有価証券報告書-第97期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/25 13:52
【資料】
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【項目】
155項目

研究開発活動

当社は、企業理念「可能性の追求を通して総合的な高度技術により、情報社会の発展に寄与する」に基づき、エレクトロニクス業界の技術動向に対応し、研究開発活動を進めております。
2018年10月に事業戦略室と(旧)開発センターを統合し、将来を見据えた新事業への取組みの強化を図るべく(新)開発センターを編成しました。その開発センターでは先進的な開発を行い、各事業部門では担当分野の技術・商品開発を推進し、開発センターと各事業部が連携して、コアテクノロジーの深耕と新耕(裾野拡大)に注力しております。また、生産技術センターでは国内外生産拠点での組立自動化を推進すると共に、業界最先端を目指して、超精密金型・高速プレス・ハイサイクル成形・評価技術の向上を追求し、技術管理部ではシミュレーション技術の向上や3Dプリンター活用を進めております。
開発体制は、国内だけでなく、アメリカ・メキシコ・中国・フィリピン・シンガポールとグローバルに拠点展開を行い、且つ、各拠点間の連携を図っております。
当連結会計年度における主な研究開発成果は次のとおりです。
接続部品では、Robust性が高く操作性に優れ、ロボットでのケーブル自動挿入を可能としたOneアクションFFC/FPCコネクタを開発しました。また、小型低背のRFB2Bコネクタを開発しましたが、このコネクタは非常に良好な高周波特性を持ち、次世代通信規格5GNRの高速通信を実現するためのMassive MIMO技術をサポートします。特に注力している車載用コネクタでは、自動運転に向けて高速対応が必要なセンシング用カメラコネクタや5Gbps伝送対応インタフェースコネクタ、イーサネットコネクタの開発に注力しました。更に、高密度実装が可能な4軸同軸コネクタも開発し、9GHz伝送を達成しました。また、駆動系向けに多極コネクタを開発し、車載分野での知名度向上に貢献しました。
スイッチでは、車載向け防水多回路スイッチを開発、また、振動・衝撃が連続する環境下でも確実な操作が可能な高荷重ロングストロークのプッシュスイッチを商品化しました。
リモコンでは、セットトップボックス向けに最新のAndroid OSに対応した音声伝送リモコンを開発しました。家電住設向けには、静電タイプのタッチスイッチを使用したリモコンを開発し、デザイン性を向上させています。
ユニットでは、車室内センシング用途の近赤外線カメラモジュールの商品化、及び、新たな構造により小型化・薄型化を実現したセンシング用カメラモジュールを開発しました。また、開発センターが開発したSigfoxモジュールを活用し、業務用エアコンの遠隔監視など様々な用途に向けたユニットの開発や提案を行いました。ユニット製品の付加価値向上への取り組みとしては、防水技術(レーザー溶着、超音波溶着、熱線溶着)の技術確立を推進し、多種多様な防水用途への対応を図りました。
タッチパネルでは、屋外での見栄えを改善するためLCDとのダイレクトボンディングによるオンセルタイプの静電タッチパネルモジュールを開発し、出荷を開始しましたが、反射防止フィルム等を追加することで更なる低反射化が可能であり、用途の拡大が期待されています。
新技術では、インテリジェント電源を開発し、通信との融合を図れるビジネスモデルを構築しております。また、総務省より3期連続でIoT基盤技術開発を委託されていますが、これに続き、内閣府PRISM(官民研究開発投資拡大プログラム)の農業分野でのIoT運用管理技術開発にも採択されました。
IoT事業への取り組みでは、LPWAにおいてSigfoxとLoRaモジュールを中心として開発を推進しております。これらをベースに技術評価が行いやすい環境を構築するために評価ユニットの充実も図っております。また、国内大学との共同開発や海外企業との新規センサー開発にも取組んでおります。その他、オープンイノベーション活用による特定小電力無線や生体センサーに注力したビジネスの強化を図っていますが、例えば、スマートビルディングに特化したドイツのメッシュネットワーク通信規格「IP500」対応品開発を進めています。また、イスラエル等のセンシング技術を活用した生体センサー、見守りやヘルスケア向け製品開発にも注力しています。
生産技術面では、セル生産が主体だったリモコン生産において、オリジナルの汎用搬送システムを導入し、検査工程を完全自動化しました。更に、組立工程では指先動作をロボットに置き換える組立設備を開発し、習熟に頼らない組立作業の環境作りを推進しました。車載用コネクタ生産工程では、同軸ケーブル製品において、電線の端末加工から組立検査までの全工程を1台の設備で完結できる自動機を開発しました。
金型製作部門では、金型部品の表面を特殊加工する設備を導入し、成形品の品質と金型の稼働率を向上させました。製造では、各工程の来歴や検査結果を、製品個々に紐付けるロットトレースシステムを開発し、海外工場を含めた製造ラインへの導入展開を推進しました。
更に、フロントローディング型設計開発システムを推進し、設計品質の向上と開発リードタイムの短縮を図ると共に、強度解析・電磁界解析・高周波/高速伝送解析・温度特性解析・樹脂流動解析・プレス成形解析などの様々なシミュレーション技術の向上、解析スピードアップに努めています。
なお、当連結会計年度の研究開発費は2,982百万円です。