有価証券報告書-第76期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/28 15:03
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【項目】
63項目

研究開発活動

エプソンは、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」を源泉とする「マイクロピエゾ」「マイクロディスプレイ」「センシング」「ロボティクス」のコア技術を徹底的に極め、これらをあらゆるお客様に提供できるように共通化(プラットフォーム化)し、お客様の期待を超える価値ある製品・サービスを創り出すことを目指して研究開発活動を行っています。
この基本方針のもと、将来に向けたコア技術・デバイスの開発やものづくり基盤の強化に加え、新規事業創出や事業強化などのための技術基盤の構築のほか、各事業における製品の競争力向上などに本社開発部門および事業部開発部門が連携のうえ取り組んでいます。
当連結会計年度の研究開発費総額は503億円であり、各セグメントの内訳は、プリンティングソリューションズ事業が180億円、ビジュアルコミュニケーション事業が100億円、ウエアラブル・産業プロダクツ事業が71億円、その他および全社が150億円です。
各セグメントの主な開発成果は、次のとおりです。
(プリンティングソリューションズ事業セグメント)
プリンター事業においては、省スペースと大容量インクを両立したA4対応のビジネスインクジェット複合機・プリンターを発売しました。本製品は、インクカートリッジより大容量化が可能なインクパックシステムを搭載し、インクパックをプリンター下部に内蔵することで、省スペースと大容量インクを両立しました。また、ファーストプリントは、エプソンのビジネスインクジェットプリンターで最速(※1)のカラー5.3秒(※2)、モノクロ4.8秒(※2)を実現しました。さらに、用紙対応の幅も広がり、さまざまな業務に適した用紙対応力を備えているとともに、インクジェットならではのシンプルな印刷プロセス・構造に加え、インクを紙に吹き付ける非接触印刷で印刷時に熱を使わないため、環境性能に優れています。
このほか、日本国内市場において、本体に大容量インクタンク(エコタンク)を搭載したインクジェットプリンターの新製品として、コンパクトサイズを実現したA4対応複合機、大容量インクタンク搭載モデル初のA3対応(※3)複合機、ビジネス向けのA3ノビ対応(※4)複合機を発売しました。本製品は、プリント機会の多いお客様のインク交換の手間を軽減し、低印刷コストで文書も写真も気兼ねなく印刷できる大容量インクタンクモデルの新製品であり、「くっきりブラック」の顔料インクを全機種で搭載しているため、文字をくっきりときれいに印刷することができるとともに、「PrecisionCoreプリントヘッド」搭載のモデルでは、普通紙で600dpiの高画質印刷を実現し、細かな文字や設計図などの精細な線の描写も美しく再現します。
プロフェッショナルプリンティング事業においては、デザイン・プルーフ工程や高画質ポスター作成に適した大判インクジェットプリンターの新製品を発売しました。本製品は、デザインから出力まで一貫した色再現が可能なため、色校正の回数を削減し工程短縮化を実現することができ、印刷業務でのデザインからプルーフまでのワークフローの効率化に貢献します。
また、昇華転写プリンターの新製品として、「PrecisionCoreTFP プリントヘッド」を2基搭載したハイエンドモデルを発売しました。本製品は、エプソンが長年のインクジェットプリンターの写真画像技術で培ってきた独自技術の「Epson Precision Dot」とエプソン純正ソフトウェアRIP「Epson Edge Print」を合わせることで、基本性能と使い勝手をさらに向上しました。
このほか、お客様のご要望を反映し生産性とメンテナンス性を向上させたガーメントプリンターの新製品を発売しました。本製品は、新たに布シートとバレン(※5)を使用したセット方法により、Tシャツの浮き上がり抑制やセット時間を短縮し、また、カラーとホワイトインクをダブルで印刷する「ダブルストライク印刷」機能により、高濃度・高速印刷を両立しました。さらに、自動インク循環システムに新たにフィルターを設置したことに加え、クリーニングカートリッジの追加により、吸引キャップ清掃を自動化するなど、メンテナンス性を高め、ダウンタイムを軽減して安定稼働を実現しました。
※1 2018年1月16日時点、エプソンのビジネスインクジェトプリンターラインアップにおいて。
※2 1枚目の印刷時間算出条件についての詳細は、エプソンのホームページをご覧ください。
※3 スキャナーはA4対応。
※4 スキャナーはA3対応。
※5 布シート上にセットしたTシャツを平らにし、浮き上がりを抑制します。
(ビジュアルコミュニケーション事業セグメント)
ビジネス向け3LCD方式のプロジェクターでは、レーザー光源搭載モデルのラインアップ強化として、大会議室や大ホールなどの広い空間での使用に適した明るい常設モデル、また、会議室や教室だけでなく商業施設や娯楽施設などでのデジタルサイネージや空間演出用途にも利用できる超短焦点壁掛け対応モデルを発売しました。高光束(15,000lm(ルーメン))の常設モデルは、小型化と高効率化を実現し、エプソンの従来機のランプ光源(※6)と比べて、明るさは約50%向上し、体積は約30%減の小型軽量化を実現しました。超短焦点壁掛け対応モデルは、全機種4,000lmで当該モデルにおいてエプソンとして初めてレーザー光源を搭載しました。本製品は、部屋が明るいままでも映像をくっきり鮮やかに投写でき、WUXGA(1920×1200)と高解像度のため、高精細な図面や項目の多い表などを広範囲で投写することができます。さらに、70インチでの投写の場合は投写距離およそ41cmと、ほぼ真上から投写することが可能なため、投写画面の近くに人が入っても影ができにくく、眩しく感じることもありません。
このほか、レーザー光源搭載プロジェクターの新製品として、空間演出市場に向けたライティングモデルを発表しました。本製品は、エプソンが初めて提供する映像投写はもちろんスポットライトとしても活用できるプロジェクターであり、空間になじみやすい円筒型の形状で、テーブルや展示台・商品などスクリーン以外への投写が可能です。また、投写する映像を円や窓の形にするなどのアレンジが簡単にでき、優れた設置性により、オフィス、店舗、商業施設、レストランなど、さまざまな場所で映像による新しい空間演出としての利用することが可能です。
※6 「EB-Z10005U」「EB-Z10000U」との比較において。
(ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメント)
ウエアラブル機器事業においては、最先端技術でアナログウオッチを極めることを目指すブランド「TRUME」(トゥルーム)を新たに立ち上げ、各種センシングデータをアナログ針で表示する独創のアナログウオッチを発売しました。本製品は、ウオッチ本体に搭載されたGPSセンサー、気圧・高度センサー、方位センサーなどを稼働させながら、さらに、エクスパンデッドセンサーとの通信をしてもなお、ライトチャージ(光発電)によって駆動し続けます。
ロボティクスソリューションズ事業においては、「見て、感じて、考えて、働く」を製品コンセプトとする自律型双腕ロボットを製品化しました。本製品は、一般的な産業用ロボットのように装置に組み込み、固定して作業を行うのではなく、必要な場所に機体を移動させ単独で人に代わって組み立てや搬送などの作業を行えるものであり、これまで困難だった生産の自動化を可能とします。また、製造現場の幅広いニーズに応える産業用6軸ロボット(垂直多関節型ロボット)、スカラロボット(水平多関節型ロボット)を開発しました。これらの製品は、独自開発の折りたたみ式アームやロボット本体へのコントローラー内蔵などにより、工場の省スペース化および生産性向上に貢献します。
マイクロデバイス事業においては、温度補償水晶発振器(DTCXO)(※7)を内蔵した、車載向けおよび産業用途向けのリアルタイムクロックモジュール(※8)を開発しました。リアルタイムクロックモジュールは、一般的に低消費電力化と高精度化がトレードオフの関係にありますが、本製品は、小型で高精度な音叉型水晶振動子の製造技術およびその振動子を低電力で駆動させる新設計のIC回路設計技術により、消費電流の削減と動作温度範囲の拡大を実現しました。
※7 「Digital Temperature Compensated X'tal(crystal) Oscillator」の略で、水晶振動子の温度に対する周波数の変化を補正する機能を持った水晶発振器・発振回路。
※8 時計・カレンダー機能などを持ったリアルタイムクロックICと32.768kHz水晶振動子を一つのパッケージに内蔵した製品。