有価証券報告書-第152期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/16 16:11
【資料】
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【項目】
61項目

業績等の概要

(1)業績
当事業年度における経済環境は、海外において、英国のEU離脱決定、米国の大統領選挙など政治的に大きなイベントがあり、当初予想と異なる波乱の展開となりました。その後米国経済は持ち直し、また中国経済が持ちこたえたことなどもあり、年度を通じ緩やかな成長が継続しました。国内においても、年度後半にかけ海外経済の回復による輸出の増加や為替市場での円高修正が起きたことなどにより、緩やかながら景気回復が継続しました。
このような経済環境のもと、当社グループは、主力であるオプトロニクスでは、年度前半は低迷したものの、年度後半のIT業界の生産数量回復を着実に取り込むことで、収益を改善させました。インダストリアルテープでは、基盤機能材料で生産性向上による収益性改善を実現しましたが、トランスポーテーション事業ではほぼ横ばいとなりました。また、ライフサイエンスでは、事業ポートフォリオの変革の実現に向けた取組みを進め、核酸医薬の分野において、米国での受託製造事業を大きく伸ばし、さらに長年開発を続けてきた肝硬変治療薬において、米国製薬大手と独占ライセンス契約を締結し、契約一時金を受領しました。なお、平均為替レートは前年度が1米ドル=120.2円でしたが、当年度は108.9円となり、円高の影響を受けました。
以上の結果、売上収益は前連結会計年度と比較し3.2%減(以下の比較はこれに同じ)の767,710百万円となりました。また、営業利益は9.6%減の92,589百万円、税引前当期利益は10.0%減の91,791百万円、当期利益は22.3%減の63,690百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は22.3%減の63,453百万円となりました。
セグメントの業績概況
① インダストリアルテープ
トランスポーテーション事業の自動車材料では、年度後半にかけ主力の北米市場においてアルミ車体用補強材料が伸長し、年度を通じテープ加工部品やカーエレクトロニクス用途としての内圧調整材料は堅調に推移しました。基盤機能材料では、年度前半に在庫調整により伸び悩んだスマートフォン用両面テープが後半にかけ回復し、クリーンルーム空調設備向けのエアフィルターは年度を通じて大きく成長しました。工業用途全般に使用される汎用性の高い両面テープや保護材料も合理化に努め、生産性を上げることで収益力を向上させました。
以上の結果、売上収益は310,416百万円(2.0%減)、営業利益は26,214百万円(5.3%増)となりました。
② オプトロニクス
情報機能材料では、主力の光学フィルムが昨年度末からハイエンドスマートフォンの大幅な在庫調整の影響を受けましたが、年度後半にかけ、大手スマートフォンメーカーの新モデルや新興中国メーカーのハイエンドモデルなどで採用が進み、急速に回復しました。そのため、売上収益、営業利益ともに当初の見通しを上回る水準に到達しました。プリント回路は、HDD生産台数の減少の影響は受けたものの、高容量のデータセンター向け機種の需要拡大もあり挽回することができました。プロセス材料は半導体需要の拡大とともに、高水準での受注が続き、成長を遂げました。
以上の結果、売上収益は419,187百万円(8.1%減)、営業利益は50,623百万円(26.7%減)となりました。
③ ライフサイエンス
ライフサイエンス事業は飛躍を遂げた1年となりました。北米での核酸医薬の受託製造は引き続き好調で、大きく業績を拡大させました。また、核酸医薬を用いた肝硬変治療薬では、米国ブリストル・マイヤーズ スクイブ社へ独占ライセンスを許諾することにより、契約一時金1億米ドルを受領しました。
以上の結果、売上収益は44,459百万円(85.4%増)、営業利益は21,357百万円(833.9%増)となりました。
④ その他
メンブレンでは、好調だった昨年度の状況を受け、年度前半は堅調に推移しました。年度後半は海水淡水化プラント等の需要が低迷し、価格競争の影響を受けました。なお、第3四半期からセグメント区分を変更し、当セグメントには、未だ十分な売上収益を伴っていない新規事業が含まれています。
以上の結果、売上収益は26,039百万円(11.9%減)、営業損失は1,034百万円(前連結会計年度は営業利益2,917百万円)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は280,343百万円となり、前連結会計年度末より39,451百万円増加(前連結会計年度は26,332百万円の増加)となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、増加した資金は119,939百万円(前連結会計年度は140,658百万円の増加)となりました。
これは主に、税引前当期利益91,791百万円、減価償却費及び償却費48,556百万円による増加、売上債権及びその他の債権の増減額25,161百万円による減少の結果であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、減少した資金は49,739百万円(前連結会計年度は57,085百万円の減少)となりました。
これは主に、有形固定資産及び無形資産の取得による支出43,178百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出4,796百万円による減少の結果であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、減少した資金は28,884百万円(前連結会計年度は44,902百万円の減少)となりました。
これは主に、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出3,224百万円、配当金の支払額23,533百万円による減少の結果であります。
(3)IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項
(退職給付に係る費用)
日本基準では、発生した数理計算上の差異及び過去勤務費用を一定の期間で償却しておりました。IFRSでは、発生した数理計算上の差異はその他の包括利益として認識し、過去勤務費用は純損益として認識することが求められております。
この影響により、当連結会計年度にて、IFRSでは日本基準に比べて、売上原価・販売費及び一般管理費が3,681百万円減少し、その他の包括利益が3,486百万円増加しております。
(のれんの償却停止)
日本基準では、のれんを一定期間にわたり償却しておりました。IFRSでは、のれんの償却は行われず、毎期減損テストを実施することが要求されます。
この影響により、当連結会計年度にて、IFRSでは日本基準に比べて、販売費及び一般管理費が648百万円減少しております。