金融商品取引法第24条の5第4項および企業内容等の開示に関する内閣府令第19条第2項第4号の4の規定に基づき、本臨時報告書を提出するものです。
なお、ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア(以下、「BPEA」)傘下のWolfcrest Limited(以下、「割当予定先」)を割当先とする払込金額の総額770億円の第三者割当による当社普通株式(以下、「本新株式」)の発行(以下、「本件第三者割当」)の後に、本株式併合を経て、割当予定先が当社を完全子会社とすること(以下、「本件完全子会社化取引」)が企図されております。なお、本件第三者割当による本新株式の発行に係る払込金額のうち250億円については、デット・エクイティ・スワップ(以下、「DES」)の方法により行うこととします。
なお、ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア(以下、「BPEA」)傘下のWolfcrest Limited(以下、「割当予定先」)を割当先とする払込金額の総額770億円の第三者割当による当社普通株式(以下、「本新株式」)の発行(以下、「本件第三者割当」)の後に、本株式併合を経て、割当予定先が当社を完全子会社とすること(以下、「本件完全子会社化取引」)が企図されております。なお、本件第三者割当による本新株式の発行に係る払込金額のうち250億円については、デット・エクイティ・スワップ(以下、「DES」)の方法により行うこととします。
株式の併合を目的とする株主総会の招集の決定
(1) 本株式併合の目的
ア.当社の財務状況および大規模な資本性資金の調達の必要性
当社は、2018年3月期の連結業績において、カーエレクトロニクス事業の売上高減少による営業利益の減少に加えて、為替差損の発生や海外拠点再編に伴う構造改善費用、および持分法による投資損失の計上により31億円の経常損失となり、親会社株主に帰属する当期純損失71億円を計上しております。また、営業活動によるキャッシュ・フローは売上債権の減少額が縮小したことなどにより159億円の収入となったものの、投資活動によるキャッシュ・フローはカーメーカーからの大規模受注ビジネスに対応したソフトウェアの開発が続いた影響もあり332億円の支出となり、フリー・キャッシュ・フローが172億円のマイナスとなりました。さらに当連結会計年度においても50億円の連結営業損失を見込んでいる中、取引銀行から借り換えの合意が得られていなかったことから、継続企業の前提に重要な疑義が存在するとして、当社の2019年3月期第1四半期連結財務諸表の注記には「継続企業の前提に関する注記」を記載する事態となりました。当社は、このような状況を解消するため、事業ポートフォリオの見直しによる事業・資産の売却、主要事業における構造改革、および成長事業へのリソース・シフトといった全社的な経営改善施策の検討を進めましたが、その過程において、当社に対する出資等を通じた資金提供を含む支援をいただけるスポンサーを新たに選定し、かかるスポンサーからの資金提供等により、足下の資金繰り、キャッシュ・フローの正常化、既存借入金の返済資金および今後の成長投資のための資金の確保等を実現することで、当社が抱える事業面における高コスト構造、成長事業領域の育成等の課題、および財務面での課題の早期かつ抜本的な解決を図ることが、当社の安定的な事業継続にとって最善の選択肢であるとの結論に至りました。
特に、車を取り巻く技術や製品は目まぐるしく進化を続けており、当社のカーエレクトロニクス事業等を継続して運営していくためには、新しい技術や製品に対応し続ける必要があり、カーメーカー等からの受注を得るためにソフトウェア開発および生産設備の更新、新規導入等の設備投資を経常的に行っていくことで市場・顧客の要請事項を踏まえた機能と仕様を満たす商品の開発と提案が必要不可欠です。2018年3月期においてはソフトウェア開発の影響により310億円の設備投資を行いましたが、2019年3月期および2020年3月期においても、それぞれカーエレクトロニクス事業を継続運営していくために、ソフトウェア開発および生産設備の更新等を目的とした同規模の設備投資・開発費用の支出が見込まれています。しかしながら、下表のとおり、2018年3月期のフリー・キャッシュ・フローは172億円のマイナスであり、さらに2019年3月期および2020年3月期においても、投資活動によるキャッシュ・フローおよびフリー・キャッシュ・フローはマイナスが継続する見込みとなっており、大規模な資本注入がなければ、当社の事業継続のために必要不可欠な設備投資・開発費用を捻出することは極めて困難な状況にあります。
(単位:億円)
(注) 1.見込みについては、現時点で想定される事業環境等を基にした計画値であり、実際の数値は、様々な要因や不確定要素、今後の事業運営体制の見直し等により大きく異なる可能性があります。
2.本件第三者割当によって調達する資金の使途である構造改善費用および成長事業における設備投資を含めた数値です。なお、本件第三者割当による増資は含めておりません。
上記の状況を踏まえて、当社は、安定的な事業継続・中長期的な視野に立った成長の実現可能性を維持しつつ、足下の資金繰り、キャッシュ・フローの悪化等の抜本的な解決を図るために、次のとおり、個別の資産や事業の売却を実施し、かかる資産および事業の譲渡金額のうち、51億円は既存借入金の返済に、残額は運転資金に充当しまたは充当する予定です。
しかしながら、上記の目的を達成するためには、上記の資産および事業の譲渡金額に加え、①追加的な運転資金(経常的な設備投資、ソフトウェア開発費用等の事業上必要となる資本的支出を含む。)の調達(120億円)、②既存借入金の返済(330億円)、③早期の収益性の改善のための構造改善の実施(120億円)、④発行済の新株予約権付社債の償還(150億円)、⑤成長事業における設備投資(25.4億円)を行うことが必須であり、そのためには、株式の発行により745億円規模の資本性資金の調達を早期に行うことが必要不可欠と考えました。なお、①追加的な運転資金については、当初100億円程度と見込んでおりましたが、下記「ウ.当社の非公開化を前提とするBPEAファンドからの最終提案に至った経緯」に記載のBPEAファンドとの協議を踏まえ、また、直近の当社の資金繰りの状況を反映して改めて見積もったところ、現時点では20億円増額して上記のとおり120億円が必要と考えています。また、④発行済の新株予約権付社債の償還については、下記「ウ.当社の非公開化を前提とするBPEAファンドからの最終提案に至った経緯」に記載のとおり、本新株予約権付社債の償還のための資金が必要になるものと考えております。
上記のとおり、大規模な資金注入がなければ、当社の足下の資金繰りおよびフリー・キャッシュ・フローの状況の抜本的な解決は困難であり、資金面を含めた抜本的な改革が出来なければ、今後も当社の資金繰りの悪化は避けがたい状況にあります。そのため、大規模な資本性資金の調達を早期に実現できない場合には、当社の足下の資金繰りは困窮し、株式価値が著しく毀損する事態となり得る状況にあります。
イ.スポンサー選定の経緯およびBPEAファンドによるブリッジ・ローンによる資金支援の実行
上記の当社の置かれた厳しい財務状況を踏まえれば、当社の時価総額(2018年11月末時点で約353億円)を大きく上回る規模の多額の資本性資金の出資に、当社が希望する時間軸で応じられるスポンサーの選定は相当程度困難であると見込まれました。そのため、当社は、フィナンシャル・アドバイザーとして野村證券株式会社(以下、「野村證券」)を起用し、同社を通じて、複数のスポンサー候補に対して、当社に対する出資等を通じた資金提供を含む支援の可能性を打診した上で、かかる複数のスポンサー候補から提示された提供可能な資金の金額、その実施時期・実現可能性、スポンサーとして参画した後の当社の経営・事業に関する考え方や当社グループの経営改善、中長期的な事業継続および成長に向けた取組姿勢等を含む提案内容を慎重に検討することとしました。その結果、当該時点において、以下のとおり当社にとって最も望ましいと考えられる条件を提示したKamerig B.V.との間で、スポンサー支援に関する基本合意書(以下、「本基本合意書」)を締結するに至りました。Kamerig B.V.は、本件第三者割当の割当予定先であるWolfcrest Limitedと同じく、合計160億米ドル超の運用資産を有する7つのファンドに対し投資上のアドバイスを提供する国際的なリーディング・プライベート・エクイティ・ファームであるBPEA傘下のファンドです(以下、Kamerig B.V.およびWolfcrest Limitedを含む、BPEA傘下のファンドを総称して、「BPEAファンド」)。BPEAファンドは、本件において、当社への出資を通じて総額500億~600億円という規模の資金提供を実施する意向を表明し、当該出資に関する正式契約の締結に向けて誠実に協議することに合意するだけでなく、当該出資に関する正式契約の締結に先立って、2018年9月18日に総額250億円の融資(以下、「本件ブリッジ・ローン」)を当社に対して実行しており、これによって、上記「②既存借入金の返済」として記載した2018年12月末までに期限が到来する既存借入金の返済資金および足下の運転資金を調達することができました。加えて、BPEAは、これまでも当社との間において協業の可能性等に関する協議を行った経緯を有しており、当社事業に対する深い理解を有しているところ、本件第三者割当後の当社の経営について、2018年9月12日付適時開示文「スポンサー支援に関する基本合意書の締結に関するお知らせ」記載の各事項を基本方針とすることを確認し、当社グループの早期の経営改善および中長期的な視野に立った成長の実現に向けて当社グループと協力して取り組む強い意向を表明する等、上記の当社の置かれた状況を踏まえたスポンサー選定において重要と考えられる考慮要素に照らして、最適のスポンサー候補でした。
ウ.当社の非公開化を前提とするBPEAファンドからの最終提案に至った経緯
当社は、その後、BPEAファンドからデュー・ディリジェンスを受けつつ、同社との間で出資に関する正式契約の具体的な内容についての協議を続けましたが、希薄化率が300%を超える第三者割当に係る決議または決定は、当該第三者割当の目的、割当対象者の属性、発行可能株式総数の変更に係る手続の実施状況その他の条件を総合的に勘案し、株主および投資者の利益を侵害するおそれが少ないと株式会社東京証券取引所(以下、「東京証券取引所」)が認める場合を除き、上場廃止基準に該当するとされている(東京証券取引所の定める有価証券上場規程第601条第1項第17号、有価証券上場規程施行規則第601条第14項第6号、上場管理等に関するガイドラインⅣ9)ところ、当社の置かれた厳しい財務状況の下では、当社の時価総額を大きく上回る規模の多額の資本性資金の出資について、希薄化率が300%を超えない水準の一株当たり払込金額による出資の提案をBPEAファンドから取り付けることはできませんでした。また、当社は、東京証券取引所から上場維持を認められることを前提に、BPEAファンドとの間において、上場を維持したまま、希薄化率が300%を超える水準の一株当たり払込金額による出資を行うことについても協議を行いました。
他方、BPEAファンドは、プライベート・エクイティ・ファームとして自らの投資家に対して説明が可能であり、かつ、当社の再生のために必要な資金を供給しつつ、当社の株主の皆様にもご納得いただける方法を真摯に検討したとのことです。BPEAファンドとしては、デュー・ディリジェンスの結果として、当社のキャッシュ・フローや足下の資金繰りの状況に危機感を持っており、本基本合意書にて表明した総額500億~600億円という規模の資金提供では足りず、当社の事業継続への不安感を払拭し、事業運営を安定させるためには、運転資金の追加として20億円および当社が発行済の新株予約権付社債(以下、「本新株予約権付社債」)の繰上償還を行うための資金として150億円を加え、本件ブリッジ・ローンのDESを含めて770億円規模の資本注入が必要であると考えるに至ったとのことです。
更に、このような大規模な資本注入を行う前提としては、BPEAファンドとしては、当社を非公開化して抜本的な改革を行う体制を確保することが必要不可欠と考えているとのことです。具体的には、BPEAファンドは、当社が事業を継続し、中長期的な成長を実現するためには、当社およびBPEAファンドが二人三脚になり早期に継続事業の見直し、厳格なコスト削減、各事業の成長に寄与するパートナーとの提携、事業ポートフォリオの見直し等を含む、抜本的な組織体制の再構築を行うことが必要不可欠であると考えており、そのような大規模な改革を実施するには、短期的な利益確保を重視する戦略にとらわれることなく、迅速な経営判断はもちろんのこと、上場維持に必要な諸般の業務に関わるリソースを含む当社の総力をフル活用し、関係者が一丸となって取り組むことが求められると考えているとのことです。そのため、BPEAファンドとしては、本基本合意書においては上場維持を基本方針としていたものの、当社が上場を維持した状態でこれらを実現することは困難であると考え、非公開化することが当社にとっても最善の選択肢であると強く信じているとのことです。
また、BPEAファンドとしては、上場を維持した上での大規模な増資では、当社の既存株主の保有株式は大幅に希薄化されるのみであり、かつその後の事業改革は、中長期的には当社事業の改善に資すると考えているものの、短期的には収益性が悪化し、また、事業改革が奏功しない場合のリスクも存在することから、当社が上場を維持したままかかる事業改革を実施し、既存株主を更なるリスクにさらすことは適切ではなく、当社の既存株主に対して合理的な対価を支払った上で、当社を非公開化することが当社の既存株主の利益にも資すると考えたとのことです。特に、BPEAファンドとしては、当社の現在および将来のキャッシュ・フローや足下の資金繰りの状況を踏まえると、当社の実勢の株式価値は市場価格に比して著しく低く、かつ仮に大規模な資金注入が早期に実行されなければ、当社の足下の資金繰りは極めて困窮することになるため、この段階で、既存株主に対して本件第三者割当における本新株式の払込金額に対してプレミアムを付した金額を支払うことは、既存株主に対しても救済策となるものであると考えたとのことです。なお、2018年9月期末において当社の連結純資産は785億円存するものの、BPEAファンドによるデュー・ディリジェンスの結果、売却可能性を加味した資産の価値、年金債務その他の負債性を有する債務および既に第三者に対する債務に対して設定している担保等を勘案すると、BPEAファンドとしては、仮に当社を現時点で清算した場合に既存株主に対して割り当てられるであろう価格は、かかる連結純資産の金額よりも大幅に低くなると考えているとのことです。
上記の結果、BPEAファンドは、本基本合意書における資金支援額を大幅に増加させ、当社に対して、大要以下の最終提案を行いました。
① 当社に対する出資額を総額500億~600億円から、総額770億円(本件ブリッジ・ローンのDESを含みます。)に増額すること。
② 当社の既存株主に対しては、本件第三者割当における本新株式の払込金額に対してプレミアムを付した金額(総額約250億円)を支払った上で、株式併合その他の手法により当社をBPEAファンドの完全子会社(非公開化)とすること。
③ ①および②の取引は一連の取引として実行され、両者につき株主総会における既存株主の承諾を取得すること。
また、BPEAファンドは、本件完全子会社化取引後の当社の経営方針等は以下のとおりと考えているとのことです。
① 抜本的な事業・組織体制の再構築
当社を非公開化した上で、当社およびBPEAファンドが二人三脚になり早期に各事業の採算性・将来性の再評価を含む継続事業の見直し、生産・販売・管理体制の見直し等による厳格なコスト削減、ソリューションビジネス等における他業種や同業他社との提携を含む各事業の成長に寄与するパートナーとの提携、事業ポートフォリオの見直し等を含む、抜本的な改革を進めます。
BPEAファンドは、かかる抜本的な改革を実施するには、短期的な利益確保を重視する戦略にとらわれることなく、迅速な経営判断はもちろんのこと、上場維持に必要な諸般の業務に関わるリソースを含む当社の総力をフル活用し、関係者が一丸となって取り組むことが必要と考えています。
② 商号・ブランドの維持・尊重
BPEAファンドは、特段の事情の変更がない限り、当社およびその子会社の現在の商号およびブランドを維持する意向を有しています。
③ 取引関係の維持・継続
BPEAファンドは、特段の事情の変更がない限り、当社グループと各取引先との現在の取引関係を維持・継続する意向を有しています。
④ 第三者との連携のサポート
BPEAファンドは、当社と協議の上で、当社グループの企業価値向上に向けて、既存事業の維持・継続・発展および新規事業の開始等のために必要となる第三者との提携について、当社に対してサポートを提供する意向を有しています。
エ.本件完全子会社化取引が当社および当社の株主の皆様にとって最善の策であるとの判断に至った理由
上記ウ.のBPEAファンドからの最終提案は、当社の既存株式の大幅な希薄化のみならず、当社の非公開化も含むものであり、当社の株主の皆様にも重大な影響を与えるものであったため、当社としても慎重な検討を行いました。
まず、当社は、BPEAファンドの最終提案に先立ち、フィナンシャル・アドバイザーである野村證券を通じて、BPEAファンド以外の複数のスポンサー候補とも接触し、当社に対する支援の可能性について協議しましたが、やはり、BPEAファンドのほかに、当社の足下の困窮した資金繰りを解決できる実現可能な支援策の提案はなく、これらのスポンサー候補による支援を更に検討することはできないとの判断に至りました。また、BPEAファンドは、当社との協業の可能性等に関する協議を踏まえて当社事業に対する深い理解を有しており、また当社の再生に向けて真摯に分析・協議を行い、上記ウ.に記載されるような再生策の提案を行っており、資金面のみならず、事業面においても、当社の企業価値を向上させるパートナーとして、他のスポンサー候補よりも優れていました。
また、経営改善施策の検討を進める過程で、当社グループが事業を継続し、中長期的な成長を実現するためには、継続事業の見直しおよび事業規模に合わせた組織体制の再構築を実現する構造改善の必要性が改めて認識されることとなり、その実現のために今後における収益性と成長性に鑑みたグループ全体の事業の選択と集中の更なる推進および継続事業における体制のスリム化による厳格なコスト削減、生産・販売拠点の集約、本社機能の縮小・事業の選択と集中を踏まえた研究開発機能の見直しとそれに伴う人員削減といった施策の実行が不可欠と考えるに至りました。なお、より詳細な施策の内容については、本件完全子会社化取引の実施後、BPEAファンドとも協議のうえ最終的に決定し、実行してまいります。
かかる観点から検討した結果、当社は、上記ウ.のBPEAファンドからの最終提案の前提となる考え方は、当社の中長期的な成長を実現するために現実的かつ具体的な方向性を示すものとして当社の上記の考え方と整合していると判断しました。
具体的には、BPEAファンドの指摘する770億円規模の資金注入の必要性については、上記ア.に記載のとおり、当社としても必要不可欠と考えるものでした。なお、本新株予約権付社債の繰上償還を行うための資金150億円については、本新株予約権付社債の償還期日は2020年12月18日となっておりますが、現在の当社の財務状況およびキャッシュ・フローの状況等からすれば、いずれにせよ本新株予約権付社債の償還のために外部資金の調達が必要と考えております。また、本件完全子会社化取引を実施する場合、仮に本新株予約権付社債が未償還のまま残ると、本新株予約権付社債の実質的保有者により普通株式への転換請求権が行使され、割当予定先以外の株主が予期せずに出現する可能性があるため、本件完全子会社化取引の円滑な遂行の観点からは、本新株予約権付社債の償還のための資金が必要になります。そして、BPEAファンドが当社の事業継続、中長期的な成長の実現のために必要不可欠とする、継続事業の見直し、厳格なコスト削減、事業ポートフォリオの見直し等を含む、抜本的な組織体制の再構築は、上記のとおり、当社としても不可欠と考えるものであり、また、各事業の成長に寄与するパートナーとの提携についても当社の中長期的な成長の実現に資するものと考えられるところ、これらの抜本的な構造改善を行う上での様々な施策の実行のためには、上記ウ.のBPEAファンドからの最終提案で指摘されているとおり、短期的な利益確保を重視する戦略にとらわれず、市場環境の変化に柔軟に対応し、機動的な経営判断を行っていく必要があり、当社の人的リソースを結集し、当社の再生に取り組むことは不可欠であると考えております。他方で、かかる抜本的な構造改善施策の機動的な実行に際しては、コストや投資が先行し、その効果が実現するまでには時間を要することが想定されます。加えて、短期的には収益およびキャッシュ・フローの悪化も懸念されることから、既存株主の皆様における経済的悪影響を避けることは困難です。さらに、上記の規模の資金注入が実現せず、抜本的な構造改善施策を機動的に実行できない場合、当社の業績および財務状態が悪化し、事業の継続が困難となる懸念があり、株価の下落等を通じて既存株主の皆様を更なるリスクにさらすおそれがあります。そのため、Kamerig B.V.との間の本基本合意書においては上場維持を基本方針としていたものの、当社は、上場を維持したままで当社グループの事業継続および中長期的な成長の実現のために必要な資金を調達し、大規模な経営改善施策を短期間に行うことは難しいと考えるに至り、当社の既存株主の皆様に対して合理的な対価を支払うとともに、当社株式の上場を廃止した上で、事業改革を行わざるを得ないと考えるに至りました。BPEAファンドの最終提案にある、本株式併合に伴う端数処理により当社の既存株主の皆様に交付することが見込まれる金銭の額については、下記「(3) 会社法第234条の規定により1株に満たない端数の処理をすることが見込まれる場合における当該処理の方法、当該処理により株主に交付されることが見込まれる金銭の額および当該額の算定根拠」に記載のとおり、当社としても相当であると判断しており、当社の非公開化に際して既存株主の皆様に支払われる対価として合理的であると考えています。
以上のような検討および協議の結果、調達金額の規模、実施可能時期・実現可能性、資金調達後の安定的な事業継続等の観点から、BPEAファンドの提案内容のほかに実現可能な支援策の提案は存在せず、当社は、上記ウ.のBPEAファンドからの最終提案を受け入れ、Kamerig B.V.の100%子会社である割当予定先に対する第三者割当の方法により、総額770億円の出資を受けるとともに、本株式併合を通じて当社を割当予定先の完全子会社とすること(本件完全子会社化取引)により割当予定先と当社が一体となって、柔軟かつ機動的に経営戦略を推進することが、当社グループの事業継続および中長期的な成長に最も資するとともに、当社の既存株主の皆様を更なるリスクにさらす事態を避けることにつながると考えられることから、最善の選択肢であるとの最終的な判断に至りました。また、中長期的な成長シナリオに関しては、上記ウ.のBPEAファンドが提案している本件完全子会社化取引後の当社の経営方針等の内容のうち、①抜本的な事業・組織体制の再構築については、上記のとおり、当社の考え方とも整合しており、②商号・ブランド、③取引関係といった点は、当社の歴史の中で培ってきた重要な価値であり、これらを維持・尊重または継続していくことは、当社の事業継続および中長期的な成長の実現のためには必要不可欠です。また、④第三者との連携のサポートについても、当社の中長期的な成長に資するものと考えております。以上から、当社は、上記ウ.のBPEAファンドが提案している本件完全子会社化取引後の当社の経営方針等の内容に賛同しており、足下の財務基盤の立て直しだけではなく、財務基盤の立て直し後に当社グループが再成長を実現する上で、BPEAファンドはベストパートナーであると確信しています。
以上の観点から、当社は、当社の資金面および事業面の双方の支援の観点から、BPEAファンドからの最終提案が当社の企業価値向上のためには最善の策であり、かつ、当社の現状に鑑みると、当社の株主の皆様に対しても最善の策であると確信しております。
(2) 本株式併合の割合
下記「(4) 本株式併合がその効力を生ずる日」に定義する本株式併合効力発生日をもって、その前日の最終の株主名簿に記載または記録された株主の所有する当社株式について、450,000,000株を1株に併合いたします。
(3) 会社法第234条の規定により1株に満たない端数の処理をすることが見込まれる場合における当該処理の方法、当該処理により株主に交付されることが見込まれる金銭の額および当該額の算定根拠
ア.1株に満たない端数の処理をすることが見込まれる場合における当該処理の方法
本株式併合により、割当予定先以外の株主の皆様が所有する当社株式の数は、1株に満たない端数となる予定です。
本株式併合の結果生じる1株に満たない端数の処理の方法につきましては、その合計数(会社法第235条第1項の規定により、その合計数に1株に満たない端数がある場合には、当該端数は切り捨てられます。)に相当する数の株式を、会社法第235条その他の関係法令の規定に従って売却し、その端数に応じて、その売却によって得られた代金を株主の皆様に交付いたします。当該売却について、当社は、会社法第235条第2項の準用する同法第234条第2項の規定に基づき、裁判所の許可を得て、当該端数の合計数に相当する当社株式を割当予定先に売却し、または会社法第235条第2項の準用する同法第234条第4項の規定に基づき、裁判所の許可を得て、当該端数の合計数に相当する当社株式を当社に売却することを予定しております。
イ.当該処理により株主に交付されることが見込まれる金銭の額および当該額の算定根拠
端数処理により株主の皆様に交付することが見込まれる金銭の額(以下、「本株式併合交付見込金額」)は、株主の皆様が所有する当社株式の数に、本件第三者割当における本新株式の払込金額(50.0円)に対して32.2%のプレミアムを付した金額である66.1円を乗じた金額に設定することを予定しております。
この金額は、本株式併合を目的とする本臨時株主総会の招集に係る取締役会決議日の直前営業日である2018年12月6日の株式会社東京証券取引所における当社株式の終値(以下、「終値」)89円に対しては25.7%のディスカウントとなります。しかしながら、上記「(1) 本株式併合の目的」に記載のとおり、当社の足下の資金繰りおよびフリー・キャッシュ・フローの状況の抜本的な解決のためには大規模な資金注入が必要不可欠であり、かかる規模の資金注入が実現せず、抜本的な構造改善施策を機動的に実行できない場合、当社の業績および財務状態が悪化し、事業の継続が困難となる懸念があり、株価の下落等を通じて既存株主の皆様を更なるリスクにさらすおそれがあります。上記の金額は、そのような状況の下で、複数のスポンサー候補との間で真摯な協議を行い、当社の足下の困窮した資金繰りを解決できる実現可能な支援策を提案した唯一のスポンサー候補であるBPEAファンドとの間の複数回にわたる交渉により、有意な引き上げを実現した上で、最終的に合意されたものであることから、当社が当社の株主の皆様に提供できる最善の条件であり、当社の株主の皆様に対して合理的な株式売却の機会を提供するものであると判断しています。
また、当社は、BPEAファンドとの協議および交渉の結果を踏まえて本新株式の払込金額および本株式併合交付見込金額を決定するに際して、また、本臨時株主総会における株主の皆様の議決権行使のご参考のために、 株式会社赤坂国際会計(以下、「赤坂国際会計」)から2018年12月7日付で、株式価値算定書(以下、「本株式価値算定書」)ならびに本新株式の払込金額および本株式併合交付見込金額が割当予定先を除く当社の株主にとって財務的見地から妥当である旨の意見書(フェアネス・オピニオン)(以下、「フェアネス・オピニオン」)を取得しております。その詳細は、下記「ウ.本件完全子会社化取引の公正性を担保するための措置および利益相反を回避するための措置 ① 当社における独立した第三者算定機関からの算定書およびフェアネス・オピニオンの取得」をご参照下さい。当社は、本件第三者割当における本新株式の払込金額(50円)および本株式併合交付見込金額(66.1円)につきましては、赤坂国際会計から取得した本株式価値算定書およびフェアネス・オピニオンに照らし、妥当であると判断しております。なお、本株式併合交付見込金額66.1円は本新株式の払込金額に30%超のプレミアムを付すものです。
本株式価値算定書において赤坂国際会計が算定した当社株式の株式価値は、下記「ウ.本件完全子会社化取引の公正性を担保するための措置および利益相反を回避するための措置 ① 当社における独立した第三者算定機関からの算定書およびフェアネス・オピニオンの取得」に記載のとおり、採用する算定手法によって相当程度乖離があり、いずれの算定手法による株式価値の範囲にも含まれるような価格が存在しません。そのため、当社は、本新株式の払込金額および本株式併合交付見込金額の決定に際して、本株式価値算定書における各算定結果のいずれを中心に参照すべきかを詳細に検討しました。
①市場株価平均法については、大要、上場株式の市場価格がその期待将来収益の現在価値を表示するものであるという仮定の下、独自のリターン・リスク評価を行うのではなく市場価格を参照するという考え方に基づき、上場株式の株式価値算定において広く用いられている算定手法であることは当社も認識しております。
しかしながら、赤坂国際会計が市場株価平均法による算定結果を検証・補完する方法として使用することが可能であるとして採用した類似会社比較法による算定結果(26円から55円)は、市場株価平均法による算定結果(89円から105円)と相当程度乖離しています。加えて、事業継続を前提とした場合の株式価値算定を行う上で適切な手法であるDCF法による算定結果(33円から71円)は、類似会社比較法による算定結果と近似する一方で、やはり市場株価平均法による算定結果とは相当程度乖離しています。当社は、このような類似会社比較法およびDCF法による各算定結果は、当社株式の株式価値算定においては、上記の市場株価平均法を採用する論理的前提である、上場株式の市場価格がその期待将来収益の現在価値を表示するという仮定が必ずしも当てはまらない可能性が高いことを示すものであると考えています。
このように、当社は、類似会社比較法およびDCF法による各算定結果で検証した結果、市場株価平均法により算定された当社株式の1株当たりの株式価値の範囲(89円から105円)は、当社の現在の状況を当社株式の株式価値に公正に反映した結果として採用することができるかについて疑義があると懸念しており、本件第三者割当の払込金額および本株式併合交付見込金額の決定において採用すべきであるとの判断には至りませんでした。
②類似会社比較法については、一般に公開された情報である同業他社の株価および財務データを使用するため、実証的かつ客観的な価値評価が可能になる算定手法であると考えられるため、その算定結果(26円から55円)を相当程度参考にしました。
③DCF法については、事業継続を前提とした場合の株式価値算定を行う上で適切な手法であると一般に考えられており、とりわけ、上記「(1) 本株式併合の目的」に詳細に記載した当社の財務状況を踏まえ、当社が作成した今後約5年間の事業計画を前提として、当社の事業の継続を前提に独自のリターン・リスク評価を行う算定手法である点で、当社の財務状態を可及的に正確に反映することが可能な適切な算定手法であると考えられます。また、本新株式の払込金額および本株式併合交付見込金額は、上記のとおりBPEAファンドとの協議および交渉を経て決定したところ、BPEAファンドが当社への出資の検討に際して重視したのは、現在の市場株価よりも、当社の実際の財務状態および将来の事業展望であり、当社の事業計画を前提とし、当社の財務状態を可及的に正確に反映することが可能であると考えられるDCF法による算定結果(33円から71円)は、BPEAファンドとの協議および交渉において当社株式の株式価値に関する考え方を相互に突合する上で有用であると考えました。
以上のことから、本新株式の払込金額および本株式併合交付見込金額を決定する上では、本株式価値算定書の類似会社比較法による算定結果(26円から55円)およびDCF法による算定結果(33円から71円)を主に参照し、BPEAファンドとの間の協議および交渉の結果を踏まえ、上記のとおり、本新株式の払込金額を、本株式価値算定書の類似会社比較法による算定結果およびDCF法による算定結果の範囲内である、1株当たり50円に決定しました。かかる払込金額は、直近の当社の市場株価から大幅なディスカウントとなるものの、745億円規模の資本性資金の調達が必要不可欠な状況の下で、複数のスポンサー候補との間で真摯な協議を行い、BPEAファンドとの間で真摯な協議・交渉を経た結果として最終的に合意されたものであることに加え、本株式価値算定書の算定結果の範囲内であることから、妥当な金額であると判断しました。なお、純資産価額法については、事業を継続せずに清算処分をすると仮定した場合の価値として一定の参考にはなり得るものの、当社は事業継続を前提としているため、本新株式の払込金額および本株式併合交付見込金額を決定する上では参照すべきではないと考えております。
以上により、当社は、端数処理により株主の皆様に交付することが見込まれる金銭の額については、相当であると判断しております。
ウ.本件完全子会社化取引の公正性を担保するための措置および利益相反を回避するための措置
① 当社における独立した第三者算定機関からの算定書およびフェアネス・オピニオンの取得
当社は、BPEAファンドとの協議および交渉の結果を踏まえて本新株式の払込金額および本株式併合交付見込金額を決定するに際して、また、本臨時株主総会における株主の皆様の議決権行使のご参考のために、第三者算定機関である赤坂国際会計に対して、当社株式の株式価値算定ならびに本新株式の払込金額および本株式併合交付見込金額が割当予定先を除く当社の株主にとって財務的見地から妥当である旨の意見書(フェアネス・オピニオン)の提出を依頼しました。なお、第三者算定機関である赤坂国際会計は、当社および割当予定先の関連当事者には該当せず、本件完全子会社化取引に関して記載すべき重要な利害関係を有しておりません。
赤坂国際会計は、当社株式の株式価値の算定手法を検討した結果、当社株式が東京証券取引所市場第一部に上場されていることから市場株価平均法を採用するとともに、本件第三者割当による資金調達が実施されない場合には事業継続に重要な影響を及ぼす可能性があるものの市場価格には当該影響が反映されていないと考えられること、本件公表に伴い公表される情報のうち、算定基準日までの市場価格に反映されていない情報の重要性が高い可能性があること等を勘案し、市場株価平均法以外の2つの算定手法による算定結果についても総合的に検討したとのことです。具体的には、①市場株価平均法に加え、②類似会社比較法、③ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法(以下、「DCF法」)、の各算定方法を採用し、当社株式の株式価値の算定を行うとともに、参考情報として純資産価額法を用いて価値の算定を行い、当社は赤坂国際会計から2018年12月7日付で本株式価値算定書を取得しております。
また、当社は、赤坂国際会計からフェアネス・オピニオンを取得しております。
本株式価値算定書によれば、各手法に基づいて算定された当社株式1株当たりの株式価値の範囲は以下のとおりです。
①市場株価平均法: 89円から105円
②類似会社比較法: 26円から55円
③DCF法: 33円から71円
(参考情報)
純資産価額法: △69円から△56円(1株当たり純資産価額)
①市場株価平均法については、本株式価値算定書では、2018年12月6日を算定基準日として、当社株式の東京証券取引所第一部における基準日終値89円、直近1ヶ月間の終値単純平均値93円、直近3ヶ月間の終値単純平均値105円、本基本合意書締結(2018年9月13日)以降の終値単純平均値103円を基に、当社株式の1株当たりの株式価値の範囲は、89円から105円と算定されております。
②類似会社比較法は、一般に公開された情報である同業他社の株価および財務データを使用するため、実証的かつ客観的な価値評価が可能になる算定手法であり、市場株価平均法による算定結果を検証・補完する方法として使用することが可能と考えられています。本株式価値算定書では、当社と類似性があると判断される類似上場会社として、株式会社JVCケンウッド、クラリオン株式会社およびアルパイン株式会社を選定した上で、企業価値に対する償却前営業利益の倍率(EV/EBITDA倍率)を用いて、当社の株式価値を算定し、その1株当たりの株式価値の範囲は、26円から55円と算定されています。
③DCF法は、事業継続を前提とした場合の株式価値算定を行う上で適切な手法の一つであると考えられています。本株式価値算定書では、当社が作成した2019年3月期から2023年3月期までの事業計画に基づく収益予測や投資計画等、合理的と考えられる前提を考慮した上で、当社が2019年3月期以降、将来生み出すと見込まれるフリー・キャッシュ・フローを基に、事業リスクに応じた一定の割引率で現在価値に割り引いて企業価値を評価しております。割引率は、加重平均資本コスト(WACC)である9.4%~10.3%を採用しており、継続価値の算定にあたっては永久成長率法を採用し、永久成長率を-0.25%~0.25%として算定し、当社株式の1株当たりの株式価値の範囲は、33円から71円と算定されています。
なお、赤坂国際会計が、DCF法の算定の前提とした当社の事業計画に基づく財務予測は以下のとおりです。以下の財務予測は本件第三者割当および本株式併合の実施を前提としたものではありませんが、2020年3月期以降のフリー・キャッシュ・フローについては、上記「3.(2) 調達する資金の具体的な使途および支出予定時期」に記載のとおり2019年4月から2年間にわたり構造改善を実施した結果を見込んだ数値です。
(単位:億円)
(注) 1.営業利益につき、2020年3月期の△59億円から2021年3月期の6億円に大幅な増加を見込むのは、減価償却費の増加による減少要因があるものの、OEM事業・市販事業の成長領域であるカーソリューション・テレマティックスでの売上増加による粗利の増加、また2020年3月期に実施する構造改善の効果を主に見込むことによります。また、2021年3月期の6億円から2022年3月期の14億円に増加を見込むのは、売上増加による粗利の増加を見込むことによるものですが、販売費用の増加も見込んでいるため8億円の増加となります。そして、2022年3月期の14億円から2023年3月期の164億円に大幅な増加を見込むのは、OEM事業での大型プロジェクトの売上高が減少に転じる見込みであることからソフト資産償却費が減少して減価償却費が減少することを主に見込むことによります。
2.EBITDAにつき、2019年3月期の200億円から2020年3月期の322億円に大幅な増加を見込むのは、営業利益については減少を見込むものの、OEM事業での大型プロジェクトでのソフト資産償却費の増加により減価償却費が増加することを主に見込むことによります。また、2020年3月期の322億円から2021年3月期の445億円に大幅な増加を見込むのは、注1記載の営業利益の増加と、OEM事業での大型プロジェクトでのソフト資産償却費の増加により減価償却費が増加することを主に見込むことによります。
もっとも、以上の財務予測は、上記の期間において、当社の資金繰りに支障が生じないとの仮定の下で作成されたものですが、仮に本件第三者割当が行われない場合には、当社の現預金残高は2020年3月期第2四半期末において80億円を超えるマイナスとなり、事業継続が困難となる懸念があります。そのため、本件第三者割当が行われなければ、現実的には、上記のDCF法の算定となった財務予測を実現することも困難である懸念があります。
また、純資産価額法は、事業継続を前提とした算定結果を提供するものではなく、企業の解散価値を検討する際に客観性の面で相対的に優れた算定結果を提供しうる手法であると考えられています。本株式価値算定書では、当社の2019年3月期第2四半期末時点の純資産価額78,532百万円に対して、事業を継続せずに清算処分することを前提に、事業継続を前提としない場合には、無形固定資産のうち、のれん、ソフトウェアおよびソフトウェア仮勘定については直ちに売却することは不可能と考えられること、棚卸資産、有形固定資産および投資有価証券については、資産の早期売却等に伴い帳簿価額と処分価額が乖離することが想定されることから、帳簿価額からの一定の減額等を考慮し、時価評価損益等(なお、当社が保有するインクリメント・ピー株式会社の株式売却益想定額を33,855百万円と仮定して加算されております。)を考慮した修正後純資産価額を△26,159百万円から△21,230百万円と算定し、当社株式の1株当たりの純資産価額の範囲は、△69円から△56円と算定されています。
② 当社の経営者から一定程度独立した者からの意見の取得
当社は、当社の意思決定の過程の公正性、透明性および客観性を確保すべく、当社の経営者から一定程度独立した者として、当社の取締役である谷関政廣氏および佐藤俊一氏、監査役である錦戸景一氏および若松弘之氏(いずれも当社の独立役員として東京証券取引所に届け出ている社外取締役および社外監査役です。)を選定し、本件完全子会社化取引に関する意見を諮問し、2018年12月7日付で、以下のとおりの意見をいただきました。
①結論
本件第三者割当には必要性および相当性が認められ、また、本件完全子会社化取引は当社の既存株主にとって不利益とは認められない。
②検討
a.資金調達の必要性
当社は、2018年3月期の連結業績において、カーエレクトロニクス事業の売上高減少による営業利益の減少に加えて、為替差損の発生や海外拠点再編に伴う構造改善費用、および持分法による投資損失の計上により31億円の経常損失となり、親会社株主に帰属する当期純損失71億円を計上した。また、営業活動によるキャッシュ・フローは売上債権の減少額が縮小したことなどにより159億円の収入となったものの、投資活動によるキャッシュ・フローはカーメーカーからの大規模受注ビジネスに対応したソフトウェアの開発が続いた影響もあり332億円の支出となり、フリー・キャッシュ・フローが172億円のマイナスとなった。さらに当連結会計年度においても50億円の連結営業損失を見込んでいる中、取引銀行から借り換えの合意が得られていなかったことから、2018年8月6日付「2019年3月期第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」にて公表のとおり、継続企業の前提に重要な疑義が存在するとして、当該第1四半期決算にて公表した当社の第1四半期連結財務諸表の注記には「継続企業の前提に関する注記」を記載する事態となった。当社は、このような状況を解消するため、事業ポートフォリオの見直しによる事業・資産の売却、主要事業における構造改革、および成長事業へのリソース・シフトといった全社的な経営改善施策の検討を進めたが、その過程において、当社に対する出資等を通じた資金提供を含む支援を行えるスポンサーを新たに選定し、かかるスポンサーからの資金提供等により、足下の資金繰り、キャッシュ・フローの正常化、既存借入金の返済資金および今後の成長投資のための資金の確保等を実現することで、当社が抱える事業面における高コスト構造、成長事業領域の育成等の課題、および財務面での課題の早期かつ抜本的な解決を図ることが、当社の安定的な事業継続にとって最善の選択肢であるとの結論に至った。
特に、車を取り巻く技術や製品は目まぐるしく進化を続けており、当社のカーエレクトロニクス事業等を継続して運営していくためには、新しい技術や製品に対応し続ける必要があり、カーメーカー等からの受注を得るためにソフトウェア開発および生産設備の更新、新規導入等の設備投資を経常的に行っていくことで市場・顧客の要請事項を踏まえた機能と仕様を満たす商品の開発と提案が必要不可欠である。上記のとおり、2018年3月期においてはソフトウェア開発の影響により310億円の設備投資を行ったが、2019年3月期および2020年3月期においても、それぞれカーエレクトロニクス事業を継続運営していくために、ソフトウェア開発および生産設備の更新等を目的とした同規模の設備投資・開発費用の支出が見込まれている。しかしながら、2018年3月期のフリー・キャッシュ・フローは172億円のマイナスであり、さらに2019年3月期および2020年3月期においても、投資活動によるキャッシュ・フローおよびフリー・キャッシュ・フローはマイナスが継続する見込みとなっており、大規模な資本注入がなければ、当社の事業継続のために必要不可欠な設備投資・開発費用を捻出することは極めて困難な状況にある。
上記の状況を踏まえて、当社は、安定的な事業継続・中長期的な視野に立った成長の実現可能性を維持しつつ、足下の資金繰り、キャッシュ・フローの悪化等の抜本的な解決を図るために、個別の資産や事業の売却を実施してきた。
しかしながら、上記の目的を達成するためには、個別の資産および事業の譲渡金額に加え、①追加的な運転資金(経常的な設備投資、ソフトウェア開発費用等の事業上必要となる資本的支出を含む。)の調達(120億円)、②既存借入金の返済(330億円)、③早期の収益性の改善のための構造改善の実施(120億円)、④発行済の新株予約権付社債の償還(150億円)、⑤成長事業における設備投資(25.4億円)を行うことが必須であり、そのためには、株式の発行により745億円規模の資本性資金の調達を早期に行うことが必要不可欠といえる。
以上のように、大規模な資金注入がなければ、当社の足下の資金繰りおよびフリー・キャッシュ・フローの状況の抜本的な解決は困難であり、資金面を含めた抜本的な改革が出来なければ、今後も当社の資金繰りの悪化は避けがたい状況にある。そのため、大規模な資本性資金の調達を早期に実現できない場合には、当社の足下の資金繰りは困窮し、株式価値が著しく毀損する事態となり得る状況にあるといえる。
以上より、当社における資金調達の必要性は認められると思料する。
b.手段の相当性
上記のとおり、当社の資金調達の必要性を踏まえれば、当社が希望する時間軸での必要金額の調達が確実に見込まれることが最も重要な考慮要素である。
この点、例えば、公募増資による普通株式の発行については、2018年11月7日付「2019年3月期第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」にて公表のとおり、当社の第2四半期連結財務諸表の注記には「継続企業の前提に関する注記」を記載しており、証券会社の引受けにより行われる公募増資の実施はそもそも困難である。また、ライツオファリング・株主割当についても、株価動向等を踏まえた割当株主の判断により、新株予約権が必ずしも全て行使されるとは限らない又は株主割当に全て応じていただけるとは限らないため、最終的な資金調達金額が不確実であり、確実性をもって必要金額を調達する必要がある当社にとっては現時点における適切な選択肢ではない。
これに対して、第三者割当増資は、必要金額の調達の確実性が最も高く、適切なスポンサーが選定できれば、当社にとって適切な選択肢となり得る。この点、割当予定先は、フィナンシャル・アドバイザーである野村證券を通じたスポンサー選定手続の結果として、当社にとって最も望ましいと考えられる条件を提示した先であり、また、その合意内容は、当社とBPEAファンドとの間で最適な出資規模・形態について協議および交渉を行う一方で、当社にとってより有利な条件での資金調達の可能性を求めて、その他の複数のスポンサー候補との間でも出資等を通じた資金提供を含む支援の可能性についての協議を続けた結果として最終的に決定されたものであり、割当予定先に対する第三者割当の方法による本新株式の発行により、総額770億円の出資を受けることが、現時点で当社にとっての最良の選択肢であるといえる。
なお、金融機関からの追加借入による資金調達の可能性も検討したが、「継続企業の前提に関する注記」を記載するに至った経緯を踏まえれば、スポンサーからの資金提供等により当社が抱える事業・財務面での課題の早期かつ抜本的な解決を図ることを最優先すべきであり、現時点では、金融機関からの追加借入による資金調達は当社にとって現実的な選択肢ではない。
以上のとおり、本件第三者割当の手段の相当性は認められると思料する。
c.発行条件の相当性
(払込金額について)
本新株式の払込金額(50円)は、本件第三者割当に係る取締役会決議日(以下、「本取締役会決議日」)の直前営業日である2018年12月6日の終値89円に対しては、43.8%のディスカウント、本取締役会決議日の直前1ヶ月間(2018年11月7日から2018年12月6日まで)の終値の平均値である93円(円未満四捨五入)に対しては46.2%のディスカウント、同直前3ヶ月間(2018年9月7日から2018年12月6日まで)の終値の平均値である105円(円未満四捨五入)に対しては52.4%のディスカウント、同直前6ヶ月間(2018年6月7日から2018年12月6日まで)の終値の平均値である125円(円未満四捨五入)に対しては60.0%のディスカウントとなる。
もっとも、当社は、BPEAファンドとの協議および交渉の結果を踏まえて本新株式の払込金額および本株式併合交付見込金額を決定するに際して、本件第三者割当に関して記載すべき重要な利害関係を有していない第三者算定機関である赤坂国際会計から、本株式価値算定書を取得している。この点、本株式価値算定書において赤坂国際会計が算定した当社株式の株式価値は、採用する算定手法によって相当程度乖離がある。具体的には、赤坂国際会計が市場株価平均法による算定結果を検証・補完する方法として使用することが可能であるとして採用した類似会社比較法による算定結果(26円から55円)は、市場株価平均法による算定結果(89円から105円)と相当程度乖離している。加えて、事業継続を前提とした場合の株式価値算定を行う上で適切な手法であるDCF法による算定結果(33円から71円)は、類似会社比較法による算定結果と近似する一方で、やはり市場株価平均法による算定結果とは相当程度乖離している。このような類似会社比較法およびDCF法による各算定結果は、当社株式の株式価値算定においては、上記の市場株価平均法を採用する論理的前提である、上場株式の市場価格がその期待将来収益の現在価値を表示するという仮定が必ずしも当てはまらない可能性が高いことを示すものであると考えられる。そこで、本新株式の払込金額を決定する上では、本株式価値算定書の類似会社比較法による算定結果(26円から55円)およびDCF法による算定結果(33円から71円)を主に参照するのが合理的であるところ、本新株式の払込金額は、本株式価値算定書の類似会社比較法による算定結果およびDCF法による算定結果の範囲内にある。また、本新株式の払込金額は、複数のスポンサー候補との間の協議の結果も踏まえて、割当予定先との間で真摯な協議・交渉を経た結果として、最終的に合意されたものである。
加えて、当社は、赤坂国際会計から、フェアネス・オピニオンを取得している。
以上より、本新株式の払込金額には合理性が認められると思料する。
(希薄化について)
本件第三者割当により割当予定先に対して割り当てる本新株式は合計で1,540,000,000株(議決権数15,400,000個)であり、2018年9月30日現在の当社の発行済株式総数383,340,936株(2018年9月30日現在の総議決権数3,781,611個)に対する割合は401.7%(議決権における割合407.2%)となる。
このように本件第三者割当により大規模な希薄化が生じることが見込まれる。他方、①当社には多額の資金調達の必要性が認められるところ、本件第三者割当の発行規模は、大規模ではあるものの、あくまで当社として必要不可欠と考える規模の資金調達の実現のために必要な規模に設定されていること、②割当予定先に対する本件第三者割当は、他の資金調達方法との比較においても、最も適切な資金調達手法と考えられること、③本新株式の払込金額についても、当社の置かれた厳しい財務状況ならびに複数のスポンサー候補との間の支援の可能性についての協議およびBPEAファンドとの協議・交渉の結果に鑑み、当社にとって現時点で最善の条件であり、本株式価値算定書で示された当社株式の株式価値の算定結果に照らしても妥当性が認められると判断できることといった事情を踏まえれば、本件第三者割当によって生じる大規模な希薄化を考慮してもなお、本件第三者割当を実行することには合理性が認められる。
以上より、本件第三者割当の発行条件には相当性が認められる。
d.割当予定先による当社の完全子会社化および当社株式の上場廃止
本件第三者割当の実行後には、割当予定先による当社の完全子会社化および当社株式の上場廃止が予定されている。具体的には、本株式併合の効力発生に先立ち当社株式の上場は廃止され、本株式併合に伴う端数処理として、既存株主には、その所有する当社株式と引き換えに、所有株式数に本株式併合交付見込金額66.1円を乗じた金額が交付されることになる。
この点、上記のとおり、当社には745億円規模の資本性資金の調達の必要性が認められるところ、かかる調達資金を用いた抜本的な構造改善を行う上での様々な施策の実行のためには、短期的な利益確保を重視する戦略にとらわれず、市場環境の変化に柔軟に対応し、機動的な経営判断を行っていく必要があり、当社の人的リソースを結集し、当社の再生に取り組むことは不可欠であると考えられる。他方で、かかる抜本的な構造改善施策の機動的な実行に際しては、コストや投資が先行し、その効果が実現するまでには時間を要することが想定される。加えて、短期的には収益およびキャッシュ・フローの悪化も懸念されることから、既存株主における経済的悪影響を避けることは困難である。さらに、上記の規模の資金注入が実現せず、抜本的な構造改善施策を機動的に実行できない場合、当社の業績および財務状態が悪化し、事業の継続が困難となる懸念があり、株価の下落等を通じて既存株主を更なるリスクにさらすおそれがある。そのため、当社は、上場を維持したままで当社グループの事業継続および中長期的な成長の実現のために必要な資金を調達し、大規模な経営改善施策を短期間に行うことは難しいと考えられ、当社の既存株主に対して合理的な対価が支払われる限り、当社株式の上場を廃止した上で事業改革を行うという選択は、当社の既存株主のリスク回避の観点からも合理性が認められるものと考えられる。
そして、本株式併合交付見込金額(66.1円)は、本取締役会決議日の直前営業日である2018年12月6日の終値89円に対しては25.7%のディスカウントとなるものの、本件第三者割当における本新株式の払込金額(50.0円)に対して32.2%のプレミアムを付した金額であり、本件第三者割当における本新株式の払込金額(50円)には、上記のとおり合理性が認められる。また、66.1円という金額は、当社の置かれた極めて困難な状況の下で、複数のスポンサー候補との間で真摯な協議を行い、当社の足下の困窮した資金繰りを解決できる実現可能な支援策を提案した唯一のスポンサー候補であるBPEAファンドとの間の複数回にわたる交渉により、有意な引き上げを実現した上で、最終的に合意されたものである。加えて、当社は、赤坂国際会計から、フェアネス・オピニオンを取得している。
以上のとおり、本件第三者割当の実行後における割当予定先による当社の完全子会社化および当社株式の上場廃止が行われる点については当社の既存株主のリスク回避の観点からも合理性が認められ、また、本株式併合交付見込金額(66.1円)についても、財務的な見地からの合理性が認められるだけでなく、当社の既存株主に提供できる最善の条件であることを踏まえれば、本件完全子会社化取引は当社の既存株主にとって不利益とは認められないと考える。
③ 当社における独立した法律事務所からの助言
当社は、リーガル・アドバイザーとして、長島・大野・常松法律事務所を選定し、同事務所より、本件第三者割当を含む本件完全子会社化取引の諸手続を含む取締役会の意思決定の方法・過程等について、法的助言を受けております。なお、長島・大野・常松法律事務所は、当社および割当予定先から独立しており、当社および割当予定先との間に重要な利害関係を有しません。
④ 当社における取締役全員の承認および監査役全員の異議がない旨の意見
2018年12月7日開催の取締役会においては、取締役全員が出席し、その全会一致により上記決議を行っております。なお、当社取締役には、本件第三者割当を含む本件完全子会社化取引に関して特別の利害関係を有する者はおりません。また、当該取締役会には、監査役3名全員(社外監査役2名を含みます。)が出席し、いずれも、上記決議に異議はない旨の意見を述べております。
(4) 本株式併合がその効力を生ずる日
本件第三者割当は、金融商品取引法に基づく届出の効力発生および本件第三者割当の実行について必要とされる各国の競争当局の企業結合に関する届出許可等、各国の関係当局の許認可等が得られることならびに本臨時株主総会における付議議案の承認(また、本件第三者割当のうち金銭の払込みの方法による部分については、上記に加えて、本件第三者割当の実施に必要となる当社の発行可能株式総数の増加に係る定款の一部変更の効力発生)を条件としています。
本株式併合は、本件完全子会社化取引の一部として、本件第三者割当に係る本新株式が全て発行されることを条件に実施されるものであるため、2018年12月7日開催の当社取締役会では、本株式併合に関して、以下のとおり、本件第三者割当に係る本新株式が全て発行される時点に応じて、複数の効力発生日(以下、「本株式併合効力発生日」)を定める旨の議案を本臨時株主総会に付議することを決議しております。
① 2019年3月10日までに本件第三者割当に係る本新株式が全て発行されることを条件として、本株式併合効力発生日を2019年3月31日とする。
② 2019年3月11日以降、2019年4月10日までに本件第三者割当に係る本新株式が全て発行されることを条件として、本株式併合効力発生日を2019年4月30日とする。
③ 2019年4月11日以降、2019年5月10日までに本件第三者割当に係る本新株式が全て発行されることを条件として、本株式併合効力発生日を2019年5月31日とする。
④ 2019年5月11日以降、2019年6月10日までに本件第三者割当に係る本新株式が全て発行されることを条件として、本株式併合効力発生日を2019年6月30日とする。
⑤ 2019年6月11日以降、2019年6月30日までに本件第三者割当に係る本新株式が全て発行されることを条件として、本株式併合効力発生日を2019年7月31日とする。
以 上
ア.当社の財務状況および大規模な資本性資金の調達の必要性
当社は、2018年3月期の連結業績において、カーエレクトロニクス事業の売上高減少による営業利益の減少に加えて、為替差損の発生や海外拠点再編に伴う構造改善費用、および持分法による投資損失の計上により31億円の経常損失となり、親会社株主に帰属する当期純損失71億円を計上しております。また、営業活動によるキャッシュ・フローは売上債権の減少額が縮小したことなどにより159億円の収入となったものの、投資活動によるキャッシュ・フローはカーメーカーからの大規模受注ビジネスに対応したソフトウェアの開発が続いた影響もあり332億円の支出となり、フリー・キャッシュ・フローが172億円のマイナスとなりました。さらに当連結会計年度においても50億円の連結営業損失を見込んでいる中、取引銀行から借り換えの合意が得られていなかったことから、継続企業の前提に重要な疑義が存在するとして、当社の2019年3月期第1四半期連結財務諸表の注記には「継続企業の前提に関する注記」を記載する事態となりました。当社は、このような状況を解消するため、事業ポートフォリオの見直しによる事業・資産の売却、主要事業における構造改革、および成長事業へのリソース・シフトといった全社的な経営改善施策の検討を進めましたが、その過程において、当社に対する出資等を通じた資金提供を含む支援をいただけるスポンサーを新たに選定し、かかるスポンサーからの資金提供等により、足下の資金繰り、キャッシュ・フローの正常化、既存借入金の返済資金および今後の成長投資のための資金の確保等を実現することで、当社が抱える事業面における高コスト構造、成長事業領域の育成等の課題、および財務面での課題の早期かつ抜本的な解決を図ることが、当社の安定的な事業継続にとって最善の選択肢であるとの結論に至りました。
特に、車を取り巻く技術や製品は目まぐるしく進化を続けており、当社のカーエレクトロニクス事業等を継続して運営していくためには、新しい技術や製品に対応し続ける必要があり、カーメーカー等からの受注を得るためにソフトウェア開発および生産設備の更新、新規導入等の設備投資を経常的に行っていくことで市場・顧客の要請事項を踏まえた機能と仕様を満たす商品の開発と提案が必要不可欠です。2018年3月期においてはソフトウェア開発の影響により310億円の設備投資を行いましたが、2019年3月期および2020年3月期においても、それぞれカーエレクトロニクス事業を継続運営していくために、ソフトウェア開発および生産設備の更新等を目的とした同規模の設備投資・開発費用の支出が見込まれています。しかしながら、下表のとおり、2018年3月期のフリー・キャッシュ・フローは172億円のマイナスであり、さらに2019年3月期および2020年3月期においても、投資活動によるキャッシュ・フローおよびフリー・キャッシュ・フローはマイナスが継続する見込みとなっており、大規模な資本注入がなければ、当社の事業継続のために必要不可欠な設備投資・開発費用を捻出することは極めて困難な状況にあります。
(単位:億円)
2018年 3月期 | 2019年3月期 (注1) | 2020年3月期 (注1)(注2) | ||||||
通期 実績 | 上期 実績 | 下期 見込み | 通期 見込み | 上期 見込み | 下期 見込み | 通期 見込み | ||
営業活動による キャッシュ・フロー | 159 | 41 | 47 | 88 | (27) | 154 | 127 | |
投資活動による キャッシュ・フロー | (332) | (157) | (90) | (247) | (159) | (104) | (263) | |
フリー・キャッシュ・フロー | (172) | (116) | (43) | (159) | (186) | 50 | (136) | |
財務活動による キャッシュ・フロー | 143 | 39 | (65) | (26) | (87) | (7) | (94) |
(注) 1.見込みについては、現時点で想定される事業環境等を基にした計画値であり、実際の数値は、様々な要因や不確定要素、今後の事業運営体制の見直し等により大きく異なる可能性があります。
2.本件第三者割当によって調達する資金の使途である構造改善費用および成長事業における設備投資を含めた数値です。なお、本件第三者割当による増資は含めておりません。
上記の状況を踏まえて、当社は、安定的な事業継続・中長期的な視野に立った成長の実現可能性を維持しつつ、足下の資金繰り、キャッシュ・フローの悪化等の抜本的な解決を図るために、次のとおり、個別の資産や事業の売却を実施し、かかる資産および事業の譲渡金額のうち、51億円は既存借入金の返済に、残額は運転資金に充当しまたは充当する予定です。
2018年6月 | 当社の連結子会社である株式会社パイオニアFAの全株式を株式会社新川へ譲渡(譲渡金額:約21億円) |
2018年8月 | 当社の連結子会社であるPioneer Technology (Malaysia) Sdn. Bhd.のDJ機器の製造事業をVTech Communications Limitedへ譲渡(譲渡金額:約23億円) |
2018年12月 | 当社が完全子会社を通じて保有する東北パイオニアEG株式会社の全株式を株式会社デンソーへ譲渡(譲渡金額:109億円) |
しかしながら、上記の目的を達成するためには、上記の資産および事業の譲渡金額に加え、①追加的な運転資金(経常的な設備投資、ソフトウェア開発費用等の事業上必要となる資本的支出を含む。)の調達(120億円)、②既存借入金の返済(330億円)、③早期の収益性の改善のための構造改善の実施(120億円)、④発行済の新株予約権付社債の償還(150億円)、⑤成長事業における設備投資(25.4億円)を行うことが必須であり、そのためには、株式の発行により745億円規模の資本性資金の調達を早期に行うことが必要不可欠と考えました。なお、①追加的な運転資金については、当初100億円程度と見込んでおりましたが、下記「ウ.当社の非公開化を前提とするBPEAファンドからの最終提案に至った経緯」に記載のBPEAファンドとの協議を踏まえ、また、直近の当社の資金繰りの状況を反映して改めて見積もったところ、現時点では20億円増額して上記のとおり120億円が必要と考えています。また、④発行済の新株予約権付社債の償還については、下記「ウ.当社の非公開化を前提とするBPEAファンドからの最終提案に至った経緯」に記載のとおり、本新株予約権付社債の償還のための資金が必要になるものと考えております。
上記のとおり、大規模な資金注入がなければ、当社の足下の資金繰りおよびフリー・キャッシュ・フローの状況の抜本的な解決は困難であり、資金面を含めた抜本的な改革が出来なければ、今後も当社の資金繰りの悪化は避けがたい状況にあります。そのため、大規模な資本性資金の調達を早期に実現できない場合には、当社の足下の資金繰りは困窮し、株式価値が著しく毀損する事態となり得る状況にあります。
イ.スポンサー選定の経緯およびBPEAファンドによるブリッジ・ローンによる資金支援の実行
上記の当社の置かれた厳しい財務状況を踏まえれば、当社の時価総額(2018年11月末時点で約353億円)を大きく上回る規模の多額の資本性資金の出資に、当社が希望する時間軸で応じられるスポンサーの選定は相当程度困難であると見込まれました。そのため、当社は、フィナンシャル・アドバイザーとして野村證券株式会社(以下、「野村證券」)を起用し、同社を通じて、複数のスポンサー候補に対して、当社に対する出資等を通じた資金提供を含む支援の可能性を打診した上で、かかる複数のスポンサー候補から提示された提供可能な資金の金額、その実施時期・実現可能性、スポンサーとして参画した後の当社の経営・事業に関する考え方や当社グループの経営改善、中長期的な事業継続および成長に向けた取組姿勢等を含む提案内容を慎重に検討することとしました。その結果、当該時点において、以下のとおり当社にとって最も望ましいと考えられる条件を提示したKamerig B.V.との間で、スポンサー支援に関する基本合意書(以下、「本基本合意書」)を締結するに至りました。Kamerig B.V.は、本件第三者割当の割当予定先であるWolfcrest Limitedと同じく、合計160億米ドル超の運用資産を有する7つのファンドに対し投資上のアドバイスを提供する国際的なリーディング・プライベート・エクイティ・ファームであるBPEA傘下のファンドです(以下、Kamerig B.V.およびWolfcrest Limitedを含む、BPEA傘下のファンドを総称して、「BPEAファンド」)。BPEAファンドは、本件において、当社への出資を通じて総額500億~600億円という規模の資金提供を実施する意向を表明し、当該出資に関する正式契約の締結に向けて誠実に協議することに合意するだけでなく、当該出資に関する正式契約の締結に先立って、2018年9月18日に総額250億円の融資(以下、「本件ブリッジ・ローン」)を当社に対して実行しており、これによって、上記「②既存借入金の返済」として記載した2018年12月末までに期限が到来する既存借入金の返済資金および足下の運転資金を調達することができました。加えて、BPEAは、これまでも当社との間において協業の可能性等に関する協議を行った経緯を有しており、当社事業に対する深い理解を有しているところ、本件第三者割当後の当社の経営について、2018年9月12日付適時開示文「スポンサー支援に関する基本合意書の締結に関するお知らせ」記載の各事項を基本方針とすることを確認し、当社グループの早期の経営改善および中長期的な視野に立った成長の実現に向けて当社グループと協力して取り組む強い意向を表明する等、上記の当社の置かれた状況を踏まえたスポンサー選定において重要と考えられる考慮要素に照らして、最適のスポンサー候補でした。
ウ.当社の非公開化を前提とするBPEAファンドからの最終提案に至った経緯
当社は、その後、BPEAファンドからデュー・ディリジェンスを受けつつ、同社との間で出資に関する正式契約の具体的な内容についての協議を続けましたが、希薄化率が300%を超える第三者割当に係る決議または決定は、当該第三者割当の目的、割当対象者の属性、発行可能株式総数の変更に係る手続の実施状況その他の条件を総合的に勘案し、株主および投資者の利益を侵害するおそれが少ないと株式会社東京証券取引所(以下、「東京証券取引所」)が認める場合を除き、上場廃止基準に該当するとされている(東京証券取引所の定める有価証券上場規程第601条第1項第17号、有価証券上場規程施行規則第601条第14項第6号、上場管理等に関するガイドラインⅣ9)ところ、当社の置かれた厳しい財務状況の下では、当社の時価総額を大きく上回る規模の多額の資本性資金の出資について、希薄化率が300%を超えない水準の一株当たり払込金額による出資の提案をBPEAファンドから取り付けることはできませんでした。また、当社は、東京証券取引所から上場維持を認められることを前提に、BPEAファンドとの間において、上場を維持したまま、希薄化率が300%を超える水準の一株当たり払込金額による出資を行うことについても協議を行いました。
他方、BPEAファンドは、プライベート・エクイティ・ファームとして自らの投資家に対して説明が可能であり、かつ、当社の再生のために必要な資金を供給しつつ、当社の株主の皆様にもご納得いただける方法を真摯に検討したとのことです。BPEAファンドとしては、デュー・ディリジェンスの結果として、当社のキャッシュ・フローや足下の資金繰りの状況に危機感を持っており、本基本合意書にて表明した総額500億~600億円という規模の資金提供では足りず、当社の事業継続への不安感を払拭し、事業運営を安定させるためには、運転資金の追加として20億円および当社が発行済の新株予約権付社債(以下、「本新株予約権付社債」)の繰上償還を行うための資金として150億円を加え、本件ブリッジ・ローンのDESを含めて770億円規模の資本注入が必要であると考えるに至ったとのことです。
更に、このような大規模な資本注入を行う前提としては、BPEAファンドとしては、当社を非公開化して抜本的な改革を行う体制を確保することが必要不可欠と考えているとのことです。具体的には、BPEAファンドは、当社が事業を継続し、中長期的な成長を実現するためには、当社およびBPEAファンドが二人三脚になり早期に継続事業の見直し、厳格なコスト削減、各事業の成長に寄与するパートナーとの提携、事業ポートフォリオの見直し等を含む、抜本的な組織体制の再構築を行うことが必要不可欠であると考えており、そのような大規模な改革を実施するには、短期的な利益確保を重視する戦略にとらわれることなく、迅速な経営判断はもちろんのこと、上場維持に必要な諸般の業務に関わるリソースを含む当社の総力をフル活用し、関係者が一丸となって取り組むことが求められると考えているとのことです。そのため、BPEAファンドとしては、本基本合意書においては上場維持を基本方針としていたものの、当社が上場を維持した状態でこれらを実現することは困難であると考え、非公開化することが当社にとっても最善の選択肢であると強く信じているとのことです。
また、BPEAファンドとしては、上場を維持した上での大規模な増資では、当社の既存株主の保有株式は大幅に希薄化されるのみであり、かつその後の事業改革は、中長期的には当社事業の改善に資すると考えているものの、短期的には収益性が悪化し、また、事業改革が奏功しない場合のリスクも存在することから、当社が上場を維持したままかかる事業改革を実施し、既存株主を更なるリスクにさらすことは適切ではなく、当社の既存株主に対して合理的な対価を支払った上で、当社を非公開化することが当社の既存株主の利益にも資すると考えたとのことです。特に、BPEAファンドとしては、当社の現在および将来のキャッシュ・フローや足下の資金繰りの状況を踏まえると、当社の実勢の株式価値は市場価格に比して著しく低く、かつ仮に大規模な資金注入が早期に実行されなければ、当社の足下の資金繰りは極めて困窮することになるため、この段階で、既存株主に対して本件第三者割当における本新株式の払込金額に対してプレミアムを付した金額を支払うことは、既存株主に対しても救済策となるものであると考えたとのことです。なお、2018年9月期末において当社の連結純資産は785億円存するものの、BPEAファンドによるデュー・ディリジェンスの結果、売却可能性を加味した資産の価値、年金債務その他の負債性を有する債務および既に第三者に対する債務に対して設定している担保等を勘案すると、BPEAファンドとしては、仮に当社を現時点で清算した場合に既存株主に対して割り当てられるであろう価格は、かかる連結純資産の金額よりも大幅に低くなると考えているとのことです。
上記の結果、BPEAファンドは、本基本合意書における資金支援額を大幅に増加させ、当社に対して、大要以下の最終提案を行いました。
① 当社に対する出資額を総額500億~600億円から、総額770億円(本件ブリッジ・ローンのDESを含みます。)に増額すること。
② 当社の既存株主に対しては、本件第三者割当における本新株式の払込金額に対してプレミアムを付した金額(総額約250億円)を支払った上で、株式併合その他の手法により当社をBPEAファンドの完全子会社(非公開化)とすること。
③ ①および②の取引は一連の取引として実行され、両者につき株主総会における既存株主の承諾を取得すること。
また、BPEAファンドは、本件完全子会社化取引後の当社の経営方針等は以下のとおりと考えているとのことです。
① 抜本的な事業・組織体制の再構築
当社を非公開化した上で、当社およびBPEAファンドが二人三脚になり早期に各事業の採算性・将来性の再評価を含む継続事業の見直し、生産・販売・管理体制の見直し等による厳格なコスト削減、ソリューションビジネス等における他業種や同業他社との提携を含む各事業の成長に寄与するパートナーとの提携、事業ポートフォリオの見直し等を含む、抜本的な改革を進めます。
BPEAファンドは、かかる抜本的な改革を実施するには、短期的な利益確保を重視する戦略にとらわれることなく、迅速な経営判断はもちろんのこと、上場維持に必要な諸般の業務に関わるリソースを含む当社の総力をフル活用し、関係者が一丸となって取り組むことが必要と考えています。
② 商号・ブランドの維持・尊重
BPEAファンドは、特段の事情の変更がない限り、当社およびその子会社の現在の商号およびブランドを維持する意向を有しています。
③ 取引関係の維持・継続
BPEAファンドは、特段の事情の変更がない限り、当社グループと各取引先との現在の取引関係を維持・継続する意向を有しています。
④ 第三者との連携のサポート
BPEAファンドは、当社と協議の上で、当社グループの企業価値向上に向けて、既存事業の維持・継続・発展および新規事業の開始等のために必要となる第三者との提携について、当社に対してサポートを提供する意向を有しています。
エ.本件完全子会社化取引が当社および当社の株主の皆様にとって最善の策であるとの判断に至った理由
上記ウ.のBPEAファンドからの最終提案は、当社の既存株式の大幅な希薄化のみならず、当社の非公開化も含むものであり、当社の株主の皆様にも重大な影響を与えるものであったため、当社としても慎重な検討を行いました。
まず、当社は、BPEAファンドの最終提案に先立ち、フィナンシャル・アドバイザーである野村證券を通じて、BPEAファンド以外の複数のスポンサー候補とも接触し、当社に対する支援の可能性について協議しましたが、やはり、BPEAファンドのほかに、当社の足下の困窮した資金繰りを解決できる実現可能な支援策の提案はなく、これらのスポンサー候補による支援を更に検討することはできないとの判断に至りました。また、BPEAファンドは、当社との協業の可能性等に関する協議を踏まえて当社事業に対する深い理解を有しており、また当社の再生に向けて真摯に分析・協議を行い、上記ウ.に記載されるような再生策の提案を行っており、資金面のみならず、事業面においても、当社の企業価値を向上させるパートナーとして、他のスポンサー候補よりも優れていました。
また、経営改善施策の検討を進める過程で、当社グループが事業を継続し、中長期的な成長を実現するためには、継続事業の見直しおよび事業規模に合わせた組織体制の再構築を実現する構造改善の必要性が改めて認識されることとなり、その実現のために今後における収益性と成長性に鑑みたグループ全体の事業の選択と集中の更なる推進および継続事業における体制のスリム化による厳格なコスト削減、生産・販売拠点の集約、本社機能の縮小・事業の選択と集中を踏まえた研究開発機能の見直しとそれに伴う人員削減といった施策の実行が不可欠と考えるに至りました。なお、より詳細な施策の内容については、本件完全子会社化取引の実施後、BPEAファンドとも協議のうえ最終的に決定し、実行してまいります。
かかる観点から検討した結果、当社は、上記ウ.のBPEAファンドからの最終提案の前提となる考え方は、当社の中長期的な成長を実現するために現実的かつ具体的な方向性を示すものとして当社の上記の考え方と整合していると判断しました。
具体的には、BPEAファンドの指摘する770億円規模の資金注入の必要性については、上記ア.に記載のとおり、当社としても必要不可欠と考えるものでした。なお、本新株予約権付社債の繰上償還を行うための資金150億円については、本新株予約権付社債の償還期日は2020年12月18日となっておりますが、現在の当社の財務状況およびキャッシュ・フローの状況等からすれば、いずれにせよ本新株予約権付社債の償還のために外部資金の調達が必要と考えております。また、本件完全子会社化取引を実施する場合、仮に本新株予約権付社債が未償還のまま残ると、本新株予約権付社債の実質的保有者により普通株式への転換請求権が行使され、割当予定先以外の株主が予期せずに出現する可能性があるため、本件完全子会社化取引の円滑な遂行の観点からは、本新株予約権付社債の償還のための資金が必要になります。そして、BPEAファンドが当社の事業継続、中長期的な成長の実現のために必要不可欠とする、継続事業の見直し、厳格なコスト削減、事業ポートフォリオの見直し等を含む、抜本的な組織体制の再構築は、上記のとおり、当社としても不可欠と考えるものであり、また、各事業の成長に寄与するパートナーとの提携についても当社の中長期的な成長の実現に資するものと考えられるところ、これらの抜本的な構造改善を行う上での様々な施策の実行のためには、上記ウ.のBPEAファンドからの最終提案で指摘されているとおり、短期的な利益確保を重視する戦略にとらわれず、市場環境の変化に柔軟に対応し、機動的な経営判断を行っていく必要があり、当社の人的リソースを結集し、当社の再生に取り組むことは不可欠であると考えております。他方で、かかる抜本的な構造改善施策の機動的な実行に際しては、コストや投資が先行し、その効果が実現するまでには時間を要することが想定されます。加えて、短期的には収益およびキャッシュ・フローの悪化も懸念されることから、既存株主の皆様における経済的悪影響を避けることは困難です。さらに、上記の規模の資金注入が実現せず、抜本的な構造改善施策を機動的に実行できない場合、当社の業績および財務状態が悪化し、事業の継続が困難となる懸念があり、株価の下落等を通じて既存株主の皆様を更なるリスクにさらすおそれがあります。そのため、Kamerig B.V.との間の本基本合意書においては上場維持を基本方針としていたものの、当社は、上場を維持したままで当社グループの事業継続および中長期的な成長の実現のために必要な資金を調達し、大規模な経営改善施策を短期間に行うことは難しいと考えるに至り、当社の既存株主の皆様に対して合理的な対価を支払うとともに、当社株式の上場を廃止した上で、事業改革を行わざるを得ないと考えるに至りました。BPEAファンドの最終提案にある、本株式併合に伴う端数処理により当社の既存株主の皆様に交付することが見込まれる金銭の額については、下記「(3) 会社法第234条の規定により1株に満たない端数の処理をすることが見込まれる場合における当該処理の方法、当該処理により株主に交付されることが見込まれる金銭の額および当該額の算定根拠」に記載のとおり、当社としても相当であると判断しており、当社の非公開化に際して既存株主の皆様に支払われる対価として合理的であると考えています。
以上のような検討および協議の結果、調達金額の規模、実施可能時期・実現可能性、資金調達後の安定的な事業継続等の観点から、BPEAファンドの提案内容のほかに実現可能な支援策の提案は存在せず、当社は、上記ウ.のBPEAファンドからの最終提案を受け入れ、Kamerig B.V.の100%子会社である割当予定先に対する第三者割当の方法により、総額770億円の出資を受けるとともに、本株式併合を通じて当社を割当予定先の完全子会社とすること(本件完全子会社化取引)により割当予定先と当社が一体となって、柔軟かつ機動的に経営戦略を推進することが、当社グループの事業継続および中長期的な成長に最も資するとともに、当社の既存株主の皆様を更なるリスクにさらす事態を避けることにつながると考えられることから、最善の選択肢であるとの最終的な判断に至りました。また、中長期的な成長シナリオに関しては、上記ウ.のBPEAファンドが提案している本件完全子会社化取引後の当社の経営方針等の内容のうち、①抜本的な事業・組織体制の再構築については、上記のとおり、当社の考え方とも整合しており、②商号・ブランド、③取引関係といった点は、当社の歴史の中で培ってきた重要な価値であり、これらを維持・尊重または継続していくことは、当社の事業継続および中長期的な成長の実現のためには必要不可欠です。また、④第三者との連携のサポートについても、当社の中長期的な成長に資するものと考えております。以上から、当社は、上記ウ.のBPEAファンドが提案している本件完全子会社化取引後の当社の経営方針等の内容に賛同しており、足下の財務基盤の立て直しだけではなく、財務基盤の立て直し後に当社グループが再成長を実現する上で、BPEAファンドはベストパートナーであると確信しています。
以上の観点から、当社は、当社の資金面および事業面の双方の支援の観点から、BPEAファンドからの最終提案が当社の企業価値向上のためには最善の策であり、かつ、当社の現状に鑑みると、当社の株主の皆様に対しても最善の策であると確信しております。
(2) 本株式併合の割合
下記「(4) 本株式併合がその効力を生ずる日」に定義する本株式併合効力発生日をもって、その前日の最終の株主名簿に記載または記録された株主の所有する当社株式について、450,000,000株を1株に併合いたします。
(3) 会社法第234条の規定により1株に満たない端数の処理をすることが見込まれる場合における当該処理の方法、当該処理により株主に交付されることが見込まれる金銭の額および当該額の算定根拠
ア.1株に満たない端数の処理をすることが見込まれる場合における当該処理の方法
本株式併合により、割当予定先以外の株主の皆様が所有する当社株式の数は、1株に満たない端数となる予定です。
本株式併合の結果生じる1株に満たない端数の処理の方法につきましては、その合計数(会社法第235条第1項の規定により、その合計数に1株に満たない端数がある場合には、当該端数は切り捨てられます。)に相当する数の株式を、会社法第235条その他の関係法令の規定に従って売却し、その端数に応じて、その売却によって得られた代金を株主の皆様に交付いたします。当該売却について、当社は、会社法第235条第2項の準用する同法第234条第2項の規定に基づき、裁判所の許可を得て、当該端数の合計数に相当する当社株式を割当予定先に売却し、または会社法第235条第2項の準用する同法第234条第4項の規定に基づき、裁判所の許可を得て、当該端数の合計数に相当する当社株式を当社に売却することを予定しております。
イ.当該処理により株主に交付されることが見込まれる金銭の額および当該額の算定根拠
端数処理により株主の皆様に交付することが見込まれる金銭の額(以下、「本株式併合交付見込金額」)は、株主の皆様が所有する当社株式の数に、本件第三者割当における本新株式の払込金額(50.0円)に対して32.2%のプレミアムを付した金額である66.1円を乗じた金額に設定することを予定しております。
この金額は、本株式併合を目的とする本臨時株主総会の招集に係る取締役会決議日の直前営業日である2018年12月6日の株式会社東京証券取引所における当社株式の終値(以下、「終値」)89円に対しては25.7%のディスカウントとなります。しかしながら、上記「(1) 本株式併合の目的」に記載のとおり、当社の足下の資金繰りおよびフリー・キャッシュ・フローの状況の抜本的な解決のためには大規模な資金注入が必要不可欠であり、かかる規模の資金注入が実現せず、抜本的な構造改善施策を機動的に実行できない場合、当社の業績および財務状態が悪化し、事業の継続が困難となる懸念があり、株価の下落等を通じて既存株主の皆様を更なるリスクにさらすおそれがあります。上記の金額は、そのような状況の下で、複数のスポンサー候補との間で真摯な協議を行い、当社の足下の困窮した資金繰りを解決できる実現可能な支援策を提案した唯一のスポンサー候補であるBPEAファンドとの間の複数回にわたる交渉により、有意な引き上げを実現した上で、最終的に合意されたものであることから、当社が当社の株主の皆様に提供できる最善の条件であり、当社の株主の皆様に対して合理的な株式売却の機会を提供するものであると判断しています。
また、当社は、BPEAファンドとの協議および交渉の結果を踏まえて本新株式の払込金額および本株式併合交付見込金額を決定するに際して、また、本臨時株主総会における株主の皆様の議決権行使のご参考のために、 株式会社赤坂国際会計(以下、「赤坂国際会計」)から2018年12月7日付で、株式価値算定書(以下、「本株式価値算定書」)ならびに本新株式の払込金額および本株式併合交付見込金額が割当予定先を除く当社の株主にとって財務的見地から妥当である旨の意見書(フェアネス・オピニオン)(以下、「フェアネス・オピニオン」)を取得しております。その詳細は、下記「ウ.本件完全子会社化取引の公正性を担保するための措置および利益相反を回避するための措置 ① 当社における独立した第三者算定機関からの算定書およびフェアネス・オピニオンの取得」をご参照下さい。当社は、本件第三者割当における本新株式の払込金額(50円)および本株式併合交付見込金額(66.1円)につきましては、赤坂国際会計から取得した本株式価値算定書およびフェアネス・オピニオンに照らし、妥当であると判断しております。なお、本株式併合交付見込金額66.1円は本新株式の払込金額に30%超のプレミアムを付すものです。
本株式価値算定書において赤坂国際会計が算定した当社株式の株式価値は、下記「ウ.本件完全子会社化取引の公正性を担保するための措置および利益相反を回避するための措置 ① 当社における独立した第三者算定機関からの算定書およびフェアネス・オピニオンの取得」に記載のとおり、採用する算定手法によって相当程度乖離があり、いずれの算定手法による株式価値の範囲にも含まれるような価格が存在しません。そのため、当社は、本新株式の払込金額および本株式併合交付見込金額の決定に際して、本株式価値算定書における各算定結果のいずれを中心に参照すべきかを詳細に検討しました。
①市場株価平均法については、大要、上場株式の市場価格がその期待将来収益の現在価値を表示するものであるという仮定の下、独自のリターン・リスク評価を行うのではなく市場価格を参照するという考え方に基づき、上場株式の株式価値算定において広く用いられている算定手法であることは当社も認識しております。
しかしながら、赤坂国際会計が市場株価平均法による算定結果を検証・補完する方法として使用することが可能であるとして採用した類似会社比較法による算定結果(26円から55円)は、市場株価平均法による算定結果(89円から105円)と相当程度乖離しています。加えて、事業継続を前提とした場合の株式価値算定を行う上で適切な手法であるDCF法による算定結果(33円から71円)は、類似会社比較法による算定結果と近似する一方で、やはり市場株価平均法による算定結果とは相当程度乖離しています。当社は、このような類似会社比較法およびDCF法による各算定結果は、当社株式の株式価値算定においては、上記の市場株価平均法を採用する論理的前提である、上場株式の市場価格がその期待将来収益の現在価値を表示するという仮定が必ずしも当てはまらない可能性が高いことを示すものであると考えています。
このように、当社は、類似会社比較法およびDCF法による各算定結果で検証した結果、市場株価平均法により算定された当社株式の1株当たりの株式価値の範囲(89円から105円)は、当社の現在の状況を当社株式の株式価値に公正に反映した結果として採用することができるかについて疑義があると懸念しており、本件第三者割当の払込金額および本株式併合交付見込金額の決定において採用すべきであるとの判断には至りませんでした。
②類似会社比較法については、一般に公開された情報である同業他社の株価および財務データを使用するため、実証的かつ客観的な価値評価が可能になる算定手法であると考えられるため、その算定結果(26円から55円)を相当程度参考にしました。
③DCF法については、事業継続を前提とした場合の株式価値算定を行う上で適切な手法であると一般に考えられており、とりわけ、上記「(1) 本株式併合の目的」に詳細に記載した当社の財務状況を踏まえ、当社が作成した今後約5年間の事業計画を前提として、当社の事業の継続を前提に独自のリターン・リスク評価を行う算定手法である点で、当社の財務状態を可及的に正確に反映することが可能な適切な算定手法であると考えられます。また、本新株式の払込金額および本株式併合交付見込金額は、上記のとおりBPEAファンドとの協議および交渉を経て決定したところ、BPEAファンドが当社への出資の検討に際して重視したのは、現在の市場株価よりも、当社の実際の財務状態および将来の事業展望であり、当社の事業計画を前提とし、当社の財務状態を可及的に正確に反映することが可能であると考えられるDCF法による算定結果(33円から71円)は、BPEAファンドとの協議および交渉において当社株式の株式価値に関する考え方を相互に突合する上で有用であると考えました。
以上のことから、本新株式の払込金額および本株式併合交付見込金額を決定する上では、本株式価値算定書の類似会社比較法による算定結果(26円から55円)およびDCF法による算定結果(33円から71円)を主に参照し、BPEAファンドとの間の協議および交渉の結果を踏まえ、上記のとおり、本新株式の払込金額を、本株式価値算定書の類似会社比較法による算定結果およびDCF法による算定結果の範囲内である、1株当たり50円に決定しました。かかる払込金額は、直近の当社の市場株価から大幅なディスカウントとなるものの、745億円規模の資本性資金の調達が必要不可欠な状況の下で、複数のスポンサー候補との間で真摯な協議を行い、BPEAファンドとの間で真摯な協議・交渉を経た結果として最終的に合意されたものであることに加え、本株式価値算定書の算定結果の範囲内であることから、妥当な金額であると判断しました。なお、純資産価額法については、事業を継続せずに清算処分をすると仮定した場合の価値として一定の参考にはなり得るものの、当社は事業継続を前提としているため、本新株式の払込金額および本株式併合交付見込金額を決定する上では参照すべきではないと考えております。
以上により、当社は、端数処理により株主の皆様に交付することが見込まれる金銭の額については、相当であると判断しております。
ウ.本件完全子会社化取引の公正性を担保するための措置および利益相反を回避するための措置
① 当社における独立した第三者算定機関からの算定書およびフェアネス・オピニオンの取得
当社は、BPEAファンドとの協議および交渉の結果を踏まえて本新株式の払込金額および本株式併合交付見込金額を決定するに際して、また、本臨時株主総会における株主の皆様の議決権行使のご参考のために、第三者算定機関である赤坂国際会計に対して、当社株式の株式価値算定ならびに本新株式の払込金額および本株式併合交付見込金額が割当予定先を除く当社の株主にとって財務的見地から妥当である旨の意見書(フェアネス・オピニオン)の提出を依頼しました。なお、第三者算定機関である赤坂国際会計は、当社および割当予定先の関連当事者には該当せず、本件完全子会社化取引に関して記載すべき重要な利害関係を有しておりません。
赤坂国際会計は、当社株式の株式価値の算定手法を検討した結果、当社株式が東京証券取引所市場第一部に上場されていることから市場株価平均法を採用するとともに、本件第三者割当による資金調達が実施されない場合には事業継続に重要な影響を及ぼす可能性があるものの市場価格には当該影響が反映されていないと考えられること、本件公表に伴い公表される情報のうち、算定基準日までの市場価格に反映されていない情報の重要性が高い可能性があること等を勘案し、市場株価平均法以外の2つの算定手法による算定結果についても総合的に検討したとのことです。具体的には、①市場株価平均法に加え、②類似会社比較法、③ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法(以下、「DCF法」)、の各算定方法を採用し、当社株式の株式価値の算定を行うとともに、参考情報として純資産価額法を用いて価値の算定を行い、当社は赤坂国際会計から2018年12月7日付で本株式価値算定書を取得しております。
また、当社は、赤坂国際会計からフェアネス・オピニオンを取得しております。
本株式価値算定書によれば、各手法に基づいて算定された当社株式1株当たりの株式価値の範囲は以下のとおりです。
①市場株価平均法: 89円から105円
②類似会社比較法: 26円から55円
③DCF法: 33円から71円
(参考情報)
純資産価額法: △69円から△56円(1株当たり純資産価額)
①市場株価平均法については、本株式価値算定書では、2018年12月6日を算定基準日として、当社株式の東京証券取引所第一部における基準日終値89円、直近1ヶ月間の終値単純平均値93円、直近3ヶ月間の終値単純平均値105円、本基本合意書締結(2018年9月13日)以降の終値単純平均値103円を基に、当社株式の1株当たりの株式価値の範囲は、89円から105円と算定されております。
②類似会社比較法は、一般に公開された情報である同業他社の株価および財務データを使用するため、実証的かつ客観的な価値評価が可能になる算定手法であり、市場株価平均法による算定結果を検証・補完する方法として使用することが可能と考えられています。本株式価値算定書では、当社と類似性があると判断される類似上場会社として、株式会社JVCケンウッド、クラリオン株式会社およびアルパイン株式会社を選定した上で、企業価値に対する償却前営業利益の倍率(EV/EBITDA倍率)を用いて、当社の株式価値を算定し、その1株当たりの株式価値の範囲は、26円から55円と算定されています。
③DCF法は、事業継続を前提とした場合の株式価値算定を行う上で適切な手法の一つであると考えられています。本株式価値算定書では、当社が作成した2019年3月期から2023年3月期までの事業計画に基づく収益予測や投資計画等、合理的と考えられる前提を考慮した上で、当社が2019年3月期以降、将来生み出すと見込まれるフリー・キャッシュ・フローを基に、事業リスクに応じた一定の割引率で現在価値に割り引いて企業価値を評価しております。割引率は、加重平均資本コスト(WACC)である9.4%~10.3%を採用しており、継続価値の算定にあたっては永久成長率法を採用し、永久成長率を-0.25%~0.25%として算定し、当社株式の1株当たりの株式価値の範囲は、33円から71円と算定されています。
なお、赤坂国際会計が、DCF法の算定の前提とした当社の事業計画に基づく財務予測は以下のとおりです。以下の財務予測は本件第三者割当および本株式併合の実施を前提としたものではありませんが、2020年3月期以降のフリー・キャッシュ・フローについては、上記「3.(2) 調達する資金の具体的な使途および支出予定時期」に記載のとおり2019年4月から2年間にわたり構造改善を実施した結果を見込んだ数値です。
(単位:億円)
2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | |
売上高 | 3,500 | 3,682 | 3,932 | 4,145 | 4,263 |
営業利益 | △50 | △59 | 6 | 14 | 164 |
EBITDA | 200 | 322 | 445 | 443 | 420 |
フリー・キャッシュ・フロー | △159 | △136 | 76 | 132 | 120 |
(注) 1.営業利益につき、2020年3月期の△59億円から2021年3月期の6億円に大幅な増加を見込むのは、減価償却費の増加による減少要因があるものの、OEM事業・市販事業の成長領域であるカーソリューション・テレマティックスでの売上増加による粗利の増加、また2020年3月期に実施する構造改善の効果を主に見込むことによります。また、2021年3月期の6億円から2022年3月期の14億円に増加を見込むのは、売上増加による粗利の増加を見込むことによるものですが、販売費用の増加も見込んでいるため8億円の増加となります。そして、2022年3月期の14億円から2023年3月期の164億円に大幅な増加を見込むのは、OEM事業での大型プロジェクトの売上高が減少に転じる見込みであることからソフト資産償却費が減少して減価償却費が減少することを主に見込むことによります。
2.EBITDAにつき、2019年3月期の200億円から2020年3月期の322億円に大幅な増加を見込むのは、営業利益については減少を見込むものの、OEM事業での大型プロジェクトでのソフト資産償却費の増加により減価償却費が増加することを主に見込むことによります。また、2020年3月期の322億円から2021年3月期の445億円に大幅な増加を見込むのは、注1記載の営業利益の増加と、OEM事業での大型プロジェクトでのソフト資産償却費の増加により減価償却費が増加することを主に見込むことによります。
もっとも、以上の財務予測は、上記の期間において、当社の資金繰りに支障が生じないとの仮定の下で作成されたものですが、仮に本件第三者割当が行われない場合には、当社の現預金残高は2020年3月期第2四半期末において80億円を超えるマイナスとなり、事業継続が困難となる懸念があります。そのため、本件第三者割当が行われなければ、現実的には、上記のDCF法の算定となった財務予測を実現することも困難である懸念があります。
また、純資産価額法は、事業継続を前提とした算定結果を提供するものではなく、企業の解散価値を検討する際に客観性の面で相対的に優れた算定結果を提供しうる手法であると考えられています。本株式価値算定書では、当社の2019年3月期第2四半期末時点の純資産価額78,532百万円に対して、事業を継続せずに清算処分することを前提に、事業継続を前提としない場合には、無形固定資産のうち、のれん、ソフトウェアおよびソフトウェア仮勘定については直ちに売却することは不可能と考えられること、棚卸資産、有形固定資産および投資有価証券については、資産の早期売却等に伴い帳簿価額と処分価額が乖離することが想定されることから、帳簿価額からの一定の減額等を考慮し、時価評価損益等(なお、当社が保有するインクリメント・ピー株式会社の株式売却益想定額を33,855百万円と仮定して加算されております。)を考慮した修正後純資産価額を△26,159百万円から△21,230百万円と算定し、当社株式の1株当たりの純資産価額の範囲は、△69円から△56円と算定されています。
② 当社の経営者から一定程度独立した者からの意見の取得
当社は、当社の意思決定の過程の公正性、透明性および客観性を確保すべく、当社の経営者から一定程度独立した者として、当社の取締役である谷関政廣氏および佐藤俊一氏、監査役である錦戸景一氏および若松弘之氏(いずれも当社の独立役員として東京証券取引所に届け出ている社外取締役および社外監査役です。)を選定し、本件完全子会社化取引に関する意見を諮問し、2018年12月7日付で、以下のとおりの意見をいただきました。
①結論
本件第三者割当には必要性および相当性が認められ、また、本件完全子会社化取引は当社の既存株主にとって不利益とは認められない。
②検討
a.資金調達の必要性
当社は、2018年3月期の連結業績において、カーエレクトロニクス事業の売上高減少による営業利益の減少に加えて、為替差損の発生や海外拠点再編に伴う構造改善費用、および持分法による投資損失の計上により31億円の経常損失となり、親会社株主に帰属する当期純損失71億円を計上した。また、営業活動によるキャッシュ・フローは売上債権の減少額が縮小したことなどにより159億円の収入となったものの、投資活動によるキャッシュ・フローはカーメーカーからの大規模受注ビジネスに対応したソフトウェアの開発が続いた影響もあり332億円の支出となり、フリー・キャッシュ・フローが172億円のマイナスとなった。さらに当連結会計年度においても50億円の連結営業損失を見込んでいる中、取引銀行から借り換えの合意が得られていなかったことから、2018年8月6日付「2019年3月期第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」にて公表のとおり、継続企業の前提に重要な疑義が存在するとして、当該第1四半期決算にて公表した当社の第1四半期連結財務諸表の注記には「継続企業の前提に関する注記」を記載する事態となった。当社は、このような状況を解消するため、事業ポートフォリオの見直しによる事業・資産の売却、主要事業における構造改革、および成長事業へのリソース・シフトといった全社的な経営改善施策の検討を進めたが、その過程において、当社に対する出資等を通じた資金提供を含む支援を行えるスポンサーを新たに選定し、かかるスポンサーからの資金提供等により、足下の資金繰り、キャッシュ・フローの正常化、既存借入金の返済資金および今後の成長投資のための資金の確保等を実現することで、当社が抱える事業面における高コスト構造、成長事業領域の育成等の課題、および財務面での課題の早期かつ抜本的な解決を図ることが、当社の安定的な事業継続にとって最善の選択肢であるとの結論に至った。
特に、車を取り巻く技術や製品は目まぐるしく進化を続けており、当社のカーエレクトロニクス事業等を継続して運営していくためには、新しい技術や製品に対応し続ける必要があり、カーメーカー等からの受注を得るためにソフトウェア開発および生産設備の更新、新規導入等の設備投資を経常的に行っていくことで市場・顧客の要請事項を踏まえた機能と仕様を満たす商品の開発と提案が必要不可欠である。上記のとおり、2018年3月期においてはソフトウェア開発の影響により310億円の設備投資を行ったが、2019年3月期および2020年3月期においても、それぞれカーエレクトロニクス事業を継続運営していくために、ソフトウェア開発および生産設備の更新等を目的とした同規模の設備投資・開発費用の支出が見込まれている。しかしながら、2018年3月期のフリー・キャッシュ・フローは172億円のマイナスであり、さらに2019年3月期および2020年3月期においても、投資活動によるキャッシュ・フローおよびフリー・キャッシュ・フローはマイナスが継続する見込みとなっており、大規模な資本注入がなければ、当社の事業継続のために必要不可欠な設備投資・開発費用を捻出することは極めて困難な状況にある。
上記の状況を踏まえて、当社は、安定的な事業継続・中長期的な視野に立った成長の実現可能性を維持しつつ、足下の資金繰り、キャッシュ・フローの悪化等の抜本的な解決を図るために、個別の資産や事業の売却を実施してきた。
しかしながら、上記の目的を達成するためには、個別の資産および事業の譲渡金額に加え、①追加的な運転資金(経常的な設備投資、ソフトウェア開発費用等の事業上必要となる資本的支出を含む。)の調達(120億円)、②既存借入金の返済(330億円)、③早期の収益性の改善のための構造改善の実施(120億円)、④発行済の新株予約権付社債の償還(150億円)、⑤成長事業における設備投資(25.4億円)を行うことが必須であり、そのためには、株式の発行により745億円規模の資本性資金の調達を早期に行うことが必要不可欠といえる。
以上のように、大規模な資金注入がなければ、当社の足下の資金繰りおよびフリー・キャッシュ・フローの状況の抜本的な解決は困難であり、資金面を含めた抜本的な改革が出来なければ、今後も当社の資金繰りの悪化は避けがたい状況にある。そのため、大規模な資本性資金の調達を早期に実現できない場合には、当社の足下の資金繰りは困窮し、株式価値が著しく毀損する事態となり得る状況にあるといえる。
以上より、当社における資金調達の必要性は認められると思料する。
b.手段の相当性
上記のとおり、当社の資金調達の必要性を踏まえれば、当社が希望する時間軸での必要金額の調達が確実に見込まれることが最も重要な考慮要素である。
この点、例えば、公募増資による普通株式の発行については、2018年11月7日付「2019年3月期第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」にて公表のとおり、当社の第2四半期連結財務諸表の注記には「継続企業の前提に関する注記」を記載しており、証券会社の引受けにより行われる公募増資の実施はそもそも困難である。また、ライツオファリング・株主割当についても、株価動向等を踏まえた割当株主の判断により、新株予約権が必ずしも全て行使されるとは限らない又は株主割当に全て応じていただけるとは限らないため、最終的な資金調達金額が不確実であり、確実性をもって必要金額を調達する必要がある当社にとっては現時点における適切な選択肢ではない。
これに対して、第三者割当増資は、必要金額の調達の確実性が最も高く、適切なスポンサーが選定できれば、当社にとって適切な選択肢となり得る。この点、割当予定先は、フィナンシャル・アドバイザーである野村證券を通じたスポンサー選定手続の結果として、当社にとって最も望ましいと考えられる条件を提示した先であり、また、その合意内容は、当社とBPEAファンドとの間で最適な出資規模・形態について協議および交渉を行う一方で、当社にとってより有利な条件での資金調達の可能性を求めて、その他の複数のスポンサー候補との間でも出資等を通じた資金提供を含む支援の可能性についての協議を続けた結果として最終的に決定されたものであり、割当予定先に対する第三者割当の方法による本新株式の発行により、総額770億円の出資を受けることが、現時点で当社にとっての最良の選択肢であるといえる。
なお、金融機関からの追加借入による資金調達の可能性も検討したが、「継続企業の前提に関する注記」を記載するに至った経緯を踏まえれば、スポンサーからの資金提供等により当社が抱える事業・財務面での課題の早期かつ抜本的な解決を図ることを最優先すべきであり、現時点では、金融機関からの追加借入による資金調達は当社にとって現実的な選択肢ではない。
以上のとおり、本件第三者割当の手段の相当性は認められると思料する。
c.発行条件の相当性
(払込金額について)
本新株式の払込金額(50円)は、本件第三者割当に係る取締役会決議日(以下、「本取締役会決議日」)の直前営業日である2018年12月6日の終値89円に対しては、43.8%のディスカウント、本取締役会決議日の直前1ヶ月間(2018年11月7日から2018年12月6日まで)の終値の平均値である93円(円未満四捨五入)に対しては46.2%のディスカウント、同直前3ヶ月間(2018年9月7日から2018年12月6日まで)の終値の平均値である105円(円未満四捨五入)に対しては52.4%のディスカウント、同直前6ヶ月間(2018年6月7日から2018年12月6日まで)の終値の平均値である125円(円未満四捨五入)に対しては60.0%のディスカウントとなる。
もっとも、当社は、BPEAファンドとの協議および交渉の結果を踏まえて本新株式の払込金額および本株式併合交付見込金額を決定するに際して、本件第三者割当に関して記載すべき重要な利害関係を有していない第三者算定機関である赤坂国際会計から、本株式価値算定書を取得している。この点、本株式価値算定書において赤坂国際会計が算定した当社株式の株式価値は、採用する算定手法によって相当程度乖離がある。具体的には、赤坂国際会計が市場株価平均法による算定結果を検証・補完する方法として使用することが可能であるとして採用した類似会社比較法による算定結果(26円から55円)は、市場株価平均法による算定結果(89円から105円)と相当程度乖離している。加えて、事業継続を前提とした場合の株式価値算定を行う上で適切な手法であるDCF法による算定結果(33円から71円)は、類似会社比較法による算定結果と近似する一方で、やはり市場株価平均法による算定結果とは相当程度乖離している。このような類似会社比較法およびDCF法による各算定結果は、当社株式の株式価値算定においては、上記の市場株価平均法を採用する論理的前提である、上場株式の市場価格がその期待将来収益の現在価値を表示するという仮定が必ずしも当てはまらない可能性が高いことを示すものであると考えられる。そこで、本新株式の払込金額を決定する上では、本株式価値算定書の類似会社比較法による算定結果(26円から55円)およびDCF法による算定結果(33円から71円)を主に参照するのが合理的であるところ、本新株式の払込金額は、本株式価値算定書の類似会社比較法による算定結果およびDCF法による算定結果の範囲内にある。また、本新株式の払込金額は、複数のスポンサー候補との間の協議の結果も踏まえて、割当予定先との間で真摯な協議・交渉を経た結果として、最終的に合意されたものである。
加えて、当社は、赤坂国際会計から、フェアネス・オピニオンを取得している。
以上より、本新株式の払込金額には合理性が認められると思料する。
(希薄化について)
本件第三者割当により割当予定先に対して割り当てる本新株式は合計で1,540,000,000株(議決権数15,400,000個)であり、2018年9月30日現在の当社の発行済株式総数383,340,936株(2018年9月30日現在の総議決権数3,781,611個)に対する割合は401.7%(議決権における割合407.2%)となる。
このように本件第三者割当により大規模な希薄化が生じることが見込まれる。他方、①当社には多額の資金調達の必要性が認められるところ、本件第三者割当の発行規模は、大規模ではあるものの、あくまで当社として必要不可欠と考える規模の資金調達の実現のために必要な規模に設定されていること、②割当予定先に対する本件第三者割当は、他の資金調達方法との比較においても、最も適切な資金調達手法と考えられること、③本新株式の払込金額についても、当社の置かれた厳しい財務状況ならびに複数のスポンサー候補との間の支援の可能性についての協議およびBPEAファンドとの協議・交渉の結果に鑑み、当社にとって現時点で最善の条件であり、本株式価値算定書で示された当社株式の株式価値の算定結果に照らしても妥当性が認められると判断できることといった事情を踏まえれば、本件第三者割当によって生じる大規模な希薄化を考慮してもなお、本件第三者割当を実行することには合理性が認められる。
以上より、本件第三者割当の発行条件には相当性が認められる。
d.割当予定先による当社の完全子会社化および当社株式の上場廃止
本件第三者割当の実行後には、割当予定先による当社の完全子会社化および当社株式の上場廃止が予定されている。具体的には、本株式併合の効力発生に先立ち当社株式の上場は廃止され、本株式併合に伴う端数処理として、既存株主には、その所有する当社株式と引き換えに、所有株式数に本株式併合交付見込金額66.1円を乗じた金額が交付されることになる。
この点、上記のとおり、当社には745億円規模の資本性資金の調達の必要性が認められるところ、かかる調達資金を用いた抜本的な構造改善を行う上での様々な施策の実行のためには、短期的な利益確保を重視する戦略にとらわれず、市場環境の変化に柔軟に対応し、機動的な経営判断を行っていく必要があり、当社の人的リソースを結集し、当社の再生に取り組むことは不可欠であると考えられる。他方で、かかる抜本的な構造改善施策の機動的な実行に際しては、コストや投資が先行し、その効果が実現するまでには時間を要することが想定される。加えて、短期的には収益およびキャッシュ・フローの悪化も懸念されることから、既存株主における経済的悪影響を避けることは困難である。さらに、上記の規模の資金注入が実現せず、抜本的な構造改善施策を機動的に実行できない場合、当社の業績および財務状態が悪化し、事業の継続が困難となる懸念があり、株価の下落等を通じて既存株主を更なるリスクにさらすおそれがある。そのため、当社は、上場を維持したままで当社グループの事業継続および中長期的な成長の実現のために必要な資金を調達し、大規模な経営改善施策を短期間に行うことは難しいと考えられ、当社の既存株主に対して合理的な対価が支払われる限り、当社株式の上場を廃止した上で事業改革を行うという選択は、当社の既存株主のリスク回避の観点からも合理性が認められるものと考えられる。
そして、本株式併合交付見込金額(66.1円)は、本取締役会決議日の直前営業日である2018年12月6日の終値89円に対しては25.7%のディスカウントとなるものの、本件第三者割当における本新株式の払込金額(50.0円)に対して32.2%のプレミアムを付した金額であり、本件第三者割当における本新株式の払込金額(50円)には、上記のとおり合理性が認められる。また、66.1円という金額は、当社の置かれた極めて困難な状況の下で、複数のスポンサー候補との間で真摯な協議を行い、当社の足下の困窮した資金繰りを解決できる実現可能な支援策を提案した唯一のスポンサー候補であるBPEAファンドとの間の複数回にわたる交渉により、有意な引き上げを実現した上で、最終的に合意されたものである。加えて、当社は、赤坂国際会計から、フェアネス・オピニオンを取得している。
以上のとおり、本件第三者割当の実行後における割当予定先による当社の完全子会社化および当社株式の上場廃止が行われる点については当社の既存株主のリスク回避の観点からも合理性が認められ、また、本株式併合交付見込金額(66.1円)についても、財務的な見地からの合理性が認められるだけでなく、当社の既存株主に提供できる最善の条件であることを踏まえれば、本件完全子会社化取引は当社の既存株主にとって不利益とは認められないと考える。
③ 当社における独立した法律事務所からの助言
当社は、リーガル・アドバイザーとして、長島・大野・常松法律事務所を選定し、同事務所より、本件第三者割当を含む本件完全子会社化取引の諸手続を含む取締役会の意思決定の方法・過程等について、法的助言を受けております。なお、長島・大野・常松法律事務所は、当社および割当予定先から独立しており、当社および割当予定先との間に重要な利害関係を有しません。
④ 当社における取締役全員の承認および監査役全員の異議がない旨の意見
2018年12月7日開催の取締役会においては、取締役全員が出席し、その全会一致により上記決議を行っております。なお、当社取締役には、本件第三者割当を含む本件完全子会社化取引に関して特別の利害関係を有する者はおりません。また、当該取締役会には、監査役3名全員(社外監査役2名を含みます。)が出席し、いずれも、上記決議に異議はない旨の意見を述べております。
(4) 本株式併合がその効力を生ずる日
本件第三者割当は、金融商品取引法に基づく届出の効力発生および本件第三者割当の実行について必要とされる各国の競争当局の企業結合に関する届出許可等、各国の関係当局の許認可等が得られることならびに本臨時株主総会における付議議案の承認(また、本件第三者割当のうち金銭の払込みの方法による部分については、上記に加えて、本件第三者割当の実施に必要となる当社の発行可能株式総数の増加に係る定款の一部変更の効力発生)を条件としています。
本株式併合は、本件完全子会社化取引の一部として、本件第三者割当に係る本新株式が全て発行されることを条件に実施されるものであるため、2018年12月7日開催の当社取締役会では、本株式併合に関して、以下のとおり、本件第三者割当に係る本新株式が全て発行される時点に応じて、複数の効力発生日(以下、「本株式併合効力発生日」)を定める旨の議案を本臨時株主総会に付議することを決議しております。
① 2019年3月10日までに本件第三者割当に係る本新株式が全て発行されることを条件として、本株式併合効力発生日を2019年3月31日とする。
② 2019年3月11日以降、2019年4月10日までに本件第三者割当に係る本新株式が全て発行されることを条件として、本株式併合効力発生日を2019年4月30日とする。
③ 2019年4月11日以降、2019年5月10日までに本件第三者割当に係る本新株式が全て発行されることを条件として、本株式併合効力発生日を2019年5月31日とする。
④ 2019年5月11日以降、2019年6月10日までに本件第三者割当に係る本新株式が全て発行されることを条件として、本株式併合効力発生日を2019年6月30日とする。
⑤ 2019年6月11日以降、2019年6月30日までに本件第三者割当に係る本新株式が全て発行されることを条件として、本株式併合効力発生日を2019年7月31日とする。
以 上