有価証券報告書-第150期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

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2015/06/19 15:30
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59項目

業績等の概要

本有価証券報告書に記載の数値は国際会計基準(IFRS)ベースで表示しております。前連結会計年度の数値は、前期に開示した日本基準の数値をIFRSに組替えて表示しております。
(1)業績
当事業年度における経済環境は、米国では企業業績の回復や個人消費の増加、雇用環境の改善等で堅調に推移しましたが、欧州や中国では緩やかな回復に留まりました。国内では、消費税増税前の駆け込み需要の反動で個人消費が減速したものの企業収益の改善や設備投資の拡大などから全体として回復基調で推移しました。
このような経済環境のもと、日東電工グループは、当事業年度を「翔(か)ける年」と位置づけ、変化する環境に素早く対応するための構造改革と、新たな事業を創出し事業構造を強化させる成長戦略の両輪で挑みました。主力のエレクトロニクス業界ではスマートフォン市場の拡大に対し、情報機能材料の光学フィルム新製品による新たな価値提供で貢献しました。自動車材料では「三新活動(新用途開拓、新製品開発、新需要創造の三つの「新」を掲げたマーケティング活動)」と呼ばれる固有の活動が日本のみならず、グローバルに成果を上げました。また、今後も持続的な成長を図るため日本、アメリカ、シンガポール、スイスに次ぐR&D施設を2014年12月に中国青島市に設立しました。世界5極にまたがるR&D体制を確立し、各エリアの特徴を活かしながら新規テーマ創出を加速してまいります。なお、分子標的DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)技術を用いた肝硬変治療薬では2014年12月から米国にて患者様に治験を開始し、事業化に向けて着実に進展しています。
以上の結果、売上収益は前年度と比較し10.1%増(以下の比較はこれに同じ)の825,243百万円に、営業利益は47.2%増の106,734百万円となりました。税引前当期利益は50.0%増の105,947百万円、当期利益は49.5%増の78,028百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は50.1%増の77,876百万円となりました。
セグメントの業績概況
① インダストリアルテープ
自動車業界向けは、グローバルな三新活動の成果により生産台数の増加を上回る成長を継続しました。中国向け自動車ランプの内圧調整部材、欧州向け塗膜保護フィルム等が貢献しました。また、愛知県豊橋事業所内のATC(Automotive Technical Center)をリニューアルし、材料と評価技術の融合により自動車の軽量化やエレクトロニクス化に対応する総合的な提案力の強化を図りました。エレクトロニクス業界向けは、スマートフォンのパネルモジュール用両面粘着テープや防水・通音機能材料等が好調に推移しました。工業用途全般に使用される汎用性の高い両面粘着テープは、欧州の市況悪化があったものの、日本を含む東アジアからの受注で補いました。住宅・建材やエレクトロニクス業界向けの保護材料、プロセス材料、耐熱フッ素樹脂製品等は、堅調に推移しました。
以上の結果、売上収益は316,608百万円(7.7%増)、営業利益は20,387百万円(14.1%増)となりました。
② オプトロニクス
情報機能材料では、スマートフォンやタブレット型PCにおける新製品の投入や、新製品でのパネルサイズ大型化、さらに販売好調による増産効果も加わり、当該製品群向けの光学フィルムが好調に推移しました。テレビ用光学フィルムもサッカーワールドカップによるイベント効果と、4Kテレビ立ち上げに伴うパネルサイズ大型化により堅調に推移しました。一方、タッチパネル用透明導電性フィルムは、中国系顧客では堅調に推移しましたが、他大手顧客の生産が伸びず、全体では低調でした。プリント回路は、年間を通じてスマートフォン用ディスプレイ向けに採用機種数などを拡大したことや、高容量HDDの市場拡大に伴う搭載個数の増加により好調に推移しました。プロセス材料においてもスマートフォンの市場拡大により関連する半導体市場が活況を呈し、半導体製造の後工程で使用されるテープが好調に推移しました。
以上の結果、売上収益は509,285百万円(12.2%増)、営業利益は84,455百万円(54.3%増)となりました。
③ その他(メディカルおよびメンブレン)
メディカル(医療関連材料)は、国内の経皮吸収型テープ製剤における薬価改定と後発医薬品の使用促進政策による収益力低下を、米国の核酸医薬グループ会社での受注拡大により挽回を図りましたが、全体では低調な推移となりました。メンブレン(高分子分離膜)は、中国や南アジア等のボイラー用水や排水回収の交換案件を安定して受注したことに加え、半導体や液晶パネル用超純水プロジェクト案件において、付加価値の高い案件を受注したことで好調に推移しました。
以上の結果、売上収益は40,829百万円(8.2%増)、営業利益は2,193百万円(16.3%減)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は214,559百万円となり、前連結会計年度末より11,113百万円増加しました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、増加した資金は119,481百万円(前連結会計年度は78,444百万円の増加)となりました。
これは主に、税引前当期利益105,947百万円および減価償却費及び償却費45,662百万円による増加、法人税等の支払額又は還付額17,495百万円による減少の結果であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、減少した資金は53,857百万円(前連結会計年度は15,893百万円の減少)となりました。
これは主に、有形固定資産及び無形資産の取得による支出53,329百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、減少した資金は68,966百万円(前連結会計年度は18,131百万円の減少)となりました。
これは主に、社債の償還による支出50,000百万円、配当金の支払額17,328百万円によるものであります。
(3)並行開示情報
連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。)に従い、日本基準に基づき作成した要約連結財務諸表は、以下の通りです。
なお、当連結会計年度の要約連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けておりません。
① 要約連結貸借対照表
(単位:百万円)

前連結会計年度
(2014年3月31日)
当連結会計年度
(2015年3月31日)
資産の部
流動資産484,468531,445
固定資産
有形固定資産247,835268,601
無形固定資産18,34714,238
投資その他の資産30,70138,903
固定資産合計296,883321,744
資産合計781,352853,189
負債の部
流動負債212,441194,624
固定負債41,61141,127
負債合計254,052235,752
純資産の部
株主資本523,033578,099
その他の包括利益累計額35834,817
新株予約権750759
少数株主持分3,1573,760
純資産合計527,299617,437
負債純資産合計781,352853,189

② 要約連結損益計算書及び要約連結包括利益計算書
要約連結損益計算書
(単位:百万円)

前連結会計年度
(自 2013年4月1日
至 2014年3月31日)
当連結会計年度
(自 2014年4月1日
至 2015年3月31日)
売上高749,835825,522
売上原価539,051580,685
売上総利益210,784244,837
販売費及び一般管理費138,529145,845
営業利益72,25498,991
営業外収益6,7268,925
営業外費用7,3223,203
経常利益71,658104,713
特別利益10663
特別損失2,1237,538
税金等調整前当期純利益69,64197,237
法人税等合計18,33525,062
少数株主損益調整前当期純利益51,30672,175
少数株主利益288152
当期純利益51,01872,023

要約連結包括利益計算書
(単位:百万円)

前連結会計年度
(自 2013年4月1日
至 2014年3月31日)
当連結会計年度
(自 2014年4月1日
至 2015年3月31日)
少数株主損益調整前当期純利益51,30672,175
その他の包括利益合計21,10834,592
包括利益72,415106,767
(内訳)
親会社株主に係る包括利益71,858106,312
少数株主に係る包括利益556454

③ 要約連結株主資本等変動計算書
前連結会計年度(自 2013年4月1日 至 2014年3月31日)
(単位:百万円)

株主資本その他の包括利益累計額新株予約権少数株主持分純資産合計
当期首残高487,850△20,4817732,152470,294
当期変動額合計35,18220,840△221,00457,005
当期末残高523,0333587503,157527,299

当連結会計年度(自 2014年4月1日 至 2015年3月31日)
(単位:百万円)

株主資本その他の包括利益累計額新株予約権少数株主持分純資産合計
当期首残高523,0333587503,157527,299
当期変動額合計55,06634,459860290,137
当期末残高578,09934,8177593,760617,437

④ 要約連結キャッシュ・フロー計算書
(単位:百万円)

前連結会計年度
(自 2013年4月1日
至 2014年3月31日)
当連結会計年度
(自 2014年4月1日
至 2015年3月31日)
営業活動によるキャッシュ・フロー78,286119,261
投資活動によるキャッシュ・フロー△15,735△53,637
財務活動によるキャッシュ・フロー△18,131△68,966
現金及び現金同等物に係る換算差額6,14314,456
現金及び現金同等物の増減額(△は減少)50,56211,113
現金及び現金同等物の期首残高152,275203,446
連結範囲変更による現金及び現金同等物の増減額608-
現金及び現金同等物の期末残高203,446214,559

⑤ 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更
前連結会計年度(自 2013年4月1日 至 2014年3月31日)
(収益認識方法の変更)
当社及び一部の連結子会社における収益認識の方法は、従来、主に出荷基準によっておりましたが、当連結会計年度より、顧客への納品時点での認識に変更いたしました。この変更は、新たな業務システムの導入を契機として社内体制を見直した結果、納品時点で収益を認識する環境が整ったものと判断し、収益認識時点をより適切にするために行ったものであります。
当該会計方針の変更は遡及適用され、前連結会計年度については、遡及適用後の連結財務諸表となっております。
なお、これによる前連結会計年度の損益及びセグメント情報に与える影響は軽微であります。
(退職給付に関する会計基準等の適用)
「退職給付に関する会計基準」(企業会計基準第26号 平成24年5月17日)及び「退職給付に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第25号 平成24年5月17日)が2013年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用できることになったことに伴い、当連結会計年度よりこれらの会計基準等を適用し、退職給付債務から年金資産の額を控除した額を退職給付に係る負債として計上する方法に変更し、未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用を退職給付に係る負債に計上いたしました。また、退職給付見込額の期間帰属方法について給付算定式基準を適用し、割引率の算定方法を変更しております。
退職給付会計基準等の適用については、退職給付会計基準第37項に定める経過的な取り扱いに従って、当連結会計年度の期首において、退職給付債務から年金資産の額を控除した額を退職給付に係る負債として計上したことに伴う影響額を、その他の包括利益累計額に加減しております。また、退職給付債務及び勤務費用の計算方法の変更に伴う影響額を利益剰余金に加減しております。
この結果、当連結会計年度の期首のその他の包括利益累計額が18,462百万円、利益剰余金が2,348百万円それぞれ減少しておりますが、当連結会計年度の損益、セグメント情報及び1株当たり情報に与える影響は軽微であります。
(会計上の見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更及び会計上の見積りの変更)
(有形固定資産の減価償却方法並びに耐用年数の変更)
当社及び一部の連結子会社は、当連結会計年度より有形固定資産の減価償却方法を定率法から定額法に変更いたしました。また、あわせて、当連結会計年度より一部の有形固定資産の耐用年数を変更いたしました。
この変更は、2013年度から開始する新中期経営計画により、当社グループの事業のグローバル化が進展し、海外生産比率が今後高まっていくことが想定されること、及びこれを契機として当社グループ内の会計処理の統一を図る観点から、当社グループの有形固定資産の使用実態を検討した結果、近年、主要な設備の稼働状況が安定していることから、定額法及び変更後の耐用年数を採用する方が会社の経済的実態をより適切に反映させることができると判断して行ったものであります。
これにより、当連結会計年度の営業利益、経常利益および税金等調整前当期純利益はそれぞれ3,608百万円増加しております。
当連結会計年度(自 2014年4月1日 至 2015年3月31日)
(企業結合に関する会計基準等の早期適用)
「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号 平成25年9月13日。以下「企業結合会計基準」という。)、「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号 平成25年9月13日。以下「連結会計基準」という。)、及び「事業分離等に関する会計基準」(企業会計基準第7号 平成25年9月13日。以下「事業分離等会計基準」という。)等が2014年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用できることになったことに伴い、当連結会計年度からこれらの会計基準等(ただし、連結会計基準第39項に掲げられた定めを除く。)を適用し、支配が継続している場合の子会社に対する当社の持分変動による差額を資本剰余金として計上するとともに、取得関連費用を発生した連結会計年度の費用として計上する方法に変更しております。また、当連結会計年度の期首以後実施される企業結合については、暫定的な会計処理の確定による取得原価の配分額の見直しを企業結合日の属する連結会計年度の連結財務諸表に反映させる方法に変更しております。
企業結合会計基準等の適用については、企業結合会計基準第58-2項(4)、連結会計基準第44-5項(4)及び事業分離等会計基準第57-4項(4)に定める経過的な取扱いに従っており、当連結会計年度の期首時点から将来にわたって適用しております。
これによる連結財務諸表に与える影響は軽微であります。
⑥ IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。)により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項
(退職給付に係る費用)
当社グループは、発生した数理計算上の差異及び過去勤務費用を一定の期間で償却しておりました。IFRSでは、発生した数理計算上の差異はその他の包括利益として認識し、過去勤務費用は純損益として認識することが求められております。
この影響により、当連結会計年度にて、IFRSでは日本基準に比べて、売上原価・販売費及び一般管理費が3,291百万円減少し、その他の包括利益が4,522百万円増加しております。
(のれんの償却停止)
当社グループは、のれんを一定期間にわたり償却しておりました。IFRSでは、のれんの償却は行われず、毎期減損テストを実施することが要求されます。
この影響により、当連結会計年度にて、IFRSでは日本基準に比べて、販売費及び一般管理費が947百万円減少しております。
なお、前連結会計年度における差異に関する事項は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 29 IFRSへの移行に関する開示 」をご参照ください。